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乳がんの治療法。レビュー
乳がんの治療法。レビュー
Breast Cancer Treatment: A Review JAMA 2019 Jan 22 ;321 (3 ):288 -300 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】乳癌は、生涯を通じて米国女性の12%に診断され、2017年には米国で25万人以上の乳癌の新規症例が診断された。このレビューでは、乳がんの局所および全身療法に関する現在のアプローチと進化する戦略に焦点を当てる。 【観察】乳がんは、エストロゲンまたはプロゲステロン受容体とヒト上皮成長因子2(ERBB2;旧HER2)の分子マーカーの有無に基づいて、ホルモン受容体陽性/ERBB2陰性(70%の患者)、ERBB2陽性(15~20%)、トリプルネガティブ(3つの標準分子マーカーすべてを欠く腫瘍;15%)に大きく分類される。乳がんの90%以上は、診断時に転移を認めません。転移を伴わない場合、治療目標は腫瘍の消失と再発の防止です。トリプルネガティブ乳がんは、他の2つのサブタイプよりも再発しやすく、I期のトリプルネガティブ腫瘍の5年乳がん特異的生存率は85%で、ホルモン受容体陽性およびERBB2陽性では94%~99%となっています。ホルモン受容体陽性の患者さんには内分泌療法を行い、少数派ですが化学療法も行います。ERBB2陽性の患者さんにはERBB2標的抗体または低分子阻害剤と化学療法の併用、トリプルネガティブの患者さんには化学療法単独を行います。非転移性乳癌の局所療法は外科的切除で、腫瘍摘出術を行った場合は術後放射線療法を考慮する。最近では、術前に全身療法を行うことも増えている。術前治療の効果に応じて術後治療を調整することが検討されています。転移性乳がんは、延命と症状緩和を目標に、サブタイプに応じた治療が行われる。転移性トリプルネガティブ乳癌の全生存期間中央値は約1年、他の2つのサブタイプは約5年。 【結論と関連性】乳癌はエストロゲンまたはプロゲステロン受容体の発現と ERBB2 遺伝子増幅により分類される3つの主要な腫瘍サブタイプからなる。この3つのサブタイプは、それぞれ異なるリスクプロファイルと治療戦略を有している。各患者の最適な治療法は、腫瘍のサブタイプ、解剖学的な癌のステージ、患者の嗜好によって異なる。 第一人者の医師による解説 乳がん治療の変遷から学ぶこれからのゲノムによる個別化治療 山内 英子 聖路加国際病院ブレストセンターセンター長 MMJ.June 2019;15(3) 乳がんは世界中で女性が罹患するがんの1位となっている。米国でも生涯において全女性の12% が乳がんに罹患するといわれており、JAMAに乳がん治療のレビューが掲載された。2013年1月 ~18年11月に報告された文献をレビューしたもので、薬物療法に関するレビューのみならず、臨床所見や画像から、さらには人種による違いまでにも言及しており、最新の乳がん診療を知るうえで、 非常にコンパクトにまとめられている。 著者らも「Limitations」で述べているように、米国での現状に即したものになっており、日本の実情とは異なる点もあることは当然加味しての解釈が必要である。その点から、マンモグラムが普及している米国では、半数以上が検診によるマンモグラムの異常が受診契機であり、腫瘤触知は3分の1 である。 乳がんはホルモン受容体の発現の有無、HER2受容体の発現の有無でタイプが分けられ、それによって治療方針が決まってくることは世界共通である。 早くからホルモン受容体の発現の有無によりホルモン療法を加えるか否かという個別化治療が行われてきている。1970年代から化学療法も導入され、時代変遷を経て変化してきている。その後の HER2遺伝子発現をターゲットとした治療法の開発も目をみはるものがあった。また、手術や放射線療法と組み合わせたいわゆる集学的治療も早くから導入されている。さらには、21-Gene Assayのような化学療法の上乗せ効果をみるためのゲノムによるスコアを利用する試みも多くの臨床試験が行われ、実臨床でも用いられている。 このレビューにて乳がん治療の変遷を振り返りながら、ゲノム医療の時代の今、感じることは、乳がんこそが本当に早くからバイオマーカーのタイプに基づく治療法を確立してきた領域と言えよう。まさに、がんが原発の場所による区別ではなく、さまざまな発現遺伝子によって治療法を選択する時代の中で、これからのがん診療におけるゲノムによる個別化医療を学ぶためにも、乳がん治療の変遷を知っておくべきであり、その意味からも JAMAのレビューとして取り上げられている意義深いと思われる。
クローン病における標準インフリキシマブとバイオシミラーの有効性・安全性。フランスにおける同等性試験
クローン病における標準インフリキシマブとバイオシミラーの有効性・安全性。フランスにおける同等性試験
Effectiveness and Safety of Reference Infliximab and Biosimilar in Crohn Disease: A French Equivalence Study Ann Intern Med 2019 Jan 15 ;170 (2 ):99 -107 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】CT-P13は、一部の炎症性関節炎に対する有効性と安全性が確認されたリファレンス製品(RP)であるインフリキシマブのバイオシミラーである。それに基づいてクローン病(CD)の治療薬として承認されたが、CDにおける効果を検討する特別な試験は行われていない。 【目的】インフリキシマブ未使用のCD患者におけるCT-P13とRPの有効性と安全性を比較する。 【デザイン】比較同等コホート試験。 【設定】フランス全国の健康行政データベースSynds(Système National des Données de Santé)(2015年3月1日から2017年6月30日)。[患者]15歳以上で、RP(n=2551)またはCT-P13(n=2499)による治療を開始し、他にインフリキシマブの適応がないCD患者5050例。 【測定】主要評価項目は、死亡、CD関連手術、全原因入院、他の生物学的療法の払い戻しによる複合エンドポイントとした。同等性は、多変量限界CoxモデルにおけるCT-P13とRPのハザード比(HR)の95%CIが事前に指定したマージン(0.80~1.25)内に位置することと定義した。 【結果】全体で、RP群1147例とCT-P13群952例が複合エンドポイントを達成した(それぞれ838例と719例の入院を含む)。主要評価項目の多変量解析では、CT-P13はRPと同等であった(HR、0.92[95%CI、0.85~0.99])。安全性アウトカムでは、重篤な感染症(HR、0.82[CI、0.61~1.11])、結核(HR、1.10[CI、0.36~3.34])、固体または血液がん(HR、0.66[CI、0.33~1.32])は2群間差なしとされた。 【Limitation】SNDSには、関連するすべての臨床データ(例えば、疾患活動性)が含まれていない。 【結論】このリアルワールドデータの解析は、インフリキシマブ未使用のCD患者に対するCT-P13の有効性がRPの有効性と同等であることを示すものであった。安全性については差が認められなかった。 第一人者の医師による解説 バイオシミラーの普及 医療費縮小に寄与 日本人での研究に期待 日比 紀文 北里大学北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センター特任教授 MMJ.June 2019;15(3) 炎症性腸疾患(IBD)と総称される潰瘍性大腸炎およびクローン病(CD)は、以前日本では希少な難治性疾患であったが、現在の患者数は両疾患合わせて27万人超と一般的な疾患となった。根本治療はなく、治療の中心は炎症抑制に加え免疫異常の是正で、寛解導入療法に加え長期の寛解維持療法が求められる(1)。生物学的製剤抗 TNF-α抗体は、慢性炎症性疾患治療のパラダイムシフトを起こしたが、高分子のため低分子ジェネリック薬のような同等な抗体製剤の作製は困難とされていた。しかし技術進歩により、抗体製剤でもオリジナル製品とほとんど違いのないバイオシミラーが実現し、種々の分野で応用されている。IBDでの抗 TNF-α抗体バ イオシミラーは、関節リウマチの臨床試験(2)から外挿されたもので、IBDにおける同等性/同質性に関する本格的な臨床試験はなかった。 本論文は、フランスの全国的な健康行政データベース(SNDS)を用いて、CDにおける有効性と安全性について抗 TNF-α抗体バイオシミラー(CTP13;患者952人)と同オリジナル製品(インフリ キシマブ;1,147人)を比較したコホート研究の報告である。有効性の主要評価項目「死亡・CD関連 手術・入院・他の生物学的製剤の払い戻し」について多変量解析で差がなく、安全性についても「重症 感染症・結核・固形/血液悪性腫瘍」で差はなく、リアルワールドでの成績として両者の同等性を証明した貴重な報告である。 一方、本研究は詳細な臨床データに欠け、選択基準がまったく偏っていないわけではないことから、 ランダム化二重盲検試験が求められる。最近、国際的なランダム化二重盲検試験の結果が報告され(3)、 6週での寛解導入において差はなく、30週後にオリジナル製品継続またはバイオシミラーへのスイッチ、バイオシミラー継続またはオリジナル製品へスイッチの4群でも治療効果に差がなかった。安全性の差もなく、同等性が裏付けられた。 生物学的製剤は今後も使用が増加する傾向にあるが、価格が高価であることより医療経済的には問題視されている。同等性をもつバイオシミラーの普及は医療費の縮小に寄与することが考えられ、今後大いに期待される。IBDでもすでに北欧や英国を中心に欧州の多くの国でバイオシミラーが汎用されるようになってきている。 一方、日本ではIBDに対して医療費支援があり、 バイオシミラー使用による患者側および医療提供側への利点が少なく、現状では欧米に比べてどれだけ利用されうるか判然としていない。しかし、厚生労働省でもジェネリック薬と同様に今後バイオシミラー使用を勧めており、日本人でのオリジナル製品との同等性が証明されれば徐々に使用が増加するものと考えられる。 1. 日比紀文、他.日本臨床 2017;75(3):364-369 2. Yoo DH, et al. Ann Rheum Dis. 2013;72(10):1613-1620. 3. Ye BD, et al. Lancet. 2019;393(10182):1699-1707.
