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男性への葉酸と亜鉛の補給が不妊治療を受けているカップルの精液の質と生児に及ぼす影響。A Randomized Clinical Trial.
男性への葉酸と亜鉛の補給が不妊治療を受けているカップルの精液の質と生児に及ぼす影響。A Randomized Clinical Trial.
Effect of Folic Acid and Zinc Supplementation in Men on Semen Quality and Live Birth Among Couples Undergoing Infertility Treatment: A Randomized Clinical Trial JAMA 2020 Jan 7;323(1):35-48. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】男性不妊治療のために販売されている栄養補助食品は、精液の質を改善するという限られた先行エビデンスに基づいて、葉酸と亜鉛を含むのが一般的である。 【目的】毎日の葉酸と亜鉛の補給が、精液の質と出生に及ぼす影響を明らかにする。不妊治療を計画しているカップル(n=2370,男性は18歳以上,女性は18~45歳)を,2013年6月~2017年12月に米国の生殖内分泌学・不妊治療研究センター4施設に登録した。精液採取のための最後の6カ月間の研究訪問は2018年8月中に行われ、ライブバースおよび妊娠情報のチャート抽出は2019年4月中に完了した。 【介入】男性は、研究センターと計画している不妊治療(体外受精、研究サイトでのその他の治療、外部クリニックでのその他の治療)によってブロック無作為化され、葉酸5mgおよび元素亜鉛30mg(n=1185)またはプラセボ(n=1185)のいずれかを6カ月間毎日投与された。 【結果】無作為化された2370人の男性(平均年齢33歳)のうち、1773人(75%)が6カ月後の最終診察に参加した。すべてのカップルの出生成績が得られ、1629人(69%)の男性が無作為化後6カ月の時点で分析用の精液を入手していた。生児出生数は治療群間で有意な差はなかった(葉酸・亜鉛群404[34%],プラセボ群416[35%],リスク差-0.9%[95%CI,-4.7%~2.8%])。無作為化後6カ月の時点で,ほとんどの精液品質パラメータ(精子濃度,運動性,形態,体積,総運動精子数)は治療群間で有意な差はなかった。葉酸と亜鉛の補給により,統計的に有意なDNA断片化の増加が認められた(DNA断片化の割合の平均は,葉酸と亜鉛群で29.7%,プラセボ群で27.2%,平均差は2.4%[95%CI,0.5~4.4%])。消化器症状は、葉酸および亜鉛の補給により、プラセボと比較してより多く見られた(腹部の不快感または痛み:それぞれ66[6%]対40[3%]、吐き気:50[4%]対24[2%]。50[4%]対24[2%]、および嘔吐。 【結論と関連性】不妊治療を受けようとしている一般的なカップルにおいて、男性パートナーが葉酸と亜鉛のサプリメントを使用しても、プラセボと比較して、精液の質やカップルの生児率を有意に改善することはできませんでした。これらの知見は、不妊治療における男性パートナーによる葉酸と亜鉛の補給の使用を支持するものではありません。 【臨床試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT01857310。 第一人者の医師による解説 結果の解釈は慎重に 適応を絞れば効果がある可能性も 岩月 正一郎(助教)/安井 孝周(教授) 名古屋市立大学大学院医学研究科腎・泌尿器科学分野 MMJ.June 2020;16(3) 近年、不妊症に対するサプリメントへの関心が高まっており、男性不妊を対象としたサプリメントの多くは葉酸と亜鉛が含まれている。最近のメタアナリシスにおいて、亜鉛と葉酸は男性不妊症患者の精子濃度や精子正常形態率を改善することが示された(1)。しかしこの報告で参照された論文は、結果のばらつきが大きく、大規模な研究が望まれてきた。 本論文では、米国内の不妊治療中カップル 2,370 組を対象とし、男性に1日に葉酸 5 mgと亜鉛 30 mgもしくはプラセボを6カ月間服用する群に無作為に割り付け、6カ月後の精液所見の変化およびその間の不妊治療の成績を比較した。 その結果、精液検査所見に変化はないばかりか、葉酸と亜鉛を投与すると、精子のDNA断片化率がプラセボ群 の27.2%に対して29.7%に上昇していた(精子 DNA断片化は精子への障害を表す指標で、30%以 下が正常範囲内である)。さらに、出産率にも変化はなく、むしろ葉酸と亜鉛を投与すると、プラセボ群に比べ、早産率が1.49倍に上昇していたという。 副作用についても、葉酸・亜鉛群で主に悪心・嘔吐 といった消化器症状が増加していた。 しかし本論文にはいくつかの制限がある。特に今回の知見が男性不妊症患者一般に当てはまるか どうかは慎重に吟味する必要があり、その理由として大きな問題点が3つ挙げられる。1つ目は対象の偏りである。確かに本研究は多数の男性を対象としたランダム化比較試験である。しかし参加した夫婦には男性不妊、女性不妊が混在しており、対象集団の8割近くの男性の精液検査所見は正常であった。2つ目は葉酸・亜鉛群でDNA断片化率と早期産の割合が有意に上昇したとあるが、プラセボ 群との差はわずかで、いずれも正常範囲内であることから臨床的意義は不明である。3つ目は、対象男性の投薬開始前(ベースライン)の葉酸と亜鉛の 血中濃度に関する情報がないことである。 2019 年の1年間に筆者らの施設を受診した男性不妊症 患者114人の血中亜鉛濃度を測定したところ、潜在性亜鉛欠乏(60μg/dL以上80μg/dL未満)は 36人(31.6%)、亜鉛欠乏(60μg/dL未満)は4 人(3.5%)であり、予想していた以上に亜鉛欠乏の患者の存在が明らかになった。亜鉛に限って言えば、対象を限定した亜鉛補充の有効性はさらに検証されるべきで、葉酸についても同様のことが予想される。 本研究は、エビデンスの乏しい不妊症に対する補助療法についての大規模なランダム比較試験として意義のある報告である。しかし、その結果の解釈は慎重に行うべきであると考えられる。 1.Irani M et al. Urol J. 2017;14(5):4069-4078.
