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重度のCovid-19患者に対するレムデシビルの慈悲深い使用。
重度のCovid-19患者に対するレムデシビルの慈悲深い使用。
Compassionate Use of Remdesivir for Patients with Severe Covid-19 N Engl J Med 2020 Jun 11;382(24):2327-2336. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】SARS-CoV-2の感染によって引き起こされる病気であるCovid-19で入院している患者に、レムデシビルを同情的に使用した。患者は,SARS-CoV-2感染が確認された者で,常用空気を吸っているときの酸素飽和度が94%以下であるか,酸素のサポートを受けている者であった。患者はレムデシビルを10日間投与され、その内訳は、1日目に200mgを静脈内投与し、その後残りの9日間は1日100mgを投与するというものでした。本報告書は、2020年1月25日から2020年3月7日までの期間にレムデシビルの投与を受け、その後の少なくとも1日分の臨床データを有する患者のデータに基づいています。 【結果】レムデシビルの投与を少なくとも1回受けた61名の患者のうち、8名のデータが解析できませんでした(治療後のデータがない7名と投与ミスの1名を含む)。データが解析された53名の患者のうち、22名は米国、22名は欧州またはカナダ、9名は日本に在住していました。ベースラインでは、30名(57%)の患者が人工呼吸を受けており、4名(8%)の患者が体外式膜酸素療法を受けていました。中央値18日の追跡期間中、36人(68%)の患者で酸素サポートクラスが改善し、そのうち機械的換気を受けていた30人(57%)の患者のうち17人が抜管された。死亡率は、人工呼吸を受けている患者では18%(34人中6人)、人工呼吸を受けていない患者では5%(19人中1人)であった。 【結論】重症のCovid-19で入院し、思いやりのある使い方をしたレムデシビルで治療を受けたこのコホートでは、53人中36人(68%)に臨床的改善が認められた。有効性の測定には、レムデシビル療法に関する継続的な無作為化プラセボ対照試験が必要である。(Gilead Sciences社より資金提供を受けています。) 第一人者の医師による解説 速報として捉える必要あるが 重症COVID-19にレムデシビルは光明となりうる 葉 季久雄 平塚市民病院救急科・救急外科部長 MMJ.August 2020;16(4) 2019年12月に中国・武漢で報告されて以来、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は今や世界的な脅威となっている。2020年2月ごろの日本のCOVID-19 治療最前線では、日日に呼吸状態が増悪していく重症COVID-19患者を我々は目の当たりにしていた。確立された治療薬がない中、数少ない論文を拠り所に、他疾患で承認済みの薬剤を臨床試用していた。そのような状況で、重症治療にあたっていた医師が求めていたものは、今、目の前で苦しんでいる患者を治すための治療薬、すなわち抗ウイルス薬であった。 レムデシビル(remdesivir)はエボラ出血熱の治療薬として開発されたウイルスRNAポリメラーゼ阻害薬である。エボラ出血熱に対してはより有効な薬剤が開発されたため、レムデシビルは全世界で未承認の薬剤であった。レムデシビルはin vitroにおいてコロナウイルスを含む1本鎖RNAウイルスに活性を示すことが知られている。中国からの報告では、in vitroにおいてSARS-CoV-2に対しても強い活性を示していたため、このパンデミック下における治療薬として再び注目された。 本論文は、人道的見地から治療目的に提供されたレムデシビルの重症COVID-19患者に対するコホート研究の報告である。対象となったのは、SARSCoV-2への感染が確認され、室内気で酸素飽和度が94%以下であるか酸素療法中の入院患者で、レムデシビルは10日間連日投与(1日目200 mg、2~10日目100mg)された。評価項目は、酸素療法必要度、転帰であった。本研究では対照群がないため、レムデシビルがCOVID-19に有効であるか否かを明らかにすることは不可能であり、本論文を解釈する際は、速報として結果を捉える必要がある。 データが解析された患者53 人のうち、中央値18日間のフォローアップ中に、68 %(36 /53) で酸素療法の状況が改善した。その一方で、15%(8 /53)は増悪した。改善の具体例としては、57%(17 /30)の患者で抜管することができ、体外式膜型人工肺(ECMO)が導入された患者4人のうち3人において離脱することができた。転帰は47 %(25 /53)が退院、13 %(7 /53)が死亡した。死亡率は人工呼吸器で管理された患者で18%(6 /34)、人工呼吸器で管理がされなかった患者で5%(1/19)であった。 本研究は、この後に続くランダム化比較試験(RCT)へのイントロダクションである。そのRCTの結果ならびに米食品医薬品局(FDA)の緊急時使用許可を踏まえて、レムデシビルは日本において重症COVID-19に対する治療薬(ベクルリー®)として特例承認された。本研究は、重症COVID-19患者に対するレムデシビルの有効性に、最初に光を当てた研究である。
大腸がんの転帰予測のためのディープラーニング:発見と検証の研究。
大腸がんの転帰予測のためのディープラーニング:発見と検証の研究。
Deep learning for prediction of colorectal cancer outcome: a discovery and validation study Lancet 2020 Feb 1;395(10221):350-360. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】早期大腸がん患者を層別化し、アジュバント療法の選択を洗練するために、予後のマーカーを改善することが必要である。本研究の目的は、深層学習を使用してスキャンした従来のヘマトキシリン・エオジン染色切片を直接分析することにより、原発性大腸がん切除後の患者の転帰のバイオマーカーを開発することである。 【方法】4コホートから明らかに良好または不良の病期を有する患者からの12 000 000以上の画像タイルを使用して、超大型異種画像の分類のために専用に構築された合計10の畳み込みニューラルネットワークを訓練するために、使用された。10 個のネットワークを統合した予後バイオマーカーを、転帰が明確でない患者を使用して決定した。このマーカーは、英国で作成されたスライドを用いて920人の患者でテストされ、次にノルウェーで作成されたスライドを用いて、カペシタビンの単剤投与を受けた1122人の患者で、あらかじめ定められたプロトコルに従って独立に検証された。すべてのコホートには、切除可能な腫瘍を有し、解析に利用できるホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織ブロックを有する患者のみが含まれていた。主要アウトカムは癌特異的生存率であった。 【所見】4つのコホートから828人の患者が明確なアウトカムを有し、明確なグランドトゥルースを得るためのトレーニングコホートとして使用された。1645人の患者は明確な転帰を示さず、チューニングに使用された。バイオマーカーは、検証コホートの一次解析では、予後不良と予後良好のハザード比を3-84(95%CI 2-72-5-43; p<0-0001)、同じコホートの一変量解析で有意だった予後マーカー(pN期、pT期、リンパ管侵襲、静脈血管侵襲)を調整すると3-04(同 2-07-4-17; p<0-0001)であった。 【解釈】臨床的に有用な予後マーカーが、従来のヘマトキシリン・エオジン染色した腫瘍組織切片のデジタルスキャンと連携したディープラーニングを使用して開発された。このアッセイは独立した大規模な患者集団で広範囲に評価され,確立された分子的・形態的予後マーカーと相関し,それを上回り,腫瘍や結節の病期を越えて一貫した結果を与えることができた。このバイオマーカーは、II期とIII期の患者を十分に異なる予後グループに層別化し、非常にリスクの低いグループでの治療を避け、より強力な治療レジームから恩恵を受ける患者を特定することによって、補助治療の選択の指針として使用できる可能性がある。 第一人者の医師による解説 汎用性高い新規バイオマーカー 前向き比較試験での検討必要 小澤 毅士 帝京大学医学部附属病院外科助教/多田 智裕 武蔵浦和メディカルセンターただともひろ胃腸科肛門科理事長 MMJ.August 2020;16(4) 遺伝子検査の進歩などに伴い、さまざまな疾患において各個人に合わせた治療法の選択(プレシジョン・メディシン)が可能になってきた。進行再発大腸がんでは、RAS、BRAFなどの遺伝子変異、マイクロサテライト不安定性(MSI)、がん発生部位に応じた抗がん剤効果予測が一般的に行われている。