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医療従事者のインフルエンザ予防におけるN95レスピレータと医療用マスクの比較.無作為化臨床試験。
医療従事者のインフルエンザ予防におけるN95レスピレータと医療用マスクの比較.無作為化臨床試験。
N95 Respirators vs Medical Masks for Preventing Influenza Among Health Care Personnel: A Randomized Clinical Trial JAMA 2019 Sep 3 ;322 (9):824 -833. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】医療従事者(HCP)の職場ウイルス性呼吸器感染症の発症予防におけるN95レスピレータと医療用マスクの効果について、臨床研究では結論が出ていない。 【目的】HCPのインフルエンザおよびその他のウイルス性呼吸器感染症の予防に関するN95レスピレータと医療用マスクの効果を比較する。 【デザイン、設定および参加者】米国の7医療センターの137外来研究施設で2011年9月から2015年5月に実施し、最終フォローアップが2016年6月となるクラスター無作為化実用的効果試験であった。毎年4年間、ウイルス性呼吸器疾患のピークである12週間の期間に、各センター内の外来患者施設のペア(クラスター)をマッチングし、N95レスピレーター群と医療用マスク群に無作為に割り付けた。 【介入】全体として、189クラスタの1993人がN95呼吸器装着群(観察期間2512HCP-seasons)に、191クラスタの2058人が医療用マスク装着群(2668HCP-seasons)に無作為に割り付けられた。 主要アウトカムと測定】主要アウトカムは実験室で確認されたインフルエンザ発症率であった。副次的アウトカムは、急性呼吸器疾患、実験室で検出された呼吸器感染症、実験室で確認された呼吸器疾患、およびインフルエンザ様疾患の発生率であった。 【結果】無作為化された参加者2862名(平均[SD]年齢、43[11.5]歳、2369[82.8%]女性)中、2371名が研究を完了し、5180名のHCP-seasonsを占めた。実験室で確認されたインフルエンザ感染イベントは,N95 レスピレータ群で 207 件(HCP-seasons の 8.2%),医療用マスク群で 193 件(HCP-seasons の 7.2%)( 差は 1.0%,[95% CI,-0.5% ~ 2.5%],P = 0.18)( 調整オッズ比 [OR]:1.18[95% CI,0.95 ~ 1.45] )であった.呼吸器群の急性呼吸器疾患イベント 1556 件対マスク群の 1711 件(差、1000 HCP シーズンあたり -21.9 件 [95% CI、-48.2 ~ 4.4]; P = .10); 呼吸器群の実験室検出呼吸器感染 679 件対マスク群の 745 件(差、1000 HCP シーズンあたり -8.9 件 [95% CI、-33.3 ~ 15.4]; P = .47); 呼吸器感染と診断された実験室検出感染 371 件(差、1 HCP シーズンあたり -4.0 件 [95% CI、0.1 ~ 0.2]、 P = 0.9); 呼吸器感染と診断された実験室検出感染 2 件47)、呼吸器群371件対マスク群417件(差、1000HCP-シーズン当たり-8.6件[95%CI、-28.2~10.9]、P = 0.39)、呼吸器群128件対マスク群166件(差、1000HCP-シーズン当たり-11.3件[95%CI、-23.8~1.3]、P = .08)、検査で確認される呼吸器疾患事象がありました。呼吸器群では、89.4%の参加者が「いつも」または「時々」指定された器具を着用したと報告したのに対し、マスク群では90.2%であった。 【結論と関連性】外来医療従事者において、この試験の参加者が着用したN95呼吸器と医療用マスクは、実験室で確認されたインフルエンザの発生率に有意差をもたらさなかった。 【試験登録】臨床試験番号(CCT):National ClinicalTrials. gov ID。NCT01249625。 第一人者の医師による解説 インフルエンザ流行期の外来医療スタッフ マスク着用が望ましい 関 雅文 東北医科薬科大学医学部感染症学教室教授 MMJ.February 2020;16(1) 呼吸器ウイルス疾患、特にインフルエンザに対するマスク着用の有用性が長年議論されている。 手指衛生のほか、マスク着用による感染予防効果が多数報告されている一方、粒子径の小さい多くの呼吸器ウイルス感染で、一般的なサージカルマスクでの感染予防効果への疑問もあった(1),(2)。 本研究では、結核など空気感染が懸念される際に使用されるN95マスクと、一般に使用されるサージカルマスクを着用した際の、外来医療スタッフにおけるインフルエンザ・その他呼吸器ウイルス 疾患の予防効果を前向きに比較・検討している。米国の7つの大規模医療センターに属する137の外来センターで2011年9月~15年5月に医療スタッフ 2,862人をN95マスク群、サージカルマスク 群にランダムに割り付け、最終的に2016年6月 まで追跡した。 主要評価項目であるインフルエンザ感染の発生は、N95マスク群で207人(8.2%)、サージカルマスク群で193人(7.2%)であった(P=0.18)。 副次評価項目では、急性呼吸器症状の出現がN95 マスク群で1,556イベント、サージカルマスク群で1,711イベント(P=0.10)、無症状時も含めて呼吸器ウイルスが同定されたのはN95マスク群 で679イベント、サージカルマスク群で745イベ ント(P=0.47)、呼吸器症状および呼吸器ウイル ス感染が確認されたのはN95マスク群で371イベント、サージカルマスク群で417イベント(P= 0.39)、インフルエンザ様疾患はN95マスク群で128イベント、サージカルマスク群で166イベント(P=0.08)であった。 これらの結果からは、主に外来で働く医療スタッフにおいて、インフルエンザ・その他呼吸器ウイルス疾患の予防に関して、N95マスクとサージカルマスクで、その効果には有意差はないことが示唆された。一方、N95マスク群とサージカルマスク群で比較した急性呼吸器症状の発生確率(IRR)は intention-to-treat集団で0.99であるのに対し、インフルエンザ様症状のIRRは0.86であり、N95 マスクによる一定のインフルエンザ予防効果が存在する可能性も示されたと言えよう。なお、N95 マスク群では89.4%、サージカルマスク群では90.2%の医療スタッフが「常に」~「時々」と一定以上、それぞれのマスクを装着しており、本研究の質は比較的担保されている。 以上の結果を総合すると、インフルエンザやその他の呼吸器ウイルス感染にさらされる危険性の高い外来医療スタッフは、N95マスクを装着する必要はないが、サージカルマスク装着での勤務は望ましいであろう。 1. MacIntyre CR et al. In¬fluenza Other Respir Viruses. 2017;11(6):511-517. 2. Loeb M et al. JAMA. 2009;302(17):1865-1871.
薬剤耐性結核菌の伝播性と病勢進行の可能性:前向きコホート研究
薬剤耐性結核菌の伝播性と病勢進行の可能性:前向きコホート研究
Transmissibility and potential for disease progression of drug resistant Mycobacterium tuberculosis: prospective cohort study BMJ 2019 ;367 :l5894 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】肺結核患者の家庭内接触者における表現型薬剤耐性と結核感染・発病リスクとの関連を測定すること 【設定】2009年9月から2012年9月までのペルー、リマの106地区の保健所 【デザイン】前向きコホート研究。 【参加者】結核の指標患者3339人の家庭内接触者10 160人を、患者の薬剤耐性プロファイルに基づいて分類した:6189人がMycobacterium tuberculosisの薬剤感受性株に、1659人がイソニアジドまたはリファンピシンに耐性の株に、1541人が多剤耐性(イソニアジドとリファンピシンに耐性)株に暴露されていた。 【結果】多剤耐性結核患者の家庭内接触者は、薬剤感受性結核患者の家庭内接触者と比較して、フォローアップ終了時までに感染するリスクが8%(95%信頼区間4%~13%)高くなることが示された。結核疾患発症の相対ハザードは、多剤耐性結核に曝露した家庭内連絡者と薬剤感受性結核に曝露した家庭内連絡者で差がなかった(調整ハザード比 1.28、95%信頼区間 0.9~1.83) 【結論】多剤耐性結核患者の家庭内連絡者は、薬剤感受性結核に曝露した連絡者と比較して結核感染リスクが高かった。結核疾患の発症リスクは、両群の接触者の間で差はなかった。このエビデンスは、ガイドライン作成者に、薬剤耐性結核と薬剤感受性結核を対象として、感染と疾患の早期発見と効果的な治療などの行動をとるように促すものである。 【TRIAL REGISTRATION】ClinicalTrials. gov NCT00676754. 第一人者の医師による解説 多剤耐性結核の制圧 耐性獲得防止だけでなく早期診断・治療戦略の開発が必要 加藤 誠也 公益財団法人結核予防会結核研究所所長 MMJ.February 2020;16(1) 薬剤耐性(AMR)対策は世界的に大きな問題とされており、結核がAMRの3分の1を占めているとされている。結核に関しては抗結核薬のイドニア ジドとリファンピシンの両剤に耐性の結核を多剤耐性結核という。薬剤耐性結核の発生原因は細胞分裂の過程で発生する耐性菌が、不適切な治療や治療中断によって選択的に増殖することによる。したがって、対策は適正な治療を確実に行うことによって耐性菌の増殖を防ぐこととされてきた。 この考え方の背景には、耐性菌は変異によって感染性や病原性が損なわれているために、感染や発病は感受性菌に比べ大きな問題でないという前提がある。本研究は感受性菌と多剤耐性菌の患者家族を12カ月間追跡することによって、感染状況(ツベルクリン反応結果)と発病者を算出し、この前提の妥当性を検証した。 その結果、多剤耐性菌は感受性菌よりも感染のリスクが8%高く、発病可能性は耐性菌と感受性菌で差がなかった。なお、結核菌の耐性 変異による発育適合性(fitness)の影響については諸説がある。本研究では家族内感染者に菌陽性に なりにくい小児が多かったため、分子疫学的な検証 が十分にされなかったが、Yangらは上海における分子疫学研究によって、多剤耐性結核患者の73% が感染によることを示した(1) 。 これらの結果から多剤耐性結核対策として、耐性菌の増殖を防ぐための適正治療と服薬遵守の推進のみならず、感染防止のため薬剤耐性菌の早期診断と効果的な治療の必要性が示唆された。しかし、薬剤感受性検査は診断後2~3カ月かかり、その間は適切な治療が行われないため、多剤耐性結核患者の感染性低下は感受性菌感染者に比べ遅いことになる。したがって、対策として既存のツールのみならず、薬剤耐性の早期診断・治療の戦略を開発する 必要がある。 診断のためには、結核菌の全ゲノム解析の活用が考えられるが、そのためには薬剤耐性 遺伝子の知見を集積して解析ツールの精度を十分に高くすること、および結核菌遺伝子を簡便に高濃度に抽出する技術が必要である。また、治療のためには従来の薬剤と異なる作用機序を持つ新薬とそれを組み合わせた安全かつ効果的な治療レジメンの開発が必要である。 1. Yang C et al. Lancet Infect Dis. 2017;17(3):275-284.