経口抗凝固薬およびプロトンポンプ阻害薬併用療法と上部消化管出血による入院の関連性。
経口抗凝固薬およびプロトンポンプ阻害薬併用療法と上部消化管出血による入院の関連性。
Association of Oral Anticoagulants and Proton Pump Inhibitor Cotherapy With Hospitalization for Upper Gastrointestinal Tract Bleeding JAMA 2018 Dec 4 ;320 (21 ):2221 -2230 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】抗凝固薬の選択とプロトンポンプ阻害薬(PPI)併用療法は、経口抗凝固薬治療の頻度が高く重篤な合併症となりうる上部消化管出血のリスクに影響する可能性がある。 【目的】個々の抗凝固薬使用患者における上部消化管出血による入院の発生率をPPIコセラピー有無で比較し、基礎的な消化管出血リスクによる変動を明らかにする。 【デザイン、設定および参加者】2011年1月1日から2015年9月30日までのメディケア受益者における後ろ向きコホート調査。 【曝露】アピキサバン、ダビガトラン、リバーロキサバン、ワルファリンにPPIコセラピーを併用または併用しない。 【主要アウトカムと測定】上部消化管出血による入院:抗凝固剤治療1万人年当たりの調整済み発生率とリスク差(RD)、発生率比(IRR)。 【結果】コホートに含まれる経口抗凝固薬治療の新規エピソードは1,643 123例(平均[SD]年齢76.4[2.4]歳,追跡期間651 427人年[56.1%]は女性,適応は心房細動で870 330人年[74.9%])であった。)PPI共治療を行わない754 389治療人年の間、上部消化管出血による入院の調整後発生率(n = 7119)は、1万人年当たり115人(95%CI、112-118)であった。リバーロキサバン(n=1278)の発生率は1万人年当たり144人(95%CI、136-152)であり、アピキサバン(n=279、1万人年当たり73人、IRR、1.97[95%CI、1.73-2.25]、RD、70.9 [95% CI, 59.1-82.7] )、ダビガトラン(n = 629; 1万人年あたり120人; IRR, 1.19 [95% CI, 1.08-1.32]; RD, 23.4 [95% CI, 10.6-36.2] )、およびワルファリン(n = 4933; 1万人年あたり113人; IRR, 1.27 [95% CI, 1.19-1.35]; RD, 30.4 [95% CI, 20.3-40.6] )であった。アピキサバンの発生率は,ダビガトラン(IRR,0.61 [95% CI,0.52-0.70]; RD,-47.5 [95% CI,-60.6~34.3] )およびワルファリン(IRR,0.64 [95% CI,0.57-0.73]; RD,-40.5 [95% CI,-50.0~31.0] )のそれよりも著しく低率であった。PPIコセラピーを用いた抗凝固療法(264 447人年;1万人年あたり76人)をPPIコセラピーを用いない治療と比較すると,上部消化管出血による入院(n=2245)のリスクは,全体で低かった(IRR,0.66 [95% CI, 0.62-0.69] )、アピキサバン(IRR, 0.66 [95% CI, 0.52-0.85]; RD, -24 [95% CI, -38 to -11])、ダビガトラン(IRR, 0.49 [95% CI, 0.41-0.59]; RD, -61.1 [95% CI, -74.8 to -47.4]),リバーロキサバン(IRR,0.75 [95% CI,0.68-0.84]; RD,-35.5 [95% CI,-48.6 to -22.4]),およびワルファリン(IRR,0.65 [95% CI,0.62-0.69]; RD,-40.3 [95% CI,-44.5 to -34.2])であることがわかった。 【結論と関連性】経口抗凝固薬治療を開始した患者のうち,上部消化管出血による入院の発生率は,リバーロキサバンを処方された患者が最も高く,アピキサバンを処方された患者が最も低いことが示された。また、各抗凝固薬において、上部消化管出血による入院の発生率は、PPIコセラピーを受けている患者さんで低くなっていました。これらの知見は,抗凝固薬を選択する際のリスクとベネフィットの評価に役立つと考えられる。 第一人者の医師による解説 PPI併用は有効 経口抗凝固薬使用の指標になる成果 川邊 隆夫 かわべ内科クリニック院長 MMJ.June 2019;15(3) 直接経口抗凝固薬(DOAC)は出血のリスクを高めるが、薬剤の種類による差異は十分には検討されていない。本研究では、特に上部消化管出血について、3種類のDOACとワルファリンについて、リスクを比較検討し、プロトンポンプ阻害薬(PPI)の 併用の有用性について検討している。 この研究は、メディケアの膨大なデータ(2011 年1月1日~15年9月30日)を用いた、後ろ向きコホート研究である。この期間1,643,123人の 患者が、のべ1,713,183回、新たに経口抗凝固薬の投与を開始しており、平均年齢は76.4歳、女性の割合は56.1%(人・年で計算)、原疾患は心房細動が74.9%(人・年で計算)であった。 PPI非併用754,389人・年で、上部消化管出血 による入院は7,119件、10,000人・年あたりの 調整発生率※は115(95% CI, 112~118)であった。経口抗凝固薬の薬剤別では、リバーロキサバンでは144(/10,000人・年)、アピキサバン 73、 ダビガトラン 120、ワルファリン 113であった。 リバーロキサバンは、アピキサバン(発生率比 1.97、 リスク差 70.9)、ダビガトラン(1.19、23.4)、ワ ルファリン(1.27、30.4)より有意に高かった。アピキサバンの入院発生率は、ダビガトラン(発生率比 0.61、リスク差 -47.5)、ワルファリン(0.64、 -40.5)よりも有意に低かった。 経口抗凝固薬 とPPIを 併用した264,447人・ 年では、上部消化管出血による入院が2,245件、 76/10,000人・年で、PPI非併用より有意に低頻度(発生率比 0.66、リスク差 -39.5)であった。 薬剤別の検討でも、上部消化管出血による入院は PPI併用例で低頻度であった。それぞれの発生率比、 リスク差は、リバーロキサバン(0.75、-35.5)、 アピキサバン(0.66、-24)、ダビガトラン(0.49、 -61.1)、ワルファリン(0.65、-39.3)であった。 また、上部消化管出血のリスクスコアで層別化した検討でも、各階層でPPI併用例の入院発生率は低値であった(リスク最小の層のみ有意差を認めていない)。 本研究で、アピキサバンが最も安全な薬剤であることが示された(これは、これまでの研究に一致する結果である)。また、PPIの併用は、経口抗凝固薬の種類によらず、リスクスコアの高低によらず、 上部消化管出血を減少できることも示された。 しかし、本研究は、米国の高齢者向け保険であるメディケアのデータを解析したコホート研究である。対象の90%が白人であり、アジア人はほとんど含まれていない。この研究の結論を日本でそのまま受け入れてよいかどうかは、もう少し検討する必要があるが、経口抗凝固薬を使用する際の指標となるであろうと思われる。 ※:調整発生率はポアソン回帰から算出されており、件数÷人年とは少し異なる値となっている点に留意