一方、大腸がん治癒切除後の補助化学療法については、依然として深達度、リンパ節・遠隔転移を考慮したステージングを超える明確な導入判断基準はなく、新たなバイオマーカーが期待されている。 近年、深層学習(deep learning)技術の登場により人工知能(AI)の能力が飛躍的に向上した。医療現場では特にAIを用いた画像診断支援の研究が盛んで、専門医と同等の診断能を示すAIの開発が進んでおり、すでに医療現場に導入されているAI診断支援システムもある。 このような背景において、本研究では大規模な大腸がんの原発巣の病理切除標本スライドをもとに、予後予測AIを開発した。まず予後との関連付けを行ったステージI~ III大腸がんの病理切除標本スライドを用いてAIの教育を行い、別のコホートでその予後予測能を検証した。本研究でとられた手法の特徴は、腫瘍内不均一性を考慮して、標本スライド全体をそのまま予後と関連付けて学習させるのでなく、がん病変部位をタイルと呼ばれる小区域に区切り、それぞれのタイルを解析の上、最終的にがん病変をタイルのヒートマップとして学習させた点である。 結果として、ステージII~ III大腸がんにおいて、AIによる分類は有意な独立した予後因子となりうることが示唆され(ハザード比[HR],3.04;P<0 .0001)、またステージII、ステージIIIそれぞれにおいても同様の結果であった(それぞれHR, 2.71[P=0.011]、2.95[P<0.0001])。1人当たりの解析にかかった時間(中央値)は2.8分であった。 AIを用いた病理標本スライド分類は、新しいバイオマーカーとして役立つのみならず、ヒューマンエラーや観察者間相違をなくし、バイオマーカーとして高い再現性が期待できる。欧米で導入されている遺伝子発現検査などは、コスト、検査時間、検体の保管方法などに伴う再現性の問題から、なかなか広まらないのに対して、本研究で用いられるのは3μ m厚のヘマトキシリンエオジン染色スライドのみであり、汎用性が高いと考えられる。 本研究で開発されたAI分類の最終目標は、ステージII~ III大腸がんに対する術後補助化学療法の導入選択のバイオマーカーとして役立つことであり、これについては今後前向きな比較試験を行い、検討していく必要がある。
重症患者における消化管出血予防の有効性と安全性:システマティックレビューとネットワークメタアナリシス
重症患者における消化管出血予防の有効性と安全性:システマティックレビューとネットワークメタアナリシス
Efficacy and safety of gastrointestinal bleeding prophylaxis in critically ill patients: systematic review and network meta-analysis BMJ 2020 Jan 6;368:l6744. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】重症患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、ヒスタミン2受容体拮抗薬(H2RA)、スクラルファート、または消化管出血予防薬(またはストレス性潰瘍予防薬)なしの、患者にとって重要なアウトカムへの相対影響を明らかにする。 【デザイン】系統的レビューとネットワークメタ解析。 【データソース】2019年3月までのMedline、PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、試験登録、グレー文献。 【ELIGIBILITY CRITERIA FOR SELECTING STUDIES AND METHODS]】成人の重症患者においてPPI、H2RA、スクラルファートの消化管出血予防と他、プラシーボ、予防薬なしを比較したランダム化対照臨床試験を対象とした。2名の査読者が独立して研究の適格性を審査し、データを抽出し、バイアスのリスクを評価した。並行して行われたガイドライン委員会(BMJ Rapid Recommendation)が,患者にとって重要なアウトカムの特定など,システマティックレビューの重要な監視を行った。ランダム効果ペアワイズメタ解析とネットワークメタ解析を行い,GRADEを用いて各アウトカムのエビデンスの確からしさを評価した.低リスクの研究と高バイアスリスクの研究で結果が異なる場合は、前者を最良推定値とした。出血のリスクが最も高い(8%以上)または高い(4~8%)患者では、PPIとH2RAの両方が、プラセボまたは予防薬なしに比べて、臨床的に重要な消化管出血をおそらく減らす(PPIのオッズ比 0.61(95% 信頼区間 0.42~0.89)、3.42 to 0.89)、最高リスク患者で3.3%少なく、高リスク患者で2.3%少なく、中程度の確実性;H2RAに関するオッズ比0.46(0.27 to 0.79)、最高リスク患者で4.6%少なく、高リスク患者で3.1%少なく、中程度の確実性).両者とも無予防に比べ肺炎のリスクを高める可能性がある(PPIのオッズ比 1.39 (0.98 to 2.10), 5.0% 増、確実性低、H2RAのオッズ比 1.26 (0.89 to 1.85), 3.4% 増、確実性低)。どちらも死亡率には影響しないと思われる(PPI 1.06 (0.90 to 1.28), 1.3% 増, 中程度; H2RA 0.96 (0.79 to 1.19), 0.9% 減, 中程度)。それ以外では、死亡率、Clostridium difficile感染、集中治療室滞在期間、入院期間、人工呼吸期間への影響を裏付ける結果は得られなかった(証拠の確実性は様々)。 【結論】リスクの高い重症患者では、PPIとH2RAは予防薬なしと比較して消化管出血の重要な減少につながると考えられる;リスクの低い患者では、出血の減少は重要でない可能性がある。PPIとH2RAの両方が肺炎の重要な増加をもたらす可能性がある。死亡率やその他の院内罹患アウトカムに対する介入の重要な効果はないことが、質の低いエビデンスによって示唆された。 第一人者の医師による解説 肺炎のリスクを高める可能性について さらなるRCTが必要 川邊 隆夫 かわべ内科クリニック院長 MMJ.August 2020;16(4) 集中治療室(ICU)に入院を要するような重篤な患者では、消化管出血(ストレス潰瘍)が大きな問題となり、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2RA)を投与することが推奨されている。 しかし、PPIやH2 RAを投与しても死亡率は改善しないという報告が多く、肺炎やClostridium difficile 感染症(CDI)のリスクが高まる可能性なども指摘されており、ストレス潰瘍予防(SUP)の是非について明確な結論は得られていない。 2018年に、国際的な大規模多施設ランダム化比較試験(SUP-ICU)の結果(1)が発表された。この最もエビデンスレベルの高いとされる研究では、PPIは出血を減少させたが、死亡率には影響しなかった。近年、SUP-ICUのほかにも、いくつかの大規模ランダム化比較試験(RCT)が行われており、これらの研究を加えて、ネットワークメタアナリシス(NMA)を行ったのが本論文である。 著者らは2017年1月~19年3月の研究から、12,660人の患者を含む72件(7件はICU外の重症患者)を選択し、PPI、H2RA、スクラルファートについて、死亡、消化管出血、肺炎、CDIなどへの影響を検討している。 その結果、死亡率については、プラセボまたは予防薬なし(無SUP)と比較し、PPI、H2RA、スクラルファートのいずれも改善あるいは増悪の影響は認められなかった。重篤な出血については、出血リスクを最高、高、中、低の4段階に分けた検討において、最高リスク群、高リスク群ではPPIおよびH2RAはともに、プラセボ(無SUPを含む)に比べ、重篤な出血の減少効果が示されたが、中リスク群、低リスク群では効果がみられなかった。スクラルファートの効果ははっきりしなかった。 肺炎については、無SUP と比較し、PP(I オッズ比[OR], 1.39;95% CI, 0.98~2.10)、H2RA(1.26;0.89~1.85)に有意差を認められなかった。しかし、スクラルファートとの比較で、PPI (1.63;1.12~2.46)とH2RA(1.47;1.11~2.03)のほうがリスクは高く、これらの肺炎に対するリスクは否定できないとしている。CDIについては検討している研究は5件のみで、CDI発生率も低く、有意なデータは得られていない。 以上から著者らは、PPIやH2RAは死亡率には影響しない、消化管出血のリスクの高い患者(慢性肝障害、人工呼吸器使用で経腸栄養なし、凝固障害)においてPPI、H2RAは出血を減少させるが、低~中リスクの患者では効果が期待できず有益ではないかもしれない、PPIやH2RAは肺炎のリスクを高める可能性については、さらなるRCTが必要である、と結論している。 1. Krag M et al. N Engl J Med. 2018;379(23):2199-2208.
