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入院中の成人のせん妄を予防するための抗精神病薬。系統的レビュー。
入院中の成人のせん妄を予防するための抗精神病薬。系統的レビュー。
Antipsychotics for Preventing Delirium in Hospitalized Adults: A Systematic Review Ann Intern Med 2019;171:474-484. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】せん妄は、基礎的な医学的問題によって引き起こされる、注意力と認知力の障害を特徴とする急性障害である。抗精神病薬はせん妄の予防に用いられるが,その有益性と有害性は不明である。 【目的】成人におけるせん妄予防のための抗精神病薬の有益性と有害性を評価する系統的レビューを行う。 【データソース】研究設定,発表言語,追跡期間による制限なしに,開始時から2019年7月までPubMed,Embase,CENTRAL,CINAHL,PsycINFOを使用。 【研究選択】抗精神病薬とプラセボまたは別の抗精神病薬を比較した無作為化対照試験(RCT),および比較群を有する前向き観察研究。 【データ抽出】1名の査読者がデータを抽出しエビデンスの強さを評定し,2名の査読者がデータを確認した。2名の査読者が独立してバイアスのリスクを評価した。 データの統合]合計14件のRCTが含まれた。せん妄予防に使用されるハロペリドールとプラセボの間には、せん妄の発生率または期間、入院期間(証拠の強さが高い[SOE])、死亡率に差はなかった。認知機能、せん妄の重症度(不十分なSOE)、不適切な継続、および鎮静(不十分なSOE)に対するハロペリドールの効果を判断するエビデンスはほとんど見いだせなかった。第二世代抗精神病薬が術後設定におけるせん妄発生率を低下させる可能性があるという証拠は限られている。抗精神病薬の短期使用が神経学的有害性と関連するというエビデンスはほとんどない。いくつかの試験では、有害となりうる心臓への影響が抗精神病薬の使用により頻繁に発生していた。 【Limitation】抗精神病薬の投与量、抗精神病薬の投与経路、転帰の評価、有害事象には大きな異質性があった。 【結論】現在のエビデンスは、せん妄の予防のためのハロペリドールや第2世代抗精神病薬のルーチン使用を支持しない。第二世代抗精神病薬が術後患者のせん妄の発生率を低下させる可能性があるという限られたエビデンスはあるが、さらなる研究が必要である。今後の試験では,標準化されたアウトカム指標を用いる必要がある.(プロスペロー:Crd42018109552). 第一人者の医師による解説 今後は第2世代抗精神病薬と非薬理学的介入との比較研究が必要 中村 暖(助教)/岩波 明(主任教授)昭和大学病院附属東病院精神神経科 MMJ.April 2020;16(2) せん妄は、短期間のうちに注意力と認知機能が障害される意識障害の一種で、症状に変動性がみられるのが特徴である。身体疾患や手術などが原因で発症することが多く、発症後に日常生活動作 (ADL)や認知機能の低下、死亡率の上昇を引き起こすことが報告されている。このため、せん妄による2次障害の発生率や死亡率を低下させるためには、 せん妄の治療に加えて発症の予防が非常に重要となる。 せん妄予防を目的とした薬物投与については、 抗精神病薬の使用が複数の研究で報告されているが(1)-(3)、有効性と有害性について統一的な見解は得られていない。そもそも臨床の現場では、症状のない段階での抗精神病薬の使用自体に対する抵抗感が根強いため、予防的投与の有効性に関しての検討は臨床的な観点からも非常に重要である。 本論文は、せん妄の発症予防を目的とした抗精神病薬の有用性と有害性に関する大規模な系統的レビューである。せん妄の発症予防効果に関して、ハ ロペリドールまたは第2世代抗精神病薬とプラセボ、あるいはハロペリドールと第2世代抗精神病薬を比較した14件のランダム化比較試験を解析した。各文献から得られたデータの解析に際しては、認知機能、入院期間、せん妄の重症度、鎮静作用、抗精神病薬の不適切な継続投与、せん妄の発症率、せん妄の持続期間、死亡率、心臓・神経系の障害について評価をした。 せん妄の発症率と持続期間、入院期間、死亡率について、ハロペリドールとプラセボの間で差はみられなかった。認知機能、せん妄の重症度、抗精神病薬の不適切な使用、鎮静作用に関しても、ハロペ リドールの有効性を示す結果は得られなかった。一方で術後の予防投与に限り、第2世代抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン)はプラセボと比較してせん妄の発症率を有意に低下させていた。神経系 の障害に関して差が認められなかった一方、心臓 の障害は抗精神病薬の使用によってより高い頻度で生じることが明らかになった。 結論として、成人の入院患者におけるせん妄の発症抑制を目的としたハロペリドールの予防投与は有用ではないことがわかった。術後せん妄の発症予防に関して第2世代抗精神病薬の有効性を支持する結果が得られたが、先行研究では非薬理学 的介入が術後せん妄の発症予防に有効であるとの報告もあるため、今後はこうした非薬理学的介入との比較研究が必要である。 1.Wang W et al. Crit Care Med. 2012;40(3):731-739. 2.Al-Aama T et al. Int J Geriatr Psychiatry. 2011;26(7):687-694. 3.Larsen KA et al. Psychosomatics. 2010;51(5):409-418
自然災害後の経済的弱者における社会サービスの改善と心的外傷後ストレス障害の負担:モデル化研究.
自然災害後の経済的弱者における社会サービスの改善と心的外傷後ストレス障害の負担:モデル化研究.
Improved social services and the burden of post-traumatic stress disorder among economically vulnerable people after a natural disaster: a modelling study Lancet Planet Health 2019 ;3: e93 –101 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】ハリケーンなどの自然災害は、公衆衛生や経済的な影響をもたらし、その直後よりもずっと長く続く。資源の喪失は、大規模な心的外傷イベント後の心的外傷後ストレス障害(PTSD)の中核的な推進力である。我々は、災害後の文脈における住宅および住宅関連財源の回復がPTSDからの回復に及ぼす効果を調べた。 【方法】我々は、有病率と持続性によって測定されるPTSD回復に対する異なる医療サービスアプローチの効果を検証するために、観察および実験データで経験化したエージェントベースモデルを構築した。心理的ファーストエイドに類似した社会サービスケースマネジメント(SSCM)アプローチを検証し、避難所ベースの社会サービス提供と、避難し所得を失った人々へのメンタルヘルス治療への連携を特徴とし、通常のケアのみ、SSCM付き通常のケア、ステップケアのみ、SSCM付きステップケアの治療効果を比較した。 【結果】大規模自然災害後に住居を失い、所得を失った人々に対して、住居を回復し、メンタルヘルスサービスへの連携を提供するSSCMアプローチは、1年目終了時に、SSCMを行わない状態に比べて1-56(95%CI 1-55-1-57)倍から5-73(5-04-6-91)倍の寛解PTSD症例をもたらし、2年目終了時には1-16(1-16-1-17)倍から2-28(2-25-2-32)倍の寛解症例をもたらすことが示された。 【解釈】自然災害の影響を受けた集団に経済的・住宅的資源を回復させることは、災害後の集団、特に資源喪失者の精神衛生負担を著しく減少させるであろう。 【資金】米国保健社会福祉省. 第一人者の医師による解説 災害後のPTSDの予防と回復 心理療法・精神療法だけでなく住居確保の支援が重要 岩井 圭司 兵庫教育大学大学院人間発達教育専攻教授 MMJ.April 2020;16(2) 人間は生きていくうえで常にさまざまな要求 (demanding)に対応しなければならない。資源維持(Conservation of Resources;COR)理論(1)によると、我々はふだん多様な資源を駆使してそれらに応じているが、そういった資源が減少ないし喪失すると要求に応えることができなくなり、ストレスが生じる。さしずめ自然災害の被災者における住居の喪失と収入の減少は、資源喪失の最たるものであろう。 本研究は、社会福祉的ケースマネジメント(social services care management;SSCM)が、米国のハリケーン災害被災者の精神健康に及ぼす効果を検討したものである。