早すぎる自然閉経および手術による閉経と心血管疾患の発症との関連性
早すぎる自然閉経および手術による閉経と心血管疾患の発症との関連性
Association of Premature Natural and Surgical Menopause With Incident Cardiovascular Disease JAMA 2019 Dec 24;322(24):2411-2421. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】最近のガイドラインでは、中年女性の動脈硬化性心血管疾患リスク評価の精緻化のために、40歳以前の閉経歴を用いることが推奨されている。この集団における心血管疾患リスクに関する確固たるデータは不足している。 【目的】40歳前の自然閉経および外科的閉経を有する女性における心血管疾患の発症と心血管リスク因子を検討する。 【デザイン,設定,参加者】2006年から2010年に募集した英国の成人居住者によるコホート研究(UK Biobank)である。試験登録時に40~69歳で閉経後の女性のうち,144 260人が組み入れ対象となった。フォローアップは2016年8月まで行われた。 【曝露】自然早発閉経(卵巣摘出術を行わない40歳前の閉経)および外科的早発閉経(40歳前の両側卵巣摘出術)。早発閉経のない閉経後女性を参照群とした。 【主要評および測定法】主要アウトカムは、冠動脈疾患、心不全、大動脈弁狭窄、僧帽弁閉鎖不全症、心房細動、虚血性脳卒中、末梢動脈疾患、静脈血栓塞栓症の発症を複合したものであった。副次的アウトカムには,主要アウトカムの個々の要素,高血圧,高脂血症,2型糖尿病の発症が含まれた。 【結果】対象となった閉経後女性144 260名(登録時の平均[SD]年齢,59.9[5.4]歳)のうち,自然早発閉経は4904(3.4%),外科的早発閉経は644(0.4%)であった。参加者は中央値で 7 年間追跡された(四分位範囲,6.3~7.7).主要転帰は、早発閉経を認めなかった女性5415人(3.9%)(発生率、5.70/1000人年)、自然早発閉経の女性292人(6.0%)(発生率、8.78/1000人年)(早発閉経なしとの差、+3.08/1000人年[95])に発生した。08/1000女性年[95% CI, 2.06-4.10];P < 0.001)、および外科的早発閉経(発生率、11.27/1000女性年)49女性(7.6%)(早発閉経なしとの差、+5.57/1000女性年[95% CI, 2.41-8.73];P < 0.001 )であった。主要アウトカムについては、従来の心血管疾患リスク因子および更年期ホルモン療法の使用で調整した後、自然および外科的早発閉経は、それぞれ1.36(95%CI、1.19-1.56;P < .001)および 1.87(95%CI, 1.36-2.58;P < .001)のハザード比と関連していた。【結論と関連性】自然および外科的早発閉経(40歳前)は、閉経後女性における心血管疾患の複合リスクとわずかではあるが統計的に有意な増加と関連していた。これらの関連性の根底にあるメカニズムを理解するために、さらなる研究が必要である。 第一人者の医師による解説 エストロゲン低下が心血管疾患の病態に直接関与することを示唆 武谷 雄二 東京大学名誉教授・医療法人レニア会理事長(アルテミスウイメンズホスピタル産婦人科) MMJ.June 2020;16(3) 先進諸国における中高年女性の主要な死因は心血管疾患である。日本でも高齢女性の死因の第2位、 3位はそれぞれ心疾患、脳卒中であり、合わせると悪性腫瘍に匹敵する。 エストロゲン(E)の血中濃度は閉経数年前から徐々に低下傾向がみられ、閉経後4~5年程度で検出限界に近づき、その後は低値を維持する。閉経年齢は50~52歳が平均的である。10%程度の女性は45歳未満に閉経を迎える。40歳未満の閉経は約1%であり早発閉経(premature menopause; PM)と呼ばれる。 閉経年齢が若いほどE欠落症状 (骨粗鬆症、動脈硬化など)が早期に現れる。さらに Eの低下は心血管疾患の危険因子としても注目されている。 本研究は、PMはい か な る 心血管疾患 のリスク を高めるかを調査した。対象は英国在住の閉経女性144,260人(40~69歳、平均年齢59.9歳、 約95%は白人)で約7年間前向きに心血管疾患の発症を調査した。3.8%はPMで、そのうち外科的 PM(卵巣切除)は10%強であった。 そ の 結果、何 ら か の 心血管疾患 が 非 PM群 の 3.9%、自然 PM群の6.0%、外科的 PM群の7.6% に発生した。いずれのPM群も非 PMと比較し、心血管疾患の発生率が有意に高く(P<0.001)、喫煙、Eの補充療法、高血圧、2型糖尿病、高脂血症などの有無で補正しても、ハザード比はそれぞれ1.36、 1.87と有意に高かった(P<0.001)。PM群で高 頻度にみられた心血管疾患は、冠動脈疾患、心不全、 大動脈弁狭窄症、心房細動、心虚血性発作、静脈血栓 塞栓症,虚血性脳卒中(特に自然 PM群)などであった。なお、末梢動脈疾患は閉経年齢との関連は乏しかった。全体として、閉経年齢は心血管疾患、メタボリックシンドローム関連疾患(高血圧、2型糖尿病、 高脂血症)などの発生率と逆相関を示し、特にPM 群ではいずれも高率であった。 早期のEの低下が、虚血性心疾患のみならず、脳卒中を含む多様な心血管疾患およびメタボリックシンドローム関連疾患のリスクを高めることは新たな知見である。しかし、PM群ではメタボリックシンドローム関連疾患の有無で補正しても心血管疾患のリスクは高く、Eの低下が心血管疾患の病態に直接関与することが示唆される。 外科的 PMの方が自然 PMと比べ、心血管疾患やメタボリックシンドローム関連疾患の発生率が高かった。この説明として、自然 PMの卵巣では、閉経後も微量のEとある程度のテストステロン(T) の分泌は保たれており、Tは脂肪組織などでEに転換される。一方、外科的PMではEやTの分泌はなく、 そのため血中E濃度はより低値であったことが考えられる。
