「MMJ - 五大医学誌の論文を著名医師が解説」の記事一覧

急性期脳梗塞での血栓回収療法後の積極降圧は機能的転帰を悪化させる
急性期脳梗塞での血栓回収療法後の積極降圧は機能的転帰を悪化させる
Intensive vs Conventional Blood Pressure Lowering After Endovascular Thrombectomy in Acute Ischemic Stroke: The OPTIMAL-BP Randomized Clinical Trial JAMA. 2023 Sep 5;330(9):832-842. doi: 10.1001/jama.2023.14590. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】急性虚血性脳卒中患者の血管内血栓切除術(EVT)による成功した再灌流後の最適血圧(BP)制御は不明です。 【目的】再灌流が成功した最初の24時間後の集中的なBP管理が、EVTを受けた患者の従来のBP管理よりも優れた臨床結果につながるかどうかを判断する。 【設計、設定、および参加者】2022年6月から2022年11月まで韓国の19のストロークセンターで行われた盲検化エンドポイント評価を伴う多施設、無作為化、非盲検試験(2023年3月8日)。EVTで治療された大血管閉塞急性虚血性脳卒中を有する306人の患者が含まれ、2B以上の脳梗塞スコアで修正された血栓溶解(部分的または完全な再灌流)が含まれていました。 【介入】参加者は、集中的なBP管理(収縮期BPターゲット<140 mm Hg; n = 155)または従来の管理(収縮期BPターゲット140-180 mm Hg; n = 150)を登録後24時間受け取るようにランダムに割り当てられました。 【曝露】主な結果は、3か月での機能的独立性でした(0-2のランキンスケールスコアを変更しました)。主な安全性の結果は、36時間以内の症候性脳内出血と、3か月以内のインデックス脳卒中に関連する死亡でした。 【結果】安全性の懸念に注目したデータと安全監視委員会の推奨に基づいて、試験は早期に終了しました。306人の無作為化患者のうち、305人が適格であることが確認され、302人(99.0%)が試験を完了しました(平均年齢、73.0歳、122人の女性[40.4%])。集中的な管理グループは、従来の管理グループ(54.4%)よりも機能的独立性(39.4%)を達成する割合が低く、有意なリスク差(-15.1%[95%CI、-26.2%から-3.9%))および調整オッズ比(0.56 [95%CI、0.33-0.96]; p = .03)。症候性脳内出血率は、集中群で9.0%、従来のグループで8.1%でした(リスク差、1.0%[95%CI、-5.3%〜7.3%];調整済みオッズ比、1.10 [95%CI、0.48–2.53]; p = .82)。3か月以内のインデックスストロークに関連する死亡は、集中群の7.7%と従来のグループの5.4%で発生しました(リスク差、2.3%[95%CI、-3.3%から7.9%];調整済みオッズ比、1.73 [95%CI、0.61-4.92]; p = .31)。 【結論と関連性】大きな血管閉塞を伴う急性虚血性脳卒中のEVTとの成功した再灌流を達成した患者の間で、24時間の集中的なBP管理により、従来のBP管理と比較して3か月での機能的独立の可能性が低くなりました。これらの結果は、急性虚血性脳卒中でEVTが成功した後、集中的なBP管理を避けるべきであることを示唆しています。 【試験登録】ClinicalTrials.gov識別子:NCT04205305。 第一人者の医師による解説 急性期脳梗塞では有効な再灌流が得られても 血圧を下げ過ぎない方が良い 山上 宏 筑波大学医学医療系脳卒中予防・治療学教授 MMJ.April 2024;20(1):9 急性期脳梗塞では血圧を下げると脳血流量が減少し梗塞巣の拡大を来すため、降圧療法は勧められていない。一方、大血管閉塞による急性期脳梗塞に対する血栓回収療法後では、血圧高値の持続が頭蓋内出血や脳浮腫の発生を介して機能的転帰の悪化と関係することが報告されている(1)。血栓回収療法により有効な再灌流が得られれば、降圧しても脳血流量の減少は軽度である可能性もあり、積極降圧療法が患者の転帰を改善させることが期待されていた。 OPTIMAL-BP(Outcome in Patients Treated With Intra-Arterial Thrombectomy-Optimal Blood Pressure Control)試験は、大血管閉塞による急性期脳梗塞に対して血栓回収療法により有効再開通が得られ、治療後2時間以内に収縮期血圧(SBP)140mmHg以上である患者を、積極降圧群(目標 SBP 140mmHg未満)と標準降圧群(目標SBP 140~180mmHg)に割り付けたランダム化比較試験である。降圧療法は主にニカルジピンが用いられ、割り付けから1時間以内に目標血圧を達成し24時間維持することとされた。主要有効性評価項目は、3カ月後に日常生活が自立した患者の割合、主要安全性評価項目は36時間以内の症候性頭蓋内出血および3カ月以内の脳梗塞関連死の発生とした。本試験は、安全性の懸念などから早期に中止され、ランダム化された306人のうち302人が解析対象となった。積極降圧群では標準降圧群に比べ、日常生活自立を達成した患者が有意に少なく(39.4% 対 54.4%)、症候性頭蓋内出血の発生に差はなかった(9.0% 対 8.1%)。また、悪性脳浮腫の発生は積極降圧群で有意に多かった(7.7% 対1.3%)。 先行研究であるENCHANTED2/MT試験(2)においても、血栓回収療法後の積極降圧(目標 SBP 120mmHg未満)は標準降圧(目標 SBP 140~180mmHg)に比べ90日後の機能的転帰を悪化させており、本試験の結果と一致していた。有効な再灌流が得られても、すでに虚血が進行している領域では降圧療法によって脳血流量が減少して細胞障害が悪化する可能性や、脳微小循環への悪影響によって脳浮腫が進行する可能性がある。また、積極降圧が症候性頭蓋内出血の発生を抑制できなかったことも共通した結果であり、この点でも積極降圧のメリットはないと言えるであろう。急性期脳梗塞では、再灌流が得られてもSBPを140~180mmHgに維持すべきと考えられる。 1. Goyal N, et al. Neurology. 2017;89(6):540-547. 2. Yang P, et al. Lancet. 2022;400(10363):1585-1596
心房細動に対するアブレーションは 精神的ストレスの改善にも有効
心房細動に対するアブレーションは 精神的ストレスの改善にも有効
Atrial Fibrillation Catheter Ablation vs Medical Therapy and Psychological Distress: A Randomized Clinical Trial JAMA. 2023 Sep 12;330(10):925-933. doi: 10.1001/jama.2023.14685. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】精神衛生の結果に対する心房細動(AF)カテーテルアブレーションの影響はよく理解されていません。 【目的】AFカテーテルアブレーションが、医学療法のみと比較して、心理的苦痛のマーカーのより大きな改善に関連しているかどうかを判断する。 【設計、設定、および参加者】心房細動(修復)研究における心理的苦痛に対するカテーテルアブレーションの影響のランダム化された評価は、2018年6月から2021年3月の間にオーストラリアの2つのAFセンターで実施された症状のある参加者のランダム化試験でした。 【介入】参加者は無作為化され、AFカテーテルアブレーション(n = 52)または医学療法(n = 48)を投与されました。 【曝露】主な結果は、12か月での病院不安とうつ病スケール(HADS)スコアでした。二次的な結果には、重度の心理的苦痛の有病率(HADSスコア> 15)、不安HADSスコア、うつ病HADSスコア、およびベックうつ病インベントリII(BDI-II)スコアの追跡評価が含まれていました。不整脈の再発とAF負荷データも分析されました。 【結果】合計100人の参加者が無作為化されました(平均年齢、59 [12]年; 31 [32%]女性、54%が発作性AF)。成功した肺静脈分離は、アブレーショングループのすべての参加者で達成されました。結合されたHADSスコアは、6か月(8.2 [5.4]対11.9 [7.2]; p = .006)で、アブレーショングループ対医療グループでは低かった(7.6 [5.3] vs 11.8 [8.6];グループの違い、-4.17 [95%CI、-7.04〜 -1.31]; p = .005)。同様に、重度の心理的苦痛の有病率は、アブレーション群と6ヶ月(14.2%対34%、P = .02)で、12か月(10.2%対31.9%; P = .01)での医学療法群では低かった、6か月で不安HADSスコア(4.7 [3.2]対6.4 [3.9]; p = .02)および12か月(4.5 [3.3]対6.6 [4.8]; p = .02);うつ病は3か月で得点(3.7 [2.6]対5.2 [4.0]; p = .047)、6か月(3.4 [2.7]対5.5 [3.9]; p = .004)、および12か月(3.1 [2.6)] vs 5.2 [3.9]; p = .004);6か月でのBDI-IIスコア(7.2 [6.1]対11.5 [9.0]; p = .01)および12か月(6.6 [7.2]対10.9 [8.2]; p = .01)。