なお、ケースマネジメントとは、生活に困難さを抱える人々の支援にあたり、さまざまな資源を組み合わせ結びつけて提供することであり、ケアマネジメントやケースコーディネーションとほぼ同義である。ここでは、恒久的住居への帰住の援助と精神保健機関に直接接続することを目指して、SSCMが実施された。また、被災者の精神健康の指標としては、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発生率と持続期間が用いられた。 まず、ハリケーン・サンディ(2012年)によって住居をなくし減収を余儀なくされた被災者は、「通常ケア群」と「段階的ケア群」に分けられた。前者にはサイコロジカル・リカバリースキル(skills for psychological recovery;SPR)(2)が適用され、 後者はスクリーニングによってさらに非 PTSDと PTSDに分けられ、それぞれSPRと認知行動療法が施行された。 そこにSSCMを適用したところ、「通常ケア群」においても「段階的ケア群」においてもPTSDの発生率は低くなり、PTSDを発症したケースでも罹病期間が短くなることが明らかになった。SSCMを適用した場合のPTSD の寛解率は、しなかった場合に比べて1年後では1.56 ~ 5.73倍、2年後では1.16 ~ 2.28倍であった。 以上から、住居資源ないし経済的資源の回復は、自然災害の被災者、特に災害によって資源を喪失した者の精神健康上の負担を有意に軽減すると考えられた。 災害後の被災者に対する心のケアは、狭義の心 理療法・精神療法に限ることなく、住居確保などの経済的支援を織り込んでいくことが必要であり有効であると、本研究は実証したといえる。 1. Hobfoll SE. Am Psychol. 1989;44(3):513-524. 2. 兵庫県こころのケアセンター.http://www.j-hits.org/spr/
ハリケーン・マリア後のプエルトリコの青少年における災害への暴露と精神的健康。
ハリケーン・マリア後のプエルトリコの青少年における災害への暴露と精神的健康。
Disaster Exposure and Mental Health Among Puerto Rican Youths After Hurricane Maria JAMA Network Open 2019 ;2 (4):e192619 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】青少年の災害曝露とトラウマ関連症状の大きさを定量化することは,資金不足の環境における心理サービスの展開に不可欠である。2017年9月20日にプエルトリコに上陸したハリケーン・マリアは,大規模な破壊と前例のない死亡率をもたらした。 【目的】ハリケーン・マリア後のプエルトリコの若者の災害曝露の大きさとメンタルヘルスアウトカムを明らかにする。 【デザイン・設定・参加者】2018年2月1日から6月29日(ハリケーン・マリアの5~9ヶ月後)にプエルトリコのすべての学校の公立学校の生徒一人ひとりに学校を中心とした調査を実施した調査研究であった。参加資格のある生徒226 808名のうち,96 108名が調査を完了した。 【主要アウトカム・測定法】参加者は,スペイン語で実施された標準化自己報告尺度を用いて,ハリケーン関連ストレス因子への曝露,心的外傷後ストレス障害(PTSD),うつ症状について評価された。すべての結果変数について記述統計が作成され、PTSDまたはうつ病の臨床的に高い症状を報告する個人の頻度も作成された。これらの統計量の男女間の差もt検定で検討した。 【結果】プエルトリコの7つの教育地域すべてにおいて、3年生から12年生までの代表的な9618名の生徒が研究に参加した(回答率42.4%、女性50.3%)。ハリケーンの結果、83.9%の青少年が家屋の被害を受け、57.8%が友人や家族が島を離れ、45.7%が自分の家に被害を受け、32.3%が食料や水の不足を経験し、29.9%が生命の危険を感じ、16.7%がハリケーンの5~9ヶ月後も電気がない状態であることが分かりました。全体として,青少年(n = 6900)の 7.2%が臨床的に重大な PTSD の症状を報告した.臨床的に上昇した PTSD の症状を報告する頻度を性別に比較すると,有意差があり(t = 12.77; 差の 95% CI, 0.018-0.025; P < .001),女子(8.2%)が臨床カットオフスコアを超える頻度は,男子(6.1%)に比べて高かった.最後に,うつ病の男女間の差についても同様の解析を行ったところ,有意であった(t = 17.56;差の95%CI,0.31-0.39;P < 0.001)。女子では男子よりも高い平均(SD)スコア(2.72[3.14])を示し(2.37[2.93]),男子では女子よりも高い平均(SD)スコアを示していた。人口統計学的変数とリスク変数は,PTSDの症状の分散の約20%を占めた(r2 = 0.195; 95% CI, 0.190-0.200)。 【結論と関連性】調査結果は,ハリケーン・マリアがプエルトリコの若者を高いレベルの災害関連ストレス因子に曝し,若者が高いレベルのPTSDとうつ症状を報告したことを示すものである。結果は現在,プエルトリコ教育省によって,プエルトリコの青少年の精神衛生上の成果を改善することを目的とした,的を絞った持続可能なエビデンスに基づく実践に活用されている。 第一人者の医師による解説 日本での災害時の多国籍児童メンタルヘルス支援体制の構築検討に寄与 島津 恵子 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所行動医学研究部 MMJ.April 2020;16(2) 2017年9月にプ エ ルトリコ 南東部に上陸したハリケーンマリアの被害は死者推定2,975 ~ 4,645人を数え、米国史上未曽有の規模となった。家族や学校など子どもにとって重要な社会的支援 システムの長期的な崩壊・混乱は、社会的弱者である子どもの一層の脆弱化を招く(1)。先行研究では自然災害から1年以内に集中的な介入なしに子どもの約半数は適応し回復する一方で、3分の1にのぼる子どもでは心的外傷後ストレス(PTSD)、うつ病、 不安、薬物使用、自殺念慮、攻撃的な行動などが認められ(2)、米国本土の青少年サンプルではこれらの 症状はマイノリティー間でより顕著であることが示された(3)。 プエルトリコ青少年の被災後のメンタルヘルス ニーズに対処するためのエビデンスに基づくシステムの開発・実装の促進を目的とし、本研究はプエルトリコ教育省が主導するスクリーニングの一環として実施された。ハリケーンカトリーナ後に作成されたNational Child Traumatic Stress Network Hurricane Assessment and Referral Tool(NCTSN-HART)をもとにスペイン語に翻訳された自記式質問票を用い、被災5~9カ月後にプエルトリコの全公立学校生徒のうち3~12年生を対象に1,086校(対象226,808人)で調査が実施された。 その結果、83.9%が家屋損壊の目撃、57.8%が友人や家族の離島、45.7%が自宅の被害を報告、32.3%が食料・水の不足を経験し、 29.9%が自らの生命の危険を認識し、16.7%は被災5~9カ月後も停電の継続を経験していた。全体の7.2%が臨床的に重要なPTSD症状を報告し、その頻度は女子の方が男子よりも有意に高かった (8.2% 対 6.1%)。うつ病スコアの平均も女子の方が男子よりも有意に高かった(2.72 対 2.37)。 人口統計およびリスク変数はPTSD症状の分散の約20%を占めた。 本研究の限界として、スペイン語版質問票の妥当性の欠如、PTSD・うつ症状のみへのフォーカス、 被災前データの欠如が挙げられているが、倫理的に災害時の研究実施は非常に困難であること、青少年、その中でもマイノリティーのメンタルヘルスの研究データは希少であること、また模索的政策研究としての性質から質問票の内容を参加者の言語・ 文化的・社会的背景に適切に配慮したうえで調整していること、災害時メンタルヘルス介入でエビデンスの豊富なトラウマ・うつに焦点をあてたことは妥当であり評価に値する。災害大国の日本で増加する外国語を話す多国籍・多文化児童を対象とした体系的災害時メンタルヘルス支援体制の構築の検討は必須であり、今後実施が予定されているさらなる解析結果の発表が期待される。 1. Bonanno GA et al. Psychol Sci Public Interest. 2010;11(1):1-49. 2. La Greca AM et al. Child Youth Care Forum. 2013;42(4):351-369. 他 3. Perilla JL et al. J Soc Clin Psychol. 2002; 21(1):20-45.
福島市における東日本大震災および第一原子力発電所事故と出生率の関連性.
福島市における東日本大震災および第一原子力発電所事故と出生率の関連性.