肺炎で入院した患者における過剰な抗生物質治療期間と有害事象。多施設共同コホート研究。
肺炎で入院した患者における過剰な抗生物質治療期間と有害事象。多施設共同コホート研究。
Excess Antibiotic Treatment Duration and Adverse Events in Patients Hospitalized With Pneumonia: A Multihospital Cohort Study Ann Intern Med 2019 ;171 (3):153 -163. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】無作為化試験で、最も短い有効期間を超える抗生物質治療による有益性は示されていない。 【目的】過剰な抗生物質治療期間に関連する予測因子と転帰を検討する。 【デザイン】レトロスペクティブコホート研究。 【設定】ミシガン病院医療安全コンソーシアムの43病院。 【患者】肺炎の一般診療患者6481例。 測定】主要アウトカムは過剰抗生物質治療期間の割合(30日間あたりの超過日数)であった。過剰日数は、実際の治療期間から各患者の最も短い有効(期待)治療期間(臨床的安定までの時間、病原体、肺炎分類[市中肺炎 vs. 医療関連]に基づく)を差し引くことで算出された。負の二項一般化推定方程式(GEE)を用いて率比を算出し、30日目の治療期間超過率の予測因子を評価した。30日後にカルテと電話で評価された患者の転帰は、患者特性および治療の確率を調整したロジットGEEを用いて評価した。 【結果】患者の3分の2(67.8%[6481例中4391例])が過剰な抗生物質治療を受けた。退院時に処方された抗生物質が過剰期間の93.2%を占めた。呼吸器培養または非培養診断検査を受けた患者、入院期間が長い患者、過去90日間に高リスクの抗生物質を投与された患者、市中肺炎の患者、退院時に抗生物質治療期間の合計が記録されていない患者は、過剰な治療を受ける可能性がより高かった。過剰な治療は,死亡,再入院,救急外来受診,Clostridioides difficile 感染症などの有害転帰の割合の低下と関連はなかった.治療が1日増えるごとに、退院後に患者から報告された抗生物質関連の有害事象の確率が5%上昇した。 【限定】レトロスペクティブデザイン;30日後の結果を報告するためにすべての患者に連絡できたわけではない。 【結論】肺炎で入院した患者はしばしば過剰な抗生物質治療を受けていた。過剰な抗生物質投与は、患者が報告する有害事象と関連していた。今後の介入は、過剰な治療を減らし、退院時の記録を改善することでアウトカムが改善するかどうかに焦点を当てるべきである。 【Primary funding source】BCBSM Value Partnershipsプログラムの一環としてBlue Cross Blue Shield of Michigan(BCBSM)およびBlue Care Networkが実施した。 第一人者の医師による解説 退院時の抗菌薬処方は93%で過剰 適正使用のさらなる徹底を 舘田 一博 東邦大学医学部微生物・感染症学講座教授 MMJ.February 2020;16(1) 高齢化進行と相まって肺炎の頻度は年々上昇している。特に入院を要する重症肺炎は高齢者における死亡の原因として極めて重要である。本論文は、米国ミシガン州における43病院6,481人の 肺炎入院患者を対象とした抗菌薬の使用状況に関する後ろ向きコホート研究の報告である。著者らは、患者状態の安定化、病原体の種類、肺炎分類(市 中肺炎[CAP]・医療関連肺炎[HCAP])な ど か ら 適正な抗菌薬投与期間を推定し、実際の投与期間と の差をもとに過剰期間の抗菌薬投与(過剰投与)に関する解析を行っている。 その結果、検討された患者6,481人のうち67.8%において抗菌薬の過剰な投与が行われていた可能性が示された。解析対象患者全体の抗菌薬投与期間は中央値で8日であり(CAP患者では8日、HCAP患者では9日)、過剰投与日数の中央値は全体で2日(CAP患者では2日、HCAP患者では1日)であった。また著者らは、本研究の結果から退院時に処方される抗菌薬の 93.2%が過剰投与ではないかという結論に達している。 退院時に処方される抗菌薬として最も頻度の高い薬剤はフルオロキノロン系薬剤(31.3%)で、続いてアジスロマイシンとアモキシシリン / クラブラン酸が多かった。抗菌薬の過剰投与と思 わ れ る 状態は、死亡率、再入院率、救急診療受診、 Clostridioides diffi cile感染症の発生率などとは 関連していなかった。ただし、退院後の患者からの報告として約5%の患者から抗菌薬に関連すると思われる副反応(adverse event)の報告がみられていた。 本研究結果は、改めて肺炎入院患者における抗菌薬の過剰投与と、これと関連する抗菌薬副反応の問題をクローズアップしている。特に著者らは、退院時に処方される抗菌薬の適正使用に関して、 “discharge stewardship”という概念を提唱しており興味深い。 耐性菌の増加と蔓延が、人類への脅威として取り上げられている中で、抗菌薬の適正使用のさらなる徹底は極めて重要な課題である。本研究により、入院肺炎患者における抗菌薬の過剰投与の実態が改めて示され、特に退院時に処方される抗菌薬の重要性が明らかにされたことは意義がある。日本でも、退院時に“もしものことがないように”という意味で過剰な抗菌薬の処方が行われている可能性は十分に考えられる。本論文を参考に、日本における肺炎入院患者における抗菌薬の適正使用、特に退院時の処方の実際を明らかにする研究の実施が期待される。
非制御喘息における単回吸入エキストラファイン3剤併用療法(TRIMARAN、TRIGGER):2つの二重盲検並行群間無作為化比較第3相試験。
非制御喘息における単回吸入エキストラファイン3剤併用療法(TRIMARAN、TRIGGER):2つの二重盲検並行群間無作為化比較第3相試験。
Single inhaler extrafine triple therapy in uncontrolled asthma (TRIMARAN and TRIGGER): two double-blind, parallel-group, randomised, controlled phase 3 trials Lancet 2019 ;394 (10210):1737 -1749. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 現在までに、喘息における単回吸入3剤併用療法の有効性を評価した研究はない。ここでは、ベクロメタゾンジプロピオネート(BDP:吸入コルチコステロイド)、ホルモテロールフマル酸塩(FF:長時間作用型β2アゴニスト)、グリコピロニウム(G:長時間作用型ムスカリン拮抗薬)の単一吸入超微粒子配合剤とBDP+FF配合剤を比較した2試験結果を報告します。 【方法】2つの並行群間二重盲検無作為化能動比較第3相試験(Triple in Asthma With Uncontrolled Patients on Medium Strength of ICS + LABA[TRIMARAN]とTriple in Asthma High Strength Versus ICS/LABA HS and Tiotropium[TRIGGER])は、16か国、171施設(TRIMARAN)から、17か国、221施設から患者を募集した(TRIGGER)。対象施設は、二次医療施設と三次医療施設、および専門的な調査部門が混在しています。対象は、コントロール不良の喘息患者で、過去1年間に1回以上の増悪の既往があり、吸入コルチコステロイド(TRIMARAN:中用量、TRIGGER:高用量)と長時間作用型β2アゴニストによる治療経験のある成人(18~75歳)であった。登録された患者は、まずBDP/FF(TRIMARAN:BDP 100μgとFF 6μg、TRIGGER:BDP 200μgとFF 6μg)で2週間治療した後、国によって層別されたバランスブロック無作為化スキームのインタラクティブ応答技術システムを使ってランダムに治療が割り当てられました。患者、治験責任医師、施設スタッフ、スポンサースタッフは、BDP/FF/GおよびBDP/FFの割り付けをマスクされた。TRIMARANでは、患者は52週間のBDP/FF/G(BDP 100μg、FF 6μg、G 10μg)またはBDP/FF(BDP 100μg、FF 6μg)、1日2回吸入に(1:1)無作為に割り付けられました。TRIGGERでは、患者を52週間にわたり、BDP/FF/G(200μg BDP、6μg FF、10μg G)またはBDP/FF(200 BDP、6μg FF)を1日2回、あるいはオープンラベルでBDP/FF(200μg BDP、6μg FF)2吸入とTiotropium 2-5 μg2吸入の1日1回併用投与に無作為(2:2:1)割付けました。両試験(BDP/FF/G vs BDP/FF)の主要評価項目は、投与前の26週目の強制呼気1秒量(FEV1)と52週目の中等度および重度の増悪率でした。安全性は、少なくとも1回の投与が行われたすべての患者さんで評価されました。これらの試験はClinicalTrials. govに登録され、NCT02676076(TRIMARAN)、NCT02676089(TRIGGER)。 【所見】2016年2月17日から2018年5月17日の間に、TRIMARANの1155人の患者にBDP/FF/G(n=579)またはBDP/FF(n=576)が投与された。2016年4月6日から2018年5月28日の間に、TRIGGERの1437人の患者にBDP/FF/G(n=573)、BDP/FF(n=576)、またはBDP/FF+チオトロピウム(n=288)が投与された。BDP/FF群と比較して、投与26週目の投与前FEV1は、TRIMARANでは57mL(95%CI 15-99、p=0-0080)、TRIGでは73mL(26-120;また、中等度および重度の増悪の割合は、TRIMARANでは15%(率比0-85、95%CI 0-73-0-99、p=0-033)、TRIGGERでは12%(0-88、0-75-1-03、p=0-11)減少しています。治療関連の重篤な有害事象は4例で、TRIMARANではBDP/FF/G群に1例、TRIGGERではBDP/FF/G群に1例、BDP/FF群に2例の計3例であった。TRIMARANではBDP/FF/G群に3例、TRIGGERではBDP/FF/G群に1例、BDP/FF群に1例の計2例に死亡に至る有害事象が認められました。