潰瘍性大腸炎における大腸がん:スカンジナビアの人口ベースコホート研究。
潰瘍性大腸炎における大腸がん:スカンジナビアの人口ベースコホート研究。
Colorectal cancer in ulcerative colitis: a Scandinavian population-based cohort study Lancet 2020 Jan 11;395(10218):123-131. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】潰瘍性大腸炎(UC)は大腸癌(CRC)の危険因子である。)しかし、利用可能な研究は、古い治療とサーベイランスパラダイムを反映しており、腫瘍ステージ別のCRC発生率やCRCによるステージ調整死亡率を評価するなど、サーベイランスとリードタイムのバイアスを考慮せずにCRC発生リスクを評価したものがほとんどである。我々は、UC患者におけるCRC死亡率及びCRC発症の全体的及び国別のリスクの両方を比較することを目的とした。 【方法】デンマーク(n=32 919)及びスウェーデン(n=63 528)のUC患者96 447人の人口ベースのコホート研究において、患者は、CRC発症及びCRC死亡率について1969年1月1日から2017年12月31日の間に追跡され、一般集団のマッチした参照人(n=949 207)と比較された。UC患者を国の登録から選び、(当該国の)患者登録に関連する国際疾病分類の記録が2つ以上ある場合、またはそのような記録1つと炎症性腸疾患を示唆する形態コードを持つ大腸生検報告書がある場合に解析に含めました。UC患者全員について、デンマークとスウェーデンの総人口登録から、性、年齢、出生年、居住地が一致した参照人物を選んだ。Cox回帰を用いて、腫瘍の病期を考慮したCRC発症およびCRC死亡のハザード比(HR)を算出した。 【所見】追跡期間中に、UCコホートでは1336例のCRC発症(1000人年当たり1-29例)、参照個人では9544例のCRC発症(1000人年当たり0-82例、HR1-66、95%CI1-57-1-76)が観察された。UCコホートでは、同期間に639人の患者がCRCで死亡した(1000人年当たり0-55人)のに対し、参照群では4451人(1000人年当たり0-38人、HR 1-59、95%CI 1-46-1-72)であった。UC患者のCRC病期分布は、マッチさせた参照群よりも進行していなかったが(p<0-0001)、腫瘍病期を考慮すると、UCおよびCRC患者はCRC死亡のリスクが依然として高かった(HR 1~54、95%CI 1~33~1~78)。過剰リスクは暦年間で減少した:追跡の最後の5年間(2013~17年,スウェーデンのみ),UC患者のCRC発症のHRは1~38(95%CI 1-20~1-60,または5年ごとにUC患者1058人に1例の追加),CRCによる死亡のHRは1~25(95%CI 1-03~1-51,または5年ごとにUC患者3041人に1例の追加)であった。 【解釈】UCのない人に比べて、UCのある人はCRCを発症するリスクが高く、CRCと診断されてもあまり進行しておらず、CRCによる死亡のリスクも高いが、これらの過剰リスクは時間とともに大幅に減少している。国際的なサーベイランスガイドラインにはまだ改善の余地があるようだ。 【財源】スウェーデン医学協会、カロリンスカ研究所、ストックホルム県議会、スウェーデン研究会議、スウェーデン戦略研究財団、デンマーク独立研究基金、フォルテ財団、スウェーデンがん財団 第一人者の医師による解説 長期の追跡による成果 潰瘍性大腸炎の診療ガイドライン改訂に役立つ 中山 富雄 国立がん研究センター社会と健康研究センター検診研究部部長 MMJ.August 2020;16(4) 潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患の大腸がんリスクについては、これまで4件のメタアナリシスが報告されているが、うち3件は2004年までの古いデータに基づいていた。今回の研究はスウェーデンとデンマークで1969~2017年に診断された95 ,000 人強の潰瘍性大腸炎患者と性・年齢・居住地をマッチさせた一般集団95万人強を最長約50年追跡して、リスクを評価した。潰瘍性大腸炎診断後の大腸がん罹患のみに限定して解析した。 その結果、潰瘍性大腸炎の患者が一般集団に比べて罹患リスクが1.66倍、死亡リスクが1.59倍高いことが示されたが、この成績は先行研究と同等であった。個別の因子として、18歳未満の潰瘍性大腸炎発症、全大腸型大腸炎、原発性硬化性胆管炎の合併、1親等の大腸がん家族歴が一般集団に比べて特にリスクが高いことが確認された。また潰瘍性大腸炎診断後の1年以内に大腸がんの診断および死亡のリスクが特に高かった。 罹患のみが高いのであれば、潰瘍性大腸炎に対する内視鏡検査で偶発的に大腸がんが見つかったというサーベイランスバイアスの可能性が高いが、死亡が増加していることは、必ずしもバイアスで説明できるものではなく、大腸炎の発病自体が発がんに影響しているのだろう。若年発症は確かにリスクが高いが、40歳以上で潰瘍性大腸炎と診断された場合は、診断後5年以降の大腸がん死亡リスクは一般集団とあまり変わらず、60歳以上での診断例は、診断直後から一般集団と差がなかった。 この長い追跡期間の間に、大腸がん罹患・死亡リスク自体は大幅に低下していた。これは前がん病変の検出やサーベイランスの変遷によるものかもしれないが、食習慣や運動などの予防の影響かもしれない。 今回の研究結果は、住民を対象とし50年近い長期の追跡期間によるもので、結果を一般化しやすい。潰瘍性大腸炎早期発症や病変範囲の広い大腸炎などが際立ってリスクが高いこと、追跡が長期化した場合は罹患も死亡もリスクが一般集団と同レベルに低下することなど、個別のリスクに応じた詳細なサーベイランス方法の設定が可能となる非常に有用なデータである。これまで高リスク者に1~2年に1回の内視鏡検査が推奨されてきたが、いつまで続けるのかは示されていなかった。今回の成績が、潰瘍性大腸炎患者の診療ガイドラインの改訂に役立つこととなるだろう。
慢性膵炎患者の疼痛に対する早期手術と内視鏡ファーストアプローチの効果。The ESCAPE Randomized Clinical Trial.
慢性膵炎患者の疼痛に対する早期手術と内視鏡ファーストアプローチの効果。The ESCAPE Randomized Clinical Trial.
Effect of Early Surgery vs Endoscopy-First Approach on Pain in Patients With Chronic Pancreatitis: The ESCAPE Randomized Clinical Trial JAMA 2020 Jan 21;323(3):237-247. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】疼痛を伴う慢性膵炎の患者に対しては、内科的治療や内視鏡的治療が奏功しない限り、外科的治療は延期される。観察研究では、早期の手術が疾患の進行を緩和し、より良い疼痛コントロールを提供し、膵臓の機能を維持する可能性が示唆されている。 【目的】早期の手術が内視鏡優先のアプローチよりも臨床転帰の点で有効であるかどうかを明らかにする。 【デザイン・設定・参加者】ESCAPE試験は、Dutch Pancreatitis Study Groupに参加しているオランダの30の病院が参加した非盲検の多施設無作為化臨床優越試験である。2011年4月から2016年9月まで、慢性膵炎で主膵管が拡張しており、激しい痛みのために処方されたオピオイドを最近になって使用し始めた患者(強オピオイドを2カ月以下、弱オピオイドを6カ月以下)計88人を対象とした。18カ月の追跡期間は2018年3月に終了した。 【介入】無作為化後6週間以内に膵臓ドレナージ手術を受けた早期手術群に無作為化された44人と、内科的治療、必要に応じて砕石を含む内視鏡検査、必要に応じて手術を受けた内視鏡検査優先アプローチ群に無作為化された44人がいた。[法]主要アウトカムは痛みで、Izbicki疼痛スコアで測定し、18カ月間で積分した(範囲、0~100[スコアが上がると痛みの重症度が増す])。副次的評価項目は、追跡調査終了時の疼痛緩和、介入回数、合併症、入院回数、膵臓機能、QOL(36項目からなるショートフォーム健康調査[SF-36]で測定)、死亡率であった。 【結果】無作為に割り付けられた88名の患者(平均年齢52歳、女性21名(24%))のうち、85名(97%)が試験を完了した。18ヵ月間の追跡調査では、早期手術群の患者は、内視鏡による初回アプローチ群に無作為に割り付けられた群の患者よりもIzbicki疼痛スコアが低かった(37対49、群間差:-12ポイント[95%CI, -22~-2]、P =0.02)。フォローアップ終了時に完全または部分的な疼痛緩和が得られたのは、早期手術群では40例中23例(58%)であったのに対し、内視鏡的アプローチ優先群では41例中16例(39%)であった(P = 0.10)。介入の総数は早期手術群で少なかった(中央値、1対3、P < 0.001)。治療の合併症(27%対25%)、死亡率(0%対0%)、入院、膵臓の機能、およびQOLは、早期手術と内視鏡検査優先アプローチとの間に有意な差はなかった。 【結論と関連性】慢性膵炎患者において、早期手術と内視鏡検査優先アプローチとを比較した場合、18カ月間の統合では、痛みのスコアが低くなった。しかし、経時的な差の持続性を評価し、研究結果を再現するにはさらなる研究が必要である。 【臨床試験登録】ISRCTN Identifier:ISRCTN識別子:STRECTN45877994。 第一人者の医師による解説 内視鏡的治療が選択される患者群も想定 引き続き長期の検討評価を 宅間 健介(助教)/五十嵐 良典(主任教授) 東邦大学医療センター大森病院消化器内科 MMJ.August 2020;16(4) 慢性膵炎は持続する炎症と線維化が進行し、最終的に膵が荒廃する疾患であり、主要徴候の約80%は疼痛である。主膵管狭窄や膵石症を伴うことが多く、膵液うっ滞による膵管内や膵間質内圧の上昇などにより持続疼痛や急性膵炎をきたし、それがさらなる病態進行の原因となる。 疼痛は生活の質(QOL)を低下させ、特に欧米では多用される麻薬鎮痛薬の長期使用による依存などの副作用が懸念されており、疼痛コントロールは極めて重要である。膵切除術・膵管ドレナージ術などの手術療法や膵管ステントを用いた内視鏡的ドレナージ術は膵管内の減圧が得られ、疼痛緩和や外分泌機能改善などに有用な治療とされる。 本研究では主膵管拡張および疼痛を伴う慢性膵炎患者88人を対象に、薬物療法から内視鏡的治療を第1選択として行う群(44 人)と早期手術療法を第1選択とした群(44人)の疼痛コントロールが比較された。主要評価項目である疼痛はIzbicki pain scoreで評価された。 観察期間18カ月における疼痛スコアは早期手術療法群が内視鏡的治療群よりも低く、疼痛コントロールに優れていることを示した。観察終了時での完全・部分的疼痛緩和について統計学的有意差はなく、観察中の合併症発生率、死亡率、入院回数、膵機能変化、QOLも群間差はなかった。内視鏡的治療群では膵石や膵管狭窄の程度により体外式衝撃波結石破砕療法(ESWL= Extracorporeal Shock Wave Lithotripsy)、膵管ステントが用いられ治療介入回数が多かった。また疼痛の持続する治療困難例が24例(62%)に認められ、19人は手術療法に移行・待機となった。 一方、早期手術療法群は単一の介入で明瞭な結果となり、鎮痛に対する早期手術療法の優位性を示した。過去の報告(1),(2)でも外科手術は、より早期の介入ほど鎮痛効果を示し、治療初期のオピオイド使用と内視鏡的治療は早期手術療法に比べ疼痛の軽減が低いことが示されており、今回の結果に一致している。 日本ではESWLによる膵石破砕術や膵管ステント留置術が保険診療として認可されたことにより、広く認知・普及している。患者も心情的に内科的治療を第1選択とする傾向にある。本研究において主膵管内膵石の完全除去例に関しては早期手術療法に近い鎮静効果を示しており、内視鏡的治療を第1と考慮する患者群も想定される。臨床症状や病態を含めた的確な選択と今後の膵管鏡やレーザー、ESWLなどの技術革新に期待しつつ、機能温存や悪性疾患合併などの長期にわたる治療効果評価が必要であろう。 1. Cahen DL et al. N Engl J Med. 2007;356(7):676-684. 2. Díte P et al. Endoscopy. 2003;35(7):553-558.