Association of the Great East Japan Earthquake and the Daiichi Nuclear Disaster in Fukushima City, Japan, With Birth Rates JAMA Network Open 2019 ;2 (1):e187455 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】2011年3月11日、12日に福島で発生した東日本大震災とその後の福島第一原発事故と出生率の関連は、既存の文献では適切に検討されていない。 【目的】東日本大震災と福島第一原発事故の出生率に対する中期および長期の関連性を評価することである。 【デザイン、設定および参加者】コホート研究において、中断時系列分析を用いて、2011年3月1日から2017年12月31日までの福島市の住民の出生率の月次変化を、震災前の傾向に基づく震災なしの出生率の予測と比較して評価した。2007年1月1日から2017年12月31日までの福島市の出生率は、福島市役所の情報を用いて求めた。 【Exposure】東日本大震災と福島第一原子力発電所事故、出生率との関連性の5つの潜在モデルを通じて表現した:水準変化、水準と傾斜変化、時間水準変化、1または2の傾斜変化(複数)を伴う時間水準変化。 【主な結果・指標】出生率、出生数と総人口の月次データから算出 【結果】東日本大震災および福島第一原発事故前の平均出生率は10万人あたり69.8人/月、事故後の平均出生率は10万人あたり61.9人/月であった。東日本大震災・福島第一原発事故前の出生率と比較すると、福島市では震災後2年間は月別出生率が10%減少したと推定される(率比、0.90;95%CI、0.86-0.93)。その後、出生率のトレンドは震災前のトレンドとほぼ同じであった。震災前のトレンドは出生率の継続的な減少を示唆した(1年間の出生率比,0.98;95%CI,0.98-0.99).このギャップモデルは,他のモデルと比較して最適かつ簡略化されたものであった. 【結論と関連性】東日本大震災と福島第一原子力発電所事故の後、2年間出生率が有意に低下した。震災後3~7年の動向が震災前の動向と異なることを示す根拠は十分ではなかった。出生率の低下からの回復は、復興に向けた努力を示しているのかもしれない。東日本大震災や福島第一原子力発電所事故以前に見られた長期的な出生率の低下が継続していることから、行政レベルでの出生計画支援策の継続が検討されるべきと考えられる。 第一人者の医師による解説 2013年以降は事故前の将来推計値まで回復するも長期的な下落傾向は継続 小坂理子(助教)/梅﨑昌裕(教授) 東京大学大学院医学系研究科国際保健学専攻人類生態学分野 MMJ.April 2020;16(2) 本論文は、2011年3月に発生した東日本大震災とそれに続く福島第1原発事故以降の福島県福島市の出生率を、福島市の公表する人口動態統計を用いて解析したコホート研究の報告であり、出生率は 11年3月から2年間は平均で約10%低下したものの、2013年には震災・事故前に算出された将来 推計の水準まで回復していたことが明らかになった。 震災・事故によって、出生率が低下することはこれまでにも指摘されている。繰り返しメディアで流される衝撃的な映像をみることでカップルの性行動が抑制される可能性、震災・事故に伴う心理的ストレスが受精卵の着床確率または胎児死亡率に影響する可能性などが報告されている。 本研究では2007~17年の11年間を対象に出生率を解析した結果、07年1月から震災・事故までの平均出生率は人口10万人あたり毎月69.8人であったのに対し、震災・事故後から2013年2月までの2年間は59.5人まで低下したこと、2013 年3月には震災前の傾向から推計される水準まで上昇し、2013年3月~17年12月 の平均出生率は62.9人であった。解析では、複数の仮定(震災・ 事故後ベースライン値も傾向も変化する、一時的にベースライン値のみ変化する、ベースライン値の変化は一時的だが傾向の変化は長期的であるなど) がモデル化され比較検討された。加えて、季節性の調整の効果も検討された。最も当てはまりの良いモデルは「季節性を調整した上で、一時的にベースライン値のみが変化し、長期的傾向は変化しない」 というものであった。 著者も述べているように、この解析の潜在的な問題は、福島市の出生登録数が同市の実際の出生数とどのくらい一致しているかがわからないことである。よく知られているように、震災・事故後、放射線の被曝を恐れた人々、特に小さな子どもをもつ世帯やこれから子どもを育てようとする世帯が 福島県から県外へ居住地を移した。そのような世帯の中には住民票を福島市に置いたまま、他県で出産したものもあったはずで、そのような出生も、本研究で計算された出生率には含まれている。一方、 出生率を計算するための分母となる人口について も、震災後の人口移動の影響を大きく受けている。 今後、個別の調査によって市外移住者の人口学的属 性の解析、市外移住者と非移住者の出産行動の比較 などが可能になれば、震災・事故と出生率の関係に ついての理解がさらに進むと考えられる。
世界貿易センタービル災害後の消防士における長期的な心血管疾患リスク。
世界貿易センタービル災害後の消防士における長期的な心血管疾患リスク。
Long-term Cardiovascular Disease Risk Among Firefighters After the World Trade Center Disaster JAMA Network Open 2019 ;2 (9):e199775 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】2001年9月11日以降の世界貿易センタービル(WTC)曝露と長期的な心血管疾患(CVD)転帰との関連を検討した既報の研究では、様々な知見が報告されている。 【目的】ニューヨーク市消防局(FDNY)の消防士において、WTC曝露がCVDリスクの上昇と関連しているかどうかを評価すること。 デザイン・設定・参加者]このコホート研究では、FDNY男性消防士において2001年9月11日から2017年12月31日の間にWTC曝露とCVDリスクの関連について評価された。多変量Cox回帰分析を用いて、WTC曝露の2つの指標:WTC現場への到着時間およびWTC現場での勤務期間と関連したCVDリスクを推定した。データ解析は2018年5月1日から2019年3月8日まで実施した。 【主要評および測定法】主要CVDアウトカムは、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症、冠動脈手術または血管形成術、またはCVD死亡であった。二次アウトカム(全CVD)には,すべての一次アウトカムイベント,または以下のいずれかを含む:一過性脳虚血発作;狭心症治療薬の使用または介入なしの心臓カテーテル治療のいずれかとして定義される安定狭心症;心筋症;およびその他のCVD(大動脈瘤,末梢動脈血管介入,頸動脈外科手術)。 【結果】男性消防士9796人(2001年9月11日の平均[SD]年齢は40.3[7.4]歳、7210人[73.6%]が喫煙歴なし)において489件の主要アウトカムイベントが発生した。)CVDの年齢調整後の発症率は、WTCへの曝露が多い消防士ほど高かった。CVDの主要転帰の多変量調整ハザード比(HR)は、最も早く到着したグループで、遅く到着したグループと比較して1.44(95%CI、1.09-1.90)であった。同様に、WTC敷地内で6ヵ月以上働いた人と、それ以下の期間しか働かなかった人では、CVDイベントを発症する可能性が高かった(HR、1.30;95%CI、1.05-1.60)。高血圧(HR, 1.41; 95% CI, 1.10-1.80), 高コレステロール血症(HR, 1.56; 95% CI, 1.28-1.91), 糖尿病(HR, 1.99; 95% CI, 1.33-2.98), および喫煙(現在: HR, 2.13; 95% CI, 1.68-2.70; 前: HR, 1.55; 95% CI, 1.23-1.95 )などの確立したCVD危険因子が、多変量モデルでCVDとの関連性が顕著であった。結論と妥当性】本研究の結果は,より大きなWTC被曝と長期的なCVDリスクとの間に有意な関連があることを示唆するものであった。この知見は、災害の生存者の健康状態を長期にわたって監視することの重要性を補強するものと思われる。 第一人者の医師による解説 日本でも自衛隊、消防、警察など救援従事者の長期の健康管理を考えるべき 竹石 恭知 福島県立医科大学医学部循環器内科学講座主任教授 MMJ.April 2020;16(2) 本論文は、米国同時多発テロ発生時にニューヨー ク市の世界貿易センタービル(WTC)崩壊現場で活動した消防士を対象に、災害現場での活動が長期の心血管疾患(CVD)発症と関連するかどうかを調査したコホート研究の報告である。対象者は男性消防士9,796人で、2001年9月11日時点の平均年齢は40.3歳、90%以上が非ヒスパニック系の白人、 約74%は非喫煙者であった。評価対象は2017年 12月31日までに発症したCVDであった。主要評価項目は 心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症、冠動脈バイパス術または冠動脈インターベンションの施行、CVD死とされた。本論文ではWTC曝露量を急性期とそれ以降の2種類の指標で解析している。 急性期曝露との関連については、WTCに9月11日 の午前中に到着した群、同日の午後に到着した群、12日以降に到着した群に分け、CVD発症率を比較した。また、WTCは2002年7月24日に閉鎖されたが、急性期以降のWTC曝露を評価するため、 WTC崩壊現場の活動期間が6カ月以上の群と6カ月未満の群で比較がなされた。 その結果、2017年12月までの16年間にわたる追跡期間中に主要評価項目のイベントが489件発生した(心筋梗塞120、脳卒中61、冠動脈バイパス術71、冠動脈インターベンション 236、うっ血性心不全1、CVD死6)。CVD発症リスクは、9月 12日以降の到着群と比較し、11日午前到着群では 1.44倍、11日午後到着群では1.24倍高かった。 また、WTC現場活動期間が6カ月以上の群では、6 カ月未満の群と比較し、CVD発症リスクが1.30倍高かった。一過性脳虚血発作、安定狭心症、大動脈瘤、末梢動脈疾患といったすべてのCVDを含めた解析でも、早期に現場に到着したほど、また現場活動期間が長いほど、CVD発症リスクが高かった。従来から知られているCVD危険因子である高血圧、脂質 異常、糖尿病、喫煙は、この対象群でも、CVD発症と有意に関連していた。 WTC崩壊現場の災害活動により深く関わった消防士では長期のCVD発症リスクが上昇することが明らかになった。この結果から、災害後の長期にわたる健康管理が重要であることが示された。日本でも被災者の支援に加えて、自衛隊、消防、警察など救援に従事された方々の健康管理を今後、考えるべきである。
敗血症および重症急性呼吸不全患者におけるビタミンC輸液の臓器不全および炎症・血管傷害のバイオマーカーに対する効果。CITRIS-ALI Randomized Clinical Trial(CITRIS-ALI無作為化臨床試験).