アブレーション群の中央値(IQR)AF負担は、医学療法グループよりも低かった(0%[0%-3.22%]対15.5%[1.0%-45.9%]; p <.001)。 【結論と関連性】症候性AFの参加者のこの試験では、不安とうつ病の心理的症状の改善がカテーテルアブレーションで観察されましたが、医学療法は観察されませんでした。 【試行登録】ANZCTR識別子:ACTRN12618000062224 第一人者の医師による解説 不安や抑うつ症状軽減に果たす役割は大きく 治療方針決定でも考慮すべき重要な要因 五十嵐 都 筑波大学医学医療系循環器内科准教授 MMJ.April 2024;20(1):8 本論文に報告されたREMEDIAL試験では症候性の心房細動(AF)患者をアブレーション群と薬物療法群に割り付け、精神的ストレス状態の評価指標HADSスコア、重症な精神的ストレス状態(HADSスコア 15超)の患者の割合などさまざまな指標について登録時と治療後の複数時点において両群間で比較した。AF再発の有無および累積時間率(burden)についても解析した。 登録時には評価項目に関して両群間に有意差はなかった。重症の精神的ストレス状態は32%の患者に認められ、不安症や抑うつ的な性格(タイプD)およびAF症状の重症度を示す指標 AFSSSとも関連があった。12カ月の経過でアブレーション群では薬物療法群に比べAFの再発が有意に少なく(47% 対 96%)、burden中央値も少なかった(0%対 15.5%)。その結果アブレーション群では抗不整脈薬を中止する傾向にあった(登録時90%、12カ月時点30%)。12カ月時点でアブレーション群では薬物療法群よりHADSスコア中央値が有意に低く(7.6 対 11.8)、重症の精神的ストレス状態の患者も少なかった(10.2% 対 31.9%)。 本試験ではまずAFがメンタルヘルスに悪影響を及ぼすことが示された。過去には逆に緊張や不安といった精神的ストレスがAF発症に関わるといった報告があり(1)、AFと精神的ストレスは両方向性に作用し悪循環を招く。その悪循環を断ち切るためにもAFの適切な治療は重要である。本試験では、精神的ストレス状態が薬物療法よりもアブレーションにより経時的に改善されることが明らかとなった。このことはAFの再発がないこと、抗不整脈薬やβ遮断薬の中止と関連があった。AFの症状を解消することが精神的ストレスを改善した可能性はあるが、抗不整脈薬やβ遮断薬の使用はうつや不眠、倦怠感などさまざまな神経精神症状に影響を与えることが知られているため(2)、これらの中止による直接の影響もあるかもしれない。 カテーテルアブレーションは侵襲的な治療ではあるが、3Dマッピングシステムやコンタクトフォースセンシング付きカテーテルなどテクノロジーの進歩に伴い有効性と安全性が年々向上している。そのため日本のガイドラインでも以前は「薬剤抵抗性症候性心房細動患者」に対してclass IIa適応であったが、現在は「薬剤抵抗性」という文言は削除された(3)。一方で有症候性 AFに対する薬物療法は国際的なガイドラインでもclass Iaのままである。本試験の結果から、カテーテルアブレーションがAF患者の不安や抑うつ症状を軽減するために果たす役割は大きいことが示され、このことは今後治療方針を決定する際に考慮すべき重要な要因であるといえる。 1. Eaker ED, et al. Psychosom Med. 2005;67(5):692-696. 2. von Eisenhart Rothe A, et al. Europace. 2015;17(9):1354-1362. 3. Nogami A, et al. Circ J. 2021;85(7):1104-1244.
テストステロン補充療法はプラセボに対して心血管系有害事象の発生率で非劣性
テストステロン補充療法はプラセボに対して心血管系有害事象の発生率で非劣性
Cardiovascular Safety of Testosterone-Replacement Therapy N Engl J Med. 2023 Jul 13;389(2):107-117. doi: 10.1056/NEJMoa2215025. Epub 2023 Jun 16. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】性腺機能低下症の中高年男性におけるテストステロン補充療法の心臓血管への安全性はまだ確認されていない。 【方法】多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照非劣性試験において、心血管疾患の既往またはリスクが高く、性腺機能低下症の症状を報告し、空腹時テストステロンが2つある45~80歳の男性5,246人を登録した。 1デシリットルあたり300ng未満のレベル。患者は、1.62%テストステロンゲル(テストステロンレベルを1デシリットルあたり350~750ngに維持するように用量を調整した)を毎日経皮投与するか、プラセボゲルを投与するかに無作為に割り当てられた。心血管安全性の主要評価項目は、発生までの時間分析で評価された、心血管死、非致死性心筋梗塞、または非致死性脳卒中による死亡の複合要素の最初の発生であった。二次心血管エンドポイントは、イベント発生までの時間分析で評価された、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、または冠動脈血行再建術の複合要素の最初の発生であった。非劣性には、テストステロンまたはプラセボを少なくとも 1 回投与された患者のハザード比の 95% 信頼区間の上限が 1.5 未満である必要がありました。 【結果】平均(±SD)治療期間は21.7±14.1ヶ月、平均追跡期間は33.0±12.1ヶ月でした。主要な心血管エンドポイントイベントは、テストステロン群の患者 182 人(7.0%)、プラセボ群の患者 190 人(7.3%)で発生しました(ハザード比、0.96、95% 信頼区間、0.78 ~ 1.17、p<0.001)。非劣性)。同様の所見は、テストステロンまたはプラセボの中止後のさまざまな時点でイベントに関するデータが打ち切られた感度分析でも観察されました。二次エンドポイント事象の発生率、または複合一次心血管エンドポイントの各事象の発生率は、2 つのグループで同様であるように見えました。テストステロン群では、心房細動、急性腎障害、肺塞栓症の発生率が高いことが観察されました。 【結論】性腺機能低下症を患い、心血管疾患の既往またはリスクが高い男性において、テストステロン補充療法は、重大な心臓有害事象の発生率に関してプラセボよりも劣りませんでした。 (AbbVie およびその他によって資金提供されています。TRAVERSE ClinicalTrials.gov 番号、NCT03518034。)。 第一人者の医師による解説 非致死的不整脈、心房細動、急性腎障害、肺塞栓症の既往がある場合は注意 佐々木 春明 昭和大学藤が丘病院泌尿器科教授 MMJ.April 2024;20(1):20 性腺機能低下症の中高年男性におけるテストステロン補充療法の心血管系への影響は確定されていない(1)。これまでの報告では、心血管リスクの上昇を示す研究もあれば、リスクの低下を示す研究もあり、相反する結果が示されている(1)。 本論文 は、米国 の316施設で実施された第4相、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、非劣性試験(TRAVERSE試験)の報告である。45~80歳、性腺機能低下症状を有し、心血管疾患の既往があるか心血管リスクが高く、かつ午前11時までの採血による空腹時血清テストステロン値が300 ng/dL(10.4 nmol/L)未満が対象とされた。患者は、1.62%のテストステロンゲルを連日経皮投与する群(T群)またはプラセボ群(P群)に1:1で割り付けられた。安全性の主要評価項目は主要心血管イベント、あるいは心血管疾患・非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中による死亡までの期間とした。最大の解析対象集団(FAS)は5,204人(T群2,601人、P群2,603人)で、安全性解析対象は5,198人(T群2,596人、P群2,602人)であった。 12カ月時点の血清テストステロン値のベースラインからの上昇中央値はT群148 ng/dL、P群14ng/dLであった。平均(± SD)治療期間は21.7±14.1カ月、平均追跡期間は33.0±12.1カ月であった。主要心血管イベントは、T群で182人(7.0%)、P群で190人(7.3%)に発生した(ハザード比 ,0.96;95%信頼区間[CI];0.78 ~ 1.17;非劣性に関してP<0.001)。前立腺特異抗原(PSA)値はT群で有意に上昇したが(P<0.001)、前立腺がんの発生率は同程度であった(0.5% 対 0.4%;P=0.87)。T群では治療介入が必要な非致死的不整脈(5.2% 対 3.3%;P=0.001)、心房細動(3.5%対 2.4%;P=0.02)、急性腎障害(2.3% 対 1.5%;P=0.04)、肺塞栓症(0.9% 対 0.5%)が多かった。 本論文では、心血管疾患の既往があるか心血管リスクが高い男性性腺機能低下症において、テストステロン補充療法はプラセボに対して心血管系の有害事象の発生率に関して非劣性であったと結論している。また、前立腺がんの発生率も有意に上昇しなかったことが確認された。ただし、治療介入が必要な非致死的不整脈、心房細動、急性腎障害、肺塞栓症の既往がある場合は注意を要する。 日本でも男性性腺機能低下症が広く認知されるようになり、対象となる患者が増加しているので、安全に投与できることを再確認できた。 1. Bhasin S, et al. J Clin Endocrinol Metab. 2018;103(5):1715-1744.