非アルコール性脂肪性肝疾患と急性心筋梗塞および脳卒中の発症リスク:ヨーロッパの成人1800万人のマッチドコホート研究からの所見。
非アルコール性脂肪性肝疾患と急性心筋梗塞および脳卒中の発症リスク:ヨーロッパの成人1800万人のマッチドコホート研究からの所見。
Non-alcoholic fatty liver disease and risk of incident acute myocardial infarction and stroke: findings from matched cohort study of 18 million European adults BMJ 2019 Oct 8;367:l5367. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)または非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を有する成人における急性心筋梗塞(AMI)または脳卒中のリスクを推定する。【デザイン】マッチドコホート研究。 【設定】欧州4カ国の2015年12月31日までの人口ベース、電子プライマリヘルスケアデータベース。イタリア(n=1 542 672)、オランダ(n=2 225 925)、スペイン(n=5 488 397)、英国(n=12 695 046) 【参加者】NAFLDまたはNASHの診断記録があり、他の肝臓疾患がない成人120 795名を、NAFLD診断時(指標日)に年齢、性別、診療施設、診断日の前後6カ月に記録した訪問先、同じデータベースでNAFLDまたはNASHを持たない最大100人の患者と照合した。 【MAIN OUTCOME MEASURES】主要アウトカムは、致死性または非致死性AMIおよび虚血性または特定不能の脳卒中の発症とした。ハザード比はCoxモデルを用いて推定し,ランダム効果メタ解析によりデータベース間でプールした。 【結果】NAFLDまたはNASHの診断が記録されている患者120 795人が同定され,平均追跡期間は2.1~5.5年であった。年齢と喫煙を調整した後のAMIのプールハザード比は1.17(95%信頼区間1.05~1.30,NAFLDまたはNASH患者1035イベント,マッチドコントロール患者67 823)であった。危険因子に関するデータがより完全なグループ(86 098人のNAFLDと4 664 988人のマッチドコントロール)では、収縮期血圧、2型糖尿病、総コレステロール値、スタチン使用、高血圧を調整後のAMIのハザード比は1.01(0.91から1.12;NAFLDまたはNASHの参加者で747イベント、マットコントロールで37 462)であった。年齢と喫煙の有無で調整した後の脳卒中のプールハザード比は1.18(1.11~1.24;NAFLDまたはNASH患者2187イベント、マッチドコントロール134001)であった。危険因子に関するデータがより完全なグループでは,2型糖尿病,収縮期血圧,総コレステロール値,スタチン使用,高血圧をさらに調整すると,脳卒中のハザード比は1.04(0.99~1.09;NAFLD患者1666イベント,マッチドコントロール83 882)だった。 【結論】1770万の患者の現在の日常診療におけるNAFLDとの診断は,既存の心血管危険因子を調整してもAMIや脳卒中のリスクと関連がないようである.NAFLDと診断された成人の心血管リスク評価は重要であるが、一般集団と同じ方法で行う必要がある。 第一人者の医師による解説 膨大なデータベースから得られた重要な結果 さらなる慎重な検証を 今 一義 順天堂大学医学部消化器内科准教授 MMJ.August 2020;16(4) 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は進行性の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に非進行性の脂肪肝も含めた、より幅広い疾患概念である。近年、NAFLD/NASHが肝関連死だけでなく動脈硬化進展の独立した危険因子であることが示され、さらにNASHの病期と動脈硬化の進展が相関すると報告され注目された(1)。 その後もNAFLD/NASHが冠動脈疾患の重症度、さらには脳梗塞の発症とも関連することを示した研究が報告されている。しかしながら、NAFLD/NASH自体が肥満および糖尿病・脂質異常症・高血圧といったメタボリックシンドローム関連疾患を背景に生じ、心血管イベントのリスクと多数の交絡因子があるため、肝病態が直接心血管イベントに関与していることを確実に示すことは困難であった。 本研究では欧州の4カ国(イタリア、オランダ、スペイン、英国)の医療管理データベースから12万795 人のNAFLD患者を抽出し、非NAFLDの対照群と観察期間中の致死的・非致死的急性心筋梗塞(AMI)および脳梗塞の発症の有無を比較してオッズ比を算出した。さらに多数の交絡因子で調整した上でハザード比がどのように変化するか検証した。 その結果、年齢、性別、喫煙を調整した場合、NAFLD患者のAMI発症のハザード比は1.17(95%CI, 1.05~1.30)で、収縮期血圧、2型糖尿病、総コレステロール値、スタチン使用および高血圧で調整すると1.01(0.91~1.12)とさらに低下した。脳梗塞に関しても年齢、性別、喫煙で調整するとハザード比1.18(95% CI, 1.11~1.24)で、2型糖尿病、収縮期血圧、総コレステロール値、スタチン使用および高血圧で調整すると1.04(0 .99~ 1.09)とさらに減衰した。よって、NAFLDの診断はAMIおよび脳梗塞の有意な危険因子とは言えないと結論付けた。 本研究の結果は膨大なデータベースから得られた重要なもので、多数の交絡因子を除外していることは本研究の強みである。しかし、年齢、性別、喫煙因子を調整した時点ですでにハザード比が従来の報告と比べて低値であったことを考えなくてはならない。本コホートのNAFLDの有病率は患者総数の2%未満と従来の報告からみても極めて低く、かつ飲酒の有無はアルコール関連疾患の鑑別に基づいており、対照群の妥当性に疑問が残る。また、NASHの病期については検証できていない。NAFLD/NASHと心血管イベントの関連は、今後さらに慎重に検証していくべき課題と考えられる。 1. Targher G et al. N Engl J Med. 2010;Sep 30,363(14):1341-1350.