敗血症および重症急性呼吸不全患者におけるビタミンC輸液の臓器不全および炎症・血管傷害のバイオマーカーに対する効果。CITRIS-ALI Randomized Clinical Trial(CITRIS-ALI無作為化臨床試験).
Effect of Vitamin C Infusion on Organ Failure and Biomarkers of Inflammation and Vascular Injury in Patients With Sepsis and Severe Acute Respiratory Failure: The CITRIS-ALI Randomized Clinical Trial JAMA 2019 Oct 1;322(13):1261-1270. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】ビタミンCの静脈内投与は、敗血症や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に伴う炎症と血管障害を抑制することが実験的に示唆されている。 【目的】敗血症およびARDS患者におけるビタミンC静脈内投与の臓器不全スコアおよび炎症と血管障害の生体マーカーに対する効果を明らかにすることである。 【デザイン・設定・参加者】CITRIS-ALI試験は、米国内の医療集中治療室7施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照多施設試験で、24時間以内に発症した敗血症およびARDSの患者(N=167)が登録された。試験実施期間は2014年9月から2017年11月、最終フォローアップは2018年1月。 【介入】患者をビタミンCの点滴静注(ブドウ糖5%水煮、N=84)またはプラセボ(ブドウ糖5%水煮のみ、N=83)に6時間おきに96時間無作為に割り付けました。 【主要評価項目】ベースラインから96時間後までのmodified Sequential Organ Failure Assessment score(範囲:0~20、スコアが高いほど機能障害が強い)により評価した臓器障害の変化、および0、48、96、168時間で測定した炎症(CRP値)と血管損傷(トロンボモデュリン値)の血漿バイオマーカーであった。 【結果】無作為化された167例(平均[SD]年齢:54.8歳[16.7],男性90例[54%])中,103例(62%)が60日目まで試験を完了した。主要評価項目であるベースラインから96時間後までの平均modified Sequential Organ Failure Assessment scoreの変化(ビタミンC群9.8から6.8[3点]、プラセボ群10.3から6.8[3.5点];差、-0.10;95%CI、-1.23から1.03;P = .86 )またはCRP値(54.1対46.1μg/ml;差、7.94。 【結論と関連性】敗血症とARDSの患者を対象としたこの予備的研究では、プラセボと比較したビタミンCの96時間点滴は、臓器機能障害のスコアまたは炎症と血管損傷のマーカーに有意な改善をもたらさなかった。敗血症とARDSの他の転帰に対するビタミンCの潜在的な役割を評価するために、さらなる研究が必要である。 【臨床試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier.NCT02106975:NCT02106975。 第一人者の医師による解説 全死亡率には有意な改善効果 今後の研究継続を期待 射場 敏明 順天堂大学大学院医学研究科救急・災害医学教授 MMJ.April 2020;16(2) セプシスでは以前からビタミン C欠乏がみられることが知られており、またビタミン Cは抗炎 症作用や血管内皮保護作用を有することが報告されている(1)。そこで著者らは、急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)合併セプシス患者に対するビタミン C静 脈投与の有用性をCITRIS-ALI試験で検討し、その結果を報告した。同試験は米国の7つの集中治療室で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。167人のARDS合併セプシス患者が登録され、介入群と対照群でそれぞれ6時間ごとに96 時間ビタミン C(50 mg/kg;n=84)もしくはプラセボ(n= 83)が静脈内投与された。主要評価項目として、治療開始から96時間までのSequential Organ Failure Assessment(SOFA)スコアの改善、168時間までの炎症マーカー(CRP)の変動、 および血管障害マーカー(可溶性トロンボモジュリン)の変化が設定された。 その結果、SOFAスコアの改善に関して両群間に有意差はみられなかった(ビタミンC群:9.8→6.8; プラセボ群:10.3→6.8;変化の差 , -0.10)。 さらにCRP値(54.1 対 46.1μ g/mL;差 , 7.94 μ g/mL)、可溶性トロンボモジュリン値(14.5 対 13.8 ng/mL;差 , 0.69 ng/mL)についても有意差はなかった。したがって、ARDS合併セプシス患者においてビタミン Cの96時間注入による臓器障害、炎症反応、血管障害の改善効果は確認できなかった、と結論された。しかし、副次評価項目の全死亡率について統計学的に有意な改善効果が認められていることから(ハザード比 , 0.55;P= 0.01)、セプシスに対するビタミン Cの効果についてはさらなる検討が必要と考えられる。 CITRIS-ALI試験のベースは単施設後ろ向き研究におけるビタミン Cの劇的な予後改善効果である (オッズ比 , 0.13)(2)。この先行研究では院内死亡の改善以外にも昇圧薬使用期間の短縮やSOFAの改善が示されており、期待値が高まっていた。 本試験でやや奇異に感じられたのは、主要評価項目をセプシスの研究で伝統的に設定されてきた全死亡率の改善ではなく、SOFAスコアの改善、 CRPや可溶性トロンボモジュリンの低下としたことである。これは全死亡率の改善に関わる要因は多岐にわたるため、その達成が困難であると予想されることから、より直接的な指標を選択した結果であろうと考えられる。しかし結果としてそのことが裏目に出てしまったことについては、ただただ臨床試験デザインの難しさを感じる。今回の研究では目標は達成されなかったが、ビタミン C は安価で重篤な副作用もないと予想されることから、今後も研究が継続されることが期待される。 1. Wilson JXe et al. Subcell Biochem. 2012;56:67-83. 2. Marik PE et al. Chest. 2017;151(6):1229-1238. ビタミンC静注は急性呼吸窮迫症候群  合併セプシスの臓器障害を改善せず
高糖度スナックの20%値上げが英国における肥満の有病率に与える潜在的影響:モデル化研究。
高糖度スナックの20%値上げが英国における肥満の有病率に与える潜在的影響:モデル化研究。
Potential impact on prevalence of obesity in the UK of a 20% price increase in high sugar snacks: modelling study BMJ 2019 ;366 :l4786 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】高糖度スナックの20%値上げが肥満度指数(BMI)と肥満の有病率に与える潜在的影響を推定する。 【デザイン】モデル化研究。 【対象】英国の一般成人人口。 【参加者】英国のKantar FMCG(fast moving consumer goods)パネルから製品レベルの家庭支出に関するデータを有する324世帯、2012年1月から2013年12月まで。データを用いて、高糖度スナックの20%値上げに伴うエネルギー(kcal、1kcal=4.18kJ=0.00418MJ)購入量の変化を推定した。National Diet and Nutrition Survey(2012~16年)の第5~8波の成人2544人のデータを用いて、BMIと肥満の有病率の変化を推定した。 【主要アウトカム指標】高糖質スナックの3カテゴリー(菓子類(チョコレート含む)、ビスケット、ケーキ)の20%の値上げが、1人当たりの家庭用エネルギー購入に及ぼす影響について。値上げによる健康アウトカムは、体重、BMI(過体重ではない(BMI<25)、過体重(BMI≧25および<30)、肥満(BMI≧30))、および肥満の有病率の変化として測定された。結果は、世帯収入とBMIで層別化した。 【結果】収入グループを合わせた場合、高糖質スナックの20%価格上昇に対するエネルギー消費の平均減少量は8.9×103 kcal(95%信頼区間の-13.1×103~-4.2×103 kcal)と推算された。静的減量モデルを用いると,BMIはすべてのカテゴリーと所得グループにわたって平均0.53(95%信頼区間-1.01~-0.06)減少すると推定された.この変化により,1年後の英国における肥満の有病率は2.7%ポイント(95%信頼区間-3.7~-1.7%ポイント)減少する可能性がある.高糖度スナックの20%値上げがエネルギー購入に与える影響は、肥満と分類される低所得世帯で最も大きく、太り過ぎではないと分類される高所得世帯で最も小さかった。 【結論】高糖度スナックを20%値上げすると、エネルギー摂取、BMI、肥満の有病率を減少させることができた。