極早産児の死亡率および重度の脳障害と出生後の早期転院および三次病院外での出生との関連:傾向スコアマッチングを用いた観察的コホート研究。
極早産児の死亡率および重度の脳障害と出生後の早期転院および三次病院外での出生との関連:傾向スコアマッチングを用いた観察的コホート研究。
Association of early postnatal transfer and birth outside a tertiary hospital with mortality and severe brain injury in extremely preterm infants: observational cohort study with propensity score matching BMJ 2019 Oct 16;367:l5678. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【目的】産後の転院や非三次病院での出産が有害転帰と関連するかどうかを明らかにすること 【デザイン】傾向スコアマッチングによる観察コホート研究 【設定】イングランドの国民保健サービスの新生児医療;National Neonatal Research Databaseに保有される集団データ。 【参加者】2008年から2015年の間に妊娠週数28週未満で生まれた極早産児(n=17 577)を、出生病院と出生後48時間以内の転院に基づいて、上方転院(非三次病院から三次病院、n=2158)、非三次医療(非三次病院で出生、転院せず、n=2668)、対照(三次病院で出生、転院せず、n=10 866)グループに分類する。傾向スコアと事前に定義された背景変数で乳児をマッチングさせ、交絡因子の分布がほぼ同じサブグループを形成した。 【主要アウトカム評価項目】死亡、重度の脳損傷、および重度の脳損傷を伴わない生存率 【結果】2181人の乳児、各群(上方転院、非三次医療、および対照)から727人がよくマッチングされた。対照群と比較して,上方転院群の乳児は退院前の死亡のオッズに有意差はなかったが(オッズ比1.22,95%信頼区間0.92~1.61),重度の脳損傷のオッズが有意に高く(2.32, 1.78~3.06;Number needed to treat(NNT)8),重度の脳損傷がなく生存できるオッズは有意に低かかった(0.60, 0.47~0.76;NNT 9)。対照群と比較して,非三次医療群の乳児は死亡のオッズが有意に高かったが(1.34, 1.02~1.77; NNT 20),重度の脳損傷のオッズ(0.95, 0.70~1.30),重度の脳損傷なしの生存(0.82, 0.64~1.05) に有意差はなかった.上方転院群の乳児と比較して,非三次医療群の乳児は,退院前の死亡(1.10,0.84~1.44)に有意差はなかったが,重度の脳損傷のオッズ(0.41, 0.31~0.53,NNT 8)は有意に低く,重度の脳損傷を伴わない生存(1.37, 1.09~1.73, NNT 14)は有意に高いオッズであった.水平搬送群(n=305)と対照群(n=1525)の転帰に有意差は認められなかった。 【結論】極早産児において、三次病院以外での出産と48時間以内の搬送は、三次病院での出産と比較して、転帰不良と関連することが示された。周産期医療サービスでは、産後の転院よりも三次病院での極早産児の出産を促進する経路を推進することを推奨する。 第一人者の医師による解説 極早産児の予後改善 3次施設での出生が2次施設での出生より有利 海野 信也 北里大学医学部産科学教授 MMJ.June 2020;16(3) 英国の新生児医療を提供する施設は、妊娠28週未満で出生した児に対応可能な3次施設、28~32 週の児を担当する2次施設および32週以降の児を担当するspecial care unitに階層化されている。 一方、日本では周産期医療の基本コンセプトを「新生児搬送中心から母体搬送中心の体制への移行」の推進とし、高次産科医療と新生児医療を同一施設で 提供できる総合・地域周産期母子医療センターのネットワークを各地域に整備し、重症母体および新生児への医療提供を最適化することが中心になっている。英国のように明確な役割分担はなく、基本的に重症例は総合またはそれに準じた体制の施設で対応している。 本論文は、イングランドで2008~2015年に 出生した妊娠28週未満のすべての極早産児を対象とし、3次施設で出生しそのまま治療された群(3 次群)、2次施設で出生しそのまま治療された群(2 次群)、2次施設で出生し、その後48時間以内に3 次施設に搬送された群(新生児搬送群)の間で生命予後と神経学的予後を傾向スコアマッチング法で後ろ向きに比較した研究の報告である。その結果、極早産児において新生児搬送群の予後は3次群よりも不良であるため、母体搬送を推奨する、と結論している。この結論自体は日本の取り組みとも一致する。 しかし、結果の解釈にあたり若干の留保が必要である。まず、退院前死亡率は2次群の方が3次群より高いが、新生児搬送群と3次群に差はない。また重度脳障害の発生率は、新生児搬送群の方が3次群だけでなく2次群よりも高く、2次群と3次群に差はない。これらの結果は、2次施設で出生した極早産児において、その状態による臨床的対応の選択が行われている可能性を示唆している。2次施設で出生した児の状態がきわめて不良であれば搬 送は選択されず、その結果として2次群の死亡率が高くなるかもしれない。 一方、2次施設で出生直後の処置実施中に脳室内出血などの合併症が生じれば、2次施設での管理が困難となり3次施設に搬送されやすくなるであろう。新生児搬送群の予後が悪いのは搬送行為の結果というよりは原因であるのかもしれない。 しかし、2次施設出生群(2次群+新生児搬送群) に比べ、3次群の方が予後良好であると推察される こ と か ら(退院前死亡率:2次施設出生群25.3% 対 3次群21.0 %; 重度脳障害:2次施設出生群 20.5% 対 3次群14.0%;重度脳障害を伴わない 生存:2次施設出生群60.7% 対 3次群68.8%)、 本研究の結果は、3次施設で出生する方が2次施設 で出生するより極早産児の予後改善に有利だというエビデンスとなりうるものと考えられる。