RNAi治療薬ジレベシランの第 I相試験 単回皮下投与で24週後も降圧効果が持続
RNAi治療薬ジレベシランの第 I相試験 単回皮下投与で24週後も降圧効果が持続
Zilebesiran, an RNA Interference Therapeutic Agent for Hypertension N Engl J Med. 2023 Jul 20;389(3):228-238. doi: 10.1056/NEJMoa2208391. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】アンジオテンシノーゲンは、アンジオテンシンペプチドの唯一の前駆体であり、高血圧の病因に重要な役割を果たしています。Zilebesiranは、長期にわたる作用期間を持つ治験RNA干渉治療剤が肝臓のアンジオテンシノゲン合成を阻害します。 【方法】このフェーズ1の研究では、高血圧症の患者は2:1の比率でランダムに割り当てられ、Zilebesiranの1回の上行皮下用量(10、25、50、100、200、400、または800 mg)またはプラセボのいずれかを受け取り、24週間続いた(パートA)。パートBでは、低塩または高塩の食事条件下での血圧に対するZilebesiranの800 mgの用量の効果、およびイルベサルタンとの採用時のその用量の効果を評価しました。エンドポイントには、安全性、薬物動態および薬力学的特性、および24時間の外来血圧モニタリングで測定される収縮期および拡張期血圧のベースラインからの変化が含まれます。 【結果】登録された107人の患者のうち、5人は軽度の一時的な注射部位反応を示しました。低血圧、高カリウム血症、または腎機能の悪化の報告は、医学的介入をもたらしませんでした。パートAでは、Zilebesiranを投与された患者は、投与された用量と相関していた血清アンジオテンシノゲンレベルの減少を示しました(8週目のr = -0.56; 95%信頼区間、-0.69〜 -0.39)。Zilebesiran(≥200mg)の単回投与量は、8週目までに収縮期血圧(> 10 mm Hg)と拡張期血圧(> 5 mm Hg)の減少と関連していました。これらの変化は、日中のサイクル全体で一貫しており、24週間で維持されました。パートBとEの結果は、高塩の食事による血圧への影響の減衰と、それぞれイルベサルタンとの同時投与による増強効果と一致していました。 【結論】血清アンジオテンシンゲンレベルと24時間の外来血圧の用量依存性減少は、200 mg以上のZilebesiranの単回皮下用量の後、最大24週間維持されました。軽度の注射部位反応が観察されました。(Alnylam Pharmaceuticals; ClinicalTrials.gov番号、NCT03934307; Eudract Number、2019-000129-39による資金提供)。 第一人者の医師による解説 RNAiのメカニズムを活用した革新的降圧薬 服薬アドヒアランス不良患者のコントロール改善を期待 苅尾 七臣 自治医科大学循環器内科学教授 MMJ.April 2024;20(1):6 RNA干渉(RNAi)薬が世界で注目を集めている。ベースとなっているのは、1998年にFire、Melloらの研究チームがNature誌に発表した、線虫への二本鎖 RNA導入により観察されたRNAiの機構である(1)。RNAiは、もともと生体に備わっている遺伝子発現抑制のプロセスであり、これを応用したRNAi薬は、疾患をもたらすタンパク質の産生をコードするメッセンジャー RNA(mRNA)を分解する。つまり、より上流のプロセスにおいて疾患を阻止できる可能性がある。この発見によって両博士は2006年にノーベル生理学・医学賞を受賞した。世界初のRNAi薬は、2018年に米国で承認されたトランスサイレチン型アミロイドーシス治療薬オンパットロである。日本では2023年12月時点でオンパットロを含む4剤のRNAi薬が承認されており、うち1剤は高コレステロール血症治療薬である。 本稿で紹介するのは、アンジオテンシノーゲンを治療標的とし肝臓のアンジオテンシノーゲンmRNAを特異的に減少させるように設計されたRNAi治療薬ジレベシラン(zilebesiran)の第 I相試験の結果である。本試験のPartAでは英国の4施設で登録した高血圧患者(収縮期血圧130 ~ 165mmHg)84人をプラセボ群(28人)と10、25、50、100、200、400、800 mg群(各群8人)にランダムに割り付け、試験薬を単回皮下投与して24週追跡した。治療を要する低血圧、高カリウム血症、または腎機能悪化の報告はなく、ジレベシラン 100 mgまたはそれ以上の用量を投与した群では、3週~12週目にかけて血中アンジオテンシノーゲン濃度が90%以上抑制されていた。また、ジレベシラン 200 mgまたはそれ以上の用量を投与した群は投与8週後の収縮期血圧がベースラインに比較して10 mmHg超低下し、投与24週後も降圧効果が持続した。この降圧効果は昼間から夜間・早朝にわたり24時間持続していた。 1回の注射で半年近い安定した降圧が得られる革新的治療薬の登場で、服薬アドヒアランス不良患者の血圧コントロール改善が期待される。2021年に国際共同疫学研究グループ NCD-RisCから発表された高血圧治療管理状況の長期推移によれば、降圧薬で治療しても、コントロールできているのはそのうちの半数に満たないという(2)。日本においても、既存降圧薬2剤以上で治療中の高血圧患者における早朝、夜間血圧のコントロール不良の割合はそれぞれ55%、45%にも及ぶ(3)。現在進行中の第 II相試験 KARDIA-1とKARDIA-2の結果が待たれる。 1. Fire A, et al. Nature. 1998;391(6669):806-811. 2. NCD Risk Factor Collaboration (NCD-RisC). Lancet. 2021;398(10304):957-980.(MMJ2022 年 4 月号で紹介) 3. Kario K, et al. Hypertens Res. 2023;46(2):357-367.
成人における胸腺摘出術は 全死亡率とがん、自己免疫疾患のリスクを上昇させる
成人における胸腺摘出術は 全死亡率とがん、自己免疫疾患のリスクを上昇させる
Health Consequences of Thymus Removal in Adults N Engl J Med. 2023 Aug 3;389(5):406-417. doi: 10.1056/NEJMoa2302892. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】人間の成人における胸腺の機能は不明であり、胸腺の日常的な除去はさまざまな外科的処置で行われます。私たちは、免疫能力と全体的な健康を維持するために、成体胸腺が必要であると仮定しました。 【方法】胸腺切除なしで同様の心臓胸部手術を受けた人口統計学的に一致するコントロールと比較して、胸腺切除を受けた成人患者の死亡、癌、および自己免疫疾患のリスクを評価しました。T細胞産生および血漿サイトカインレベルも、患者のサブグループで比較されました。 【結果】除外後、胸腺切除術と6021のコントロールを受けた1420人の患者が研究に含まれました。胸腺切除術を受けた患者の1146は、コントロールが一致し、一次コホートに含まれていました。手術後5年後、全死因死亡率はコントロールグループよりも胸腺切除群の方が高かった(8.1%対2.8%、相対リスク、2.9; 95%信頼区間[CI]、1.7〜4.8)、癌のリスク(7.4%対3.7%、相対リスク、2.0; 95%CI、1.3〜3.2)。自己免疫疾患のリスクは、一次コホート全体のグループ間で実質的に差はありませんでしたが(相対リスク、1.1; 95%CI、0.8〜1.4)、術前感染、癌、または自己免疫疾患の患者が除外された場合に違いが見つかりました。分析から(12.3%対7.9%、相対リスク、1.5; 95%CI、1.02〜2.2)。5年以上の追跡調査(対照の有無にかかわらず)を持つすべての患者が関与する分析では、全米国の人口(9.0%対5.2%)よりも胸腺切除群で全死因死亡率が高かった。癌による死亡率でした(2.3%対1.5%)。T細胞産生および血漿サイトカインレベルが測定された患者のサブグループでは(胸腺切除群で22、対照群で19;平均フォローアップ、術後14.2)、胸腺切除を受けた人は、新たな産生の産生が少なくなりました。コントロールよりもCD4+およびCD8+リンパ球(平均CD4+シグナル関節T細胞受容体切除円[SJTREC]カウント、1451対526 DNA [P = 0.009];平均CD8+ SJTRECカウント、1466対447 DNA [1466対447P <0.001])および血液中のより高いレベルの炎症性サイトカイン。 【結論】この研究では、全死因死亡率と癌のリスクは、コントロールよりも胸腺切除を受けた患者の方が高かった。胸腺切除術は、術前感染、癌、または自己免疫疾患の患者が分析から除外された場合、自己免疫疾患のリスクの増加に関連していると思われました。(TraceyとCraig A. Huff Harvard Stem Cell Institute Research Support Fundなどから資金提供。)。 