この知見は、英国の文脈におけるものであり、砂糖入り飲料の同様の値上げについてモデル化されたものの2倍であった。 第一人者の医師による解説 肥満対策としての砂糖入り菓子への課税 選択肢として浮上 久保田 康彦 大阪がん循環器病予防センター/磯 博康 大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学 MMJ.February 2020;16(1) 砂糖の多い菓子を20%値上げすることで、値上げ翌年の肥満者の割合が2.7%低下する可能性が、 今回報告された英国のモデル研究で示された。 この40年間で世界の肥満者の割合は3倍にも上昇し(1)、世界中で肥満対策が進められている。砂糖は肥満の最も重要な危険因子の1つであり、肥満対策の1つとして、砂糖の主な摂取源と考えられる 清涼飲料水に対する課税がメキシコ、ハンガリー、 フィンランドなどで導入されてきた。その結果、清涼飲料水の購入量が減少し、世界保健機関(WHO) も砂糖入り清涼飲料水に対する課税を推奨してい る。しかしながら、英国では清涼飲料水よりも菓子の方が砂糖の摂取源として多いため、砂糖入り菓子の値上げがどの程度肥満解消につながるかは、 同国内の今後の肥満対策案を立てるためにも重要な研究となる。   本研究では、UK Kantar社(英国のマーケティン グ企業)が所有する商品ごとの家計支出や摂取エ ネルギー量などに関するデータ(対象:36,324世帯、期間:2012年1月~ 13年12月)と国民栄養 調査データ(対象:2,544人、期間:2012年~16年) を用いて行われた。前者を用いて需要の価格弾力 性(PED)を計算し、消費エネルギー変化を推定した。 さらに後者を用いて消費エネルギー変化に伴う体格指数(BMI)の変化を推定した。 砂糖入り菓子の価格を20%上げることで、平均で年間8,900kcal分の摂取エネルギーが減少すると推定された。BMIはそれに伴い0.53 kg/m2 低下すると推定された。このBMI低下は、英国における肥満者が2.7%減少することに相当する。価格上昇による摂取エネルギー減少度が最も大きかったグループは肥満かつ低収入群で、最も小さかったグループは非肥満かつ高収入群であった。砂糖入り飲料水に関しても同様の検討を行ったが、20% 価格上昇の効果は砂糖入り菓子の半分であった。 本研究の結果は肥満対策として砂糖入り菓子に対する増税の根拠となりうる。砂糖入り菓子に対 する増税は、食事に関する健康格差是正に貢献する可能性があり、政策評価に関するさらなる研究が望まれる。 1. World Health Organization. Obesity and Overweight URL:https://bit.ly/2ZYPfmo
未熟児網膜症を有する超低出生体重児の治療に対するラニビズマブ対レーザー治療(RAINBOW):非盲検ランダム化比較試験。
未熟児網膜症を有する超低出生体重児の治療に対するラニビズマブ対レーザー治療(RAINBOW):非盲検ランダム化比較試験。
Ranibizumab versus laser therapy for the treatment of very low birthweight infants with retinopathy of prematurity (RAINBOW): an open-label randomised controlled trial Lancet 2019 ;394 (10208 ):1551 -1559 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】未熟児網膜症(ROP)治療における抗血管内皮増殖因子製剤の使用は世界的に増加しているが、その眼に対する効果、適切な薬剤と用量、再投与の必要性、長期の全身作用の可能性に関するデータはほとんどない。ROPの治療における硝子体内ラニビズマブの有効性と安全性をレーザー治療と比較して評価した 【方法】この無作為化、非盲検、優越性多施設、3群並行群間試験は26カ国の87新生児センターと眼科センターで行われた。網膜症の治療基準を満たした出生体重1500g未満の乳児をスクリーニングし、ラニビズマブ0-2mgまたはラニビズマブ0-1mgの両側静脈内単回投与、またはレーザー治療を受けるよう平等に(1:1:1)患者を無作為に割り付けました。コンピュータ対話型応答技術により,疾患領域と地理的地域によって層別化された.主要評価項目は,24 週間以内に活動性網膜症,好ましくない構造的転帰,または別の治療手段を必要としない生存率とした(レーザー療法に対するラニビズマブ 0-2 mg の優位性は両側 α=0-05 であった).解析は intention to treat で行った。本試験はClinicalTrials. gov、NCT02375971に登録されています。 【解釈】2015年12月31日から2017年6月29日の間に、225名の参加者(ラニビズマブ0-2mg n=74、ラニビズマブ0-1mg n=77、レーザー療法 n=74)を無作為に割り付けました。治療前に7名が離脱し(それぞれn=1、n=1、n=5)、各群4名の死亡を含む17名が24週までのフォローアップを完了しなかった。214人の乳児が主要アウトカムについて評価された(それぞれn=70, n=76, n=68)。治療成功は,ラニビズマブ 0-2 mg 投与群では 70 例中 56 例(80%)であったのに対し,ラニビズマブ 0-1 mg 投与群では 76 例中 57 例(75%),レーザー治療後では 68 例中 45 例(66%)で発生した.階層的検定戦略により、レーザー治療と比較して、ラニビズマブ0-2 mg投与後の治療成功のオッズ比(OR)は2-19(95% Cl 0-99-4-82、p=0-051)、ラニビズマブ0-1 mg投与後は1-57(95% Cl 0-76-3-26)、0-1 mgと比較して、ラニビズマブ 0-2 mgでは1-35(95% Cl 0-61-2-98)であった。ラニビズマブ0-2 mg投与群では構造的に好ましくない転帰をたどった乳児が1人いたが,ラニビズマブ0-1 mg投与群では5人,レーザー療法では7人であった.死亡、重篤および非重篤な全身性有害事象、および眼の有害事象は3群間で均等に分布した。 ROPの治療において、ラニビズマブ0-2mgはレーザー治療より優れており、レーザー治療より眼の有害事象が少なく、24週間の安全プロファイルが許容できるかもしれない。 第一人者の医師による解説 適切な適応の検討が必要だが 未熟児網膜症に新たな治療選択肢 東 範行 国立成育医療研究センター眼科診療部長・視覚科学研究室長 MMJ.February 2020;16(1) 未熟児網膜症は失明につながる疾患で、日本における発症数は年間およそ4,300人と推定されている。治療としては、これまでに網膜凝固(冷凍凝固、光凝固 )、硝子体手術、抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法が行われてきた。本論文で報告されたRAINBOW試験は、未熟児網膜症に対する抗 VEGF抗体薬ラニビズマブ(RBZ)硝子体内注射の有効性と安全性をレーザー光凝固療法との比較で評価した初めての国際共同治験である。RBZはすでに成人における加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫、 網膜静脈変性など眼底の病的血管新生疾患に使用されている。 対象は出生体重1,500g未満の両眼性の治療を要する未熟児網膜症で、225人が登録された。参加国は26カ国で登録数は日本が最多であった。患者はRBZ 0.2mg(成人用量の40%)群、RBZ 0.1mg 群、またはレーザー光凝固群にランダム化され、初回治療が両眼同時に行われた。初回治療後に網膜症が悪化した場合は、治療後28日以降であれば同じ治療の追加が各眼で2回まで許されるが、28日未満であればレスキューとして別の治療が行われた。 主要評価項目は、治療の成功であり、治療開始24 週後 , 両眼とも活動性の未熟児網膜症がなく、網膜の牽引や剥離など不良な形態学的転帰もないことと定義された。各群ともほぼ90%以上の患者で試験が完了した。 結果は、治療成功率がRBZ 0.2mg群で80%、 RBZ 0.1mg群で75%、レーザー群で66%であったが、有意差はなかった。しかしRBZ 0.2mg群 で治療後20週に脱落した1人の結果を加えると、 RBZ 0.2mg群とレーザー群の間に有意差が認められた。0.1 mg群では有意差がなく、0.2mgの使用が推奨された。治療成功率において、患者の性、人種、年齢(出生週数、治療週数)、未熟児網膜症の病期分布による差はなかった。 眼合併症は結膜出血、網膜出血などで、成人の硝 子体注射でみられるものと差はなく、いずれも軽微であった。全身合併症は、未熟児特有の全身の問 題が中心で、治療によって惹起されたと思われる ものはなかった。VEGFは発生や成長に関連するため、眼内投与のRBZが血中に回って全身性に影響することが危惧されたが、RBZ投与直後以降の血中 VEGF値に低下はみられなかった。 本試験では、その後5年間にわたって眼底の変化や視力、全身への影響が追跡されるが、今回の結果を踏まえて、日本でも未熟児網膜症におけるRBZ の使用が最近承認された。RBZに関しては血管増 殖組織の収縮や網膜症の再燃などの問題も報告されており、適切な適応についてはさらなる検討を要するが、未熟児網膜症は新たな治療選択肢を得たことになる。
慢性腎臓病における経口抗凝固剤治療の有益性と有害性。A Systematic Review and Meta-analysis.