また,死亡例はいずれも治療との関連は認められなかった。 【解釈】コントロールされていない喘息において,吸入コルチコステロイド+長時間作用性β2-agonist療法に長時間作用性ムスカリン拮抗薬を追加すると,肺機能の改善と増悪の抑制が認められる。 【FUNDING】Chiesi Farmaceutici. 第一人者の医師による解説 単一デバイスに3剤配合 吸入アドヒアランス改善につながる可能性も 長瀬 洋之 帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー学教授 MMJ.February 2020;16(1) 本論文 は、吸入 ステロイド 薬 (ICS)/長時間作 用性β2刺激薬(LABA)/長時間作用性抗コリン薬 (LAMA)を単一デバイスに配合したトリプル製剤の喘息に対する有効性を検討した、Chiesi 社主導 による2件の第3相試験の報告である。トリプル製剤は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対してはすでに日本でも2剤が承認されているが、喘息に対し ては未承認である。本論文では喘息に対するトリプル製剤の長期効果が初めて報告されている。トリプル製剤のICS/LABA配合薬に対する優位性を52週にわたって検討しており、中用量 ICSを用いたTRIMARAN試験 (n=1,155)と高用量 ICSを 用いたTRIGGER試験(n=1,437)の2試験をまとめて報告している。 超微粒子の加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)として、 ベクロメタゾン(ICS)、ホルモテロール (LABA)、 グリコピロニウム(LAMA)が配合されており、ベクロメタゾンの用量は中用量製剤では400 μ g/ 日、高用量製剤では800μ g/日である。主要評価項目である26週後の1秒量と52週間の増悪は、 ICS/LABAと比較し、トリプル製剤ではそれぞれ +57 mLと -15 % (TRIMARAN試験 )、+73 mLと-12%(TRIGGER試験)と有意に優れており (TRIGGER試験の増悪のみ P=0.11)、主要評価項目をほぼ満たした。   ICS/LABAへのLAMA追加効果については、チオトロピウムのICS/LABAへの追加によって呼吸機能改善と増悪抑制効果が先行試験で示されており(1)、今回の結果は想定の範囲内ではある。しかし、 単一デバイスに3剤が配合されると、喘息治療で常に問題となる吸入アドヒアランスの改善につながる可能性がある。また、今回の評価項目ではないが、高用量 ICS/LABAと中用量トリプル製剤の効果はほぼ同等であり、副作用で高用量 ICSを用いることができない場合、中用量トリプル製剤を用いる選択肢も出てくるかもしれない。   2019年の米国胸部疾患学会(ATS)では、ドライパウダー吸入器を用いるモメタゾン(ICS)/イン ダカテロール(LABA)/グリコピロニウム(LAMA) 配合薬 QVM149(Novartis社 )が、ICS/LABAに 比べ、呼吸機能改善の点で優れていることが第2 相試験で示された。COPDでは、すでにトリプル製剤として、テリルジー®やビレーズトリ®が用いられている。今後、複数のトリプル製剤が喘息に対して使用可能となり、剤型や吸入回数などの選択肢が 増えることが予想される。 1. Kerstjens HA et al. N Engl J Med. 2012;367(13):1198-1207.
195の国と地域における健康関連の持続可能な開発目標の1990年から2017年までの進捗状況の測定と2030年までの達成度の予測:世界疾病負担調査2017のための系統的分析。
195の国と地域における健康関連の持続可能な開発目標の1990年から2017年までの進捗状況の測定と2030年までの達成度の予測:世界疾病負担調査2017のための系統的分析。
Measuring progress from 1990 to 2017 and projecting attainment to 2030 of the health-related Sustainable Development Goals for 195 countries and territories: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017 Lancet 2018; 392: 2091 –2138 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】国連の持続可能な開発目標(SDGs)の2015年の基準値を設定し、早期実施を監視する取り組みは、2030年までに健康を改善するための大きな可能性と脅威の両方を浮き彫りにしています。誰一人取り残さない」というSDGsの目標を完全に実現するためには、国レベルの推計を超えて健康関連のSDGsを検証することがますます重要となっています。Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2017(GBD 2017)の一環として、1990年から2017年までの195の国・地域の健康関連SDGs指標52項目のうち41項目の進捗を測定し、健康関連SDGs指標を推定、2030年までの指標を予測、世界の達成状況を分析しました。 【方法】1990年から2017年にかけて41の健康関連SDGs指標の進捗を測定し、GBD2016から4つの指標が増加しました(新しい指標は、保健師密度、非親密なパートナーによる性的暴力、人口調査状況、身体的・性的暴力の蔓延[別途報告]です)。また、以前に報告されたいくつかの指標の測定値を改善した。国レベルの推定値を作成し、健康関連のSDGsのサブセットについては、性別や社会人口統計指数(SDI)五分位による指標レベルの差異を調査しました。また、特定の国については、サブナショナルなパフォーマンス評価も行いました。健康関連SDGsの指標を構築するために、1990年から2030年まで算出した1000のドローのうち、0を2-5パーセンタイル、100を97-5パーセンタイルとして各指標の値を0-100で変換し、目標別に尺度化した指標の幾何平均を取りました。2030 年までの予測を行うため、より広範な GBD 研究から推定値を抽出し、1990 年から 2017 年までの指標別および国別の年率換算変化率の加重平均を使用した予測フレームワークを使用し、将来の推定値に反映させた。まず、2030年に予測される平均値を用い、次に1000回の抽選から算出される2030年の達成確率を用いて、目標が設定された指標の達成度を2つの方法で評価した。また、過去の傾向からSDGsの目標達成の可能性について、グローバルな達成度分析を行いました。SDGsの目標が設定された指標の2015年の世界平均を用い、これらの目標を達成するために2015年から2030年までに必要な世界の年率変化率を算出し、1990年から2015年の国レベルの変化率分布において、必要な世界の年率変化率がどのパーセンテージに該当するかを確認した。指標間でこれらの世界的パーセンタイル値の平均を取り、この平均世界的パーセンタイルにおける過去の変化率を、目標の定義にかかわらずすべての健康関連SDG指標に適用し、各指標の2030年相当の世界平均値と2015年から2030年の変化率を推定した。 【調査結果】2017年の健康関連SDG指標の世界中央値は59-4(IQR 35-4-67-3)、低い11-6(95%不確実性間隔 9-6-14-0) から高い 84-9(83-1-86-7) まで幅がありました。サブナショナル・レベルで評価された国々のSDGs指標の値は、日本や英国ではより均質であったが、特に中国やインドでは大きく変動した。また、SDI五分位値や性別によっても指標は異なり、特に非感染性疾患(NCD)死亡率、アルコール使用、喫煙などでは、男性の方が女性よりも悪い結果となった。ほとんどの国が2030年には2017年よりも健康関連のSDGs指数が高くなると予測されたが、2030年までに達成する国レベルの確率は指標によって大きく異なっていた。5歳未満死亡率、新生児死亡率、妊産婦死亡率、マラリアの指標は、目標達成確率が95%以上の国が最も多かった。NCD死亡率や自殺死亡率を含むその他の指標は、2030年の予測平均値に基づいて対応するSDGs目標を達成すると予測される国はなかったが、2030年までに達成する可能性があることが示された。子どもの栄養不良、いくつかの感染症、ほとんどの暴力対策など、いくつかの指標については、SDGsの目標達成に必要な年率換算の変化率は、過去にどの国も達成した進歩のペースをはるかに超えています。2030 年までに、喫煙とアルコール摂取をそれぞれ 19%と 22%削減すること、思春期の出生率を 47%低下させること、人口 1000 人当たりの保健ワーカー密度を 85%以上増加させることに相当する。 GBD 研究は、人口動態や地理的次元を超えて健康関連の SDGs を監視するためのユニークで強固なプラ ットフォームを提供している。我々の発見は、細分化されたデータの収集と分析の重要性を強調し、より意図的なデザインまたは介入策のターゲティングがSDGs達成の進捗を加速させる可能性がある場所を強調するものである。現在の予測では、健康に関連するSDGsの指標、NCD、NCD関連のリスク、暴力関連の指標の多くは、過去の成果を推進したもの(NCDの場合は治療的介入)から、SDGsの目標を達成するための多部門にわたる予防指向の政策行動や投資への協調的シフトを必要としています。注目すべきは、いくつかのターゲットが 2030 年までに達成されるためには、どの国も過去に達成したことのない 進捗ペースが要求されることです。未来は基本的に不確実であり、どのようなブレークスルーや出来事がSDGsの行方を変えるかを完全に予測できるモデルはありません。しかし、今日の私たちの行動や不作為が、2030年までに「誰一人取り残さない」ことにどれだけ近づけるかを左右することは明らかです。 【FUNDING】ビル&メリンダ・ゲイツ財団 第一人者の医師による解説 多分野にわたる予防志向の政策行動と さらなる投資が達成に必要 野村 周平 慶應義塾大学医学部医療政策管理学特任准教授 MMJ.February 2020;16(1) 持続可能な開発目標(SDG)は、「誰一人取り残さない」という世界的な掛け声のもとに、2015年9月の国連サミットで採択された、2030年までの 17のゴール・169のターゲットで構成される世界全体の目標である。