ペニシリンアレルギーの評価と管理。総説。
ペニシリンアレルギーの評価と管理。総説。
Evaluation and Management of Penicillin Allergy: A Review JAMA 2019 Jan 15 ;321 (2 ):188 -199 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】β-ラクタム系抗生物質は、最も安全で最も有効な抗生物質の一つである。多くの患者がこれらの薬剤に対するアレルギーを報告し、その使用が制限されているため、抗菌薬耐性や有害事象のリスクを高める広域スペクトルの抗生物質が使用されている。 【観察】米国人口の約10%がβ-ラクタム薬ペニシリンに対するアレルギーを報告しており、高齢者や入院患者で報告率が高くなる。多くの患者がペニシリンに対してアレルギーがあると報告していますが、臨床的に重要なIgE介在型またはTリンパ球介在型のペニシリン過敏症はまれです(5%未満)。現在、IgE介在性ペニシリンアレルギーの割合は、非経口ペニシリンの使用が減少していること、およびアモキシシリン経口剤に対する重度のアナフィラキシー反応がまれであることから、減少している可能性があります。IgE介在型ペニシリン・アレルギーは時間の経過とともに減少し、10年後には80%の患者が耐性を獲得しています。ペニシリンとセファロスポリン系薬剤の交差反応が起こるのは約2%で、以前に報告された8%よりも少ない。患者の中には、ペニシリンに対するアレルギー反応を発症するリスクが低いことを示唆する病歴を持つ者もいます。低リスクの病歴には、胃腸症状などの孤立した非アレルギー症状を持つ患者、またはペニシリン・アレルギーの家族歴のみを持つ患者、発疹を伴わないそう痒症の症状、IgE介在反応を示唆する特徴を持たない遠隔(10年超)の未知の反応が含まれます。中等度リスクの既往歴には、蕁麻疹またはその他のそう痒性皮疹、IgE介在性反応の特徴を持つ反応が含まれます。高リスクの既往歴には、アナフィラキシー、ペニシリン皮膚テスト陽性、ペニシリン反応の再発、複数のβ-ラクタム系抗生物質に対する過敏症がある。ペニシリンに対するアレルギーが報告され、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌やバンコマイシン耐性腸球菌のリスクを含む抗菌薬耐性リスクを高める広域抗菌薬の使用につながる場合、抗菌薬スチュワードシップの目標は損なわれてしまう。また、広域抗菌薬はクロストリジウム・ディフィシル(別名クロストリジウム・ディフィシル)感染症の発症リスクも増加させます。アモキシシリンの直接投与は、低リスクのアレルギー歴のある患者に適しています。中等度リスクの患者は、ペニシリン皮膚試験で評価することができます。この試験の陰性的中率は95%を超え、アモキシシリン試験と併用することで100%に近づきます。ペニシリンアレルギーの評価を行う臨床医は、利用可能なリソースからどのような方法がサポートされているかを確認する必要がある。 【結論と関連性】多くの患者がペニシリンに対してアレルギーがあると報告しているが、臨床的に重大な反応を示す患者は少ない。ペニシリンや他のβ-ラクタム系抗生物質を使用しないことを決定する前にペニシリンアレルギーを評価することは、抗菌薬スチュワードシップにとって重要な手段である。 第一人者の医師による解説 臨床現場でのアレルギーの存在確認が重要 宮下 修行 関西医科大学内科学第一講座呼吸器感染症・アレルギー科診療教授 MMJ.June 2019;15(3) ペニシリンアレルギーは有名な言葉で、この記載が診療記録にある患者に対してβ-ラクタム薬は禁忌であると解釈している人が多い。そのため、ここ数年ペニシリンアレルギーに関する研究が実施され、誤った考え方を是正するデータが蓄積されている。本論文は、これまでの研究結果をまとめ、 ペニシリンアレルギーを申告する患者への対応を報告したものである。 ペニシリンアレルギーと記載されている患者の90%以上は、ペニシリンに対する即時型の過敏反応を起こさないことが報告されている。その大きな理由の1つとして、子どものウイルス感染症に不要な抗菌薬が投与された場合、ウイルス性発疹をアレルギーと誤認する、いわゆる誤診が挙げられる。 親の申告で「ペニシリンアレルギーの既往がある」 とされた小児を調べた研究結果が報告されている(1)。 小児救急を受診した小児597人(4~18歳)のうち発疹、嘔吐、下痢などの低リスクのペニシリンアレルギー症状のある100人を対象に、①皮膚試験 ②微量のペニシリンを注射する皮内反応試験③厳重な監視下でペニシリンを服用させる経口負荷試験、3種類の検査を実施。結果は、すべての小児で ペニシリンアレルギー反応は認められなかった。 同時期に成人でも同様の研究結果が報告されている。ただし全症例が誤認ではなく、当初は過敏性があったものの後に消失した症例も含まれる(2)。 アレルギー抗体(IgE)による急性ペニシリン反応が認められた患者でも、時間とともに抗体は減少し消失する。したがって、10年後にはほとんどの場合、皮膚試験は陰性になる。ペニシリン皮膚試験が陰性化した患者は、将来ペニシリンや他のβ-ラクタム薬に曝露しても、再びアレルギーを起こすリスクはごくわずかである。 実臨床では、ペニシリンアレルギーの記載のある患者に対して、β-ラクタム薬は使用せず、より広域スペクトルの抗菌薬が選択される場合が多い。 ペニシリンアレルギーという記載が公衆衛生面に及ぼす影響を、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)感染とClostridium difficile(CD)感染のリスクという観点から評価した症例対照研究では、 ペニシリンアレルギー記載群で両感染症の発症率が高かったと報告されている(3)。 以上のようにペニシリンアレルギー記載例は、より広域スペクトルの抗菌薬に不必要に曝露することがあり、耐性菌のリスクを増大させ、医療費を増加させる。ペニシリンアレルギー申告者のほとんどは、ペニシリンに対して忍容性があるため、臨床現場ではアレルギーの存在を確認することが重要であると結論付けている。 1. Vyles D, et al. Pediatrics. 2017;140(2). pii:e20170471. 2. Trubiano JA, et al. JAMA. 2017;318(1):82-83. 3. Blumenthal KG, et al. BMJ. 2018;361:k2400.