慢性腎臓病における経口抗凝固剤治療の有益性と有害性。A Systematic Review and Meta-analysis.
Benefits and Harms of Oral Anticoagulant Therapy in Chronic Kidney Disease: A Systematic Review and Meta-analysis Ann Intern Med 2019 ;171 (3 ):181 -189 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】慢性腎臓病(CKD)における経口抗凝固療法の効果は不明である。 【目的】透析依存性の末期腎臓病(ESKD)を含むCKDステージ3~5の成人におけるビタミンK拮抗薬(VKA)と非ビタミンK経口抗凝固薬(NOAC)の有益性と有害性を評価する。[データ源]MEDLINE,EMBASE,Cochraneデータベースの英文検索(開始から2019年2月まで),レビュー書誌,ClinicalTrials. gov(2019年2月25日)。 【研究選択】CKD患者の任意の適応でVKAまたはNOACを評価した無作為化対照試験で,有効性または出血のアウトカムを報告したもの。 【データ抽出】2人の著者が独立してデータを抽出し,バイアスのリスクを評価し,エビデンスの確実性を評価した。 【データ合成】心房細動(AF)(11試験)、静脈血栓塞栓症(VTE)(11試験)、血栓予防(6試験)、透析アクセス血栓症の予防(8試験)、心房細動以外の心血管疾患(9試験)のために抗凝固療法を受けた34,082人を対象とした45試験を対象とした。ESKD患者を対象とした8試験を除くすべての試験で、クレアチニンクリアランスが20 mL/min未満または推定糸球体濾過量が15 mL/min/1.73 m2未満の被験者を除外した。心房細動では、VKAと比較して、NOACは脳卒中または全身性塞栓症のリスクを低減し(リスク比、0.79[95%CI、0.66~0.93];高確度エビデンス)、出血性脳卒中のリスクを低減した(RR、0.48[CI、0.30~0.76];中確度エビデンス)。VKAと比較して、VTEの再発またはVTE関連死に対するNOACの効果は不確かであった(RR, 0.72 [CI, 0.44 to 1.17]; 確実性の低いエビデンス)。すべての試験を合わせると、NOACはVKAと比較して大出血リスクを減少させるようであった(RR, 0.75 [CI, 0.56 to 1.01]; 確信度の低いエビデンス)。 【Limitation】進行したCKDまたはESKDに関するエビデンスは乏しい;大規模試験のサブグループからのデータがほとんどである。 【結論】早期CKDにおいて、NOACはVKAよりも優れたベネフィット・リスクプロファイルを有していた。進行したCKDまたはESKDについては,VKAまたはNOACの有益性または有害性を確立するには十分な証拠がなかった。[主たる資金源]なし。(prospero: crd42017079709)。 第一人者の医師による解説 進行期~末期腎不全ではエビデンス不足 田中 哲洋 東京大学医学部附属病院腎臓・内分泌内科准教授 MMJ.February 2020;16(1) 慢性腎臓病(CKD)では静脈血栓塞栓症(VTE)や 心房細動(AF)のリスクが正常腎機能者よりも高い。 AFを合併すると脳梗塞や全身性塞栓症、うっ血性 心不全、心筋梗塞、死亡のリスクが高まり、VTE合 併も死亡リスクを上昇させる。ガイドラインでは 非弁膜症性 AF患者に対する脳梗塞予防、大手術後 の 患者 や 急性疾患入院患者 のVTE予防、VTE再発 予防として抗凝固療法を推奨している。しかし、AF を合併する進行期 CKDや末期腎不全(ESKD)患者では、腎機能正常者よりも経口抗凝固薬の処方が少 なく、その理由として出血リスクの上昇、有用性が 明確でないこと、ワルファリン関連のカルシフィラ キシスや腎症などが挙げられる。実際、抗凝固薬の臨床試験では全体の約90%でCKD患者は除外されていた。 昨今、腎機能正常者を対象に非ビタミン K拮抗 経口抗凝固薬(NOAC)の有効性と安全性の知見が 蓄積されつつある。そこで本論文では、CKDステー ジ 3 ~ 5の 患者 に お け る 経口抗凝固療法 のリス ク・ベネフィットが検討された。ビタミン K拮抗薬 (VKA)およびNOACを用いた45試験からデータ を抽出した。 クレアチニンクリアランス 20 mL/ 分未満またはeGFR 15ml/分 /1.73m2未満の患者を除外した早期 CKD患者群において、AFに対する抗凝固療法としてNOACはVKAと比較し脳梗塞 や全身性塞栓症のリスクを低下させ、出血性梗塞のリスクも低下させた。VTEに対する抗凝固療法では、NOACのVKAに対する優位性は明らかでなかった。また、NOAC̶プラセボ間にリスクに関する差はなかった。 すべての試験を統合すると、NOACは VKAよりも大出血のリスクを低下させる傾向を示した。ESKD患者を含めた試験は8試験のみで、多くはワルファリンによる透析アクセス血栓症予防 を評価していた。ワルファリンは透析アクセス血 栓症やカテーテル機能不全のリスクを低下させた が、出血性合併症への影響は未知であった。 経口抗凝固療法の治療利益は、どの程度の腎機能障害までリスクを上回るのであろうか? 観察研究において、AF合併 ESKD患者ではワルファリン使用によって塞栓性脳梗塞のリスクは低下せず、出血性脳梗塞のリスクは2倍上昇していた。NOAC はVKAに比べ、腎機能正常者や早期 CKD患者の出 血性脳梗塞リスクを低下させることを考えると、 ESKD患者にも潜在的な利益があるようである。 し かし、最近報告 さ れ たAF合併 ESKD患者 の 後ろ向きコホート研究をみる限り、NOACやVKAの 間に脳梗塞や全身性塞栓症のリスクに差はない。 今後見込 ま れ るAF合併 ESKD患者 の 試験、す な わ ちRENAL-AF試験(NCT02942407)お よ び AXADIA試験(NCT02933697)によって有効性 と安全性の評価がなされるであろう。
心臓手術を受けた患者における尿中dickkopf-3、急性腎障害、およびその後の腎機能喪失の関連性:観察的コホート研究
心臓手術を受けた患者における尿中dickkopf-3、急性腎障害、およびその後の腎機能喪失の関連性:観察的コホート研究