第一人者の医師による解説 重症筋無力症での胸腺摘出術の実施 今回のエビデンス踏まえ協働意思決定を 下畑 享良 岐阜大学大学院医学系研究科脳神経内科学分野教授 MMJ.April 2024;20(1):10 成人における胸腺の機能は不明で、かつ生理的萎縮を受ける最初の臓器であるため、成人では重要な役割を果たさないと広く信じられている。このため胸腺摘出術がさまざまな外科手技でルーチンに行われている。脳神経内科領域でも重症筋無力症(MG)に対して行われてきた。 本研究は、胸腺摘出術を受けた患者の全死亡とがん、自己免疫疾患のリスクを後方視的に検討したものである。方法は、マサチューセッツ総合病院で胸腺摘出術を受けた成人患者の死亡、がん、自己免疫疾患のリスクを、類似の心臓胸部手術を受けた、胸腺摘出術の経験のない対照と比較している。胸腺摘出術を受けた1,420人と対照6,021人が研究に組み入れられ、このうち胸腺摘出術を受けた1,146人が対照とマッチし検討が行われた。術後5年の時点で、全死亡率は胸腺摘出術群のほうが対照群よりも有意に高く(8.1% 対 2.8%;相対リスク[RR],2.9[95%信頼区間〈CI〉, 1.7~4.8])、がんも同様に有意に高かった(7.4% 対 3.7%;RR, 2.0[1.3~3.2])。自己免疫疾患については、術前に感染症、がん、自己免疫疾患を認めた患者を解析から除外すると有意差が認められた(12.3% 対 7.9%;RR, 1.5[1.02~2.2])。追跡期間が5年を超える全例を対象とすると、全死亡率は胸腺摘出術群のほうが米国の一般集団よりも高く(9.0% 対 5.2%)、がん死亡率も同様であった(2.3% 対 1.5%)。 さらに、T細胞産生量と血漿中サイトカイン濃度を測定した胸腺摘出術群22人と対照群19人の検討では、胸腺摘出術群はCD4陽性リンパ球とCD8陽性リンパ球の新生量が有意に少なく、逆に血中炎症性サイトカイン濃度が高かった。具体的には胸腺摘出術群で15種類のサイトカイン値が有意に変化し、炎症性サイトカインのIL-23、IL-33、トロンボポエチンのレベルは対照群の10倍以上であった。つまり胸腺摘出術群患者の免疫環境は、免疫調節異常と炎症を引き起こすことが知られるサイトカイン環境にシフトしていると考えられる。 MGでは、「胸線摘除の有効性が期待でき、その施行が検討される非胸腺腫 MG は、50歳未満の発症で、発病早期のAChR抗体陽性過形成胸線例である(重症筋無力症/ランバート・イートン筋無力症候群診療ガイドライン 2022)」とされ、以前と比べその適応患者は限定されているが、上記患者であっても、今回の新しいエビデンスを提示し、協働意思決定により治療方針を決定する必要があるだろう。また今後、MG 患者全体においても今回の論文と同様の検討が必要と思われる。
双極Ⅰ型障害うつ病相寛解後の抗うつ薬継続 52週は8週に比べ気分エピソード再発抑制傾向を示す
双極Ⅰ型障害うつ病相寛解後の抗うつ薬継続 52週は8週に比べ気分エピソード再発抑制傾向を示す
Duration of Adjunctive Antidepressant Maintenance in Bipolar I Depression N Engl J Med. 2023 Aug 3;389(5):430-440. doi: 10.1056/NEJMoa2300184. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】抗うつ薬は、双極性障害患者の急性うつ病の治療に使用されますが、うつ病の寛解後の維持治療としての効果は十分に研究されていません。 【方法】最近、抑うつエピソードの寛解があった双極I障害患者における抗うつ薬療法の中止と比較して、補助エスシタロプラムまたはブプロピオンXLによる治療の維持に関するマルチサイト、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験を実施しました。患者は、寛解後52週間抗うつ薬による治療を継続するために、または8週間でプラセボに切り替えるために、1:1の比率でランダムに割り当てられました。イベントまでの分析で評価された主要な結果は、軽mania病またはマニアの症状、うつ病、自殺、および気分エピソードの重症度の測定症状のスコアで定義されているように、あらゆる気分エピソードでした。気分症状のための追加の治療または入院;または自殺の試みまたは完了。主要な二次的な結果には、マニアのエピソード、軽mania症またはうつ病のエピソードへの時間が含まれていました。 【結果】非盲検治療段階に関与した双極I障害のある209人の患者のうち、うつ病の寛解を有する150人が、直接登録された27人の患者に加えて、二重盲検フェーズに登録されました。合計90人の患者が52週間(52週間グループ)、処方された抗うつ薬による治療を継続するために割り当てられ、87人が8週間(8週間グループ)にプラセボに切り替えるように割り当てられました。採用が遅いため、完全な募集に達する前に、試験は停止しました。52週間で、52週間のグループの患者のうち28人(31%)、8週間のグループ(46%)の40人が主要な結果イベントを行いました。8週間のグループと比較して、52週間のグループの任意のムードエピソードのハザード比は0.68(95%信頼区間[CI]、0.43〜1.10、ログランクテストによるP = 0.12)でした。8週間のグループ(6%)の5人の患者と比較して、52週間のグループ(12%)の合計11人の患者は、マニアまたは軽mania症(ハザード比、2.28; 95%CI、0.86〜6.08)、および6.08)、および35人の患者(40%)と比較して15人の患者(17%)がうつ病の再発でした(ハザード比、0.43; 95%CI、0.25〜0.75)。有害事象の発生率は、2つのグループで類似していた。 【結論】双極性障害の患者と最近送金した抑うつエピソードを含む試験では、52週間継続したエスシタロプラムまたはブプロピオンXLによる補助的な治療は、あらゆる気分エピソードの再発を防ぐ際に8週間の治療と比較して有意な利益を示しませんでした。採用と資金の制限が遅いため、試験は早期に停止しました。(カナダの健康研究所の資金提供; ClinicalTrials.gov番号、NCT00958633。)。 第一人者の医師による解説 双極性うつ病に新規抗うつ薬併用が奏効した場合は 継続も検討すべき 坪井 貴嗣 杏林大学医学部精神神経科学教室准教授 MMJ.April 2024;20(1):12 2023年に日本の双極性障害(双極症)診療ガイドラインの改訂版(1)が発行された。そこには双極性障害抑うつエピソードに対して、気分安定薬もしくは第2世代抗精神病薬への抗うつ薬の併用療法を行わないことを弱く推奨すると記載がある。一方、カナダのガイドライン(2)では、双極 I型障害の抑うつエピソードの第2選択治療に、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)またはノルエピネフリン・ドパミン再取り込み阻害薬(NDRI)であるブプロピオン(日本未承認)との併用療法が挙げられており、また日本の大規模な観察研究(3)では双極 I型障害患者の32.1%に抗うつ薬が処方されている実態がある。さらに日本の上記ガイドラインでは、急性期の抑うつエピソードで有効だった薬剤を、維持期にすぐには中止せず一定期間の使用を提案しているが、新規抗うつ薬の併用療法についてはどうすべきか言及されていない。 本研究は、上記のカナダのガイドラインの著者と同じYatham先生を中心としたグループが、双極 I型障害の急性期抑うつエピソードに対し抗うつ薬の併用療法で寛解に達した患者を対象に、維持治療としてその抗うつ薬をいつまで継続すべきか明らかにすべく、実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。具体的には、エスシタロプラムまたはブプロピオン徐放性製剤と気分安定薬/第2世代抗精神病薬の併用補助療法を52週間継続する群(52週群)、それらを8週間継続した上で抗うつ薬をプラセボに切り替える群(8週群)が比較された。177人(52週群90人、8週群87人)が最終解析集団に組み入れられ、主要評価項目であるすべての気分エピソードの再発までの期間に関して52週群のハザード比は8週群に対して0.68(95%信頼区間[CI], 0.43 ~ 1.10)であったが、有意差はなかった(P=0.12)。副次評価項目については、躁 /軽躁エピソードの再発は52週群で11人(12%)、8週群で5人(6%)にみられ、抑うつエピソードの再発は52週群で15人(17%)、8週群で35人(40%)に認められた。本試験の限界点としては、計画されたサンプルサイズは216人であったが、COVID-19のための登録遅延や研究費支出期限のための早期中止などが挙げられる。 国際双極性障害学会(ISBD)の勧告(4)では抗うつ薬中止によって抑うつエピソードが再燃する場合、維持治療での抗うつ薬併用は許容されるとしており、本研究の結果はこれを一部支持するものかもしれず、今後もどのような双極 I型障害に対し抗うつ薬の併用が望ましいのか研究を重ねていく必要があるだろう。 1. 日本うつ病学会診療ガイドライン 双極症 2023(日本うつ病学会監修、医学書院) 2. Yatham LN, et al. Bipolar Disord. 2018;20(2):97-170. 3. Shinozaki M, et al. Asian J Psychiatr. 2022;67:102935. 4. Pacchiarotti I, et al. Am J Psychiatry. 2013;170(11):1249-1262.