健康目標においては、これまでさまざまな研究が健康改善の大きな可能性と課題の両方を浮き彫りにしており(1)、国レベルでの健康 関連のSDGの進捗評価がますます重要になっている。 本論文は世界の疾病負荷研究(Global Burden of Disease ;GBD)プロジェクトの研究成果からの 1編であり、GBD 2017の枠組みに基づき(2)、世界195の国・地域における1990~2017年の52 の健康関連 SDG指標のうち41の指標の進捗を0 ~100スケール(達成度の低~高)で測定し、さらに2030年までの予測指標を分析したものである。 2017年の41のSDG指数の平均値を国別にみると、中央値は59.4(四分位範囲35.4~67.3)で、最低が中央アフリカ共和国の11.6(95%不確実 性区間9.6~14.0)、最高がシンガポールの84.9 (83.1~86.7)であった。国内地方レベルで評価 したSDG指数平均値は、日本や英国ではより均一 的で地域差は小さかったが、中国とインドでは大きく地域差が認められた。また男女間、社会人口指 数間でも、SDG指数平均値に格差がみられた。「誰も取り残さない」ためには、細分化された評価が必要であることを示唆している。 指標別にみると、5歳未満児死亡率、新生児死亡率、妊産婦死亡率、マラリア死亡率はほとんどの国が達成する見込みである。しかし、その他の指標、例えば非感染症による死亡や自殺などの指標では、 特段の治療や予防の政策的介入なしに、2030年までにSDG目標を達成すると予測された国はなかった。子どもの栄養不良や暴力、結核などその他の感染症は特に、達成のために必要な指標値の年間改善率と実際の改善率のギャップが大きく、達成のためには甚大な努力が求められる。 大部分の国はすでにミレニアム開発目標(MDG)のための国家行動計画を策定しており、MDGに由来する指標目標(乳幼児、妊産婦、エイズ、マラリア、 結核など)を達成する上では良い状況にある。しかし、SDGは多くの国の政策においてカバーされていない。本研究は、SDG時代の残された数年間、 SDG達成のための継続的なモニタリング、多分野にわたる予防志向の政策行動とさらなる投資への協調的アプローチの必要性を示している。 1. Bertelsmann Stiftung, Sustainable Development Solutions Network. Sustainable Development Report 2019. URL: https://bit.ly/2sayJmJ 2. The Lancet. Lancet. 2018;392(10159):1683.
250 の死因に対する平均寿命、失われた生命年、全死因および死因別死亡率の予測:195 の国と地域に対する 2016-40 年の参照シナリオと代替シナリオ。
250 の死因に対する平均寿命、失われた生命年、全死因および死因別死亡率の予測:195 の国と地域に対する 2016-40 年の参照シナリオと代替シナリオ。
Forecasting life expectancy, years of life lost, and all-cause and cause-specific mortality for 250 causes of death: reference and alternative scenarios for 2016-40 for 195 countries and territories Lancet 2018 ;392 (10159):2052 -2090. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】健康における潜在的な軌道と健康の推進要因を理解することは、長期的な投資と政策の実施を導く上で極めて重要である。予測に関する過去の研究は、将来の健康シナリオの不完全な風景を提供しており、政策オプションと潜在的な健康の軌道を評価することができる、より堅牢なモデリングプラットフォームの必要性を強調している。本研究は、195の国と地域における2016年から2040年までの250の死因について、平均寿命、全死因死亡率及び死因の予測-及び代替的な将来シナリオをモデル化する新しいアプローチを提供する。 【方法】我々は、2017年から40年の予測を生成するために、1990年から2016年のGBD 2016推定を用いて、世界疾病、負傷及びリスク要因研究(GBD)階層的原因構造によって編成された250の原因及び原因群をモデル化した。我々のモデリングフレームワークは、GBD 2016研究のデータを用いて、健康の79の独立したドライバーについて、リスク要因と健康アウトカムとの関係を系統的に説明した。我々は、原因別死亡率の3成分モデルを開発した:リスク要因の変化と選択的介入による成分、一人当たり所得、教育達成度、25歳未満の合計特殊出生率と時間の関数である各原因の基礎的死亡率、時間に相関した説明できない変化に対する自己回帰統合移動平均モデルである。1990年から2006年のデータでモデルを当てはめ、これを用いて2007年から16年の予測を行うことで、性能を評価した。予測と代替シナリオの生成に使用した最終モデルは、1990年から2016年のデータに適合させた。このモデルを195の国と地域について使用し、場所ごとの各指標について2040年までの参照シナリオまたは予測を作成した。さらに、すべてのGBDリスク因子、一人当たり所得、教育達成度、選択的介入率、過去25年未満の合計出生率について、場所年ごとの年率変化率のそれぞれ85%および15%に基づき、より健康なシナリオおよびより悪い健康シナリオを生成した。このモデルを用いて、250の原因について、全死因年齢性別死亡率、平均余命、損失年数(YLL)を算出した。出生率に関するシナリオも作成し、人口シナリオを作成するためのコホート成分モデルで使用した。基準予測,健康増進シナリオ,健康悪化シナリオのそれぞれについて,将来における各リスク要因に起因する死亡率とYLLの推定値を作成した。 【調査結果】世界的に,健康の独立したドライバーのほとんどが2040年までに改善すると予測されたが,36は悪化すると予測された。より良い健康シナリオが示すように、より大きな進歩が可能かもしれないが、高い体格指数(BMI)のようないくつかのドライバーについては、介入がない場合、その犠牲者は増加するだろう。我々は、2040年までに世界の平均寿命が男性で4-4年(95% UI 2-2 to 6-4)、女性で4-4年(2-1 to 6-4)伸びると予測したが、健康状態の良いシナリオと悪いシナリオに基づくと、男性では7-8年の増加(5-9 to 9-8)から有意ではない0-4年の減少(-2-8 to 2-2)、女性では7-2年の増加(5-3 to 9-1)から本質的に変化なし(0-1年 [-2-7 to 2-5])までのトラジェクトリーが可能であった。2040年には、日本、シンガポール、スペイン、スイスが男女とも85歳を超え、中国を含む59カ国が80歳を超えると予測された。一方、中央アフリカ共和国、レソト、ソマリア、ジンバブエは2040年の平均寿命が65歳未満と予測され、現在の傾向が続くとすれば、生存率の世界的な格差が継続する可能性があることが示された。予測されたYLLは、人口増加と高齢化により、いくつかの非伝染性疾患(NCDs)による犠牲者の増加を示している。基準予測と代替シナリオの違いは、HIV/AIDSにおいて最も顕著であり、健康悪化シナリオの下では、2016年から40年にかけてYLLが120-2%(95% UI 67-2-190-3)増加する可能性があると予測された(約1億1800万人)。2016 年と比較して、NCD は 2040 年までにすべての GBD 地域で YLL に占める割合が大きくなると予測された(世界の YLL の 67-3% [95% UI 61-9-72-3] )。それでも、多くの低所得国では、2040 年の YLL に占める感染症、妊婦、新生児、栄養(CMNN)の割合はまだ大きい(例えば、サブサハラ・アフリカでは YLLの 53-5% [95% UI 48-3-58-5] など)。多くの健康リスクにおいて、帰属する YLL の基準予測とより良い健康シナリオの間に大きなギャップがあった。ほとんどの国において,ヘルスケアに従順な代謝リスク(例:高血圧,高血漿空腹時血糖),および集団レベルまたはセクター間介入によって最もターゲットとなるリスク(例:タバコ,高 BMI,環境中粒子状物質汚染)は,基準予測とより良い健康シナリオの間で最大の差がある.主な例外はサハラ以南のアフリカで、貧困と低開発レベルに関連する多くのリスク(例えば、安全でない水と衛生、家庭大気汚染、子供の栄養不良)が、2040年においても基準シナリオとより良い健康シナリオの間の実質的格差を占めると予測された。我々の参照予測は、ほとんどの国で2040年まで全体的な改善を指摘しているが、健康シナリオの改善と悪化に見られる幅は、不安定な未来像を示している-技術革新による加速的な進歩を持つ世界だが、意図的な政策行動がない場合は健康アウトカムが悪化する可能性を持つ。YLLsの原因によっては、基準予測と代替シナリオの間に大きな差があるため、各国がより良い健康シナリオに向かって軌道修正すれば、利益を加速させる機会が得られ、基準予測に遅れをとれば憂慮すべき課題が発生する。一般的に、意思決定者は NCDs への移行が続くことを想定し、早期の死亡率を大幅に押し上げる修正可能なリスク に資源を集中させるべきです。そのような修正可能なリスクを今日優先させれば、将来的に回避可能な死亡率を減少させる機会 がある。しかし、CMNNの原因とそれに関連するリスクは、低所得国において引き続き保健上の優先事項である。我々の2040年の健康悪化シナリオに基づけば、各国がHIVの流行に対する勢いを失い、この病気に対する数十年の進歩を危うくすれば、HIV死亡率が回復する現実的なリスクが存在する。技術革新の継続と、世界の最貧困層を対象とした保健分野の開発援助を含む保健支出の増加は、すべての国民が健康で充実した生活を送ることができる未来を描くために、今後も不可欠な要素であると考えられます。 第一人者の医師による解説 今後の政策の選択 各国の将来の健康に大きな影響 野村 周平 慶應義塾大学医学部医療政策管理学特任准教授 MMJ.February 2020;16(1) 本論文は世界の疾病負荷研究(Global Burden of Disease ;GBD)プロジェクトの研究成果からの1編であり、GBD 2016の枠組みに基づき(1),(2)、世界195の国・地域における2016~40年の250 疾患別の死亡率、および平均寿命や損失生存年数 (YLL)を分析したものである。 