Irbesartan in Marfan syndrome(AIMS):二重盲検プラセボ対照無作為化試験。
Irbesartan in Marfan syndrome(AIMS):二重盲検プラセボ対照無作為化試験。
Irbesartan in Marfan syndrome (AIMS): a double-blind, placebo-controlled randomised trial Lancet 2019 Dec 21;394(10216):2263-2270. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】マルファン症候群において、長時間作用型の選択的アンジオテンシン-1受容体阻害薬であるイルベサルタンが、解離や破裂と関連する大動脈の拡張を抑制する可能性がある。我々は、マルファン症候群の小児および成人における大動脈拡張率に対するイルベサルタンの効果を明らかにすることを目的とした。 【方法】英国の22施設で、プラセボ対照二重盲検無作為化試験を行った。臨床的にマルファン症候群と確認された6~40歳の個人を含めることができた。試験参加者は全員、イルベサルタン75mgを1日1回オープンラベルで投与され、その後、イルベサルタン150mg(忍容性により300mgまで増量)またはマッチングプラセボに無作為に割り付けられた。大動脈径は、ベースラインとその後1年ごとに心エコーで測定された。すべての画像は治療割り付けを盲検化したコアラボで解析された。主要エンドポイントは大動脈基部拡張の割合であった。本試験はISRCTNに登録されており、番号はISRCTN90011794である。 【所見】2012年3月14日から2015年5月1日の間に、192名の参加者を募集し、イルベサルタン(n=104)またはプラセボ(n=88)にランダムに割り当て、全員が最長5年間追跡調査された。募集時の年齢中央値は18歳(IQR12~28)、99人(52%)が女性、平均血圧は110/65mmHg(SD16、12)、108人(56%)がβブロッカーを服用中であった。ベースラインの平均大動脈基部径はイルベサルタン群(SD 5-8)、プラセボ群(5-5)で34-4mmであった。大動脈基部拡張率の平均はイルベサルタン群0-53mm/年(95%CI 0-39~0-67)、プラセボ群0-74mm/年(0-60~0-89)、平均値の差は-0-22mm/年(-0-41~-0-02、p=0-030)であった。大動脈Zスコアの変化率もイルベサルタンによって減少した(平均値の差-0-10/年、95%CI -0-19 to -0-01、p=0-035)。イルベサルタンは、重篤な有害事象の発生率に差は認められず、良好な忍容性を示した。 【解釈】イルベサルタンは、マルファン症候群の小児および若年成人における大動脈拡張率の低下と関連しており、大動脈合併症の発生を抑制できる。 【助成】英国心臓財団、英国マルファン協会、英国マルファン・トラスト。 第一人者の医師による解説 β遮断薬との併用も可能 広がる内科的治療の選択肢 森崎 裕子 榊原記念病院臨床遺伝科医長 MMJ.June 2020;16(3) マルファン症候群(MFS)は、全身の結合組織の脆弱化をきたす遺伝性の疾患で、頻度は0.5 ~ 1 万人に1人という稀少疾患である。主な合併症は大動脈の脆弱性による大動脈瘤で、無治療では高率に大動脈解離に至る。解離リスクは大動脈基部径と相関があることから、現行治療の中心は、基部径が拡大した 患者に 予防的大動脈基部人工血管置換術を行う外科的治療であるが、手術による生活の質 (QOL)の低下は否めない。内科的治療としてβ遮断薬が使われてきたが、喘息症状の悪化やふらつきなどの副作用から十分な量が使えず拡張抑制効 果が得られない患者も多かった。 近年、MFS大動脈病変の背景にTGFβシグナル系の過剰応答が判明し、TGFβ抑制効果のあるアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が治療薬として浮上し、モデルマウス実験でロサルタンはβ遮断薬を凌駕する治療効果を示した。β遮断薬は、心筋の収縮を抑制し血圧変化を抑えることで大動脈壁のストレスを軽減するという対症療法である。一方、ARBは発症機序を抑制する根本的治療薬として期待されたが、その後の大規模臨床試験においてβ遮断薬に対するロサルタンの優越性は証明されず、「両者の効果はほぼ同等(非劣性)」という結 論に至っている(1)。 今回報告された無作為化プラセボ対照二重盲検試験のAortic Irbesartan Marfan Study(AIMS) では、ルーチン治療(β遮断薬の使用は任意)に長時間作用型 ARBイ ル ベ サ ル タン(開始150mg、 最大300mg)を追加し、プラセボを対照として、 大動脈拡張抑制効果を比較した。英国22施設で登録した6 ~ 40歳のMFS患者192人を対象とし、 最長5年間追跡した。主要評価項目として大動脈基 部径の年間変化量、副次評価項目としてZ スコア変 化量、解離や手術などのイベント発生も解析した。 その結果、心臓超音波検査での大動脈基部径の拡大はイルベサルタン群で0.53mm/年、プラセボ群 で0.74mm/年と有意差を認め、Zスコア評価でも 有意な抑制効果が示された。抑制効果は開始1年目 から認められ、両群とも約半数の患者がβ遮断薬を服用していたにもかかわらず、イルベサルタン 群の80%の患者が300mg/日まで増量可であったと示されている。 β遮断薬には、喘息患者やふらつきなどの副作用を認める患者では使いにくい、といった難点がある。一方、ロサルタンでは血圧抑制効果が不十分という問題があった。今回、降圧効果がより強い長時 間作用型のイルベサルタンで治療効果が認められ、 β遮断薬との併用も可能なことが示されたことで、 今後、内科的治療の選択肢が拡がり、個々の患者の 病態に合わせた治療を選べる方向性がみえてきたといえる。 1. Lacro RV et al. N Engl J Med. 2014;371(22):2061-2071.