地中海食とDASH食を組み合わせたMIND食 認知症予防効果は見いだせず
地中海食とDASH食を組み合わせたMIND食 認知症予防効果は見いだせず
Trial of the MIND Diet for Prevention of Cognitive Decline in Older Persons N Engl J Med. 2023 Aug 17;389(7):602-611. doi: 10.1056/NEJMoa2302368. Epub 2023 Jul 18. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】観察研究からの調査結果は、食事パターンが認知機能低下に対する保護的利益を提供する可能性があることを示唆していますが、臨床試験からのデータは限られています。マインドダイエットとして知られる神経変性遅延に対する地中海のダッシュ介入は、地中海ダイエットとダッシュ(高血圧を停止するための食事アプローチ)のハイブリッドであり、認知症のリスクの低下と推定される食品を含む修正を加えて、。 【方法】認知障害のない高齢者を含むが、認知症の家族歴を含む2サイトの無作為化対照試験を実施しました。および14項目のアンケートによって決定されるように、軽度のカロリー制限を伴うカロリー制限のあるコントロール食と比較して、軽度のカロリー制限でマインドダイエットの認知効果をテストするために、最適ではない食事。参加者に1:1の比率で割り当てて、3年間介入または対照食に従いました。すべての参加者は、割り当てられた食事の順守と減量を促進するためのサポートに関するカウンセリングを受けました。主なエンドポイントは、グローバル認知スコアと4つの認知ドメインスコアのベースラインからの変化であり、そのすべては12テストバッテリーから派生しました。各テストからの生のスコアはZスコアに変換されました。これは、すべてのテストで平均化され、グローバル認知スコアとコンポーネントテストを作成して4つのドメインスコアを作成しました。スコアが高いほど、認知パフォーマンスが向上します。二次的な結果は、参加者の非ランダムサンプルにおける脳特性の磁気共鳴画像法(MRI)由来の測定におけるベースラインからの変化でした。 【結果】合計1929人がスクリーニングを受け、604人が登録されました。301はマインドディエトグループに、303はコントロールダイエットグループに割り当てられました。試験は参加者の93.4%増加しました。ベースラインから3年目まで、両方のグループでグローバル認知スコアの改善が観察され、マインドダイエットグループの0.205標準化ユニットとコントロールダイエットグループの0.170標準化ユニット(平均差、0.035標準化ユニット; 95%信頼性間隔、-0.022〜0.092; p = 0.23)。MRIの白い高強化性、海馬量、および総灰色と白の体積の変化は、2つのグループで類似していました。 【結論】認知症の家族歴史を持つ認知的に障害のない参加者の間で、認知と脳のMRIの結果の変化は、ベースラインから3年目への変化は、心の食事に従った人と、軽度のカロリー制限で対照食を追った人との間で有意な差はありませんでした。(老化に関する国立研究所の資金提供; ClinicalTrials.gov番号、NCT02817074。)。 第一人者の医師による解説 バイアスの問題があり MIND食の有用性を否定するものではない 浦上 克哉 鳥取大学医学部保健学科認知症予防学講座(寄附講座)教授 MMJ.April 2024;20(1):25 近年、認知症予防における食の重要性が指摘されている。しかし、単一の食品、栄養素やサプリメントなどのデータは多く報告されてきているが、食事の有効性の検討はまれである。地中海食が認知症予防に有効であることは多くの観察研究で報告されているが(1)、比較試験はごくわずかである。 本論文は地中海食とDASH食を組み合わせたMIND食の有効性を検討した無作為化対照試験(MIND試験 )の報告である。地中海食はすでに認知症予防の効果があると報告されている食事で あ る。DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食は高血圧を防ぐための食事である。本試験は2施設で実施され、対象者の選択基準は65歳以上85歳未満の高齢者であること、認知症がないこと、認知症の家族歴を有すること、肥満であることなどであった。参加者を1:1の割合でランダムに割り付け、軽度カロリー制限を伴うMIND食または軽度カロリー制限を伴う対照食を3年間摂取させた。参加者は全員、割り付けられた食事の遵守に関するカウンセリングを受け、さらに減量を促進するためのサポートを受けた。主要評価項目は認知機能検査スコアのベースラインからの変化量、副次評価項目は3テスラ MRI検査で計測した脳(海馬、大脳皮質、大脳白質)の体積のベースラインからの変化量で、それぞれの食事が認知機能に与える効果が比較検証された。合計1,929人がスクリーニングを受け、そのうち604人が登録された。軽度カロリー制限を伴うMIND食摂取群に301人、軽度カロリー制限を伴う対照食摂取群に303人が割り付けられた。結果、3年間の経過観察を行ったが両群間で認知機能に有意差を認めなかった。脳 MRI画像でも体積に有意差を認めなかった。結論として今回の検討ではMIND食の認知症予防効果を見いだすことができなかった。 著者らは、今回の無作為化対照試験において従来の多くの観察研究と一致する結果が得られなかった理由としてバイアスの問題を挙げている。今回の研究対象として認知症の家族歴を有する人、肥満のある人を選択基準に加えたこと、また結果として学歴の高い人が多くなってしまい、一般的な人口集団を対象にできなかった可能性を指摘している。 本論文の結果はネガティブデータであったがMIND食の有用性を否定するものではないと考える。食は認知症予防に重要な役割を果たしていると考えられるので、今後のさらなる検討が待たれる。 1. Radd-Vagenas S, et al. Am J Clin Nutr. 2018;107(3):389-404.
慢性片頭痛に対するCGRP受容体拮抗薬アトゲパントの安全性と有効性
慢性片頭痛に対するCGRP受容体拮抗薬アトゲパントの安全性と有効性
Atogepant for the preventive treatment of chronic migraine (PROGRESS): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial Lancet. 2023 Sep 2;402(10404):775-785. doi: 10.1016/S0140-6736(23)01049-8. Epub 2023 Jul 26. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】この研究では、慢性片頭痛の予防治療に対するアトゲパントの有効性、安全性、忍容性を評価することを目指しました。 【方法】私たちは、米国、英国、カナダ、中国、チェコ共和国、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓国、142の臨床研究サイトで、この無作為化、二重盲検プラセボ対照、第3相試験を行いました。ポーランド、ロシア、スペイン、スウェーデン、台湾。1年以上の慢性片頭痛の既往歴のある18〜80歳の成人は、1日2回経口30 mg、1日1回経口atogepant 60 mg、またはプラセボを摂取するためにランダムに割り当てられました(1:1:1)。主要エンドポイントは、12週間の治療期間にわたる平均月間片頭痛時代(MMDS)のベースラインからの変更でした。主要な分析は、治療を修正した人集団で行われ、少なくとも1回の研究介入を受けたランダムに割り当てられたすべての参加者が含まれ、電子日記(編集者)データの評価可能なベースライン期間があり、少なくとも1つの評価可能な投稿がありました。 - 二重盲検期間中の編集データのベースライン4週間(1〜4、5-8、および9-12)。安全人口は、少なくとも1回の研究介入を受けたすべての参加者で構成されていました。この試験は、ClinicalTrials.gov(NCT03855137)に登録されています。 【調査結果】2019年3月11日から2022年1月20日の間に、参加者が適格性について評価されました。711は除外され、778人の参加者が1日2回30 mg(n = 257)、1日に1回はアトゲパント60 mg(n = 262)、またはプラセボ(n = 259)にランダムに割り当てられました。安全人口の参加者は18〜74歳でした(平均42・1歳)。773人の患者のうち459人(59%)は白人、677人(88%)の患者は女性、96人(12%)が男性でした。84人の参加者は、試験中に治療を中止し、755人が治療を修正した人集団を構成しました(1日2回30 mg n = 253、1日に1回aTOGEPANT 60 mg、プラセボn = 246)。ベースラインの平均MMDの数は18・6(SE 5・1)で、アトゲパント30 mgは1日に2回、19・2(5・3)で1日1回、アトゲパント60 mg、プラセボと18・9(4・8)でした。12週間にわたる平均MMDのベースラインからの変化は-7・5(SE 0・4)で、1日2回Atogepant 30 mg、-6・9(0・4)、Atogepant 60 mg、1日1回、-5・1(0・4)プラセボで。プラセボからの最小二乗の平均差は、1日2回、アトゲパント30 mgで-2・4で-4でした(95%CI -3・5〜 -1・3;調整p <0・0001)、ATOGEPANT 60 mgで-1・8で8で-1・8日(-2・9〜 -0・8;調整されたp = 0・0009)。アトゲパントの最も一般的な有害事象は便秘でした(1日に2回30 mg [10・9%]; 1日1回26 [10%]、プラセボ8 [3%])および吐き気(1日に2回30 mg)[8%]; 60 mg 1日1回25 [10%];およびプラセボ9 [4%])。潜在的に臨床的に有意な体重減少(ベースライン後のいつでも7%以上の減少)が各治療群で観察されました(15日に2回30 mg [6%]; 15日に1回のアトゲピント60 mg [6%];およびプラセボ3 [2%])。 【解釈】1日2回30 mg、1日に1回60 mgが慢性片頭痛患者の12週間にわたってMMDの臨床的に関連する減少を示しました。