死亡率の予測モデルは1990~2016年のデータに基づき、大きく以下の3要素からなる:(1)疾患との関連が認められる危険因子の年次変化(2)社会人口指数(SDI:1人当たりの収入レベル、教育レベル、25歳以下の出生率の混合指標)(3)これらで説明できない時間的変動(自己回帰和分移動平均モデル[ARIMA]を適用)。特別なシナリオを想定しない将来予測(基準シナリオ)に加え、仮想的な健康増進のシナリオを2つ設定している。すなわち、危険因子保有率とSDIの3要素について年率 換算した変動率の85および15パーセンタイルを、 将来起こりうる変動と仮定した“良い(better)”シ ナリオと“悪い(worse)”シナリオである。 結果、世界の平均寿命は向上し、男女ともに 2040年までに4.4歳延伸すると予測された。日本、シンガポール、スペイン、スイスでは男女ともに85歳を超える。一方、中央アフリカ共和国、レソト、ソマリア、ジンバブエは依然65歳未満と予測され、世界の寿命格差は大きいままである。良い シナリオで最大7歳以上の平均寿命の向上が予測 される一方で、悪いシナリオでは現在比較で有意な変化は認められなかった。 2040年、非感染症が世界的 にYLLの大部分 (67.3%)を占めるが、サハラ以南アフリカをはじめ多くの低所得国においては、感染症、妊婦・新生児の疾患、栄養関連疾患が依然 YLLの大部分を占めると予測された。 世界的に高血圧、高血糖、高BMIなどの代謝系リスク、また喫煙や微小粒子状物質汚染のYLLへの寄与が、基準̶良いシナリオ間で差が大きかった。 つまりこれら危険因子によるYLL回避は健康増進に大きく寄与しうると解釈できる。一方、サハラ以南アフリカは例外で、安全ではない水・衛生、家庭内空気汚染、小児栄養失調など、貧困関連の危険因 子でシナリオ間の差が大きかった。 多くの国で死亡率の継続的な低下、平均寿命の向上が予測される一方で、仮想シナリオ間で大きな差が認められ、将来の展望は不確実であることも示唆された。世界の最貧層への開発援助を含め、継続的な技術革新と保健支出の増加が、すべての人が豊かで健康な生活を送る上で、引き続き極めて重要な要素である。 1. GBD 2016 Risk Factors Collaborators. Lancet. 2017;390(10100):1345-1422. 2. GBD 2016 Causes of Death Collaborators. Lancet. 2017;390(10100):1151- 1210.
12月の連休期間中の退院後の死亡と再入院:コホート研究。
12月の連休期間中の退院後の死亡と再入院:コホート研究。
Death and readmissions after hospital discharge during the December holiday period: cohort study BMJ 2018 Dec 10 ;363:k4481 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】12月の休暇期間に退院した患者は、他の時期に退院した患者よりも外来でのフォローアップが少なく、死亡や再入院の割合が高いかどうかを明らかにする。 【デザイン】集団ベースの後向きコホート研究。 【設定】カナダ、オンタリオ州の急性期病院、2002年4月1日から2016年1月31日まで。 【参加者】12月の2週間の休暇期間に緊急入院後に自宅退院した小児および成人217 305人と、11月下旬および1月の2つの対照期間に退院した小児および成人453 641人を比較した。 主要アウトカム指標]主要アウトカムは30日以内の死亡または再入院(救急部への受診または緊急再入院として定義)であった。副次的アウトカムは、死亡または再入院、および退院後7日以内と14日以内の医師による外来でのフォローアップであった。一般化推定方程式を用いた多変量ロジスティック回帰により,患者,入院,病院の特徴を調整した。 【結果】休暇期間中に退院した患者217 305(32.4%)と対照期間中に退院した453 641(67.6%)は,ベースラインの特徴や過去の医療利用がほぼ同じであった。休日期間に退院した患者は,退院後7日以内(36.3%v 47.8%,調整オッズ比0.61,95%信頼区間0.60~0.62)および14日以内(59.5%v 68.7%,0.65,0.64~0.66)において医師との経過観察を受けていない傾向が強かった。休暇期間中に退院した患者は、30日目の死亡または再入院のリスクも高かった(25.9% v 24.7%, 1.09, 1.07 to 1.10)。この相対的な増加は、7日目(13.2% v 11.7%, 1.16, 1.14~1.18) と14日目(18.6% v 17.0%, 1.14, 1.12~1.15 )でもみられた。患者10万人あたり,休日期間中の退院に起因する14日以内のフォローアップ予約の減少は2999件,死亡の超過は26件,入院の超過は188件,救急外来の超過は483件だった。 【結論】12月の休日期間中に退院した患者は,外来でのフォローアップが速やかに受けられず,死亡または30日以内の再入院リスクが高くなると考えられる。 第一人者の医師による解説 退院後の外来フォローアップの確実な実施が重要 山口 直人 済生会保健・医療・福祉総合研究所研究部門長 MMJ.August 2019;15(4) 本論文は、カナダ・オンタリオ州で2002年4 月~16年1月に急性期病院に緊急入院した患者の中で、クリスマスから新年までの年末休暇期間(2 週間)に退院した小児・成人患者217,305人(年末休暇中退院群)および、その前後の11月あるいは1月に退院した患者453,641人(対照期間中退 院群)を対象として、退院後の死亡・再入院リスクなどを比較した後ろ向きコホート研究の報告である。ただし、新生児、産科入院、緩和ケア入院、長期 入院(100日超)は除外し、退院後の行き先が介護 施設、リハビリテーション施設などの場合も除外した。統計解析ではロジスティック回帰分析を用いて、 患者、入院、病院の特性で補正している。 年末休暇中退院群において退院後30日以内に死亡・再入院した割合は25.9%で、対照期間中退院群の24.7%と比較して、リスクは1.09倍(95% 信頼区間[CI], 1.07~1.10)と有意に高く、退院後7日以内、14日以内の比較でも同様の傾向であった。また、退院後7日以内に医師による退院後フォローアップを受けた割合は、年末休暇中退院群では 36.3%で、対照期間中退院群の47.8%よりも有意に低く、退院後14日以内の比較でも同様の傾向 であった。 退院後30日以内の死亡・再入院リスクが年末休暇中退院群で高かったことは、この群が退院時点ですでに高リスクであった可能性を示唆するが、実際は逆に低リスクであったことが解析で示されている。したがって、退院後のフォローアップが十分 になされなかったことが死亡・再入院リスクが高くなった原因となっている可能性が考えられる。退院後に医師によるフォローアップを受けた割合が年末休暇中退院群で低かったことが原因となって、 退院後の死亡・再入院リスクを高めたことを示す直接的なエビデンスは、この研究では得られていないが、年末休暇中は医師を中心とした医療スタッフが手薄となることが背景となっていることは十分に考えられる。 また、年末休暇中に退院した患者 の側でも休暇中には医師の受診を控える傾向があった可能性も考えられる。いずれにしても、国全体が長期休暇中に退院させる場合には、退院後のフォローアップが十分になされるように配慮することが必要であるといえよう。わが国では2019年に新天皇の御即位に合わせて10連休という過去に例を見ない長期休暇が実現したが、このような場合に医療機関が考慮すべき事項として重要な示唆を与える研究といえる。
プライマリケアにおける高齢者の尿路感染症の抗生物質管理と血流感染症および全死因死亡率との関連:集団ベースのコホート研究
プライマリケアにおける高齢者の尿路感染症の抗生物質管理と血流感染症および全死因死亡率との関連:集団ベースのコホート研究
Antibiotic management of urinary tract infection in elderly patients in primary care and its association with bloodstream infections and all cause mortality: population based cohort study BMJ 2019 Feb 27 ;364:l525. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】プライマリケアにおける高齢患者の尿路感染症(UTI)に対する抗生物質治療と重度の有害転帰との関連を評価すること。 【デザイン】レトロスペクティブ集団ベースコホート研究。 【設定】Clinical Practice Research Datalink(2007-15)プライマリケア記録とイングランドの病院エピソード統計および死亡記録とをリンクさせる。 【参加者】2007年11月から2015年5月までに下部尿路結石の疑いまたは確認の診断を1つ以上受けて一般開業医を受診した65歳以上の成人157 264人。 【MAIN OUTCOME MEASURES】インデックスUTI診断後60日以内の血流感染、入院、全死因死亡率。 【結果】UTIエピソード312 896例(157 264ユニーク患者)のうち、7.2%(n=22 534)は抗生物質の処方記録がなく、6.2%(n=19 292)は抗生物質の処方の遅れを認めた。初回UTI後60日以内の血流感染症エピソードは1539件(0.5%)記録された。血流感染症の発生率は、抗生物質を処方されなかった患者(2.9%;n=647)、および初診時に抗生物質を処方された患者と比較して、抗生物質処方のために初診から7日以内に一般医を再訪した記録がある患者(2.2%<v>0.2%;P=0.001)で有意に高率であった。共変量で調整した後,患者は,即時抗生物質投与群と比較して,抗生物質投与延期群(調整オッズ比 7.12,95% 信頼区間 6.22~8.14) および抗生物質投与なし群(同 8.08,7.12~9.16) で血流感染症を経験する可能性が有意に高くなった.