男性における血友病の有病率および出生時有病率の確立。全国登録によるメタ分析的アプローチ。
男性における血友病の有病率および出生時有病率の確立。全国登録によるメタ分析的アプローチ。
Establishing the Prevalence and Prevalence at Birth of Hemophilia in Males: A Meta-analytic Approach Using National Registries Ann Intern Med 2019 Oct 15;171(8):540-546. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】血友病の有病率には大きなばらつきが観察され、疾病負担の確実な推定を妨げている。 【目的】血友病の有病率と出生時の有病率、および関連する寿命の不利益を推定する。 【デザイン】登録データのランダム効果メタ分析。 【設定】オーストラリア、カナダ、フランス、イタリア、ニュージーランド、イギリス。【参加】男性血友病AまたはB患者。 【測定】男性人口に対する症例の割合としての血友病有病率、出生年別の男性出生児に対する症例の割合としての出生時血友病有病率、有病率と出生時有病率の1-比率としての余命の不利益、高所得国での有病率と出生時有病率に基づく世界の予想患者数。 【結果】有病率は(男性10万対)17.1であった。出生時有病率(男性10万人当たり)は、全重症度血友病A24.6例、重症度血友病A9.5例、全重症度血友病B5.0例、重症度血友病B1.5例であり、血友病A・重症度血友病A・重症度血友病B・重症度血友病Bは、それぞれ1例、1例で、血友病Aは1例である。高所得国の平均寿命の不利は、血友病Aで30%、重症血友病Aで37%、血友病Bで24%、重症血友病Bで27%。世界の血友病患者の予想数は1 125 000、そのうち重症血友病は418 000と考えられる。 【限定】併存疾患や民族の調整には詳細は不十分だった。 【結論】血友病の流行はこれまでの推定より高い。血友病患者は依然として余命のハンディがある。出生時の有病率を確立することは、失われた生命年数、障害のある生命年数、疾病負担を評価するためのマイルストーンとなる。【Primary funding source】なし。 第一人者の医師による解説 発展途上国には未診断患者が多数 公平なリソース普及の基盤となる成果 森 美佳1)、瀧 正志2) 1)聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院小児科助教、2)聖マリアンナ医科大学小児科学特任教授 MMJ.June 2020;16(3) 血友病は、凝固第 VIII因子または第 IX因子の遺伝子変異により先天的に凝固因子が欠乏し、止血困難をきたす疾患である。治療の進歩により、凝固因子製剤や新規治療薬を用いて出血を制御できるようになったが、発展途上国では、治療のみならず血友病の診断でさえも国家の医療制度の限界を超えている。世界的な血友病の疾病負担の推定には、正確な有病率の情報が必要だが、従来の報告は均一性に乏しい。 本研究では、世界血友病連盟(WFH)のデータおよび口統計委員会が、先進6カ国(オーストラリア、カナダ、フランス、イタリア、ニュージーランド、英国)の全国患者レジストリを用いて、男性の血友病 AおよびBの有病率を、3カ国(カナダ、フランス、英国)のレジストリより出生時有病率および余命損失率(1-有病率 /出生時有病率 )をランダム効果メタ解析で推算している。 その結果、男性10万人あたりの有病率は、血友病 Aの全重症度で17.1、重症で6.0、血友病 Bの全重症度で3.8、重症で1.1であった。出生時の有病率は、それぞれ24.6、9.5、5.0、1.5であった。全重症度の有病率は各国間で不均一性を認めたが、 重症の血友病 AまたはBに限ると各国間で有意な不均一性は認めなかった。得られた有病率を世界の男性人口38億人に適用すると、血友病患者数は 112.5万人、そのうち重度患者数は41.8万人と 推定された。また余命損失率は血友病 Aの全重症度で30%、重症で37%、血友病 Bの全重症度で 24%、重症で27%であった。 有病率は、疾病負担の推定に必要な基本情報であるとともに、各国の診断能力、患者登録の報告効率や有効性、経済能力が反映されうる。WFHの既報では世界の血友病患者は推定47.5万人であったが(1)、本研究の先進国の有病率をもとに推定された世界の血友病患者数は、この報告よりも大幅に多く、 発展途上国では未診断の患者や適切な治療を受けられていない患者が多数いると推測される。また余命損失率の結果より、先進国でも依然として血友病患者の平均余命が悪いことが明らかとなった。 本研究には、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症などの合併症や民族性を考慮した調整が不十分という限界はあるが、長期間にわたる全国患者登録データを使用した信頼性の高い有病率および出生時有病率の報告である。今回の結果は、世界的な血友病の疾病負担の推測に向けた非常に重要なマイルストーンであり、治療の適切さの指標および公平なリソースの普及のための基盤となりうるだろう。 1.Pierce GF et al. Haemophilia. 2018;24(2):229-235.