肺塞栓症の救急外来患者に対する安全な外来管理の増加。プラグマティックな対照試験。
肺塞栓症の救急外来患者に対する安全な外来管理の増加。プラグマティックな対照試験。
Increasing Safe Outpatient Management of Emergency Department Patients With Pulmonary Embolism: A Controlled Pragmatic Trial Ann Intern Med 2018 Dec 18 ;169 (12):855 -865 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】救急部(ED)で急性肺塞栓症(PE)を発症した低リスク患者の多くは、外来診療が可能であるにもかかわらず、入院している。在宅退院の阻害要因の一つは、どの患者が安全に入院を見送ることができるかを特定することの難しさである。 【目的】急性肺塞栓症患者のケア現場でのリスク層別化と意思決定を促進する統合電子臨床判断支援システム(CDSS)の効果を評価する。 【デザイン】対照的プラグマティック試験である。(ClinicalTrials. gov: NCT03601676)。 【設定】統合医療提供システム(Kaiser Permanente Northern California)の地域ED全21施設。 【患者】急性PEを有する成人ED患者。【Intervention】便宜上選択した10施設の介入施設で、16か月の試験期間の9か月目(2014年1月から2015年4月)に多角的な技術・教育介入を行い、残りの11施設を同時対照として使用。 【測定法】主要アウトカムとしてEDまたはEDに基づく短期(24時間未満)外来観察ユニットからの自宅退院を挙げた。有害事象は、5日以内のPE関連症状による再診、30日以内の静脈血栓塞栓症の再発、大出血、全死因死亡であった。 【結果】介入施設でPEと診断された適格患者881名と対照施設822名において、介入施設では調整後の自宅退院が増加したが(介入前17.4%、介入後28.0%)、対照施設では同時に増加せず(介入前15.1%、介入後14.5%)、差分法にて比較した。差分比較では11.3%ポイント(95%CI、3.0~19.5%ポイント、P = 0.007)であった。CDSSの導入に伴うPEに関連した5日間の再診や30日間の主要な有害転帰の増加は認められなかった。 【結論】急性PEを有するED患者に対する医療現場の意思決定を医師が支援するCDSSの導入と構造的な推進により、外来管理が安全に増加した。 【Primary funding source】Garfield Memorial National Research FundとThe Permanente Medical Group Delivery Science and Physician Researcher Programsを基に作成。 第一人者の医師による解説 妥当な結論 ガイドラインの内容に保証を与える有意義な研究 佐藤 徹 杏林大学病院循環器内科教授 MMJ.June 2019;15(3) 本論文は、世界中のガイドラインで使用されている急性肺塞栓症の重症度指標(Pulmonary Embolism Severity Index;PESI)スコアが 低値で在宅治療の除外項目に該当しない患者を入院させずに在宅治療とするデジタル判定戦略(integrated electronic clinical decision support system;CDSS)の妥当性と安全性を検討したeSPEED試験の報告である。米国の21の 一般病院で前向きに、CDSSを使う病院と使わない病院、使う前と後で比較しており、結論はCDSSを使用した方が在宅治療の割合が高く、安全性は変わらなかった、というものである。 PESIは10の臨床的特徴とバイタルサインからなり、その合計得点によりⅠ~Ⅴに重症度が分類され、ⅠとIIで在宅治療が推奨される。介入前8カ 月の 観察期間の後、16カ 月 のCDSSによる 技術的・教育的介入期間があり、介入後8カ月の観察期間が設けられている。11病院がCDSSを使用し、10病院が使用していない。使用した病院はCDSS を病院内で推進できる指導者がいる病院としており、無作為に決められたものではない。使用した病院の患者の方が結果的にやや軽症であった。介入群881人、対照群822人の患者が対象となり、 在宅治療を受けた割合は前者で17.4%、後者が 15.1%であったが、前者の在宅治療達成率は介入 期間後に28%へと有意に上昇した。5日以内の再入院が介入群で介入前9人、介入後8人、対照群でそれぞれ6人と3人で、1カ月以内の有害事象も両群とも1人とわずかであった。 CDSSを使うかどうかは担当医師がこのアルゴリズムにアクセスするかどうかで決まり、実際3 分の2の患者で使用されていた。判定は「在宅/入院を推奨する」という形で提示され、最終決定は主治医が行うようになっている。このシステムの教育と使用率向上のために複数の手段が講じられおり、多施設研究ながら細かいところまで方法の均一性が図られている。 筆者の評価は、結果については先行研究(1)のとおりでPESIが低値で除外項目を考慮すれば在宅治療で構わないという結論は妥当であり、ガイドラインの内容に保証を与える有意義な研究と考える。 それにしても、治療法の有効性に関する前向き試験の施行能力は欧米とますます差がついていると感じ、新しい治療法の試験施設として日本が一層避けられる現状をみると寂しくなる。欧米への追従がすべて正しいとは言えないが、新しい治療法の エビデンス作りは日本でも必要なものと私は思う。 1. Vinson DR, et al. Appl Clin Inform. 2015;6(2):318-333.
急性心筋梗塞の誘因としてのクリスマス、国民の祝日、スポーツイベント、時間的要因。SWEDEHEART観察研究1998-2013。
急性心筋梗塞の誘因としてのクリスマス、国民の祝日、スポーツイベント、時間的要因。SWEDEHEART観察研究1998-2013。
Christmas, national holidays, sport events, and time factors as triggers of acute myocardial infarction: SWEDEHEART observational study 1998-2013 BMJ 2018 Dec 12 ;363:k4811 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】心筋梗塞の誘因としての概日リズムの側面、国民の祝日、主要なスポーツイベントを研究する。 【デザイン】全国冠動脈治療室登録、SWEDEHEARTを用いた後ろ向き観察研究 【設定】スウェーデン 【参加者】1998年から2013年までにSWEDEHEARTに報告された心筋梗塞283 014例。全例で症状発現日が記録され、88%で分単位の時刻が記録された。 【介入】クリスマス/ニューイヤー、イースター、夏至の祝日に症状発現した心筋梗塞を特定した。同様に、FIFAワールドカップ、UEFA欧州選手権、冬季・夏季オリンピック開催中に発生した心筋梗塞も同定した。休日の前後2週間を対照期間とし、スポーツイベントについては大会の前後1年間の同時期を対照期間とした。サーカディアン分析とサーカセプタン分析は、日曜日と24時を基準日と時間として行い、他のすべての日と時間とを比較した。発生率比はカウント回帰モデルを用いて算出した。 【MAIN OUTCOME MEASURES】心筋梗塞の日数 【RESULTS】クリスマスと真夏の休日は心筋梗塞の高いリスクと関連していた(発生率比 1.15, 95%信頼区間 1.12~1.19, P<0.001、および 1.12, 1.07~1.18, P<0.001, それぞれ)。最も高い関連リスクはクリスマスイブに観察された(1.37、1.29~1.46、P<0.001)。イースター休暇やスポーツイベント時には、リスクの増加は観察されなかった。心筋梗塞のリスクには循環器系と日内変動が認められ、早朝と月曜日にリスクが高かった。75歳以上の高齢者、糖尿病や冠動脈疾患の既往のある患者でより顕著であった。 【結論】16年間の心筋梗塞の入院患者を対象とし、症状発現を分単位で記録したこの全国実地調査において、クリスマスと真夏日は、特に高齢者や病気の患者で心筋梗塞リスクが高く、脆弱者における外部トリガーの役割を示唆している。 第一人者の医師による解説 ナショナルレジストリにより詳細なリスク解析が可能に 西村 邦宏 国立循環器病研究センター予防医学疫学情報部長 MMJ.June 2019;15(3) 心筋梗塞、心停止については、季節性、日内変動の影響がリスクとしてよく知られている。特に特定の休日(クリスマス)などについては多くの研究がなされている。しかし、先行研究では心筋梗塞による死亡、救急搬送情報、医療保険の請求データなど診断の正確性および発症時の詳細な臨床情報を欠く点に問題があった。 本研究はスウェーデンのナショナルレジストリであるSWEDEHEART(Swedish Web System for Enhancement and Development of Evidence- Based Care in Heart Disease Evaluated According to Recommended Therapies)を用いて、1998~2013年に報告された283,014人の心筋梗塞患者を対象に、クリスマスイブ、クリスマス当日、大晦日、新年などの特定休日、およびスポーツイベント(サッカー世界・ 欧州選手権、オリンピック)の発症への影響を検討した研究である。 