血流感染症の発生に対する必要数(NNH)は,即時抗生物質投与群と比較して,抗生物質無投与群(NNH=37)が遅延抗生物質投与群(NNH=51)よりも低い(リスクが大きい)ことが示された。入院率は,抗生物質無投与群(27.0%)および抗生物質投与延期群(26.8%)では,抗生物質即時投与群(14.8%)と比較して約2倍であった(P=0.001).全死因死亡のリスクは,60 日の追跡期間中のどの時点でも,抗生物質を延期した場合と抗生物質を処方しなかった場合では,即時処方の場合に比べて有意に高かった(調整ハザード比 1.16,95% 信頼区間 1.06~1.27,2.18,2.04~2.33, それぞれ).85歳以上の男性は、血流感染と60日間の全死因死亡の両方のリスクが特に高かった。 【結論】プライマリケアで尿路結石の診断を受けた高齢患者において、抗生物質投与なしと投与延期は、即時投与と比較して血流感染と全死因死亡の有意な増加と関連していた。イングランドにおけるEscherichia coli血流感染症の増加という背景から、高齢者におけるUTIに対する推奨ファーストライン抗生物質の早期投与開始が提唱される。 第一人者の医師による解説 プライマリケアでの尿路感染症 高齢患者には抗菌薬の即時投与を 東郷 容和 医療法人協和会協立病院泌尿器科 MMJ.August 2019;15(4) プライマリケアで尿路感染症と診断された高齢患者(65歳以上)に対して、抗菌薬遅延投与群と無 投与群では、その後の血流感染症の発生率が即時投与群と比較してそれぞれ約7倍と8倍になることが、今回のイングランドにおける大規模疫学調査で示された。 全世界において、薬剤耐性菌増加を抑止すべく、 抗菌剤の適正使用が叫ばれている中、英国内においても、同国のガイドラインや抗菌薬管理プログラムなどによる啓蒙活動が、2004~14年におけるプライマリケアでの高齢者の尿路感染症に対する広域抗菌薬処方の減少へつながったことが成果として示されている。一方で、グラム陰性菌の血流 感染症の発生率の上昇が報告され、2021年3月までに50%減少させる国家プロジェクトが打ちださ れた。 本研究は、2007年11月~15年5月の期間に、 英国のデータベースからプライマリケアにおいて下部尿路感染症と診断された高齢患者312,896 人を対象に、診断後60日以内の血流感染症の発生率、入院率、死亡率を調査した後ろ向きコホート研究である。 尿路感染症 の 診断後、血流感染症に至った頻度は0.5%であり、即時投与群が0.2%であったのに対して、遅延投与群および無投与群ではそれぞれ2.2%、2.9%であり、有意に上昇していた(P< 0.001)。入院患者の割合も、即時投与群が14.8% であるのに対し、遅延投与群および無投与群ではそれぞれ26.8%、27.0%と2倍高く、全死亡率においても、即時投与群の1.6%に対し、遅延投与群および無投与群ではそれぞれ2.8%、5.4%と有意に上昇していた(P<0.001)。 著者らは、高齢成人における無症候性細菌尿症の発生率の上昇(若年女性の5%未満に対し、65歳以 上の女性の20%超)もまた、尿路感染症のさらなる診断を困難とする一因と述べ、尿路感染症としての過剰診断や不要な治療について警鐘を鳴らしている一方で、イングランドで大腸菌血流感染症が増加している状況に鑑み、高齢者(特に85歳以上) における尿路感染症治療には推奨される第1選択 薬の早期開始が望まれると結論づけている。 高齢者における膀胱炎は若年女性と比較し、その治癒率は低く、再発率は高いとされる。そのため、抗菌薬治療前には尿培養検査を行うことを推奨したい。
食事性コレステロールまたは卵の摂取と心血管疾患の発症および死亡率との関連性。
食事性コレステロールまたは卵の摂取と心血管疾患の発症および死亡率との関連性。
Associations of Dietary Cholesterol or Egg Consumption With Incident Cardiovascular Disease and Mortality JAMA 2019 Mar 19 ;321 (11):1081 -1095. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】コレステロールはヒトの食事によく含まれる栄養素であり、卵は食事性コレステロールの主要な供給源である。食事性コレステロールまたは卵の摂取が心血管疾患(CVD)および死亡率と関連するかどうかは依然として議論の余地がある。 【目的】食事性コレステロールまたは卵の摂取とCVDおよび全死亡の発症との関連を明らかにする。 【 デザイン・設定・参加者】1985年3月25日から2016年8月31日までに収集したデータを用い、米国の前向きコホート6施設から個人参加データをプーリングした。自己申告の食事データは、標準化されたプロトコルを用いて調和させた。 【曝露】食事性コレステロール(mg/日)または卵消費量(個/日)。 【主要アウトカムと測定】人口動態、社会経済、行動要因を調整した、CVD発症(致死性および非致死性冠動脈心疾患、脳卒中、心臓不全、その他のCVD死の複合)および全死亡に関するフォローアップ全体にわたるハザード比(HR)と絶対リスク差(ARD)。 【結果】この解析には29 615名の参加者(ベースライン時の平均[SD]年齢,51.6[13.5]歳)が含まれ,うち13 299名(44.9%)が男性,9204名(31.1%)が黒人の参加者であった。追跡期間中央値17.5年(四分位範囲、13.0~21.7、最大31.3)、5400件のCVDイベント発生と6132件の全死因死亡があった。食事性コレステロールまたは卵の摂取とCVD発症および全死亡との関連は単調であった(非線形項のすべてのP値は0.19-0.83)。1日に消費される食事性コレステロールが300mg増えるごとに、CVD発症リスク(調整後HR、1.17[95%CI、1.09-1.26];調整後ARD、3.24%[95%CI、1.39%-5.08%])および全死亡率(調整後HR、1.18[95%CI、1.10-1.26];調整後ARD、4.43%[95%CI、2.51%-6.36%])は高くなると、有意の関連性を示した。1日あたりの卵消費量が半個増えるごとに、CVDの発症リスク(調整後HR、1.06[95%CI、1.03-1.10];調整後ARD、1.11%[95%CI、0.32%-1.89%])および全死亡(調整後HR、1.08[95%CI、1.04-1.11];調整後ARD、1.93%[95%CI、1.10%-2.76%])は高くなると有意に関連していた。卵の消費とCVD発症(調整後HR、0.99[95%CI、0.93-1.05];調整後ARD、-0.47%[95%CI、-1.83%~0.88%])および全死亡(調整後HR、1.03[95%CI、0.97~1.09];調整後ARD、0.71%[95%CI、-0.85%~2.28%])との関連については、いずれも有意差はなくなった。28%])は、食事性コレステロールの消費量を調整すると有意ではなくなった。 【結論と関連性】米国の成人において、食事性コレステロールまたは卵の消費量が多いことは、用量反応的にCVDおよび全死亡の発生リスクの高さと有意に関連することが示された。これらの結果は、食事ガイドラインの策定や更新の際に考慮されるべきものである。 第一人者の医師による解説 因果関係を結論できない観察研究 メンデルランダム化解析は未実施 香川 靖雄 女子栄養大学副学長・医化学教授 MMJ.August 2019;15(4) 従来は心血管疾患(CVD)予防の常識とされてきたコレステロールの摂取量上限値300mg/日を米国心臓病学会(ACC)が廃止し、「日本人の食事摂取基準2010年版」の上限値男性750mg/日、女 性600mg/日も同基準2015年版から廃止された。これは卵の摂取量が37.1g(コレステロール 156mg)と世界で最も多い日本で特に関心の深い課題である。 上限値廃止の理由の1つは日本人の大規模調査で卵の毎日摂取者に比べて週1個以下摂取者は有意に血清コレステロールが高く、冠動脈疾患のハザード比(HR)も有意ではないが28%も高かったからである(1)。しかし、高いコレステロー ル値を知った人が卵の摂取を控えたために起こった「因果の逆転」がありうる。また、食事性コレス テロール量よりも飽和脂肪から体内で合成されるコレステロール量の方がはるかに多く、卵1個には飽和脂肪が1.56mgと乳製品よりも少ない点も 上限量の廃止を支持した(2)。 しかし、今回紹介する研究では、コレステロール 摂取(300mg/日)と卵の摂取が有意にCVDと全死亡の増加と関連することを人口統計学的、社会経 済的、行動的要因で調整した解析で再確認した。参 加者29,615人(平均年齢51.6歳)の追跡期間(中央値17.5年)中に5,400件のCVDイベントおよび6,132件の全死亡が発生した。主要評価項目は CVDおよび全死亡のHRと絶対リスク差(ARD)である。 食事性コレステロール量または卵の消費量 の増加に伴い、CVDおよび全死亡は単調に増加した。コレステロール摂取(300mg/日)はCVD(HR, 1.17;95%CI, 1.09~1.26; ARD, 3.24%;1.39 ~5.08%)および全死亡(HR, 1.18;1.10~1.26; ARD, 4.43%;2.51~6.36%)のリスクと有意に関連していた。卵半個/日毎の摂取増加はCVD (HR, 1.06;95%CI, 1.03~1.10; ARD, 1.11%; 0.32~1.89%)および全死亡(HR, 1.08;1.04 ~1.11; ARD, 1.93%;1.10~2.76%)のリスク上昇と有意に関連していた。 CVDと全死亡のリスクの用量依存的な上昇に基づき、現在の食事ガイドラインの再考を求めている。 しかし、この結果は因果関係を結論できない観察研究による。また、因果関係を求めるためのコレステロールや卵の摂取量の無作為化対照試験はCVD や死亡の確認に長期を要するため実施困難である。 筆者は遺伝子検査を伴った観察研究で冠動脈疾患とLDLコレステロールの因果関係を確立したメンデルランダム化解析の結果(3)を信頼するが、コレステロールや卵の摂取量とCVDのメンデルランダム化解析はまだない。 1. Nakamura Y, et al. Br J Nutr. 2006;96(5):921-928. 2. Soliman GA. Nutrients. 2018;10(6). pii:E780. 3. Jansen H, et al. Eur Heart J. 2014;35(29):1917-1924.