Association between urinary dickkopf-3, acute kidney injury, and subsequent loss of kidney function in patients undergoing cardiac surgery: an observational cohort study Lancet 2019 ;394 (10197):488 -496 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】心臓手術は、術後の急性腎障害(AKI)とその後の腎機能低下の高いリスクと関連している。我々は、AKIとその後の腎機能低下のリスクのある患者の術前識別のための腎尿細管ストレスマーカーである尿中dickkopf-3(DKK3)の臨床的有用性を検討した。 【方法】この観察的コホート研究では、派生コホートの心臓手術を受けた患者と検証コホートの心臓手術を受けた患者(RenalRIP試験)を対象とした。本研究は,ザールランド大学医療センター(ドイツ・ホンブルグ,派生コホート)で待機的心臓手術を受けた連続患者と,前向きRenalRIP多施設試験(検証コホート)に登録された待機的心臓手術を受けた患者(Cleveland Clinical Foundationスコア6以上に基づいて選択),および遠隔虚血性前処置または偽手術にランダムに割り付けられた患者で構成されている。術前のDKK3とクレアチニンの尿中濃度の比(DKK3:クレアチニン)と、Kidney Disease Improving Global Outcomes基準に従って定義された術後AKI、および推定糸球体濾過量によって決定されるその後の腎機能低下との関連性を評価した。 【結果】派生コホートの733例において、クレアチニンに対するDKK3の尿中濃度が471pg/mgより高いことは、ベースラインの腎機能とは無関係に、AKIの有意なリスク上昇と関連していた(オッズ比[OR]1-65、95%CI 1-10-2-47、p=0-015)。臨床検査値や他の検査値と比較して、尿中DKK3:クレアチニン濃度はAKI予測を有意に改善した(net reclassification improvement 0-32, 95% CI 0-23-0-42, p<0-0001)。尿中DKK3:クレアチニン濃度の高値は、退院時および中央値820日(IQR733~910)の追跡調査後の腎機能の有意な低下と独立して関連していた。RenalRIP試験において、術前の尿中DKK3:471pg/mgより高いクレアチニン濃度は、471pg/mg以下のDKK3と比較して、90日後のAKI(OR 1-94, 95% CI 1-08-3-47, p=0-026)、持続性腎機能障害(OR 6-67, 1-67-26-61, p=0-0072 )、透析依存(OR 13-57, 1-50-122-77, p=0-020)に対するリスクが有意に高くなることと関連しました。471pg/mgより高い尿中DKK3:クレアチニン濃度は、偽手術を受けた患者のみAKI(OR 2-79, 95% CI 1-45-5-37)および持続的腎機能障害(OR 3-82, 1-32-11-05)の有意に高いリスクと関連しており、遠隔虚血性前処理(AKI OR 1-35, 0-76-2-39 and persistent renal dysfunction OR 1-05, 0-12-9-45)には関連していないことが明らかになった。 【解釈】術前の尿中DKK3は、術後AKIとその後の腎機能低下の独立した予測因子である。尿中DKK3は予防的治療戦略が有効な患者を特定するのに役立つかもしれない。 第一人者の医師による解説 ヨーロッパ系人種対象の研究だが 尿中 DKK3はAKI予防に有用なツール 新田 孝作 東京女子医科大学腎臓内科教授 MMJ.February 2020;16(1) 心臓手術後の急性腎障害(AKI)発症率は30%弱と報告されている(1)。近年、心臓手術患者の高齢化と併存疾患割合の上昇に伴い、AKI発症率も上昇しつつある。一部の患者では、AKI後も腎機能の低下が認められ、AKIから慢性腎臓病(CKD)への移行 (AKI-CKD transition)として知られている。 今回報告されたドイツの観察コホート研究では、 ストレス下の腎尿細管細胞で発現されるWnt/β - カテニンシグナル調節糖蛋白 dickkopf-3(DKK3) に 着目し、心臓手術患者 に お け るAKI発症 とAKI 後の腎機能低下の予測因子として尿中 DKK3を検討した。対象は導出コホート 733人、検証コホー ト 216人(RenalRIP試験参加者)で、導出コホー トでは待機的心臓手術を受けた患者を退院後に中 央値820日間追跡 した。 そ の 結果、AKIは 導出 コ ホートの患者733人中193人(26%)に発症した。術前の尿中 DKK3高値は術後 AKI発症と有意に関連していた。この関連は、登録時の推算糸球 体濾過量(eGFR)などの交絡因子で補正後も維持 され、機械学習アプローチにより裏付けられた。術前の尿中 DKK3値が471pg/mg Cr超の患者では、471pg/mg Cr以下 の 患者 よりもAKI発症リ スクが有意に高かった。完全補正後のモデルでは、 登録時 のeGFR値 が 正常(90mL/分 /1.73m2 超)または低値(90mL/分 /1.73m2以下)の患 者 に お い て、尿中 DKK3高値 はAKI発症 リ ス ク 上昇と関連していた。 また、術前の尿中 DKK3値 が471pg/mg Cr以下 の 患者 に お け る 退院時 の eGFR値 は76.6mL/分 /1.73m2で あ っ た。対 照的 に、術前 の 尿中 DKK3値 が471pg/mg Cr 超 の 患者 で は 補正後 のeGFRが 有意 に 低 かった (72.3mL/分 /1.73m2)。中央値820日 の 追跡 後、登録時の尿中 DKK3値が471pg/mg Cr以下 の患者では、eGFRは67.0mL/分 /1.73m2であったが、尿中 DKK3値が471pg/mg Cr超の患者では、eGFRは63.1mL/分 /1.73m2であった。術前 の尿中 DKK3値が高いと、AKI後の中等度・重度の eGFR低下およびCKDに進行するリスクが高まっていた。 対象集団がヨーロッパ系人種であり、他の人種に適用できるかどうかは今後確認する必要はあるが、 今回の結果から、尿中 DKK3は心臓手術後にAKI を発症するリスクの高い患者を特定し、特に入院中のAKI発症を予測するのみならず、その後の腎機能低下も予測することが示された。尿中DKK3 は予防が有用な患者を特定するための新しいツー ルとなり得ると言える。 1. Neugarten J. et al. Clin J Am Soc Nephrol. 2016; 11(12): 2113–2122.