2型糖尿病患者の腎機能に対するビタミンDおよびオメガ3脂肪酸の補給の効果。無作為化臨床試験。
2型糖尿病患者の腎機能に対するビタミンDおよびオメガ3脂肪酸の補給の効果。無作為化臨床試験。
Effect of Vitamin D and Omega-3 Fatty Acid Supplementation on Kidney Function in Patients With Type 2 Diabetes: A Randomized Clinical Trial JAMA 2019 Nov 19;322(19):1899-1909. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】慢性腎臓病は2型糖尿病の一般的な合併症であり、末期腎不全に至る可能性があり、高い心血管リスクと関連している。 【目的】ビタミンD3またはオメガ3脂肪酸の補給が2型糖尿病のCKDの発症または進行を予防するかどうかを検証する。 【デザイン・設定・参加者】マサチューセッツ州の単一施設がコーディネートしたVitamin D and Omega-3 Trial (VITAL)の補助研究として、2011年11月から2014年3月に米国全50州から募集した2型糖尿病の成人1312名を対象に、2×2階調デザインの無作為化臨床試験を実施した。フォローアップは2017年12月に終了した。 【介入】参加者は、ビタミンD3(2000 IU/d)とオメガ3脂肪酸(エイコサペンタエン酸とドコサヘキサエン酸;1 g/d)(n = 370)、ビタミンD3とプラセボ(n = 333)、プラセボとオメガ3脂肪酸(n = 289)、またはプラセボ2種(n = 320)を5年間投与する群に無作為に割り付けられた。 【結果】無作為化された1312名(平均年齢67.6歳、女性46%、人種的または民族的少数派31%)のうち、934名(71%)が試験を完了した。ベースラインの平均eGFRは85.8(SD、22.1)mL/min/1.73 m2だった。ベースラインから5年目までのeGFRの平均変化量は、ビタミンD3投与群で-12.3(95%CI、-13.4~-11.2)mL/min/1.73m2、プラセボ投与群で-13.1(95%CI、-14.2~-11.9)mL/min/1.73m2(差、0.9[95%CI、-0.7~2.5]mL/min/1.73m2)であった。eGFRの平均変化量は、オメガ3脂肪酸群で-12.2(95%CI,-13.3~-11.1)mL/min/1.73m2、プラセボ群で-13.1(95%CI,-14.2~-12.0)mL/min/1.73m2(差,0.9[95%CI,-0.7~2.6]mL/min/1.73m2)。2つの治療法の間に有意な相互作用はなかった。腎結石は58名(ビタミンD3投与群32名,プラセボ投与群26名),消化管出血は45名(オメガ3脂肪酸投与群28名,プラセボ投与群17名)に発生した。 【結論と関連性】成人の2型糖尿病患者において,ビタミンD3またはオメガ3脂肪酸を補給しても,プラセボと比較して,5年後のeGFRの変化に有意な差はなかった。今回の結果は、2型糖尿病患者の腎機能維持のためのビタミンDまたはオメガ3脂肪酸の補給の使用を支持するものではない。 【臨床試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT01684722。 第一人者の医師による解説 ビタミン D、オメガ -3脂肪酸補充は2型糖尿病患者の腎機能改善効果なし 寺内 康夫 横浜市立大学医学群長(大学院医学研究科分子内分泌・糖尿病内科学教授) MMJ.June 2020;16(3) 日本では糖尿病の発症予防、合併症の発症・進展・重症化予防のためにさまざまな対策が講じられており、中でも糖尿病腎症による透析導入を減らす対策は国家的プロジェクトとして位置づけられている。糖尿病腎症に対する基本方針としては、生活 習慣改善、血糖・血圧・脂質・貧血の管理などとともに、腎不全を悪化させる脱水、薬剤、感染症を避けることが重要である。 腎機能が低下すると、血中のCa濃度およびP濃度が変化する。腎臓は徐々に血中のPを除去する能力を失い、Ca濃度を正常に保つのに十分な量のビタミン Dを活性化できなくなる。副甲状腺はこれらの変化を感知して副甲状腺ホルモン(PTH)の産生・放出を増大させ、Ca濃度を上昇させる。これらの代謝変化は骨代謝を変化させ、骨形成異常などが 認められる。こうした骨ミネラル代謝異常は血管 合併症を含む生命予後に影響する。 Kidney Disease /Impr o ving Global Outcomes(KDIGO)ガイド 2009(1)では、慢性腎臓病(CKD)G3~5期では、ビタミンD欠乏の有無チェックのため血中25(OH)D測定が望ましいとされ、25(OH)Dが20 ng/mL以下ではビタミンD欠乏症と判定し、天然型ビタミン D製剤や活性型ビタミン D製剤の投与が推奨された。しかし、「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」(2) では、保存期 CKD患者において、活性型ビタミン D製剤はPTH値を低下させ、尿蛋白を抑える効果が期待されるため、投与を考慮してもよいが、腎機能予後、骨折、心血管イベント、生命予後への効果は明らかでなく、高 Ca血症の原因となることから、 適応は患者ごとに検討し、少量から慎重に開始することが望ましいと基本姿勢が変わってきた。 このように、糖尿病患者における2次性副甲状腺機能 亢進症に対し、活性型ビタミンD製剤の使用は生命予後を改善する可能性があるが、エビデンスは 十分とは言えない。 また、オメガ -3脂肪酸は心血管イベントのリスク軽減には重要かもしれないが、アルブミン尿増加、 糸球体濾過量(GFR)低下のリスクが報告されている。 こうした状況を踏まえ、本論文の著者らは、ビタミン D製剤かつまたはオメガ -3脂肪酸を2型糖尿病患者1,312人に5年間投与した際の腎機能への影響を検討するVITAL試験を実施した。結論としては、ビタミン D製剤、オメガ -3脂肪酸のいずれも腎機能を改善しなかった。ビタミンD欠乏状態にある患者は15%程度と少数であったことが本研究の結論に影響している可能性があり、骨折、心血管イベント、生命予後を検証するランダム化対照試験も待たれる。 1. KDIGO CKD-MBD Work Group. Kidney Int Suppl. 2009 Aug;(113):S1-130. 2. 「エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2018」(日本腎臓学会)
発作性心房細動と高血圧を有する患者の心房細動の再発に対する腎除神経とカテーテルアブレーションの併用とカテーテルアブレーションのみの併用の効果。The ERADICATE-AF Randomized Clinical Trial.
発作性心房細動と高血圧を有する患者の心房細動の再発に対する腎除神経とカテーテルアブレーションの併用とカテーテルアブレーションのみの併用の効果。The ERADICATE-AF Randomized Clinical Trial.