非アルコール性脂肪肝炎の治療薬としてのオベチコール酸:多施設共同無作為化プラセボ対照第3相試験の中間解析。
非アルコール性脂肪肝炎の治療薬としてのオベチコール酸:多施設共同無作為化プラセボ対照第3相試験の中間解析。
Obeticholic acid for the treatment of non-alcoholic steatohepatitis: interim analysis from a multicentre, randomised, placebo-controlled phase 3 trial Lancet 2019 Dec 14;394(10215):2184-2196. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、肝硬変に至ることもある一般的な慢性肝疾患の一種である。ファルネソイドX受容体アゴニストであるオベチコール酸は、NASHの組織学的特徴を改善することが示されている。ここでは、NASHに対するオベチコール酸の進行中の第3相試験の予定された中間解析の結果を報告する。 【方法】この多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験では、明確なNASH、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)活性スコアが4以上、線維化ステージF2-F3、または少なくとも1つの合併症を伴うF1の成人患者を、対話的ウェブ応答システムを用いて1:1:1で、プラセボ、オベチコール酸10mg、オベチコール酸25mgを毎日内服するようランダムに割り当てた。肝硬変、他の慢性肝疾患、高アルコール摂取、または交絡条件が存在する患者は除外された。18ヶ月目の中間解析における主要評価項目は、NASHの悪化を伴わない線維化の改善(1ステージ以上)、または線維化の悪化を伴わないNASHの消失とし、いずれかの主要評価項目を満たした場合に試験成功したと判断されました。主要解析は、線維化ステージF2-F3の患者様で、少なくとも1回の治療を受け、事前に指定された中間解析のカットオフ日までに18ヵ月目の診察に到達した、または到達する見込みの患者様を対象に、intention to treatで実施されました。また、本試験では、NASHおよび線維化の他の組織学的および生化学的マーカー、ならびに安全性についても評価しました。本試験は、ClinicalTrials. gov、NCT02548351、EudraCT、20150-025601-6に登録され、進行中である。 【所見】2015年12月9日から2018年10月26日の間に、線維化ステージF1~F3の患者1968名が登録され、少なくとも1回の試験治療を受け、線維化ステージF2~F3の患者931名が主要解析に含まれた(プラセボ群311名、オベチコール酸10mg群312名、オベチコール酸25mg群308名)。線維化改善エンドポイントは、プラセボ群37名(12%)、オベチコール酸10mg群55名(18%)、オベチコール酸25mg群71名(23%)が達成した(p=0-0002)。NASH消失のエンドポイントは達成されなかった(プラセボ群25例[8%]、オベチコール酸10mg群35例[11%][p=0-18]、オベチコール酸25mg群36例[12%][p=0-13])。安全性集団(線維化ステージF1~F3の患者1968名)において、最も多く見られた有害事象はそう痒症(プラセボ群123例[19%]、オベチコール酸10mg群183例[28%]、オベチコール酸25mg群336例[51%])で、発現頻度は概ね軽度から中等度であり、重症度は低かったです。全体的な安全性プロファイルはこれまでの試験と同様であり、重篤な有害事象の発生率は治療群間で同様でした(プラセボ群75例[11%]、オベチコール酸10mg群72例[11%]、オベチコール酸25mg群93例[14%])。 【解釈】オベチコール酸25mgはNASH患者の線維化およびNASH疾患活性の主要成分を著しく改善させました。この予定された中間解析の結果は、臨床的に有意な組織学的改善を示しており、臨床的有用性を予測する合理的な可能性を持っています。本試験は臨床転帰を評価するために継続中である。 第一人者の医師による解説 脂肪肝炎の組織学的治癒の改善は達成せず 搔痒による忍容性の懸念も 中島 淳 横浜市立大学大学院医学研究科肝胆膵消化器病学教室主任教授 MMJ.August 2020;16(4) 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は飲酒習慣のない脂肪肝で、日本でも食生活の欧米化に伴い2000 万人以上の患者がいる。NAFLDの約25%は慢性進行性の肝炎である非アルコール性脂肪肝炎(NASH)になり、その後肝硬変や肝がんに進展する。また、欧米の調査ではNAFLDの死因トップは心血管イベントである。NASHに適応のある薬剤は世界的にまだ1つもなく、多くの開発治験がなされてきたがそのハードルは高い。最近では線維化抑制薬セロンセルチブの第3 相国際臨床試験が日本も含めて行われたが主要評価項目の達成に至らなかった。 本論文は、肝臓の核内受容体FXRの作動薬であるオベチコール酸のNASHに対する有用性を評価するために、20カ国332施設で実施された無作為化プラセボ対照第3相試験(REGENERATE)の中間解析結果の報告である。REGENERATE試験では、線維化ステージ1 ~ 3のNASH患者1,968人をプラセボ群、オベチコール酸10 mg群、25 mg群に無作為化し、1年半の投与後に肝生検が行われ評価された。 その結果、2つの主要評価項目のうちの1つである脂肪肝炎の悪化なき線維化の1ステージの有意な組織学的改善を25mg群でのみ達成したが(プラセボ群12% 対 25mg群23%)、もう1つの主要評価項目である脂肪肝炎の組織学的治癒(NASH resolution)は達成しなかった。重篤な有害事象は認められなかった。 主要評価項目の1つを満たしたことから米国では本剤の承認申請が行われている。確かに米国では近々FDAがオベチコール酸の早期承認を行うと報道されているが、問題もある。まず一番の問題は対プラセボでの治療効果が非常に低いことである。線維化に対して10 mgは無効で、25mgでのみ有効であったが、そのレスポンダーは23%にとどまった。しかもNASHの病理学的治癒は達成されてない。このようなパワーでは果たして今後投与を継続して4年後にハードエンドポイントであるイベント低減を達成できるだろうか。 また、薬剤独自の有害事象として痒みとLDLコレステロールの上昇が懸念されている。前者は本試験の25mgにおいて軽症~重症の搔痒を51%に認めた(プラセボ群19%)ことから忍容性が心配であろう。LDLコレステロールの上昇は25mg 群で17%(プラセボ群7%)に認めたが、これは本疾患の欧米での死因トップが心血管イベントであることを考慮すると問題かもしれない。非常に残念なことは、日本においてオベチコール酸の開発は第2相試験までで中断され、今回のグローバル試験に日本は参加できなかった点であり、当分NASHの新薬は国内で承認されることはなさそうである。
Resmetirom(MGL-3196)の非アルコール性脂肪肝炎の治療:多施設、無作為、二重盲検、プラセボ対照、第2相試験。
Resmetirom(MGL-3196)の非アルコール性脂肪肝炎の治療:多施設、無作為、二重盲検、プラセボ対照、第2相試験。
Resmetirom (MGL-3196) for the treatment of non-alcoholic steatohepatitis: a multicentre, randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial Lancet 2019 Nov 30;394(10213):2012-2024. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、肝脂肪沈着、炎症、肝細胞障害、進行性肝線維化を特徴とする。Resmetirom(MGL-3196)は、肝臓指向性、経口活性、選択的甲状腺ホルモン受容体βアゴニストで、肝脂肪代謝を増加させ、脂肪毒性を低下させることによりNASHを改善するよう設計されています。 【方法】MGL-3196-05は、米国内の25施設で36週間の無作為化二重盲検プラセボ対照試験が実施されました。生検でNASH(線維化ステージ1~3)が確認され、MRI-proton density fat fraction(MRI-PDFF)により評価したベースライン時の肝脂肪率が10%以上の成人が適格とされました。患者は、コンピュータベースのシステムにより、resmetirom 80 mgまたはマッチングプラセボを1日1回経口投与するよう2対1に無作為に割り付けられた。12週目と36週目に肝脂肪を連続測定し、36週目に2回目の肝生検を行った。主要評価項目は、ベースラインと12週目のMRI-PDFFを測定した患者において、12週目にプラセボと比較してMRI-PDFFで評価した肝脂肪の相対変化としました。本試験は ClinicalTrials. gov(NCT02912260) に登録されている。 【所見】米国内の18施設で348名の患者がスクリーニングされ、84名がレスメチロムに、41名がプラセボにランダムに割り付 けられた。12週目(レスメチロム:-32-9%、プラセボ:-10-4%、最小二乗平均差:-22-5%、95%CI:-32-9~-12-2、p<0-0001)および36週目(レスメチロム:-37-3%、プラセボ:-8-5、34:-8%、42-0~-15-7、p<0-0001)においてプラセボ:78名と比較して肝臓脂肪の相対低下が認められ、レスメトロム:74名およびプラセボ:38名では肝臓脂肪が低下していました。