本研究の最大の強みは、前向き登録によるナショナルレジストリによる検討により、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)および 非 ST上昇型心筋梗塞 (NSTEMI)の区別が明確で、喫煙、糖尿病などの危険因子および経皮的冠動脈形成術(PCI)/冠動脈バイパス術(CABG)などの既往歴についても正確な点である。特にSTEMIとNSTEMIを明確に区別した報告はなく画期的な内容となっている。 対象者の平均年齢は71.7歳、男性が64%、34%がSTEMI による発症であった。クリスマスイブ、クリスマス、 元日およびミッドサマー(お盆に相当する7月の休日)に特にリスクが高く、病型としてはNSTEMI が特に高かった。他の研究と異なりスポーツイベントとの関連は明確ではなく、月曜日および朝8 時前後がSTEMI/NSTEMIともに発症リスクが高いことが示された。また本研究の特徴として、豊富な背景因子の情報の解析から、周期性の変動による影響を受けやすい高リスクな集団として、75歳以上、糖尿病患者および冠動脈疾患の既往のある患者が挙げられている。 日本においても、院外心停止の悉皆登録であるウツタインレジストリや日本心血管インターベンション治療学会(CVIT)内登録などから元日、季節、時間帯について同様の報告がなされている。脳卒中・循環器疾患対策基本法が2018年に成立し、循環器疾患登録に関する検討が進められているが、欧米諸国のレジストリと同等の悉皆性および質の高い臨床情報をともに備えたレジストリの整備はこれからの状況である。近年急速に進歩しつつある人工知能の進歩などを取り入れたビッグデータの整備が進むことにより、本研究と同様な質の高いエビデンスの構築が行われることを期待したい。
心不全患者における心房細動のカテーテルアブレーション。無作為化対照試験のメタアナリシス。
心不全患者における心房細動のカテーテルアブレーション。無作為化対照試験のメタアナリシス。
Catheter Ablation of Atrial Fibrillation in Patients With Heart Failure: A Meta-analysis of Randomized Controlled Trials Ann Intern Med 2019 Jan 1 ;170 (1):41 -50. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 この記事は訂正されました。原著(PDF)はSupplementとして本論文に添付されています。 【背景】心房細動(AF)と心不全(HF)はしばしば併存し、罹患率と死亡率のリスク上昇と関連している。 【目的】成人AFおよびHF患者において、カテーテルアブレーションと薬剤治療の有益性と有害性を比較することである。 【データ入手元】ClinicalTrials. gov、PubMed、Web of Science(Clarivate Analytics)、EBSCO Information Services、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Google Scholar、2005年1月1日から2018年10月1日までの各種学術会議セッションを対象とする。 【研究選択】英語で発表された、少なくとも6ヶ月のフォローアップがあり、成人の心房細動とHFにおけるカテーテルアブレーションと薬物療法の臨床転帰を比較した無作為化対照試験(RCT)。 【データ抽出】研究者2名が独立してデータを抽出し、研究の質を評価。 [Data Synthesis] 775例を含むRCT 6例が包括基準に合致した。薬物療法と比較して、心房細動アブレーションは全死亡(9.0% vs. 17.6%;リスク比[RR], 0.52[95% CI, 0.33~0.81]) およびHF入院(16.4% vs. 27.6%; RR, 0.60[CI, 0.39~0.93]) を減少させた。アブレーションにより,左室駆出率(LVEF)(平均差,6.95%[CI,3.0%~10.9%]),6分間歩行試験距離(平均差,20.93 m[CI,5.91~35.95 m]),ピーク酸素消費量(Vo2max)(平均差,3.95%[CI])が改善された.17 mL/kg/分[CI, 1.26~5.07 mL/kg/分])、QOL(Minnesota Living with Heart Failure Questionnaireスコアの平均差、-9.02点[CI, -19.75~1.71 点])であることがわかりました。重篤な有害事象はアブレーション群でより多かったが、アブレーション群と薬物療法群の差は統計的に有意ではなかった(7.2% vs 3.8%;RR、1.68 [CI, 0.58~4.85])[Limitation]Results driven primarily by 1 clinical trial, possible patient selection bias in the ablation group, lack of patient-level data, open-label trial design, and heterogeneous follow-up length among trials. 【結論】カテーテルアブレーションは、全死亡、HF入院、LVEF、6分間歩行試験距離、Vo2max、QOLの改善において従来の薬物療法より優れており、重篤な有害事象は統計的に有意に増加しなかった。 【Primary funding source】該当なし。 第一人者の医師による解説 RCTが4件進行中 アブレーション効果がより明確になることを期待 井上 博 富山県済生会富山病院顧問 MMJ.June 2019;15(3) 心房細動は、自覚症状、心臓ポンプ機能の低下、 心原性塞栓症、生命予後の悪化など、さまざまな不利益をもたらす。そこで、心房細動を抗不整脈薬で抑制(リズムコントロール)すれば、心拍数をコントロールするだけの治療(レートコントロール)に 比べメリットが得られるのではないかという仮説を検証するために、1990年代後半にいくつかの比較試験が行われた(例、AFFIRM(1))。しかし、いずれの試験でも治療効果の差は認められなかった。抗不整脈薬のもつ悪影響(心機能抑制、催不整脈作用)が原因と考えられた。心不全は心房細動を誘発し、 心房細動は心機能を抑制するという悪循環が形成される。また抗不整脈薬は心不全では使用しにくいという限界がある。心房細動に対するカテーテル・ アブレーションの有効性(洞調律維持効果)が確立されて以来、心不全を対象とした小規模な無作為比較試験(RCT)で、アブレーションが薬物療法に比べ心機能改善効果に優れ生命予後も良いことが示された。 そこで、本研究では心不全を合併した心房細動に対するアブレーションの効果を薬物療法(リズム、 レートコントロール)と比較したRCT 6件を対象にメタアナリシスを行った。結果、アブレーション群では薬物療法群に比べ、全死亡や心不全による入院の減少、左室駆出率や6分間歩行距離、QOLスコアの改善が認められた。 本研究はRCTのメタアナリシスを用いており、 方法論的にはエビデンスレベルは最高位にある。 しかしながら、患者数は全体で775人に過ぎず、1 試験当たりの人数も50~363人とばらつきが大きい。心不全による入院や左室駆出率、6分間歩行 距離の評価対象は500人余りかそれ以下で十分は言えない。さらにメタアナリシス全体の結果が最大の患者数をもつ1つの試験に大きく影響されていることにも注意が必要である。 心不全に限らず心房細動アブレーションの効果を検討したスウェーデンのコホート研究(対象 5,000人)では、薬物療法に比べてアブレーションは全死亡を抑制している(2)。最近のRCT(対象約 2,000人 )の結果でも、実際にその治療を受けた患者対象の解析において、アブレーションは薬物療 法に比べ死亡率を有意に抑制した(3)。 高周波エネルギーを用いた古典的な心房細動アブレーションに加えて、冷凍アブレーションやレーザーアブレーションといった新たな手技も導入されつつある。さらに心不全を合併した心房細動に対するアブレーションの効果を検討するRCTが4 件進行中である。近い将来、アブレーションの位置付けはより明確になることが期待される。 1. AFFIRM Investigators. N Engl J Med. 2002;347(23):1825-1833. 2. Friberg L, et al. Eur Heart J. 2016;37(31):2478-2487. 3. Packer DL, et al. JAMA. 2019;321(13):1261-1274.
回復した拡張型心筋症患者における心不全の薬物療法の中止(TRED-HF):非盲検試験、パイロット試験、無作為化試験。
回復した拡張型心筋症患者における心不全の薬物療法の中止(TRED-HF):非盲検試験、パイロット試験、無作為化試験。