Effect of Renal Denervation and Catheter Ablation vs Catheter Ablation Alone on Atrial Fibrillation Recurrence Among Patients With Paroxysmal Atrial Fibrillation and Hypertension: The ERADICATE-AF Randomized Clinical Trial JAMA 2020 Jan 21;323(3):248-255. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要】腎除神経は心臓の交感神経活動を低下させ、心房細動に対する抗不整脈効果をもたらす可能性がある。 【目的】肺静脈隔離術に腎除神経を追加することで、長期的な抗不整脈効果が高まるかどうかを検討する。 【デザイン、設定、参加者】Evaluate Renal Denervation in Addition to Catheter Ablation to Eliminate Atrial Fibrillation(ERADICATE-AF)試験は、ロシア連邦、ポーランド、ドイツの心房細動のカテーテルアブレーションを行う5つの紹介センターで行われた、研究者主導の多施設、単盲検、無作為化臨床試験である。2013年4月から2018年3月までに、少なくとも1種類の降圧薬を服用しているにもかかわらず高血圧で、発作性心房細動があり、アブレーションの予定がある患者302人が登録された。フォローアップは2019年3月に終了した。 【介入】患者を肺静脈隔離単独(n=148)または肺静脈隔離+腎除神経(n=154)に無作為に割り付けた。肺静脈の電位をすべて除去することをエンドポイントとした完全な肺静脈隔離と、灌流チップ付きアブレーションカテーテルを用いて、両腎動脈の遠位から近位までスパイラルパターンで個別の部位に高周波エネルギーを供給する腎除神経。 【主なアウトカムと評価】主要エンドポイントは、12ヵ月後の心房細動、心房粗動、または心房頻拍からの解放であった。 【結果】無作為化された302名の患者(年齢中央値60歳[四分位範囲55~65歳]、男性182名[60.3%])のうち、283名(93.7%)が試験を完了した。全員が指定された手術を無事に受けた。12ヵ月後の心房細動,粗動,頻脈の消失は,肺静脈隔離術のみを受けた148例中84例(56.5%)と,肺静脈隔離術と腎除神経術を受けた154例中111例(72.1%)に認められた(ハザード比,0.57;95%CI,0.38~0.85;P=0.006).事前に規定された5つの副次的エンドポイントのうち、4つが報告され、3つはグループ間で差がありました。ベースラインから12ヵ月後の平均収縮期血圧は,隔離のみの群では151 mm Hgから147 mm Hgに,腎除神経群では150 mm Hgから135 mm Hgに低下した(群間差:-13 mm Hg,95% CI,-15~-11 mm Hg,P < 0.001).手続き上の合併症は、隔離のみのグループで7人(4.7%)、腎除神経グループで7人(4.5%)に発生した。 【結論と関連性】発作性心房細動と高血圧を有する患者において、カテーテルアブレーションに腎除神経を追加した場合、カテーテルアブレーションのみの場合と比較して、12ヵ月後に心房細動が起こらない可能性が有意に増加した。本試験の結果を解釈する際には、正式なシャムコントロールの腎除神経術が行われていないことを考慮する必要がある。 【臨床試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT01873352。 第一人者の医師による解説 交感神経活性の抑制 降圧とともに臨床的に有用と示した点に意義 藤田英雄 自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長・総合医学第1講座主任教授 MMJ.June 2020;16(3) 発作性心房細動に対するカテーテルアブレーションによる肺静脈隔離の有効性は確立されているが、 10~30%の再発率があり改善の余地がある。交感神経活性を抑制する腎デナベーション治療(腎交 感神経除神経術)を加えることで有効性が向上するか否かを検証するため、多施設単盲検無作為化試験 「ERADICATE-AF」が研究者主導で実施され、その 成績が本論文に報告された。 本試験では、高血圧合併発作性心房細動患者302人をカテーテルアブレーション単独群(148人)と 併用群(154人)に無作為に割り付け、12カ月後の心房細動+心房粗動+心房頻拍 の 無再発 を 主要評価項目とした。 主要エンドポイントは単独群84人 (56.5%)、併用群111人(72.1%)で得られ(ハザー ド 比[HR], 0.57;95 % 信頼区間[CI], 0.38~ 0.85;P=0.006)、併用群で有意に無再発例が多く、さらに副次評価項目の1つである治療後の平 均収縮期血圧値の低下は、単独群では151mmHg (ベースライン)から147mmHgであったのに対し、 併用群 で は150mmHgか ら135mmHgへ と より大幅な低下が示された(群間差:-13mmHg; 95% CI,-15 ~-11mmHg;P<0.001)。手技関連合併症は、単独群7人(4.7%)、併用群7人 (4.5%)ですべてがアブレーションによるものであった。 これらの結果から著者らは、単独群にシャム手術を施行していない限界を考慮しつつも高血圧合併発作性心房細動患者に対し、カテーテルアブレーションは腎デナベーションの併用によって心房性不整脈の再発を有意に抑制できたと結論づけた。 今回の結果は、腎デナベーション併用治療の有効性を示唆し、その機序として交感神経活性の抑制 が降圧とともに臨床的に有用であることを示した点に意義がある。腎デナベーション治療はかつて 薬物治療抵抗性高血圧への非薬物療法としての期待を集めたが、2014年のSIMPLICITY-HTN3試験において有効性を示すことができなかった。 しかしながら、その後カテーテル開発競争の中で改良が進み、SPYRAL HTN-OFF MED Pivotal試験(1) では薬物投与なく有意な降圧効果が確認されるなど新たな治療法として復活しつつあり、現状ではその広い適応は医療経済的に困難であるとしても、 心房細動治療の今後の方向性を示す貴重な試験結 果といえよう。 1.Böhm M et al. Lancet. 2020 May 2;395(10234):1444-1451.