両方のアトゲパント線量は忍容性が高く、atogepantの既知の安全性プロファイルと一致していました。 【資金調達】アラーガン(現在のAbbvie)。 第一人者の医師による解説 アトゲパントは難治例の慢性片頭痛にも 有効な治療手段である可能性 柴田 護 東京歯科大学市川総合病院神経内科部長・教授 MMJ.April 2024;20(1):11 アトゲパント(atogepant;ATO)は経口投与のカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗薬であり、反復性片頭痛に対する有効性と安全性はADVANCE試験ですでに実証されている(1)。慢性片頭痛(CM)の予防ではCGRP関連抗体薬の効果が高いとされているが、注射薬よりは経口薬を好む患者も多い。また、投与されたモノクローナル抗体の95%が代謝されるには5カ月間を要するため、治療中に妊娠した場合に薬剤曝露期間が長くなる可能性がある。一方、ATOの半減期は約11時間で、妊娠が判明した場合に中止することで曝露を短期間にとどめることが可能である。 今回報告されたPROGRESS試験は、CMに対するATOの有効性と安全性の評価を目的に、日本を含む142施設が参加した国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第3相臨床試験である。1年以上のCM既往を有する成人患者778人がATO 30mg1日2回投与群 257 人、ATO 60 mg 1日1回投与群262人、プラセボ群259人に割り付けられた。ベースラインの1カ月あたりの平均片頭痛日数(MMD)はATO 30mg 1日2回投与群18.6±5.1(SE)日、ATO 60mg 1日1回投与群19.2±5.3日、プラセボ群18.9±4.8日であった。結果、12週間の治療期間における平均 MMDのベースラインからの変化(主要評価項目)は、ATO 30mg 1日2回投与群-7.5±0.4日、60mg 1日1回投与群-6.9±0.4日、プラセボ群-5.1±0.4日で、プラセボ群との最小二乗平均差はATO 30mg 1日2回投与群-2.4日(95%信頼区間[CI] -3.5~-1.3;補正 P<0.0001)、ATO 60mg 1日1回投与群-1.8日(95% CI, -2.9~-0.8;補正 P=0.0009)であった。安全性評価対象集団773人中、84人が試験期間中に治療を中止した。ATO群で最も頻度の高かった有害事象は便秘(ATO 30mg 1日2回投与群10.9%、ATO 60mg 1日1回投与群10%、プラセボ群3%)と悪心 (各群8%、10%、4%)であった。また、ATO群では臨床的に有意なレベルの体重減少を認める頻度もプラセボ群に比較して高かった。 以上よりATO 30mg 1日2回投与と60mg 1日1回投与はCMの予防効果を示すことが明らかとなった。忍容性については、便秘と悪心の出現に注意が必要と考えられる。なお、本試験では66%に急性期治療薬の使用過多があり、38%は2種類以上の既存予防薬で治療が奏効しなかったことがわかっているため、いわゆる難治例のCMにも有効な治療手段である可能性が示された。 1. Ailani J, et al. N Engl J Med. 2021;385(8):695-706.(MMJ 2022 年 4 月 号P34)
2型糖尿病を持つ肥満症患者へのチルゼパチド週1回投与 HbA1cと減量で著明な改善
2型糖尿病を持つ肥満症患者へのチルゼパチド週1回投与 HbA1cと減量で著明な改善
Tirzepatide once weekly for the treatment of obesity in people with type 2 diabetes (SURMOUNT-2): a double-blind, randomised, multicentre, placebo-controlled, phase 3 trial Lancet. 2023 Aug 19;402(10402):613-626. doi: 10.1016/S0140-6736(23)01200-X. Epub 2023 Jun 26. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】肥満と2型糖尿病の人の健康転帰を改善するには、体重減少が不可欠です。肥満と2型糖尿病を患っている人々の体重管理のために、グロコース依存性インスリノトロピックポリペプチドとグルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニストであるプラセボの有効性と安全性を評価しました。 【方法】このフェーズ3、二重盲検、無作為化、プラセボ対照試験が7か国で実施されました。27 kg/m2以上のボディマスインデックス(BMI)、および7-10%(53-86 mmol/mol)のヘモグロビン(HBA1C)のグリケート化されたヘモグロビン(HBA1C)を持つ成人(18歳以上)がランダムに割り当てられました(1:1:1:1)検証済みのインタラクティブなWeb応答システムを介してコンピューター生成ランダムシーケンスを使用して、週に1回、皮下ティルゼパチド(10 mgまたは15 mg)またはプラセボを72週間受信します。すべての参加者、捜査官、およびスポンサーは、治療の割り当てに隠されていました。コポリマリーのエンドポイントは、ベースラインからの体重の変化と5%以上の体重減少でした。治療 - 妊娠中毒救助療法の治療中止または開始に関係なく、治療 - 受精率は影響を評価しました。有効性と安全性のエンドポイントは、ランダムに割り当てられたすべての参加者(治療意図人口)のデータで分析されました。この試験は、ClinicalTrials.gov、NCT04657003に登録されています。 【調査結果】2021年3月29日、2023年4月10日の間、1514人の成人の適格性について評価された938(平均54・2歳[SD 10・6]、476 [51%]は女性、710 [76%]は女性でした。白、および561 [60%]をヒスパニックまたはラテン系)にランダムに割り当て、少なくとも1用量のチルゼパチド10 mg(n = 312)、チルゼパチド15 mg(n = 311)、またはプラセボ(n = 315)を受け取りました。ベースラインの平均体重は100・7 kg(SD 21・1)、BMI 36・1 kg/m2(SD 6・6)、およびHBA1c 8・02%(SD 0・89; 64・1 mmol/mol [SD 9・7])。最小二乗は、チルゼパチド10 mgと15 mgの72週目の体重の変化を平均して-12・8%(SE 0・6)および-14・7%(0・5)、および-3・2%(0・5)プラセボでは、ティルゼパチド10 mgおよび-11・6%パーセントポイント( - 95%CI -11・1から-8・1)のプラセボとプラセボとの推定治療の差が-9.6%パーセントポイント(95%CI -11・1から-8・1)をもたらします( - 13・0〜 -10・1)チルゼパチド15 mg(すべてp <0・0001)。ティルゼパチドとプラセボで治療されたより多くの参加者は、5%以上の体重減少のしきい値を満たしました(79-83%対32%)。ティルゼパチドの最も頻繁な有害事象は、吐き気、下痢、嘔吐を含む胃腸関連であり、ほとんどが軽度から中程度の重症度であり、治療中止につながるイベントはほとんどありませんでした(<5%)。深刻な有害事象は68人(7%)の参加者全体で報告され、チルゼパチド10 mg群で2人の死亡が発生しましたが、死亡は調査員による研究治療に関連しているとは見なされませんでした。 【解釈】肥満と2型糖尿病を患っている成人でのこの72週間の試験では、週に1回のチルゼパチド10 mgと15 mgが体重の実質的かつ臨床的に意味のある減少をもたらし、他のインクレナベースの療法に似た安全性プロファイルを提供します。体重管理。 【資金調達】エリ・リリーと会社。 第一人者の医師による解説 今後の糖尿病治療薬の主役の一翼を担う 早期の出荷制限解除を望む 小野 啓 千葉大学大学院医学研究院内分泌代謝・血液・老年内科学准教授/千葉大学医学部附属病院糖尿病・代謝・内分泌内科科長 MMJ.April 2024;20(1):16 グルカゴン様ペプチド -1(GLP-1)受容体作動薬は血糖依存的な血糖低下作用を有し、これと独立して中枢神経に作用し食欲低下を引き起こすため、糖尿病と肥満症に有効な治療薬として上市されている。一方、グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)はGLP-1と同様に血糖低下作用を有するものの2型糖尿病ではその作用が減弱し、また基礎研究から体重増加作用を持つと考えられるため、GLP-1に比べ治療薬としての有用性が低いと考えられていた。この予想に反し、GLP1・GIP両方の受容体作動薬であるチルゼパチドは、GLP-1受容体作動薬と同等あるいはそれ以上の血糖・食欲低下作用を有することが臨床的に示され注目されている。 本論文で報告されたSURMOUNT-2試験では、2型糖尿病を伴う肥満症(平均 BMI 36.1)患者938人をチルゼパチド 10mg群、15mg群、またはプラセボ群のいずれかに無作為に割り付け、72週間の週1回皮下注投与を行った。76%は白人であったが、日本人を含むアジア人も13%含まれている。プラセボ群が3.3%の減量にとどまったのに対し、チルゼパチド 10mg群では13.4%、15mg群では15.7%の減量が得られた。血糖値の平均を示すHbA1cは投与前の平均が8.02%であったが、投与後はプラセボ群の7.82%に対し、チルゼパチド 10mg群5.85%、同15mg群5.76%と著明な改善がみられた。収縮期血圧はプラセボ群の1.2mmHgに対しチルゼパチド群全体で7.2mmHgの低下、中性脂肪はプラセボ群の3.3%に対しチルゼパチド群全体で27.2%の低下を認めた。チルゼパチド群では下痢・悪心・嘔吐の副作用が認められたが、投与中止に至った有害事象の発現率は2%以下であり、低血糖はチルゼパチド群で5%程度にとどまり、その多くはスルフォニル尿素薬を併用している患者であり、重篤な低血糖は1件もなかった。膵炎・胆石・甲状腺がん・精神的問題に関しても有意な増加は認められなかった。 チルゼパチドはすでに日本でも2型糖尿病に適応を持ち処方が可能であるが、出荷制限により本試験で用いられた10~15mg製剤の処方は現時点で日本では困難である。本薬剤のようにHbA1cを2%以上も低下させ、体重を10%以上低下させるような薬剤はこれまで存在せず、今後の糖尿病治療薬の主役の一翼を担うことは間違いない。早期の出荷制限の解除が望まれるところである。