晩期早産の子癇症(PHOENIX)に対する計画的な早期分娩または妊婦管理:ランダム化比較試験。
晩期早産の子癇症(PHOENIX)に対する計画的な早期分娩または妊婦管理:ランダム化比較試験。
Planned early delivery or expectant management for late preterm pre-eclampsia (PHOENIX): a randomised controlled trial Lancet 2019 Sep 28 ;394 (10204):1181 -1190. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 晩期早産の女性では、母体の疾患進行の制限と乳児の合併症とのバランスをとる必要があるため、分娩開始の最適な時期は不明である。この試験の目的は、計画的に分娩を早期に開始することで、後期早産の女性における妊婦の有害転帰が、新生児または乳児の転帰を実質的に悪化させることなく減少するかどうかを、予想される管理(通常のケア)と比較して明らかにすることであった。 【METHODS】イングランドとウェールズの46の産科ユニットで行われたこの並行群、ノンマスキング、多施設、無作為化比較試験では、妊娠34週から37週未満の後期早産の子癇前症で、単胎妊娠または二卵性双胎妊娠の女性を対象に、計画分娩と妊婦管理(通常のケア)を個別に無作為化して比較した。共起母体転帰は、母体の罹患率または記録された収縮期血圧160mmHg以上の複合値とし、優越性仮説を設定した。共一次周産期転帰は、非劣性仮説(発生率の10%差の非劣性マージン)を用いて、周産期死亡または新生児退院までの新生児ユニット入院の複合体とした。解析は治療意図別に行われ、周産期アウトカムのプロトコル別解析も併せて行われた。この試験はISRCTN登録(ISRCTN01879376)にプロスペクティブに登録された。本試験は募集を終了しているが、フォローアップは継続中である 【FINDINGS】2014年9月29日から2018年12月10日までの間に、901名の女性が募集された。450人の女性(分析対象は448人の女性と471人の乳児)が計画分娩に、451人の女性(分析対象は451人の女性と475人の乳児)が期待管理に割り付けられた。計画分娩群(289人[65%]女性)と妊婦管理群(338人[75%]女性;調整後相対リスク0-86、95%CI 0-79-0-94、p=0-0005)と比較して、共起母体転帰の発生率は有意に低かった。治療意図別の共一次周産期転帰の発生率は,計画分娩群(196[42%]の乳児)が予想管理群(159[34%]の乳児;1-26,1-08-1-47;p=0-0034)と比較して有意に高かった。プロトコールごとの解析結果も同様であった。重篤な有害事象は計画分娩群で9件、妊婦管理群で12件であった。 【解説】計画分娩は妊婦管理に比べて母体の罹患率と重度の高血圧症を減少させることを示唆する強いエビデンスがあり、未熟児に関連した新生児ユニットの入院は多いが、新生児の罹患率の増加を示す指標はない。このトレードオフは、分娩のタイミングについての意思決定を共有できるように、後期早産前子癇症の女性と議論されるべきである。 第一人者の医師による解説 新生児には早産分娩リスク 妊娠高血圧腎症発症の際はすみやかな母体搬送を 田中 守 慶應義塾大学医学部産婦人科(産科)教授 MMJ.February 2020;16(1) 妊娠高血圧腎症は、主として妊娠後期に発症し、 高血圧、蛋白尿などの全身性の障害をもたらし、母 体脳出血、腎障害、肝障害のみならず胎児発育遅延 など母児ともに重篤な後遺症をもたらす疾患である。全妊婦のおよそ10%が妊娠高血圧を発症し、さらに2~3%が妊娠高血圧腎症を発症するとされている。また、その原因は不明であるため、根本的な治療法はなく、分娩が最大の治療となる。妊娠 37週以降は、直ちに分娩することが母児の安全の ために推奨されているが、妊娠34週から37週未満の後期早産期での分娩の効果については明らか とされていなかった。 本試験は、後期早産期の妊娠高血圧腎症に対して 経過観察または積極的な人工早産のどちらが母児の予後に良いのかを明らかにするために実施された無作為化対照試験(RCT)である。妊婦4,498人 を対象として検討し、1,606人が適格条件に適合した。このうち901人が計画に同意し、450人が人工早産群、451人が経過観察群に無作為に割り付けられ、母体および新生児予後が評価された。 結果では、経過観察群では人工早産群に比べて5 日間の妊娠期間の延長が認められた。人工早産群において統計学的有意差を持って母体予後が良好で あり、一方、人工早産群においては有意に児の周産期合併症が増加した。また、母児にかかる医療費(英国)は、明らかに人工早産群で少なかった。妊娠34 週から37週未満の後期早産期の妊娠高血圧腎症においては、積極的に分娩を図ることによって母体 予後は明らかに改善するが、新生児に対しては明 らかに早産分娩のリスクが上昇するため、そのメ リット、デメリットを常に考えて分娩時期を決定する必要がある。 本試験は、早産後期に発症した妊娠高血圧腎症患者に対して、積極的に早産分娩とする医学的な根拠 を検討するために行われた英国における多施設共同 RCTである。日本でもLate Preterm Delivery の問題は議論されているものの、少なくとも新生児集中治療室(NICU)を有している周産期施設で は積極的な早産分娩を議論するべきである。したがって、産科診療の1次施設では、妊娠高血圧腎症 と診断されたら直ちにNICUを備えた周産期センターに母体搬送すべきであり、受け入れた周産期センターでは積極的分娩を含めた周産期管理を検討すべきであるというエビデンスが明らかにされたと言えよう。
膵臓癌のスクリーニング。US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement(米国予防医療専門委員会の再確認勧告)。
膵臓癌のスクリーニング。US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement(米国予防医療専門委員会の再確認勧告)。
Screening for Pancreatic Cancer: US Preventive Services Task Force Reaffirmation Recommendation Statement JAMA 2019 Aug 6 ;322 (5):438 -444. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】膵臓がんは、年齢調整した年間発症率が10万人年あたり12.9人という珍しいがんである。しかし、膵臓癌の予後は不良であるため、死亡率は10万人年当たり11.0人である。発症率は低いものの、膵臓がんは米国で3番目に多いがん死亡原因となっています。膵臓癌の発生率は増加しており、他の種類の癌の早期発見と治療の改善とともに、膵臓癌はまもなく米国における癌死亡原因の第2位になると推定される。 【目的】膵臓癌のスクリーニングに関する2004年の米国予防医療作業部会(USPSTF)の勧告を更新することである。 【エビデンスレビュー】USPSTFは、膵癌スクリーニングの有益性と有害性、膵癌スクリーニング検査の診断精度、スクリーニングで発見された膵癌または無症状の膵癌の治療の有益性と有害性に関するエビデンスをレビューした。 【調査結果】USPSTFは、膵癌スクリーニングまたはスクリーニングで発見された膵癌の治療により、疾患特異的な罹病率と死亡率、全死因死亡率が改善するというエビデンスを見いだせなかった。USPSTFは、無症状の成人における膵がんスクリーニングの有益性の大きさは、小さいより大きくないという境界線が引けるという十分な証拠を見いだした。USPSTFは、膵がんスクリーニングおよびスクリーニングで検出された膵がんの治療の有害性の大きさは、少なくとも中程度に抑えることができるという十分な証拠を見いだした。USPSTFは、無症候性成人における膵癌スクリーニングの潜在的利益は潜在的有害性を上回らないという前回の結論を再確認する。 【結論と勧告】USPSTFは、無症候性成人における膵癌のスクリーニングを行わないよう勧告する。(D勧告)。 第一人者の医師による解説 早期膵がん患者の同定へ 新たな検診手段の開発が重要 岡崎 和一 関西医科大学内科学第三講座(消化器肝臓内科)主任教授 MMJ.February 2020;16(1) 米国における膵がんの罹患率は人口10万人あたり年間12.9人で比較的低いものの、年間死亡率 は11.0人、その部位別順位は3位と予後不良である(1)。5年生存率は膵がん全体で9.3%であるが、 局所進行膵がん37.4%、周辺臓器浸潤例12.4%、 遠隔転移例2.9%と診断時の病期に依存し、病初期での手術のみが生存率改善を期待できるため、早期診断が重要である。膵がん患者の85~90%は 遺伝的背景がなく、5~10%が家族性危険因子を有 し、3~5%がPeutz-Jeghers症候群などの遺伝的がん症候群とされている。 今回、米国予防医学特別作業部会(USPSTF)は 2004年の勧告と同じく、検診による不利益(harm)が利益(benefit)を上回るとの理由から、「無症状の一般成人を対象とする膵がん検診は推奨しない」 と結論した。しかしながら、家族性膵がん(第1度 近親者に2人以上の膵がん患者がいる場合)を含み、膵がんの家族性危険因子を考慮することが重要であり、本論文でも、今回の推奨はこれらの高リスク者には適用されないとしている。 実際、CAPS Consortiumは、膵がん患者の第1度近親者、第1 度近親者に罹患者を有するp16 /BRCA2 変異保 有者、Peutz-Jeghers症候群の患者、第1度近親者に膵がん患者を有するリンチ症候群患者を高リスク者と定義し、高リスク者に対して超音波内視鏡検査(EUS)またはMRI/MRCP によるスクリー ニングを推奨している(2)。系統的レビューでは、膵がん家族歴を有する無症状者を対象とした検診のみ、根治的切除および生存期間中央値の延長との 関連が示されている(2)。 Cancer of the Pancreas Screening 2(CAPS2)プロジェクトでは、無症状の膵がん患者の第1度近親者に対するEUSで 10%に浸潤前膵がんが発見され、高リスク者の検 診手段として有望である可能性が示唆されている(2)。 CAPS3 では膵がんリスクの高い無症状者に対して二重盲検下のCT、MRI およびEUS によるスクリーニングにより42%で異常がみられ、その検出率はEUS 42%、MRI 33%、CT 11%であった。さ らに高リスク者を平均4.2 年間追跡した前向きコ ホート研究では、32%の患者で膵臓に異常が認められ、MRI/磁気共鳴膵胆管造影(MRCP)もEUS の 補助的検査法または代替検査法になりうることが 示唆された。 将来的には、早期膵がん患者を同定できる新たな検診手段の開発が重要であると考えられる。現状では、全血中のマイクロ RNA、cell-free DNA、 血清代謝プロファイリングなどが新規バイオマー カー候補とされている。 1.National Cancer Institute (NCI). Cancer Stat Facts: pancreatic cancer. URL:https://bit.ly/2ZNfv2I 2.NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology:Pancreatic Adenocarcinoma(Version 3.2019).
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