トリグリセリドを低下させるLPLバリアントとLDL-Cを低下させるLDLRバリアントと冠状動脈性心臓病のリスクとの関連性
トリグリセリドを低下させるLPLバリアントとLDL-Cを低下させるLDLRバリアントと冠状動脈性心臓病のリスクとの関連性
Association of Triglyceride-Lowering LPL Variants and LDL-C-Lowering LDLR Variants With Risk of Coronary Heart Disease JAMA 2019 Jan 29 ;321 (4):364 -373. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】トリグリセリドとコレステロールは、いずれもアポリポ蛋白B(ApoB)含有リポ蛋白粒子によって血漿中に運ばれている。血漿中のトリグリセリド値を下げることが、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)値を下げることと同じ程度に心血管イベントのリスクを下げるかどうかは不明である。 【目的】リポタンパク質リパーゼ(LPL)遺伝子におけるトリグリセリド低下変異体およびLDL受容体遺伝子(LDLR)におけるLDL-C低下変異体とApoB単位変化当たりの心疾患リスクの関連性を比較することである。 【デザイン、設定および参加者】1948年から2017年に北米または欧州で実施された63件のコホート研究または症例対照研究に登録された参加者を対象に、LPL遺伝子のトリグリセリド低下変異体およびLDLR遺伝子のLDL-C低下変異体からなる遺伝子スコアと心血管イベントリスクの関連をそれぞれ評価するメンデルランダム化解析。 【曝露】LPLおよびLDLR遺伝子スコアに関連する血漿トリグリセリド、LDL-C、ApoBレベルの違い 【主要アウトカムおよび測定】冠動脈疾患(CHD)-冠動脈死、心筋梗塞、または冠動脈再灌流と定義-ApoB含有リポタンパク質濃度10mg/dL低下あたりのオッズ比(OR).LL-APO-DLは冠動脈疾患(CHD)リスクと定義される.APO-DBは冠動脈疾患(CHD)リスクと定義される. 【結果】91 129例のCHD症例を含む、合計654 783人の参加者が対象となった(平均年齢62.7歳、女性51.4%)。ApoB含有リポ蛋白のレベルが10mg/dL低くなるごとに、LPLスコアは69.9mg/dL(95%CI、68.1-71.6;P = 7.1×10-1363)低いトリグリセリドレベルと関連し、0.7mg/dL(95%CI、0.03-1.4; P = 0.04)高いLDL-C値を示した。一方、LDLRスコアは、14.2-mg/dL(95% CI, 13.6-14.8; P = 1.4 × 10-465)低いLDL-C値と1.9-mg/dL(95% CI, 0.1-3.9; P = 0.04)低い中性脂肪値と関連があった。関連する脂質レベルにはこれらの違いがあるものの、LPLおよびLDLRスコアは、ApoB含有リポ蛋白レベルが10mg/dL低くなるごとにCHDリスクが同様に低くなることと関連していた(それぞれ、OR, 0.771 [95% CI, 0.741-0.802], P = 3.9 × 10-38およびOR, 0.773 [95% CI, 0.747-0.801], P = 1.1 × 10-46)。多変量メンデリアンランダム化解析では、トリグリセリドおよびLDL-C値とCHDのリスクとの関連は、ApoBの差を調整すると無効となった(トリグリセリド。OR, 1.014 [95% CI, 0.965-1.065], P = 0.19; LDL-C。トリグリセリドを低下させるLPL変異体とLDL-Cを低下させるLDLR変異体は、ApoBの単位差あたりのCHDリスクが同様に低いことと関連していた。したがって、トリグリセリドとLDL-C値を下げることの臨床的利益は、ApoBの絶対的な変化に比例する可能性がある。 第一人者の医師による解説 広がる高 TG血症への治療選択肢 さらなるエビデンス期待 遠藤 康弘/池脇 克則(教授) 防衛医科大学校神経・抗加齢血管内科 MMJ.August 2019;15(4) 本論文は、9万人前後の冠動脈疾患(CHD)患者を含む約65万人の症例を対象に、トリグリセリド (TG)代謝に関わるリポ蛋白リパーゼ(LPL)およびLDL代謝に関わるLDL受容体(LDLR)の一塩基多型(SNP)から遺伝的スコアを計算し、メンデルランダム化解析を用いてCHD(心筋梗塞、血行再建術、心血管死)との関連を解析した報告である。 近年、脂質代謝の臨床研究においてゲノムワイド 関連解析(GWAS)といった遺伝学的手法が用いられるようになった。GWASは、SNPジェノタイピングに基づき、疾患に関わる遺伝的変異を調べる手法で、TGやLDL-C、HDL-C値に関わる遺伝子多型が多く報告されている(1)。 さらにGWASで示された遺伝子多型を従来の疫 学手法に組み合わせたメンデルランダム化解析が 国内外で用いられるようになった。遺伝子多型は、 メンデルの独立の法則によれば、環境の影響を受けずにランダムに配分される。そのため、ランダム化比較試験(RCT)におけるランダム化を遺伝子多型で代用し、CHDとの関連を調べることで、環境因子を考慮せずに対象遺伝子とCHDの関連が評価可能である。 本研究において、LPL遺伝的スコアでは、LDL-C 値は軽度上昇(+0.7mg/dL)を示すもTG値の大幅な低下(-69.9mg/dL)を認め、一方でLDLR 遺伝的スコアでは、TG値の軽度低下(-1.9mg/ dL)およびLDL-C値低下(-14.2mg/dL)を示した。 LPL遺伝的スコアによるTG値低下はLDLR遺伝的 スコアによるLDL-C低下と同程度のCHDのオッズ 比低下(LPL遺伝的スコア:0.771 vs LDLR遺伝 的スコア;0.773)を認め、TG値低下はLDL-C値低下と同様に心血管疾患発症のリスク低下に重要な因子であることが示唆された。 一方、TG低下療法 のRCTで は、エイコサペンタエン酸エチル(EPA)製剤を用いたJELIS試験 (2007年)で心血管疾患(CVD)予防効果を認めたが、それ以降のEPA、フィブラート系薬剤、徐放 ナイアシンを使ったRCTでは明らかな予防効果は 示されなかった中で、REDUCE-IT試験(2018年) で高用量EPA製剤による心血管疾患保護効果(1次、 2次予防)が報告された(2)。メンデルランダム化研究は症例数や交絡因子で結果が左右されるRCTの短所を補完できるメリットを有する。 近年、海外ではTG代謝に関わるAPOC3、 ANGPTL3に対する抗体薬も開発され臨床応用が期待される。日本でも2018年に高 TG血症に対 する新規薬剤として選択的PPARαモジュレーター (SPPARMα)ペマフィブラート(パルモディアⓇ) が処方可能となり、高 TG血症に対する治療選択肢 が広がりつつある。今後、TG低下療法のさらなるエビデンスが期待される。 1. Liu DJ, et al. Nat Genet. 2017;49(12):1758-1766. 2. Bhatt DL, et al. N Engl J Med. 2019;380(1):11-22.