コンピュータに基づくICU患者の厳格な血糖管理 ICU入室期間や死亡率に差なし
コンピュータに基づくICU患者の厳格な血糖管理 ICU入室期間や死亡率に差なし
Tight Blood-Glucose Control without Early Parenteral Nutrition in the ICU N Engl J Med. 2023 Sep 28;389(13):1180-1190. doi: 10.1056/NEJMoa2304855. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】無作為化対照試験では、集中治療室(ICU)の患者の緊密な血液グルコース対照から利益と害の両方を示しています。初期の非経口栄養の使用とインスリン誘発性の重度の低血糖症の変動は、この矛盾を説明するかもしれません。 【方法】ICU入院時に、患者をリベラルグルコースコントロール(血糖値がデシリットルあたり215 mg> 215 mg [> 11.9 mmolあたり])またはタイトグルコースコントロール(血中グルコースレベルを標的とする場合にのみ開始されたインスリンをランダムに割り当てました。デシリットルあたり80〜110 mgでロジックインスリンアルゴリズムを使用して[4.4〜6.1 mmolあたり6.1 mmol]);非経口栄養は、両方のグループで1週間差し控えられました。プロトコルアドヒアランスは、グルコースメトリックに従って決定されました。主な結果は、ICUのケアが必要である時間の長さであり、ICUから生存する時間に基づいて計算され、死は競合するリスクを占めています。90日間の死亡率は安全性の結果でした。 【結果】ランダム化を受けた9230人の患者のうち、4622人がリベラルなグルコースコントロールに割り当てられ、4608人がタイトなグルコースコントロールに割り当てられました。朝の血糖値の中央値は、リベラルグルコースコントロールを備えたデシリットルあたり140 mg(四分位範囲、122〜161)で、密集したグルコースコントロールを備えたデシリットルあたり107 mg(四分位範囲、98〜117)でした。重度の低血糖は、リベラルコントロールグループの31人の患者(0.7%)と、緊密なコントロール群で47人の患者(1.0%)で発生しました。ICUケアが必要とした時間の長さは、2つのグループで類似していました(タイトなグルコース制御、1.00; 95%信頼区間、0.96〜1.04; P = 0.94での早期の放電のハザード比)。90日での死亡率も類似していました(リベラルグルコースコントロールで10.1%、タイトなグルコースコントロールで10.5%、p = 0.51)。8つの事前に指定された二次転帰の分析により、新しい感染症の発生率、呼吸器および血行動態のサポートの期間、病院から生きたまま退院する時間、ICUと病院での死亡率は2つのグループで類似していることが示唆されましたが、重度の急性腎障害は類似していました。胆汁うっ滞肝機能障害は、密集したグルコース制御ではあまり一般的ではないように見えました。 【結論】初期の非経口栄養を受けていない重症患者では、タイトなグルコース制御は、ICUケアが必要な時間または死亡率に影響を与えませんでした。(Research Foundation-Flandersなどから資金提供。TGC-FAST ClinicalTrials.gov番号、NCT03665207。)。 第一人者の医師による解説 重症低血糖の発生率に有意差なし 早期の非経口栄養投与は避けるべき 鈴木 優矢 虎の門病院内分泌代謝科・糖尿病/森 保道 虎の門病院内分泌代謝科・糖尿病部長 MMJ.April 2024;20(1):17 集中治療室(ICU)入室患者の厳格な血糖コントロールについては、有益性を支持する報告がある一方で低血糖による有害性を示唆する報告もある。本論文で報告されたTGC-Fast試験は、ベルギー国内のICUに入室した9,230人を、ICU入室後1週間の非経口栄養投与を控え医原性高血糖を避けたうえで、従来治療群(血糖215 mg/dL超でインスリン治療を開始;4,622人)と治療強化群(血糖80~ 110 mg/dLを目標にコンピュータによるアルゴリズムを用いたインスリン治療;4,608人)に分けて、ICUで治療を要した期間を主要評価項目、90日死亡率を安全性評価項目として検討している。 早朝血糖の中央値は従来治療群が140 mg/dL、治療強化群が107 mg/dLであった。40 mg/dL未満の重症低血糖は従来治療群で0.7%、治療強化群で1.0%に生じたが、有意差はなかった。主要評価項目であるICU入室期間は両群で有意差はなく(ハザード比[HR], 1.00;95%信頼区間[CI], 0.96~ 1.04;P=0.94)、90日死亡率も従来治療群で10.1%、治療強化群で10.5%と有意差はなかった(P=0.51)。副次評価項目のうち、急性腎障害や胆汁うっ滞性肝障害(γ -GTP・ALP高値)の発生率は治療強化群で低かった。サブグループ解析では、神経学的疾患で入室した患者において、治療強化群の90日死亡率が低い傾向にあった(HR, 0.69;95% CI, 0.46 ~ 1.02)。 本試験で約80%の患者は糖尿病の既往はないが、従来治療群では45.9%、治療強化群では98.8%の患者でインスリンが使用されており、急性期重症患者ではインスリン抵抗性の増大によりストレス性高血糖を来し、平常とは血糖推移が異なる。ICU入室患者の厳格な血糖コントロールを検討した大規模な無作為化対照試験(RCT)であるNICESUGAR試験では、治療強化群で死亡率が上昇しており、その要因として治療強化による低血糖の関与が示唆されている(1)。本試験では、コンピュータによるアルゴリズムを用いることで、重症低血糖の発生率は治療強化群と従来治療群でほぼ同等となっているが、ICUで治療を要した期間や90日死亡率に有意差はなかった。 特定の疾患群や患者背景で治療強化が有用である可能性はあるが、医原性低血糖を最小限に抑えたとしても、急性期において治療強化による正常の血糖を目指した厳格な血糖管理の有用性は限定的である。ICUに入室する急性期重症患者では、早期の非経口栄養投与を控えることで急性期の医原性高血糖を避けながら、目標血糖値を平時よりも高めに設定し、高血糖時に治療を開始することが望ましいと考えられる。 1. NICE-SUGAR Study Investigators. N Engl J Med. 2009;360(13):1283-1297.
進行・再発大腸がんの化学療法に有望な新選択肢
進行・再発大腸がんの化学療法に有望な新選択肢
Fruquintinib versus placebo in patients with refractory metastatic colorectal cancer (FRESCO-2): an international, multicentre, randomised, double-blind, phase 3 study Lancet. 2023 Jul 1;402(10395):41-53. doi: 10.1016/S0140-6736(23)00772-9. Epub 2023 Jun 15. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】進行した化学療法抵抗性結腸直腸癌の患者には、効果的な全身療法オプションが不足しています。我々は、重度の前処理された転移性結腸直腸癌の患者において、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)1、2、および3の非常に選択的で強力な経口阻害剤であるフルキンティニブの有効性と安全性を評価することを目指しました。 【方法】14か国の124の病院およびがんセンターで、国際的なランダム化された二重盲検プラセボ対照、フェーズ3研究(FRESCO-2)を実施しました。18歳以上の患者(日本では20歳以上)を含め、組織学的または細胞学的に記録された転移性結腸直腸腺癌を含め、現在のすべての標準的な承認された細胞毒性および標的療法を受け、トリフルリジン - チピラシルまたはレゴラフェニブ、またはその両方に耐えられました。適格な患者は、28日間のサイクルで1〜21日目に1日1回、フルキンニブ(5 mgカプセル)またはプラセボを口頭で一致させるためにランダムに割り当てられました(2:1)。層別因子は、以前のトリフルリジン - チピラシルまたはレゴラフェニブ、またはその両方、RAS変異状態、および転移性疾患の持続時間でした。選択されたスポンサーPharmacovilance担当者を除き、患者、調査員、研究サイト担当者、およびスポンサーは、グループの割り当てを研究するために隠されました。主なエンドポイントは、あらゆる理由からのランダム化から死までの時間として定義される全生存率でした。予想される全生存イベントの約3分の1が発生したときに、拘束力のない無益な分析が行われました。最終分析は、480の全生存イベントの後に行われました。この研究は、ClinicalTrials.gov、NCT04322539、およびEudract、2020-000158-88に登録されており、継続的ですが採用していません。 【調査結果】2020年8月12日から2021年12月2日の間に、934人の患者が適格性について評価され、691人が登録され、フルキンニブ(n = 461)またはプラセボ(n = 230)を受け取るためにランダムに割り当てられました。患者は、転移性疾患の以前の全身療法の4列(IQR 3-6)の中央値(IQR 3-6)を投与され、691人の患者のうち502人(73%)が3列以上を受けていました。全生存期間の中央値は、フルキンティニブ群で7・4ヶ月(95%CI 6・7-8・2)対4・8ヶ月(4・0-5・8)であった(ハザード比0・66、95%CI 0・55-0・80; p <0・0001)。グレード3以下の有害事象は、フルキンニブを投与された456人の患者のうち286人(63%)、プラセボを投与された230人のうち116人(50%)で発生しました。Fruquintinib群の最も一般的なグレード3以下の有害事象には、高血圧(n = 62 [14%])、Asthenia(n = 35 [8%])、および手足症候群(n = 29 [6%])が含まれていました。。