有害事象は、ほとんどが軽度または中等度であり、レスメチロムで一過性の軽い下痢と吐き気の発生率が高かったことを除いて、群間でバランスがとれていた。 【解釈】レスメチロム投与により、NASH患者において12週間および36週間の投与後に肝脂肪の有意な減少が認められた。レスメチロムのさらなる研究により、組織学的効果と非侵襲的マーカーや画像診断の変化との関連を記録する可能性があり、より多くのNASH患者におけるレスメチロムの安全性と有効性を評価することができます。 【資金提供】マドリガル・ファーマスーティカルズ 第一人者の医師による解説 開発進むNASH治療薬 線維化改善作用に関しては進行中の第3相試験で検証 中原 隆志(診療准教授)/茶山 一彰(教授) 広島大学大学院医系科学研究科消化器・代謝内科学 MMJ.August 2020;16(4) 現在、世界的に非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholicsteatohepatitis;NASH)が急増し、社会問題化している。NASHの多くはメタボリック症候群を背景に発症するが、さまざまなホルモン分泌異常も病態に関与する(1) 。健常人と比較し、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)では甲状腺機能低下症が有意に多く(21% 対 10%)(2) 、さらにNASHではNAFLDよりも甲状腺機能低下症が高頻度にみられる(3)。 本論文は、肝細胞に高発現する甲状腺ホルモン受容体β(THR-β)に対する特異的アゴニストであるレスメチロム(resmetirom)の有効性と安全性の評価を目的に、米国25施設で実施された無作為化プラセボ対照第2 相試験の報告である。対象はベースライン時の肝脂肪率が10%以上のNASH患者125 人で、生検でNASH( 線維化:stage 1~ 3)が確認され、MRIプロトン密度脂肪画分測定法(MRI-PDFF)により肝臓に10%以上の脂肪化が認められた患者であった。患者はレスメチロム(80mg)もしくはプラセボを1日1回経口投与する群に2対1の比で無作為に割り付けられた。12週時と36週時に肝臓の脂肪が測定され、36週時には2回目の肝生検が実施された。 その結果、12、36週時の肝脂肪率のベースラインからの低下度はレスメチロム群の方がプラセボ群よりも大きく、両群間の最小二乗平均差は12週時で- 25 .5 %(P< 0 .0001)、36 週時で-28 .8%(P<0 .0001)であった。また、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の低下、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール、中性脂肪(TG)、リポ蛋白の低下や線維化マーカーや肝細胞の風船化(ballooning)と相関するサイトケラチン(CK)-18の低下を認め、36週時のNAFLD活動性スコアの改善を認めた。忍容性も良好であった。有害事象の多くは軽度~中等度で、一過性の軽度下痢および悪心の発現率がレスメチロム群で高かった以外は2群間にほとんど差はなかった。 一方、NASHの予後は、肝脂肪化ではなく、肝線維化によって規定されることが明らかとなっている。本研究では直接的な線維化の評価がされておらず、また肝細胞におけるTHR-βの発現量も評価されていない。線維化改善作用に関しては現在進行中のstage F2 ~ F3の線維症を有するNASH患者を対象とした第3相試験(MAESTRO-NASH試験)で検証されることとなる。 1. Takahashi H. Nihon Rinsho. 2019;77: 884-888. 2. Pagadala MR et al. Dig Dis Sci. 2012;57(2):528-534. 3. Carulli L et al. Intern Emerg Med. 2013;8(4):297-305.
未病の消化不良に対する管理戦略の有効性:系統的レビューとネットワークメタ解析。
未病の消化不良に対する管理戦略の有効性:系統的レビューとネットワークメタ解析。
Effectiveness of management strategies for uninvestigated dyspepsia: systematic review and network meta-analysis BMJ 2019 Dec 11;367:l6483. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】uninvestigated dyspepsiaに対する管理戦略の有効性を明らかにすること。 【デザイン】系統的レビューとネットワークメタ分析。 【データソース】言語制限なしで、開始時から2019年9月までのMedline, Embase, Embase Classic, the Cochrane Central Register of Controlled Trials, clinicaltrials. gov 。2001年から2019年までのConference proceedings。 [ELIGIBILITY CRITITERIA FOR SELECTING STUDIES]成人参加者(年齢18歳以上)における未調査の消化不良に対する管理戦略の有効性を評価した無作為化対照試験。対象となる戦略は、迅速な内視鏡検査、Helicobacter pyloriの検査と陽性者への内視鏡検査、H pyloriの検査と陽性者への除菌治療(「検査と治療」)、経験的酸抑制、または症状に基づいた管理であった。試験は、最終フォローアップ(12ヶ月以上)における症状状態の二値的評価を報告した。 【結果】レビューでは、成人被験者6162人を含む15の適格無作為化対照試験が特定された。データは、ランダム効果モデルを用いてプールされた。戦略はPスコアに従って順位付けされた。Pスコアとは、ある管理戦略が他の管理戦略よりも優れているという確信の程度を平均したもので、競合するすべての戦略に対して平均されたものである。「検査と治療」は第1位(症状残存の相対リスク0.89、95%信頼区間0.78~1.02、Pスコア0.79)、「迅速内視鏡検査」は第2位で、同様の成績(同 0.90 0.80~1.02 、Pスコア0.71)であった。しかし、どの戦略も "test and treat "よりも有意に低い効果を示さなかった。"test and treat "に割り当てられた参加者は、症状に基づいた管理(相対リスクv 症状に基づいた管理 0.60, 0.30~1.18) を除く他のすべての戦略よりも内視鏡検査を受ける確率が有意に低かった(相対リスクv 内視鏡検査の促進 0.23, 95%信頼区間 0.17~0.31, P score 0.98).管理に対する不満は、「検査と治療」(相対リスクv0.67、0.46~0.98)、および経験的酸抑制(相対リスクv0.58、0.37~0.91)よりも、迅速内視鏡検査(Pスコア0.95)のほうが有意に低かった。上部消化管癌の発生率は、すべての試験で低値であった。感度分析でも結果は安定しており、直接結果と間接結果の間の矛盾は最小限であった。個々の試験のバイアスリスクは高かった;実用的な試験デザインのため、盲検化は不可能であった。 【結論】「Test and treat」は、迅速内視鏡検査と同様のパフォーマンスを示し、他のどの戦略よりも優れていなかったが、第1位であった。「検査と治療」は、症状に基づく管理を除く他のすべてのアプローチよりも内視鏡検査を少なくすることにつながった。しかし、参加者は症状の管理戦略として迅速な内視鏡検査を好む傾向が見られた。[SYSTEMATIC REVIEW REGISTRATION]PROSPERO登録番号CRD42019132528。] 第一人者の医師による解説 理にかなうピロリ菌検査 内視鏡検査なしの実施は医療保険適用外に留意 近藤 隆(講師)/三輪 洋人(主任教授) 兵庫医科大学消化器内科学 MMJ.August 2020;16(4) 内視鏡検査未施行のディスペプシア症状のある患者で、警告症状・徴候のない場合、どのような治療戦略を選ぶべきかについて、臨床現場では判断に迷うことが多い。実際の治療戦略としては以下が挙げられる:(1)直ちに内視鏡検査を実施する(2)ピロリ菌検査を行い、陽性者に内視鏡検査を実施する(3)ピロリ菌検査を行い、陽性者に除菌治療を実施する(4)全症例に酸分泌抑制薬を投与する(5)ガイドラインの推奨もしくは医師の通常診療として、症状に応じた治療を実施する。 これまでに、個々の治療戦略同士を比較したランダム化対照試験(RCT)はいくつか実施されているが、どの戦略も効果は同程度であり、初期管理のアプローチ選択については意見が分かれているのが現状である。 本論文の系統的レビューでは、内視鏡検査未施行のディスペプシア患者に対する長期マネージメントとして、プライマリーケアレベルでどの戦略を行うのが良いかについて、ネットワークメタアナリシスの手法を用いて15件のRCT(ディスペプシア患者計6,162人)を対象に解析している。その結果、プライマリーケアレベルにおいて、ピロリ菌検査を行い陽性者に除菌治療を実施する治療戦略(3)が症状残存の相対リスクが最も低く(相対リスク, 0 .89;95% CI, 0 .78~1.02;P=0 .79)、さらに内視鏡検査の施行を有意に減らすことが判明した。 一方で、患者の満足に関しては、直ちに内視鏡検査を実施する治療戦略(1)が有意に高く、ディスペプシア患者は内視鏡検査を好む傾向にあるといえる。ただ、今回のメタアナリシスでは、ディスペプシア患者におけるがん発見率に関しては、上部消化管がんの割合は0.40%と低く、この結果からは少なくとも警告症状・徴候のないディスペプシア患者に対して、急いで内視鏡検査を実施する必要はないことを意味しており、費用対効果の観点からも同様のことが言えよう。 また、日本の「機能性消化管疾患診療ガイドライン2014̶機能性ディスペプシア(FD)」では、ピロリ菌除菌から6~12カ月経過後に症状が消失または改善している場合はH. pylori関連ディスペプシアとし、FDと異なる疾患と定義されている。したがって、まずピロリ菌の有無を調べる方法は、H.pylori関連ディスペプシアを除外し、本当のFD患者を選定するには理にかなった戦略と言えるだけでなく、将来に生じうる胃がんの予防的観点からも有用であると考える。 ただ、日本におけるディスペプシア症状に対するピロリ菌除菌の有効性は欧米よりは高いとはいえ10%程度と限定的であること、さらに内視鏡検査なしにピロリ菌検査を行う場合、医療保険が適用されないことに留意する必要がある。