Withdrawal of pharmacological treatment for heart failure in patients with recovered dilated cardiomyopathy (TRED-HF): an open-label, pilot, randomised trial Lancet 2019 Jan 5 ;393 (10166 ):61 -73 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 症状と心機能が回復した拡張型心筋症患者は、しばしば薬剤を中止してよいかどうかを尋ねる。このような状況での治療中止の安全性は不明である。 【方法】拡張型心筋症の既往があり、現在は無症状で、左室駆出率(LVEF)が40%未満から50%以上に改善し、左室拡張末期容積(LVEDV)が正常化し、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NTプロBNP)濃度が250ng/L未満である患者において、心不全薬の段階的中止の影響を調べるためにオープンラベル、パイロット、ランダム化試験を実施した。英国内の病院のネットワークから患者を募集し、1つのセンター(ロイヤルブロンプトン・アンド・ハレフィールドNHS財団トラスト、英国ロンドン)で評価を行い、段階的な治療中止または治療継続に1対1の割合で無作為に割り付けた。6ヵ月後、治療継続群の患者さんは、同じ方法で治療が中止されました。主要評価項目は、6ヶ月以内の拡張型心筋症の再発とし、LVEFが10%以上低下し50%未満となる、LVEDVが10%以上上昇し正常範囲より高くなる、NT-pro-BNP濃度が2倍上昇し400ng/L以上、または心不全の臨床症状で定義し、その時点で治療を再確立させた。主要解析はintention to treat。本試験はClinicalTrials. govに登録されており、番号はNCT02859311。 【FINDINGS】2016年4月21日から2017年8月22日の間に、51人の患者が登録された。25名が治療中止群に、26名が治療継続群に無作為に割り付けられた。最初の6カ月間で、治療中止群に無作為に割り付けられた11人(44%)が主要評価項目である再発を示したのに対し、治療継続群に割り付けられた患者は1人もいなかった(カプラン・マイヤー推定イベント率45-7%[95%CI 28-5-67-2];p=0-0001 )。6ヵ月後、最初に治療継続と割り付けられた患者26人のうち25人(96%)が治療中止を試みた。その後の6ヵ月間に、9人の患者が主要評価項目である再発を示した(Kaplan-Meier推定イベント発生率36-0%[95%CI 20-6-57-8])。死亡はいずれの群でも報告されず,治療中止群では3つの重篤な有害事象が報告された:非心臓性胸痛による入院,敗血症,待機的手術。 【解釈】拡張型心筋症から回復したとみなされた患者の多くは,治療中止後に再発する。再発の確実な予測因子が明らかになるまでは、治療を無期限に継続すべきである。 資金提供】英国心臓財団、Alexander Jansons財団、ロイヤルブロンプトン病院とインペリアルカレッジ・ロンドン、インペリアルカレッジ生物医学研究センター、Wellcome Trust、およびRosetrees Trust。 第一人者の医師による解説 心機能の改善 回復か軽快かを鑑別する臨床指標の抽出を期待 猪又 孝元 北里大学北里研究所病院循環器内科教授 MMJ.June 2019;15(3) 今から遡ること30年ほど前、私が医学生だったころ、心筋細胞は再生能力がないから、心不全を起こす悪くなった心臓は決して良くならない、そう教わった。しかし、医師になり、循環器診療へと専門の道を進めたころ、その教えは必ずしも正しくないことを知った。致死の病とみなされていた拡張型心筋症による重症心不全患者に、当時禁忌として扱われていたβ遮断薬を導入することで、心機能が劇的に改善する経験をするようになったからである。現在、左室逆リモデリングと呼ばれるこの現象は、後に加わった心臓再同期療法とともに、なかでも拡張型心筋症で容易に観察できる。当施設からの報告でも、β遮断薬を含む至適薬物療法のみで、約半数の拡張型心筋症に左室逆リモデリングがもたらされる(1)。今や若い医師たちにとって拡張型心筋症は、安全パイとすら思われている節すらある。 喉元過ぎれば熱さを忘れる。治療が奏効し、症状も消え失せ、心機能の劇的改善のデータに歓喜し、その状態が何年も持続すると、「こんなに元気なのに、いったいいつまでこのクスリを飲み続ける必要があるのか」と思うのが患者心理である。一方、服薬の自己中断により、改善した心機能が再度悪化をきたす拡張型心筋症を経験した医師は少なくなく、原則として「一生飲み続ける」ことを患者に勧めている。しかし、系統立ててこれを証明した報告 は皆無であった。 本研究では、51人の拡張型心筋症患者を登録し、 β遮断薬などの心不全治療を継続する群または漸減後に中止する群にランダム化し、服薬中止群の4 割に及ぶ患者において半年間で心機能が有意に悪化する現象を見いだした。より長期に観察すれば、死亡や心不全入院などのイベント発生も観察されたであろう。これまで多くの医師が経験則で患者指導していた内容は、パイロット研究とはいえ正しいことがはじめて実証された。 拡張型心筋症において心筋生検や心臓 MRIで心筋の障害や線維化が高度と評価されても、β遮断薬の導入によってときに心機能データは正常値すらたたき出す(2)。ただし、心筋が傷んでいることは事実である。recovery(回復)とremission(軽快)とはときに混同されがちだが、左室逆リモデリングはあくまでremissionに過ぎないと解釈すべきである(3)。一方、自然回復のような臨床経過を辿る拡張型心筋症も経験され、このような症例では薬物療法の終了が期待できる。同じく心機能が改善した症例間で、recoveryとremissionを鑑別する臨床指標の抽出が望まれる。 1. Ikeda Y, et al. Heart Vessels. 2016;31(4):545-554. 2. Ishii S, et al. Heart Vessels. 2016;31(12):1960-1968. 3. Nabeta T, et al. Heart Vessels. 2019;34(1):95-103.
頭部CTスキャンにおける重要な所見の検出のためのディープラーニングアルゴリズム:レトロスペクティブスタディ。
頭部CTスキャンにおける重要な所見の検出のためのディープラーニングアルゴリズム:レトロスペクティブスタディ。
Deep learning algorithms for detection of critical findings in head CT scans: a retrospective study Lancet 2018 Dec 1 ;392 (10162):2388 -2396. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】非造影頭部CTスキャンは、頭部外傷や脳卒中の症状を持つ患者の初期画像診断の現在の標準である。我々は,これらのスキャンから以下の重要な所見を自動検出するための一連の深層学習アルゴリズムの開発と検証を目的とした:頭蓋内出血とその種類(すなわち,胸膜内,脳室内,硬膜下,硬膜外,くも膜下),頭蓋底骨折,正中線移動,および腫瘤効果。 【方法】2011年1月1日から2017年6月1日の間に,インドの約20の施設から,頭部CTスキャン313件とその臨床報告書を含むデータセットをレトロスペクティブに収集した。このデータセットのランダムに選択された部分(Qure25kデータセット)を検証に使用し、残りはアルゴリズムを開発するために使用された。追加の検証用データセット(CQ500データセット)は、開発およびQure25kデータセットに使用した施設とは異なる施設から2つのバッチで収集した。術後スキャンと7歳未満の患者のスキャンは除外した。Qure25k と CQ500 のデータセットでは,それぞれオリジナルの臨床放射線報告書と 3 人の独立した放射線科医のコンセンサスをゴールドスタンダードとみなした.アルゴリズムの評価には,主に受信者動作特性曲線下面積(AUC)が用いられた。Qure25kデータセットにおいて,アルゴリズムは頭蓋内出血の検出で0-92(95%CI 0-91-0-93)のAUCを達成した(胸膜内は0-90 [0-89-0-91], 脳室内は0-96 [0-94-0-97], 硬膜下は0-92 [0-90-0-93], 硬膜外は0-93 [0-91-0-95] そして くも膜下は0-90 [0-89-0-92]).CQ500データセットでは,頭蓋内出血のAUCは0-94(0-92-0-97)であった(それぞれ,0-95 [0-93-0-98], 0-93 [0-87-1-00], 0-95 [0-91-0-99], 0-97 [0-91-1-00], 0-96 [0-92-0-99]).Qure25kデータセットにおけるAUCは、頭蓋底骨折が0-92(0-91-0-94)、正中線移動が0-93(0-91-0-94)、mass effectが0-86(0-85-0-87)、CQ500データセットにおけるAUCはそれぞれ0-96(0-92-1-00), 0-97 (0-94-1-00) および 0-92(0-89-0-95)であった。 【解釈】我々の結果は、深層学習アルゴリズムが緊急の注意を要する頭部CTスキャンの異常を正確に特定できることを示しており、これらのアルゴリズムを使用してトリアージプロセスを自動化する可能性を開いている。 