進行性心不全患者における間葉系前駆細胞の心筋内注入と左室アシスト装置サポートからの一時的な離脱の成功。無作為化臨床試験。
進行性心不全患者における間葉系前駆細胞の心筋内注入と左室アシスト装置サポートからの一時的な離脱の成功。無作為化臨床試験。
Intramyocardial Injection of Mesenchymal Precursor Cells and Successful Temporary Weaning From Left Ventricular Assist Device Support in Patients With Advanced Heart Failure: A Randomized Clinical Trial JAMA 2019 Mar 26 ;321 (12):1176 -1186. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】左室補助循環装置(LVAD)療法は心筋機能を改善するが、摘出できるほど回復する患者は少なく、心臓の回復を増強する幹細胞に注目が集まっている。 【目的】LVAD移植中の間葉系前駆細胞(MPC)の心筋内注射の有効性と副作用を評価する。 デザイン、設定、参加者]北米19施設でLVAD移植中の進行心不全の患者を含む無作為化第2相臨床試験(2015年7月から2017年8月)。1年間のフォローアップは2018年8月に終了。 【介入】同種MPC1億5000万個または偽治療としての凍結保護培地を2:1の割合で心筋内注射(n=106 vs n=53)。 【主要アウトカムおよび評価】主要有効性エンドポイントは、ランダム化後6カ月以内にLVAD支持からの一時的ウィーン(3回の評価予定分)に成功する割合であった。このエンドポイントは、成功を示す事後確率80%という事前に定義された閾値を用いたベイズ分析で評価された。1年間の安全性の主要エンドポイントは、介入関連の有害事象(心筋炎、心筋破裂、新生物、過敏性反応、免疫感作)の発生率であった。副次的評価項目は6ヶ月後の再入院と有害事象、1年生存率とした。 【結果】159例(平均年齢56歳、女性11.3%)のうち155例(97.5%)が1年間のフォローアップを完了した。MPCが離脱成功の可能性を高める事後確率は69%であり、事前に定義された成功の閾値以下であった。6 ヵ月にわたる LVAD 支援からの一時的な離脱が成功した平均割合は,MPC 群で 61%,対照群で 58%であった(rate ratio [RR], 1.08; 95% CI, 0.83-1.41; P = 0.55).安全性の主要エンドポイントを経験した患者はいなかった。事前に指定された10個の副次的エンドポイントが報告されたが、9個は統計的有意差に達しなかった。1年死亡率は、MPC群と対照群の間で有意差は認められなかった(14.2% vs 15.1%;ハザード比[HR]、0.89;95%、CI、0.38-2.11;P = 0.80)。重篤な有害事象の発生率は群間で有意差はなく(100患者月当たり70.9 vs 78.7、差:-7.89、95%CI、-39.95~24.17、P = .63)、再入院率(100患者月当たり0.68 vs 0.75、差:-0.07、95%CI、-0.41~0.27、P = 0.68 )も同様であった。 【結論と関連性】進行した心不全患者において、間葉系前駆細胞の心筋内注射は、偽治療としての凍結保護培地の注射と比較して、6ヵ月後の左室補助装置サポートからの一時離脱の成功率を向上させることはなかった。この結果は、デバイスサポートからの一時的な離脱によって測定される心臓の回復を促進するための心筋内間葉系幹細胞の使用を支持しない。 【臨床試験登録】clinicaltrials. gov Identifier.NCT02362646:NCT02362646. 第一人者の医師による解説 再生医療での可能性持つ間葉系幹細胞 臨床試験の成果を期待 池田 宇一 地方独立行政法人 長野市民病院・病院長 MMJ.August 2019;15(4) 心筋細胞はほとんど増殖能を持たないため、急性心筋梗塞や拡張型心筋症で心筋細胞が壊死をきたすと心臓のポンプ機能は低下し、心不全に至ると生命予後は不良となる。近年、心筋細胞を再生して心不全を治療する細胞療法の研究が注目されている。間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells: MSC)や心筋幹細胞などの体性幹細胞を用いた臨床試験はすでに数多く進められており、胚性幹細胞(ES細胞)や人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用い た再生医療への期待も高まっている。 体性幹細胞の中で、再生医療の細胞ソースとして最も注目されている細胞はMSCである。MSC は1979年に見いだされ、1999年にヒト骨髄中にその存在が発見されてから、現在では多くの結合組織中に存在することが明らかにされている。 MSCは心筋細胞、内皮細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、神経細胞や肝細胞などへ分化可能である。 心不全の再生医療の臨床試験において広く使用されている細胞は骨髄由来のMSCである。MSC は冠動脈内、あるいは心筋内に注入される。MSC 治療の作用機序については不明な点も多い。投与部位におけるMSCの心筋細胞への分化はわずかであり、心機能改善にはMSCから分泌される種々の液性因子による血管新生作用、抗アポトーシス作用、 抗炎症作用、免疫制御作用などの関与が大きいと推測されている。 本研究では、北米19施設で左室補助人工心臓 (LVAD)植え込みを実施する重症心不全患者159 例を対象に、植え込み時にMSCを心筋内に注入し、 有効性および安全性を第 II相無作為化試験で評価している。6カ月時点でLVADからの一時的離脱成功率は、MSC群61%、対照群58%で有意差は示されなかった。1年死亡率、再入院率、重篤な有害事 象の発現率も2群間で有意差はなかった。LVAD植え込み時のMSC心筋内注入は支持されない結果となった。 これまでに、虚血性心筋症患者の冠動脈内や心筋内にMSCを注入することにより、左室の収縮能やリモデリング、運動耐容能が改善するという臨床試験の結果がいくつか報告されている。一方、否定的な報告も多く、欧州心臓病学会(ESC)のワーキンググループも、細胞療法への期待はまだ実現していないと結論付けている。 MSCは再生医療における大きな潜在的可能性を有する多能性幹細胞である。今後、さらなる臨床試験によるevidence-based medicine(EBM)の確立が望まれる。
米国心臓病学会/米国心臓協会および欧州心臓病学会のガイドラインを支持するエビデンスレベル、2008-2018年。
米国心臓病学会/米国心臓協会および欧州心臓病学会のガイドラインを支持するエビデンスレベル、2008-2018年。
Levels of Evidence Supporting American College of Cardiology/American Heart Association and European Society of Cardiology Guidelines, 2008-2018 JAMA 2019 Mar 19 ;321 (11):1069 -1080. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】臨床上の意思決定は,臨床転帰を評価する複数の無作為化対照試験(RCT)から得られたエビデンスに基づくことが理想的であるが,歴史的に,この種のエビデンスに完全に基づく臨床ガイドラインの推奨はほとんどない。 【目的】現在の主要循環器学会ガイドラインの推奨を支えるクラスと証拠レベル(LOE),およびLOEの経時変化を明らかにすることである。 【データ入手元】心臓血管学会のウェブサイトで確認された現在の米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)および欧州心臓病学会(ESC)の臨床ガイドライン文書(2008~2018)、および現在のガイドライン文書で参照されたこれらのガイドライン文書の直前の文書(1999~2014)。 研究選択]クラスおよびLOEによって整理された勧告を含む包括的なガイドライン文書。[データの抽出と統合]各ガイドライン文書について、推奨の数とLOEの分布(A[複数のRCTまたは単一の大規模RCTからのデータによって支持されている]、B[観察研究または単一のRCTからのデータによって支持されている]、C[専門家の意見のみによって支持されている])を決定した。 主要な成果と 【測定】複数のRCTからの証拠(LOE A)により支持されたガイドラインの推奨の比率を決定した。 【結果】現行のACC/AHAガイドライン26件(2930の勧告、中央値、ガイドラインあたり121の勧告[25~75%値、76~155])において、248の勧告(8.5%)がLOE A、1465(50.0%)がLOE B、1217(41.5%)がLOE Cとして分類されており、中央値はLOE A勧告の割合が7.9%となった(25-75%値、0.9%~15.2%)。現行のESCガイドライン25文書(3399の勧告,中央値,ガイドラインあたり130の勧告[25th-75thパーセンタイル,111-154])全体では,484の勧告(14.2%)がLOE A,1053(31.0%)がLOE B,1862(54.8%)がLOE Cと分類された. 【結論と関連性】主要な心臓血管学会のガイドラインにおける推奨事項のうち、複数のRCTまたは単一の大規模RCTからのエビデンスによって支持されているものはごくわずかであった。このパターンは、2008年から2018年にかけて有意義に改善されていないようである。 第一人者の医師による解説 RCTと相補的な実臨床データの知見 EBM発展に重要 山下 侑吾/木村 剛(教授) 京都大学大学院医学研究科循環器内科学 MMJ.August 2019;15(4) 医学・医療の進歩は、医学研究により推進されてきた。臨床医学の世界では、従来の経験に基づく医療から、科学的根拠に基づく医療(EBM)が、1980年代後半より提唱され、現在広く普及している。 EBMの目指すところは、最良の定量的データを基に、個々の患者での状況を考慮したうえで、客観的かつ効率的な診療を行うことと言える。これまでに循環器領域では、多数の臨床研究が実施されエビデンスが蓄積されてきた。異なる治療方法を比較 する際には、ランダム化比較試験(RCT)がゴールドスタンダードであった。 本論文では、2008~18年に、米国と欧州の循環器領域の主要学会(ACC/AHA、ESC)より発刊されたガイドラインの推奨事項の中で、そのエビデンスレベルの割合と経年的な推移が調査された。 同ガイドラインでは、個々の推奨事項を高い順にエビデンスレベル AからCに分類し、複数のRCT もしくは大規模な単一のRCTによる結果に基づいた推奨事項を、一番高いエビデンスレベル Aとし ている。 結果として、エビデンスレベル Aの推奨事項の割合は、8.5%(ACC/AHA)および14.2% (ESC)に過ぎず、その割合は経年的に大きな変化を認めなかったと報告している。循環器領域では、毎年数多くのRCTを含めた臨床研究が継続的に報告されている状況を考えると、本結果はやや意外な結果であったが、推奨事項のエビデンスレベル Cが減少し、Bが増加している傾向を見る限りは、 エビデンスが蓄積していることも示唆している。一方、より高いエビデンスレベルに裏打ちされた 推奨事項を増やすためには、RCTを含めた臨床研究がこれからも継続的に必要であることを示唆する報告であると考えられる。 今後も、異なる治療方法の比較においては、RCT がゴールドスタンダードであることに変わりはないと考えられるが、近年はRCTの限界も認識されつつある。EBMの目指すところである「個々の患者での状況を考慮したうえでの最良の診療」を日常臨床で実践するためには、RCTのみならず、実臨床での実態や問題点を明らかにするための「観察研究」 (リアルワールドデータ)からの知見も重要である。 これらの研究は、互いに相補的なものであると考えられ、EBMの発展のために今後もRCTを含めたさまざまな臨床研究が継続されることが期待される。 さらに、ガイドラインの推奨の多くが十分なエビデンスに基づかないことを考えると、ガイドラインは妄信すべきマニュアルではなく、推奨のエビデンスレベルと個々の患者の状況を考慮して患者にとってその時点で最良と考えられる治療法を決定するための重要な参考資料と捉えるべきであろう。
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