乳製品摂取と女性および男性の死亡リスクとの関連:3つの前向きコホート研究。
乳製品摂取と女性および男性の死亡リスクとの関連:3つの前向きコホート研究。
Associations of dairy intake with risk of mortality in women and men: three prospective cohort studies BMJ 2019 Nov 27;367:l6204. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】乳製品の消費と女性および男性の総死亡および原因別死亡のリスクとの関連を検討する。 【デザイン】食生活とライフスタイルの要因を繰り返し測定する3つの前向きコホート研究。 【主要評価項目】州のバイタルレコード、全国死亡インデックス、または家族や郵便システムから報告された死亡を確認した。最大32年間の追跡期間中に、51,438名の死亡が記録され、そのうち12,143名が心血管疾患による死亡、15,120名が癌による死亡であった。多変量解析では、心血管疾患およびがんの家族歴、身体活動、全体的な食事パターン(alternate healthy eating index 2010)、総エネルギー摂取量、喫煙状況、アルコール摂取量、更年期障害の有無(女性のみ)、閉経後のホルモン使用(女性のみ)をさらに調整した。乳製品の総摂取量が最も少ないカテゴリー(平均0.8皿/日)と比較して、総死亡率の多変量プールハザード比は、乳製品の摂取量が2番目のカテゴリー(平均1.5皿/日)で0.98(95%信頼区間0.96~1.01)、1.00(0.97~1.03)であった。1.00(0.97~1.03)、3位(平均2.0皿/日)、4位(平均2.8皿/日)では1.02(0.99~1.05)、最高カテゴリー(平均4.2皿/日)では1.07(1.04~1.10)であった(P for trend <0.001)。乳製品の総消費量が最も多いカテゴリーと最も少ないカテゴリーを比較すると、心血管死亡率のハザード比は1.02(0.95~1.08)、がん死亡率は1.05(0.99~1.11)であった。乳製品のサブタイプでは、全乳の摂取は、総死亡(0.5食/日追加あたりのハザード比1.11、1.09~1.14)、心血管死亡(1.09、1.03~1.15)、がん死亡(1.11、1.06~1.17)のリスクを有意に高めた。食品代替分析では、乳製品の代わりにナッツ類、豆類、全粒穀物を摂取すると死亡率が低くなり、乳製品の代わりに赤身肉や加工肉を摂取すると死亡率が高くなった。 【結論】大規模コホートから得られたこれらのデータは、乳製品の総摂取量の多さと死亡リスクとの間に逆相関があることを支持していない。乳製品の健康効果は、乳製品の代わりに使用される比較食品に依存する可能性がある。わずかに高いがん死亡率は、乳製品の消費と有意ではなかったが、さらなる調査が必要である。 第一人者の医師による解説 日本では牛乳摂取が多いと全死亡リスクは低下 欧米との相違は検討課題 於 タオ1)、小熊 祐子2)1)慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科、2)慶應義塾大学スポーツ医学研究センター・大学院健康マネジメント研究科准教授 MMJ.June 2020;16(3) 乳製品は蛋白質をはじめ、各種微量栄養素の摂取 源として重要である一方で、飽和脂肪酸やコレステロールの含有量が多く、健康への悪影響も懸念される。乳製品の摂取は高血圧、2型糖尿病、循環器 疾患などの発症と負の関連が報告されているが、 前立腺がん(男性)、卵巣がん(女性)とは正の関連が報告されている。また、死亡率については前向き観察研究が実施されているものの、結果は一貫しない。 本研究は乳製品摂取と全死亡率および原因別死 亡率との関連を明らかにするため、米国で白人医 療職を対象に行われた3つの大規模コホート研究 (Nurses’Health Study, Nurses’Health Study II, Health Professionals Follow-up Study)のうち、登録時の心血管疾患患者・がん患者を除外した 217,755人(男性:49,602人、女性:168,153 人)を対象とした。乳製品の摂取は食品頻度調査票 (FFQ)で推定し、死亡は戸籍、国民死亡記録で追跡し、家族または郵便制度による報告で補完した。 最長32年間の追跡期間中、心血管死12,143人、 がん死15,120人を含む51,438人の死亡が確認された。全死亡のハザード比は、乳製品総摂取量の五分位数で摂取量が最も少ない群 Q1(平均0.8 SV# /日)と比較し、Q2(平均1.5 SV/日)で0.98、 Q3(平均2.0 SV/日)で1.00、Q4(平均2.8 SV/日)で1.02、Q5(平均4.2 SV/日)で1.07であり、 非線形関係であるが、乳製品総摂取量が多くなると死亡リスクが有意に上昇した。がん死亡リスクでもほぼ同じ傾向が確認された。 乳製品の種類別にみると、全乳の摂取増加は全死亡リスク、心血管疾 患死、がん死のリスク上昇と有意に関連した。低脂 肪乳は全死亡リスクのみと有意に関連し(ハザード 比 , 1.01;P<0.001)チーズはいずれとも関連していなかった。さらに、乳製品の摂取をナッツ類、 豆類あるいは全粒穀類の摂取に置き換えた場合は 死亡リスクが低下し、一方、赤身肉・加工食肉に置き換えた場合は死亡リスクが上昇した。 本研究は対象者に起因する測定誤差や慢性疾患による生活習慣の変化に起因する因果の逆転の可能性を反復測定値を用いることなどで最小限に抑えている。また、サンプルサイズが大きく解析力は十分であり、研究の質は担保されている。日本では牛乳の摂取が多いと全死亡リスクが低くなることが大規模コホート研究から報告されている(1)。欧米人と摂取量自体も異なるため、この相違をどう捉えるか、引き続き、検討すべき重要な課題の1つである。 ※ SV(serving)は食品の摂取量を示す単位。本研究の定義では、無脂肪牛 乳、低脂肪牛乳あるいは全乳は 240mL、クリームは 6g、シャーベット、 フローズンヨーグルト、アイスクリーム、カッテージチーズ・リコッタチーズは 120mL、クリームチーズ・その他チーズについては 30mL を 1SV と している。 1. Wang C. et al. J Epidemiol. 2015;25(1):66-73
米国南部の大規模レストランフランチャイズにおけるカロリーメニュー表示が購入カロリーに及ぼす影響の推定:準実験的研究。
米国南部の大規模レストランフランチャイズにおけるカロリーメニュー表示が購入カロリーに及ぼす影響の推定:準実験的研究。
Estimating the effect of calorie menu labeling on calories purchased in a large restaurant franchise in the southern United States: quasi-experimental study BMJ 2019 Oct 30;367:l5837. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】大規模レストランチェーンにおけるメニューのカロリー表示が、取引ごとの平均購入カロリーの変化と関連するかどうかを評価する。 【デザイン】準実験的縦断研究。 【設定】2015年4月から2018年4月まで米国南部(ルイジアナ、テキサス、ミシシッピー)にある3種類のレストランチェーンを有する全米規模のファーストフード企業の大規模フランチャイズ。 【参加者】2017年4月に店内およびドライブスルーメニューにカロリー情報を追加し、ラベル付け前(2015年4月から2017年4月)とラベル付け後(2017年4月から2018年4月)の実施期間に週次集計した売上データを持つ104のレストランを対象。 【主要アウトカム指標】主要アウトカムは、線形混合モデルを用いた中断時系列分析を用いて、反実仮想(すなわち、介入がなければ介入前のトレンドが持続していたという仮定)と比較したカロリー表示実施後の取引ごとの平均購入カロリーの全体の水準および傾向の変化とした。副次的アウトカムは、品目別(メインディッシュ、サイドディッシュ、砂糖入り飲料)であった。サブグループ分析では、レストランの国勢調査対象地域(国勢調査で定義された地域)の社会人口統計学的特性によって定義された層におけるカロリー表示の効果を推定した。3年間で、104のレストランで、49062 440の取引が行われ、242 726 953のアイテムが購入された。ラベリング実施後、60カロリー/取引(95%信頼区間48~72、約4%)の水準減少が観察され、その後、実施後1年間はベースラインの傾向とは独立して0.71カロリー/取引/週(95%信頼区間0.51~0.92)の増加傾向が観察された。これらの結果は、感度分析における異なる分析仮定に対して概ね頑健であった。レベルの低下と実施後の傾向の変化は、サイドディッシュや砂糖入り飲料よりもサイドメニューの方が強かった。