各グループに治療関連の死亡が1つありました(フルキンティニブ群の腸穿孔とプラセボ群の心停止)。 【解釈】Fruquintinib治療は、抵抗性転移性結腸直腸癌患者のプラセボと比較して、全生存率において有意かつ臨床的に意味のある利益をもたらしました。これらのデータは、抵抗性転移性結腸直腸癌患者のグローバルな治療オプションとしてのフルキンティニブの使用をサポートしています。生活の質データの継続的な分析は、この患者集団におけるフルキンティニブの臨床的利益をさらに確立するでしょう。 【資金調達】ハッチメド。 第一人者の医師による解説 後方治療でもVEGF経路をしっかり抑えることが重要と示す 陶山 浩一 虎の門病院臨床腫瘍科部長 MMJ.April 2024;20(1):24 進行・再発大腸がんに対する化学療法は、この20年ほどで目覚ましい発展を示している。殺細胞薬の開発・投与の工夫に加え、分子標的薬の実用化、近年では高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)やHER2遺伝子変異といったminor populationに対する個別化治療の開発がその一助となっている。今回その効果が検証されたフルキンチニブは 血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)の1,2,3を選択的に阻害するマルチキナーゼ阻害薬である。元々は中国で第 III相試験のFRESCO試験が行われフルキンチニブの有効性が示されていたが(1)、中国国内と世界との標準治療の乖離があることから、日本も含めたグローバルにおける第 III相試験として実施されたのが本論文のFRESCO-2試験である。 73%の患者で前治療数が4以上というheavilytreatedなpopulationにおいて、主要評価項目である全生存期間( ハザード 比[HR], 0.66;P<0.0001)、副次評価項目の1つである無増悪生存期間(HR, 0.32;P<0.0001)はプラセボ群に対してフルキンチニブ群でいずれも有意に延長した。いずれのKaplan-Meier曲線においても初期段階から両群の差がしっかり認められ持続していた。客観的奏効率は、フルキンチニブ群が2%、プラセボ群は0%と両群間に有意な差はなかったが(P=0.059)、病勢コントロール率はそれぞれ56%、16%(P<0.0001)とフルキンチニブ群で有意に優れた。 Grade 3以上の主な毒性は、高血圧、無力症、手足症候群であった。現在、大腸がん後方ラインで用いられているレゴラフェニブに比して毒性はやや低いと推測される結果であった。実臨床に導入された場合、実薬対照の臨床試験で効果が示されているトリフルリジン・チピラシル(FTD/TPI)+アバスチンの方がフルキンチニブより優先されることが多いと思われるが、その前後の有望な選択肢になりうる。 バイオマーカーによる患者の選別が治療開発のメインストリームにもなりつつある中で、後方治療かつall comerでしっかりと効果を示すことができており、わが国でも早期の臨床導入が待たれる薬剤である。特に、前述のFTD/TPI、レゴラフェニブとの投与順序や適切なタイミングでの移行、それによる薬剤の使い切り戦略がこれまで以上に重要となってくるであろう。現在、QOLデータの解析が進行中であり、それによりフルキンチニブの臨床的有用性の確立がさらに進むと思われる。 1. Li J, JAMA. 2018;319(24):2486-2496.
従来の心臓再同期療法に対して右室同期左室ペーシングの転帰に有意性なし
従来の心臓再同期療法に対して右室同期左室ペーシングの転帰に有意性なし
Adaptive versus conventional cardiac resynchronisation therapy in patients with heart failure (AdaptResponse): a global, prospective, randomised controlled trial Lancet. 2023 Sep 30;402(10408):1147-1157. doi: 10.1016/S0140-6736(23)00912-1. Epub 2023 Aug 24. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】左心室のみを刺激して固有の右脚伝導と融合させる心臓再同期療法 (CRT) の継続的自動最適化 (同期左心室刺激) は、心不全、左脚ブロック、左心室ブロックなどの患者において従来の CRT よりも優れた転帰を提供する可能性があります。そして正常な房室伝導。この研究は、無傷の房室伝導と左脚ブロックを伴う心不全患者を対象に、適応型 CRT と従来型 CRT の臨床転帰を比較することを目的としました。 【方法】 この世界的な前向きランダム化比較試験は、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、北米の 27 か国の 227 の病院で実施されました。対象となる患者は、年齢が18歳以上で、クラス2~4の心不全、駆出率35%以下、QRS持続時間が140ミリ秒以上(男性患者)または130ミリ秒以上(女性患者)の左脚ブロックである。、ベースライン PR 間隔は 200 ミリ秒以下です。患者は、ブロック順列によって適応型 CRT (同期された左心室刺激を提供するアルゴリズム) またはデバイス プログラマーを使用した従来の両心室 CRT にランダムに (1:1) 割り当てられました。すべての患者はデバイスのプログラミングを受けましたが、手順が完了するまでマスクされていました。現場スタッフはグループ割り当てに対してマスクされていませんでした。主要アウトカムは全死因死亡または心不全代償不全に対する介入の複合であり、治療意図のある集団で評価された。安全性事象が収集され、治療意図のある集団で報告されました。この研究は ClinicalTrials.gov (NCT02205359) に登録されており、計上は終了しています。 【調査結果】2014年8月5日から2019年1月31日までに、登録された患者3797人のうち、3617人(95.3%)が無作為に割り当てられた(1810人が適応型CRT、1807人が従来型CRT)。2022年6月23日の第3回中間解析で無益の境界を越え、治験の早期中止が決定された。患者3617人中1568人(43・4%)が女性、2049人(56・6%)が男性であった。追跡調査期間の中央値は59・0か月(IQR 45-72)でした。主要評価項目事象は、適応型CRT群では患者1,810人中430人(60カ月時点でのカプラン・マイヤー発現率23・5%[95%CI 21・3-25・5])、患者1,807人中470人(25カ月時点)で発生した。従来型 CRT 群では 60 ヵ月で 7% [23.5-27.8] (ハザード比 0.89、95% CI 0.78-1.01; p=0.077)。システム関連の有害事象は、適応型 CRT グループの患者 1,810 人中 452 人(25.0%)、従来型 CRT グループの患者 1,807 人中 440 人(24.3%)で報告されました。 【解釈】従来の CRT と比較して、適応型 CRT は、心不全、左脚ブロック、および無傷の房室伝導を有する患者の対象集団における全死因死亡または心不全代償不全による介入の発生率を有意に減少させることはなかった。死亡率と心不全の代償不全率は両方の CRT 療法で低く、この集団では以前の試験の患者よりも CRT に対する反応が大きかったことを示唆しています。 【資金提供】 メドトロニック。 第一人者の医師による解説 本研究の対象集団に対するCRT有効率は 従来の報告より高い 吉賀 康裕 山口大学大学院医学研究科器官病態内科学講師/佐野 元昭 山口大学大学院医学研究科器官病態内科学教授 MMJ.April 2024;20(1):7 心臓再同期療法(CRT)はQRS幅を延長させ、心機能の低下した心不全患者において死亡や心不全入院の減少、運動耐応能や生活の質(QOL)の改善に有効であるが、約30%の無効例が存在することが知られている。左脚ブロックを有するが房室伝導の正常な心不全患者において、連続自動至適化機能を用いて右室興奮に同期して左室ペーシングを行うadaptive CRTは従来のCRT設定の至適化よりも良好な効果をもたらすことが従来の報告から期待されてきた。本論文は、左脚ブロック(QRS幅は男性140ms以上、女性130ms以上 )、正常房室伝導(PR間隔200ms以下)、左室駆出率35%以下、NYHA II ~ IVの心不全患者を対象に実施された国際共同前向き無作為化対照試験(AdaptResponse試験)の報告である。主要評価項目を全死亡または心不全への治療介入の複合エンドポイントとし、adaptive CRT群と対照群である従来のCRT群(心エコーやその他の手段で至適化した群)の間で比較されたが、中間解析にて両群に差を認めないことが判明し、試験は早期中止された。観察期間中央値59カ月で主要エンドポイントはadaptive CRT群で23.5%、対照群で25.7%に発生し、有意差はつかず、また心房細動発生率や臨床評価、QOLの改善度、有害事象の発生率も同程度であった。 本試験の事後解析 ではadaptive CRTは 右室同期左室ペーシングであるため左室・右室ペーシングを行う従来のCRTよりバッテリー消耗を抑制していた。またadaptive CRT群で85%以上のペーシングをされていた患者では、対照群全体よりも主要エンドポイント発生率が低いことが示された。CRTはペーシングによって治療効果を発揮するため、ペーシング率の低い集団においてCRTの治療効果は減弱する。したがってAdaptive CRT群と対照群における85%以上のペーシング率を有する患者群を比較することでペーシング率によらない右室同期左室ペーシングの効果を見たかったところではある。しかしながら、本試験に組み込まれた正常房室伝導を伴った左脚ブロックを有する心機能低下例に対するCRT後の全死亡および心不全治療介入率は、先行試験と比較して最も低く、この結果は今後の臨床試験の基準になるとともに、実地診療において本試験と同じ患者集団に対するCRTは高い有効性を期待できるという点で意義があるといえる。
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