【FUNDING】Qure .ai . 第一人者の医師による解説 頭部外傷や脳卒中の自動トリアージに道を開く研究成果 井上 優介 北里大学医学部放射線科学画像診断学主任教授 MMJ.June 2019;15(3) 人工知能(AI)が社会のさまざまな分野で注目を集めており、画像診断を含めた医療分野も例外でない。近年のAIブームを牽引しているのは深層学習であり、本研究では、頭部単純 CTから危機的所見を検出する深層学習アルゴリズムの開発と評価を後ろ向きに行っている。このアルゴリズムは頭蓋内出血、頭蓋冠骨折、中心構造偏位、占拠性効果 (mass effect)の有無を判定し、頭蓋内出血についてはそのタイプを脳実質内、脳室内、硬膜下、硬 膜外、くも膜下に分類するものである。インドの約 20施設から313,318件の頭部 CTとその画像診断報告書を収集し、この中から290,055件をア ルゴリズム開発に、21,095件を性能評価に使用した。さらに、別の6施設から集めた491検査で も性能評価を行った。検討の結果、いずれの判定項 目についても良好な診断能が示され、本アルゴリズムが頭部 CTにおける急性所見検出の補助技術として期待されると述べられている。 深層学習アルゴリズムの開発では質の高い大量の教師データの集積が鍵になる。本研究では多数の頭部 CTとその診断結果を教師データとしてアルゴリズムを開発し、有効性も多数例で示している。 CT画像は装置や使用施設によって異なり、さまざまな施設からデータを集めていることも本研究の長所である。 診断結果については、6施設の491検査では3人の放射線科医が合議で判定した結果を ゴールドスタンダードとしているが、その他の検査では日常臨床で作成された画像診断報告書を用い、報告書の記載から注目所見の有無を自動判定してスタンダードとしている。効率的なスタンダード決定によって大量のデータの使用を実現しており、 今後の深層学習アルゴリズム研究にも参考になると思われる。 しかし、忙しい臨床の中で1人が作成した報告書からスタンダードを決定することには、 見落としや過剰診断の可能性、主所見だけを記載して副所見が十分記載されない可能性による限界がある。また、画像診断報告書は臨床情報や過去の画像検査結果なども踏まえて作成されていることも考慮する必要がある。報告書は必ずしも画像情報 を忠実に反映したものではない。 AI技術を実用化するには、臨床状況の中での位置付けを具体化することが望まれる。この論文では、開発したアルゴリズムを頭部外傷や脳卒中患者の自動トリアージに使用して放射線科医の業務効率を改善することを提案しており、現実的で有益な役割と考えられる。一方、トリアージ結果が過剰に信頼されて誤診につながる危険性も指摘しており、 自動診断技術全般に適用される戒めとして尊重したい。
再発寛解型多発性硬化症患者における非血小板造血幹細胞移植と疾患修飾療法継続の疾患進行への影響。無作為化臨床試験。
再発寛解型多発性硬化症患者における非血小板造血幹細胞移植と疾患修飾療法継続の疾患進行への影響。無作為化臨床試験。
Effect of Nonmyeloablative Hematopoietic Stem Cell Transplantation vs Continued Disease-Modifying Therapy on Disease Progression in Patients With Relapsing-Remitting Multiple Sclerosis: A Randomized Clinical Trial JAMA 2019 Jan 15 ;321 (2):165 -174. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】造血幹細胞移植(HSCT)は、再発型多発性硬化症(MS)における進行性障害を遅らせる、あるいは予防するために有用なアプローチとなりうる。 【目的】非ミエロ切除型HSCTと疾患修飾療法(DMT)の疾患進行への影響を比較する。 【デザイン、設定および参加者】2005年9月20日から2016年7月7日の間に、米国、欧州、南米の4施設で、再発寛解型MSで、前年度にDMTを受けている間に2回以上再発し、拡張障害状態スケール(EDSS:スコア範囲、0~10[10=最悪の神経学的障害])のスコアが2.0~6.0の患者計110名を無作為に割り付けた。最終フォローアップは2018年1月、データベースロックは2018年2月に行われた。 【介入】患者は、シクロホスファミド(200mg/kg)および抗胸腺細胞グロブリン(6mg/kg)と共に造血幹細胞移植を受けるか(n=55)、より有効性の高いDMTまたは前年中に服用したDMTと異なるクラスのDMTを受けるかに無作為に分けられた(n=55) 【主なアウトカムと測定】主要エンドポイントは疾患進行(少なくとも1年後にEDSSスコア上昇が1.0と定義)とし、EDSSスコア上昇は、1.0とした。 【結果】無作為化された110例(女性73例[66%],平均年齢36[SD,8.6]歳)のうち,103例が試験に残り,98例が1年後,23例が5年間毎年評価された(追跡期間中央値2年,平均値2.8年)。疾患の進行は造血幹細胞移植群で3例、DMT群で34例に認められた。進行までの期間の中央値は、HSCT群ではイベントが少なすぎたため算出できなかった。DMT群では24ヵ月(四分位範囲、18~48ヵ月)だった(ハザード比、0.07;95%CI、0.02~0.24;P < 0.001)。最初の1年間で、平均EDSSスコアは、造血幹細胞移植群で3.38から2.36に減少(改善)し、DMT群で3.31から3.98に増加(悪化)した(群間平均差、-1.7;95%CI、-2.03から-1.29;P < 0.001)。死亡例はなく、造血幹細胞移植を受けた患者には非造血グレード4の毒性(心筋梗塞、敗血症、その他の生命を脅かす障害または可能性のある事象など)は認められなかった。 【結論と関連性】再発型MS患者のこの予備研究では、DMTと比較して非血小板造血幹細胞移植は疾患進行までの時間を延長する結果となった。これらの知見を再現し、長期的な転帰と安全性を評価するためにさらなる研究が必要である。 【臨床試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT00273364。 第一人者の医師による解説 長期での疾患活動性の再燃 今後の検証課題 吉良 潤一 九州大学大学院医学研究院神経内科学教授 MMJ.June 2019;15(3) 多発性硬化症(MS)の約90%は、再発寛解型で発症し、その後再発と関係なく徐々に障害が進行する2次進行型に移行する。残りの10%程度は、 最初から再発がなく緩徐に障害が増悪する1次進行型を呈する。再発寛解型 MSに対しては、疾患修飾薬の進歩がめざましい。これらは、再発寛解型の再発を減らし障害の進行を遅らせるが、課題としてnon-responderが一定の割合でどの薬剤でも存在すること、進行型にはほとんど効果がないことが挙げられる。最近、2次進行型にシポニモド、1次進行型にオクレリズマブ(抗 CD20抗体)が部分的に有効であることが報告され注目を集めた。しかし、既存の疾患修飾薬では疾患活動性の高いMSや進 行型 MSの治療効果が限定的である状況は続いている。そこで、骨髄非破壊的造血幹細胞移植(HSCT) が非対照試験で試みられ、MSに対する有用性が報告されている(1)。 本研究は、HSCTの治療効果を、既存の疾患修飾薬と無作為化臨床試験で比較した点が大きな特徴である。先行する1年間に2回以上の臨床再発または1回の臨床再発とそれとは異なる時期に造影病巣を認めた再発寛解型 MS患者110人を、 55人ずつHSCTまたは各種疾患修飾薬の継続に無作為に割り付けた。主要評価項目は、Expanded Disability Status Scale(EDSS)でみた1段階以上(EDSSが6を超える患者では0.5以上)の障害進行を示すまでの期間である。中央値2年(平均2.8 年)の観察期間で障害が進行した患者は、HSCT群で3人、疾患修飾薬群では34人だった。障害進行までの期間は、HSCT群が疾患修飾薬群に比べて有 意に長かった(P<0.001)。1年後の平均 EDSS はHSCT群では3.38から2.36に改善したが、疾患修飾薬群では3.31から3.98に悪化し、この差は有意だった(P<0.001)。副次的評価項目である1年間で再発を起こした患者の割合も、HSCT群 2%に対して疾患修飾薬群69%と有意に低かった (P<0.001)。死亡や有害事象(4度)の重大な副作用は両群ともみられなかった。 本研究はエントリーした患者数が少ないにもかかわらず、疾患活動性の高いMSに対してHSCTが 既存の疾患修飾薬に勝る治療効果を示すことを、無作為化試験により初めて明らかにした点で意義が大きい。しかし、1年後には疾患修飾薬からHSCT への変更が認められていたため長期の比較ができていない点、疾患修飾薬にアレムツズマブやオクレリズマブなどの強力な治療薬が含まれていない点、障害進行の評価では盲検性が保たれていたものの再発の評価は盲検でなかった点などが課題である。特に長期でみた場合に疾患活動性が再燃しないかという点の検証は今後に残されている。 1. Burt RK, et al. JAMA. 2015;313(3):275-284.