水準の低下は、所得の中央値が高い国勢調査区と低い国勢調査区の間で同様であったが、取引あたりのカロリーの実施後の傾向は、高所得の国勢調査区(0.50、0.19から0.81)よりも低所得(カロリー/取引/週の変化0.94、95%信頼区間0.67から1.21)でより高かった。 【結論】大規模フランチャイズのファーストフード店においてカロリー表示を実施すると、1取引当たりの平均購入カロリーに小さな減少が認められた。この減少は、1年間のフォローアップで減少した。 第一人者の医師による解説 長期的な影響や表示方法の検討も必要 日本でも求められる研究 丸山 広達1)、磯 博康2) 1)愛媛大学大学院農学研究科地域健康栄養学分野准教授、2)大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学教授 MMJ.June 2020;16(3) 栄養成分表示は、消費者の健康的な食生活の質の向上の一手段として用いられている(1)。米国では、 2018年5月からAffordable Care Act(患者保護 および医療費負担適正化法)により、エネルギーの過剰摂取による肥満や慢性疾患の改善を最終目標として、大手外食企業で提供するすべての商品に対してエネルギー(kcal)表示が求められるようになった。そこで、本研究では準実験デザインにより、エネルギー表示が大手外食企業において消費者 が購入した商品のエネルギー量に対する影響について解析した。 本研究では、エネルギー表示の導入前2年間、導入後1年間の、約5000万件近い購入取引のデータを用いた。ニューヨーク市保健精神衛生局(NYC Health)が開発した、米国における大手外食企業の商品の栄養成分値を収載している“Menustat”と いうデータベースより、各商品のエネルギー量を把握した。エネルギー表示導入前後の消費者が購入した商品のエネルギー量、その後の推移との関連は分割時系列分析により評価した。 エネルギー表示前(1,440 kcal)に比べて、表示後は平均して1取引当たりのエネルギー量で4% に相当する約60 kcal(95%信頼区間[CI], 48~ 72 kcal)の減少がみられたが、その減少は短期間にとどまり、その後1取引当たりのエネルギー量は 漸増傾向にあった(0.71 kcal /週 /1取引;95% CI, 0.51~0.92)。 商品別にみると、表示後平均して最も減少したのは副菜で40 kcal / 1取引、次いで主菜の11 kcal / 1取引であり、清涼飲料水では変化はみられなかった。表示後の1取引当たりのエネルギー量の漸増傾向は、平均世帯収入の低い地域でより強かった。 米国では、1日のエネルギーの約3分の1を外食から摂取していると推定されており、60 kcal/1 取引の減少はわずかに食事の質の向上に貢献した 可能性はあるが、その後の1取引当たりのエネルギー量は漸増傾向であり、長期的な影響についてはさらなる研究が必要である。また、他の研究では表示方法によって効果が異なる可能性も示されていることから表示方法の検討も必要である。 世界的に、表示が求められている大手企業の外食や調理済み加工食品などの表示の効果を調べた研究は少ない(2)。日本でも、食品表示法により、加工食品についてはエネルギーなどの表示が義務付けられており、このような研究の実施が制度の評価と充実を図るために必要であると考える。 1. Crockett RA et al.Cochrane Database Syst Rev. 2018 Feb 27;2:CD009315. 2. Bleich SN et al. Obesity (Silver Spring). 2017;25(12):2018-2044.
股関節骨折における加速手術と標準治療の比較(HIP ATTACK):国際無作為化比較試験。
股関節骨折における加速手術と標準治療の比較(HIP ATTACK):国際無作為化比較試験。
Accelerated surgery versus standard care in hip fracture (HIP ATTACK): an international, randomised, controlled trial Lancet 2020 Feb 29;395(10225):698-708. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】観察研究では、股関節骨折患者において、手術の迅速化は転帰の改善と関連することが示唆されている。HIP ATTACK試験では、手術の迅速化が死亡率や重大な合併症を減らすかどうかを評価した。 【方法】HIP ATTACK試験は、17か国69病院で行われた国際無作為化対照試験である。手術が必要な45歳以上の股関節骨折の患者を対象とした。研究担当者は、中央コンピューター無作為化システムにより、無作為にブロックサイズを変えながら、患者を加速手術(診断後6時間以内に手術の目標)または標準治療のいずれかに無作為に割り付けた(1対1)。主要アウトカムは、無作為化後90日目における死亡率と主要合併症(死亡率、非致死的心筋梗塞、脳卒中、静脈血栓塞栓症、敗血症、肺炎、生命を脅かす出血、大出血)の複合であった。患者、医療従事者、および試験スタッフは治療割り付けを認識していたが、転帰判定者は治療割り付けをマスクされた状態で行われた。患者は intention-to-treat の原則に従って分析された。本研究はClinicalTrials. gov(NCT02027896)に登録されている。 【所見】2014年3月14日から2019年5月24日までに、27701人の患者がスクリーニングされ、そのうち7780人が適格であった。このうち2970人が登録され、加速手術(n=1487)または標準治療(n=1483)を受けるよう無作為に割り付けられた。股関節骨折の診断から手術までの時間の中央値は、加速手術群で6時間(IQR4-9)、標準治療群で24時間(10-42)であった(p<0-0001)。加速手術に割り付けられた140人(9%)と標準ケアに割り付けられた154人(10%)が死亡し,ハザード比(HR)は0~91(95%CI 0~72~1~14),絶対リスク減少(ARR)は1%(-1~3,p=0~40)であった.主要合併症は、加速手術に割り付けられた321人(22%)と標準治療に割り付けられた331人(22%)に発生し、HRは0-97(0-83~1-13)、ARRは1%(-2~4、p=0-71)であった。 【解釈】股関節骨折の患者では、加速手術は標準治療に比べて死亡率や主要合併症を複合したリスクを有意には下げなかった【財源】カナダ保健研究機構(Canadian Institutes of Health Research. 第一人者の医師による解説 6時間以内の手術は有用だが 24時間以内の手術なら問題ないという解釈も可能 田島 康介 藤田医科大学病院救急科教授 MMJ.June 2020;16(3) 大腿骨近位部骨折は全世界で年間150万人以上の高齢者が受傷し、早期手術、早期離床を目指すことで合併症や日常生活動作(ADL)および生命予後を改善することが数多く報告されており(1),(2)、欧米では入院後24~48時間以内に手術を提供することが標準的治療となっている。日本では日本整形外科学会の2013年度調査によると手術までの平均待機日数は4.4日であるが、早期に手術を行う施設が昨今増加している。 このような背景から、著者らは、超早期手術により患者の疼痛や安静をより早期に解除することが 合併症や死亡率の改善につながるかどうかを検討するため、欧米・アジア(日本を含まない)など17 カ国69施設で無作為化対照試験(HIP ATTACK)を実施した。45歳以上で転倒などの低エネルギーによる外傷で受傷した患者を対象とし、登録患者 2,970人が超早期群(診断後6時間以内に手術)と 標準治療群に無作為に割り付けられた。患者背景、 既往歴、内服歴、社会歴などに差はなかった。 手術 90日後の超早期群と標準治療群の比較において、主要評価項目である死亡率(9% 対 10%[標準]) および複数の重大合併症発生率(22% 対 22%) に関して有意差はなく、副次評価項目である心筋梗塞(6% 対 5%)、心不全(2% 対 2%)、静脈血栓塞栓症(肺塞栓症、深部静脈血栓症)(1% 対 1%)、 大出血(6% 対 5%)、敗血症(5% 対 5%)のいずれも有意差はなかった。しかし、敗血症以外の感染症(11% 対 14%;P=0.032)、脳卒中(<1% 対 1%;P=0.047)、せん妄(9% 対 12%;P= 0.0089)は超早期群で有意に発生率が低かった。 既報では72、48、24時間と手術待機時間が短いほどさまざまな合併症が減少するとされ、生命予後にも医療経済的にも有利とされている1。超早期手術は術前検査が不十分であるとの指摘もあるが、今回の試験では各パラメータに差はなかった。骨折を受傷した患者は手術まで床上安静を強いられ疼痛からも解除されないことを考えると、むしろせん妄の発生率が低下するなど超早期手術は安全かつ有用であるとも言える。 日本の現状として、予定手術でうまった手術室の予定を調整して超早期手術を提供することは困難な施設が多いであろう。また、死亡率と合併症発生率に有意差がなかったことは、逆に超早期手術を行わず24時間以内に手術が行えれば問題ないという解釈も成り立つ。最後に、本試験の術後90日 死亡率(9~10%)は日本の標準的な報告よりも高いことを言及しておきたい。 1. Simunovic N et al. CMAJ. 2010;182(15):1609-1616. 2. Nyholm AM et al. J Bone Joint Surg Am. 2015;97(16):1333-1339.
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