英国大都市圏における急性期脳卒中サービスの集中化の影響と持続可能性:病院エピソード統計と脳卒中全国監査データのレトロスペクティブ分析。
英国大都市圏における急性期脳卒中サービスの集中化の影響と持続可能性:病院エピソード統計と脳卒中全国監査データのレトロスペクティブ分析。
Impact and sustainability of centralising acute stroke services in English metropolitan areas: retrospective analysis of hospital episode statistics and stroke national audit data BMJ 2019 Jan 23 ;364 :l1 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】2015年のグレーターマンチェスターにおける急性期脳卒中サービスのさらなる集中化がアウトカムの変化と関連しているか、また2010年のロンドンにおける急性期脳卒中サービスの集中化の効果が持続しているかを調査する。 【デザイン】国家統計局による死亡率データとリンクしたHospital Episode Statistics(HES)データベースからの患者レベルのデータ、およびSentinel Stroke National Audit Programme(SSNAP)によるレトロスペクティブ解析。 【設定】英国グレーターマンチェスターとロンドンの急性期脳卒中サービス 【参加者】2008年1月から2016年3月に入院した都市部在住のHESの509 182人の脳卒中患者,2013年4月から2016年3月のSSNAPの218 120人の脳卒中患者。 【INTERVENTIONS】急性期脳卒中ケアのハブ&スポークモデル。 【MAIN OUTCOME MEASURES】入院後90日の死亡率、急性期入院期間、超急性期脳卒中ユニットでの治療、エビデンスに基づく臨床介入19例。 【結果】グレーターマンチェスターでは、90日時点のリスク調整死亡率が全体的に低下していることが境界線上のエビデンスによって示唆された;死亡率の有意な低下は、超急性期脳卒中ユニットで治療を受けた患者で見られ(差分-1.8%(95%信頼区間-3.4~-0.2))、年間死亡数が69件少ないことが示唆された。リスク調整後の急性期入院日数も有意に減少し(-1.5(-2.5~-0.4)日,P<0.01),年間入院日数が6750日減少した.超急性期脳卒中病棟で治療を受けている患者数は、2010-12年の39%から2015/16年には86%に増加しました。ロンドンでは、90日死亡率は維持され(P>0.05)、在院日数は減少し(P<0.01)、90%以上の患者が超急性期脳卒中ユニットで治療された。 【結論】脳卒中急性期医療の集中型モデルは、すべての脳卒中患者が超急性期医療を受けることで、死亡率と急性期入院期間を減少させ、エビデンスに基づく臨床的介入の提供を改善することが可能である。効果は長期にわたって持続することができる。 第一人者の医師による解説 英国は診療体制全体の改革を検討 日本では脳卒中・循環器病対策基本法が成立 鈴木 亨尚 /木村 和美(教授) 日本医科大学大学院医学研究科神経内科学部門 MMJ.June 2019;15(3) 急性期脳卒中診療体制の整備は死亡率と入院期間を改善し、その効果は長期にわたって持続することが英国の研究で示された。 脳卒中は高い死亡率や機能障害を起こす疾患で ある。急性期脳卒中診療体制を整備することは迅速な診断や治療、再発予防、リハビリテーションを充実させ、死亡率や臨床転帰を改善することが知られている(1)。しかし、その効果が長期的に持続するかを評価した研究はなかった。 本研究では、英国のグレーター・マンチェスターとロンドンでの急性期脳卒中診療体制の運用成績が改めて調査された。対象は、2008年1月1日~ 16年3月31日に英国の病院統計であるHospital Episode Statisticsに脳梗塞、脳出血、病型不明の脳卒中と病名が登録された509,182人である。 グレーター・マンチェスターでは2015年に対象が発症4時間以内の脳卒中患者から全脳卒中患者に拡大した。以前から全脳卒中患者が対象であったロンドンと合わせて入院後90日の死亡率や入院期間、治療内容(画像検査、リハビリテーション)、 他地域との差が検討された。 グレーター・マンチェスターでは対象患者の拡大により集中治療室で治療される患者の割合は 2010~12年には39%であったが、2015~16 年には86%まで上昇した。集中治療室で治療された患者において、90日死亡率が1.8%低下し、年間 69人の死亡が回避されたことがわかった。また、入院期間は-1.5日と有意に短縮しており、治療内容も2015年以後ではより多くの症例で早期の介入が行われた。これらの変化は他地域よりも顕著であった。ロンドンでは以前と同様に90%以上の患者が集中治療室で治療されており、90日死亡率は前回と同様であったが、入院期間はさらに短縮した。本研究から急性期脳卒中診療体制の整備は、脳卒中患者の死亡率を低下させ、入院期間を短縮し、患者は質の高い治療を受けることができ、その効果は長期にわたって持続することが示された。また、急性期脳卒中診療体制の対象は全脳卒中患者であることが望ましいこともわかった。 本研究の結果は全患者を対象とした急性期脳卒中診療体制の整備を支持するものである。英国では本研究の結果を踏まえて、地方を含めた複数の地域で急性期脳卒中診療体制全体の改革が検討されている。日本では2018年に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法(脳卒中・循環器病対策基本法)」が成立した。今後、日本でも急性期脳卒中診療体制の整備が進むことを期待したい。 1. Bray BD, et al. BMJ. 2013;346:f2827.
急性期脳卒中後の機能的転帰に対するfluoxetineの効果(FOCUS):実用的な二重盲検無作為化対照試験。
急性期脳卒中後の機能的転帰に対するfluoxetineの効果(FOCUS):実用的な二重盲検無作為化対照試験。
Effects of fluoxetine on functional outcomes after acute stroke (FOCUS): a pragmatic, double-blind, randomised, controlled trial Lancet 2019 Jan 19 ;393 (10168):265 -274 . 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】小規模試験の結果から、フルオキセチンが脳卒中後の機能的転帰を改善する可能性があることが示された。FOCUS試験は、これらの効果を正確に推定することを目的とした試験である。対象は、18歳以上で、臨床的に脳卒中と診断され、発症後2日から15日の間に登録され無作為に割り付けられた、局所神経障害がある患者であった。患者はfluoxetine 20mgまたはマッチングプラセボを1日1回6ヵ月間、Webベースのシステムで最小化アルゴリズムを用いて無作為に割り付けられた。主要評価項目は,6 ヵ月後の修正 Rankin スケール(mRS)で測定された機能状態であった.患者,介護者,医療スタッフ,および試験チームは治療割り付けをマスクされた.機能状態は,無作為化後 6 ヵ月および 12 ヵ月で評価された.患者さんは、治療割り付けに従って分析されました。本試験はISRCTN登録番号ISRCTN83290762に登録されている。 【所見】2012年9月10日から2017年3月31日の間に、3127人の患者が募集された。1564人の患者にフルオキセチンが、1563人の患者にプラセボが割り当てられた。 各治療群の1553人(99-3%)の患者について、6ヶ月後のmRSデータが入手可能であった。6ヵ月後のmRSカテゴリー間の分布は、fluoxetine群とプラセボ群で類似していた(最小化変数で調整した共通オッズ比0-951[95%CI 0-839-1-079];p=0-439 )。fluoxetineを投与された患者は、プラセボを投与された患者よりも6ヵ月までに新たにうつ病を発症する可能性が低かったが(210人[13-43%]対269人[17-21%];差3-78%[95%CI 1-26-6-30];p=0-0033)、骨折がより多かった(45人[2-88%]対23人[1-47%];差1-41%[95%CI 0-38-2-43];p=0-0070 )。その他のイベントについては,6か月,12か月とも有意差はなかった。 【解釈】フルオキセチン20mgを急性脳梗塞後6か月間毎日投与しても,機能的転帰は改善しないようである。この治療はうつ病の発生を減少させるが,骨折の頻度を増加させた。これらの結果は、脳卒中後のうつ病の予防や機能回復の促進のためにfluoxetineをルーチンに使用することを支持しない。 第一人者の医師による解説 他の集団やサブ集団で、副作用を含めた有用性の検証がさらに必要 山口 修平 島根県立中央病院 島根県病院事業管理者 MMJ.June 2019;15(3) 選択的セロトニン再取り込み阻害薬のフルオキセチンは、脳卒中後のうつ病発症を抑制するとともに、90日後の運動機能を有意に改善し、自立生活の割合を有意に上昇させたとの報告がある(FLAME 試験)(1)。コクランレビューでも脳卒中後の運動障害 を改善する可能性が示唆されているが、副作用を含めて大規模研究による検証が必要とされていた。 本論文で報告されたFOCUS試験の主要アウトカムはフルオキセチンによる脳卒中発症6カ月後の 機能予後変化(Modifi ed Rankin Scale[mRS]に よる評価)であり、副次アウトカムは他の評価スケールによる運動機能、情動機能、QOLに関する6カ月後 と12カ月後の機能予後および有害事象などである。 本試験では18歳以上の急性期脳卒中患者を対象として、発症2~15日後よりフルオキセチン 20mg/日またはプラセボを開始し、6カ月間投 与した。試験デザインは多施設共同ランダム化プラセボ対照二重盲検試験である。患者数は実薬群 1,564人、プラセボ群1,563人で、英国の103 病院で実施された。 その結果、主要アウトカムである6カ月後の mRSによる機能評価では、実薬群とプラセボ群で差を認めなかった(オッズ比 , 0.951;95% CI, 0.839~1.079)。病型、臨床症状、年齢、発症~ 服薬開始間隔などによるサブグループ解析でも差は認めなかった。副次アウトカムに関しては、6カ 月後のうつ病の発症が実薬群で有意に抑制され た(13.4% 対 17.2%;P=0.0033)。一方、実薬群で骨折の頻度が有意に上昇した(2.88% 対 1.47%;P=0.0070)。また12カ月後には、うつ病の発症頻度に群間差はなくなり、6カ月評価で差が認められたMental Health Inventory-5の結果も両群間に差は認めなかった。12カ月後の生存 率にも差はなかった。以上の結果から、脳卒中後早期からの機能予後の改善目的あるいはうつ病発症予防のためのフルオキセチンのルーチン投与は支持されないと結論づけている。 今回のFOCUS試験の結果はFLAME試験の結果を否定するものであった。本試験は、患者割り付けのバイアスがないこと、組み入れ患者数が多いこと、 脱落患者が少ないこと、intention-to-treat解析が行えたことなど、従来の試験に比べて優れた点があり信頼性は高い。一方、6カ月後のうつ病発症を抑制したことは、FLAME試験の結果と一致しており、他のSSRIを含むメタアナリシスでもうつ病の発症を63%減少させることが示されている。しかし、今回の試験で認められた骨折頻度の上昇を考慮すると、その有用性は低くなる。同様のデザインの研究が独立して現在進行中であり、他の患者集団での検討や本剤が有効なサブ集団の有無に関する検討が待たれる。 1. Chollet F, et al. Lancet Neurol. 2011;10(2):123-130.
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