電子タバコやベイプに関連した肺損傷の臨床症状、治療、短期転帰:前向き観察コホート研究。
電子タバコやベイプに関連した肺損傷の臨床症状、治療、短期転帰:前向き観察コホート研究。
Clinical presentation, treatment, and short-term outcomes of lung injury associated with e-cigarettes or vaping: a prospective observational cohort study Lancet 2019 Dec 7;394(10214):2073-2083. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】電子タバコまたはベイプに関連した肺損傷(E-VALIまたはVALIとも呼ばれる)の進行中のアウトブレイクが、2019年3月に米国で開始された。この疾患の原因,診断,治療,経過は依然として不明である。 【方法】この多施設,前向き,観察,コホート研究では,2019年6月27日から10月4日の間に,米国ユタ州に拠点を置く統合医療システム,Intermountain Healthcareで受診した電子タバコまたはベイプに関連する肺損傷の全患者のデータを収集した。米国ユタ州ソルトレイクシティを拠点とするテレクリティカルケアは、症例検証、公開報告、およびシステム全体の専門知識の普及のための中央リポジトリとして使用され、電子タバコまたはベイプに関連する肺損傷の診断・治療ガイドラインの提案が含まれた。ユタ州保健局(米国ユタ州ソルトレイクシティ)が実施したカルテレビューと患者へのインタビューから、患者の提示、治療、短期フォローアップ(退院後2週間)に関するデータを抽出した。 【FINDINGS】統合医療システム内の13病院または外来診療所において、60人の患者が電子タバコまたはベイプに関連した肺損傷を呈した。60人中33人(55%)が集中治療室(ICU)に入院した。60人中53人(88%)が体質的症状、59人(98%)が呼吸器症状、54人(90%)が消化器症状を呈していた。60人中54人(90%)に抗生物質が投与され,57人(95%)にステロイドが投与された.60人中6人(10%)が2週間以内にICUまたは病院に再入院し、そのうち3人(50%)はベイプまたは電子タバコの使用で再発した。2週間以内にフォローアップを受けた患者26名のうち,臨床的・X線的な改善は全員に見られたものの,胸部X線写真(15名中10名[67%])および肺機能検査(9名中6名[67%])で異常が残存している者が多かった.2名の患者が死亡し,電子タバコまたはベイプに関連する肺損傷は,両者とも死因ではないが一因であると考えられた。認知度の向上により、抗生物質やステロイドで治療された患者の重症度が幅広く確認されるようになった。改善されたものの、短期間のフォローアップでは多くの患者に異常が残存していた。電子タバコやベイプに関連した肺損傷は、感染症や他の肺疾患と症状が重なるため、依然として臨床診断が困難である。この疾患に対する高い疑い指数を維持することは,これらの患者の原因,最適な治療,および長期転帰を理解するための作業が続く中で重要である. 第一人者の医師による解説 日本では改正健康増進法が完全施行 たばこ対策の強化を 欅田 尚樹 産業医科大学産業保健学部産業・地域看護学講座教授 MMJ.June 2020;16(3) 電子たばこはプロピレングリコール(PG)やグリセロール(GLY)を基剤としさまざまな香料を添加したリキッドを電気的に加熱してエアロゾルを発生・吸煙する。海外ではニコチンを含むものが大半で若人を中心に急速に普及しているが、国内では、薬機法でニコチン含有は規制されている。一方、たばこ葉を電気的に加熱しニコチンを吸引する加熱式たばこは、たばこ事業法の製造たばことして、世界に先駆けて販売拡大しているが、構造も法規制 も異なる。 米国 で は2019年3月 よ り 電子 た ば こ ま た は ベ イ ピ ン グ に 関連した 肺傷害(lung injury associated with e-cigarettes or vaping; E-VALI)が急増したが、原因、診断、治療、経過は 不明のままであり社会問題にもなった。 本論文は、2019年6月27日~ 10月4日に米国ユタ州で収集したE-VALI全症例を解析した多施設共同前向き観察コホート研究の結果とともに実用的な臨床ガイドラインを提示している。死亡2人を含む患者 60人の多くは全身症状、呼吸器症状のみならず消化器症状を呈し、33人は集中治療室(ICU)管理を要した。その多くはステロイド治療を受けたが、診断の不確実性から抗菌薬の投与例も多かった。重症度は多岐にわたり、症状が改善しても胸部 X線写真や肺機能検査に異常が残存していた。患者の多くは大麻成分のテトラヒドロカンナビノール(THC) を含むリキッドを使用していたが、それ以外にもさまざまなものが使用されていた。 その後の調査で、多くのE-VALI患者の気管支肺胞洗浄液では、THCあるいはその代謝物とともに、 ビタミン Eアセテートが検出され、原因物質と考えられている(1)。米国疾病対策予防センター(CDC)の報告では、THCを含む電子たばこ・リキッドのリスク認知の広がり、ビタミン Eアセテートの使用禁止などさまざまな規制が実施され患者は減少したが、2020年2月18日現在、全米で死亡68人を含む2,807人の患者が報告されている。    電子たばこのエアロゾルには、PGやGLYの熱分解により生成したホルムアルデヒドに代表される発がん物質が高濃度に発生するものがあり、中には紙巻きたばこ主流煙より高濃度を示すものもある(2)。 日本呼吸器学会からは、「加熱式たばこや電子たばこによる健康影響は不明」であり「リスクが低いという証拠はない」、さらに「使用の際には二次曝露対策が必要である」、と見解と提言が出されている。 また現在パンデミックとなり問題となっている新型コロナウイルス肺炎の危険因子として喫煙(3)がある。国内でも受動喫煙対策を義務化した改正健康増進法が完全施行される中、たばこ対策の強化が求められる。 1. Blount BC et al. N Engl J Med. 2020;382(8):697-705. 2. Uchiyama S et al. Chem Res Toxicol. 2020;33(2):576-583. 3. Guan WJ et al. N Engl J Med. 2020 Feb 28. doi: 10.1056/NEJMoa2002032.
三尖弁逆流の軽減のための経カテーテル的edge-to-edge修復術。TRILUMINATE単群試験の6ヵ月成績
三尖弁逆流の軽減のための経カテーテル的edge-to-edge修復術。TRILUMINATE単群試験の6ヵ月成績
Transcatheter edge-to-edge repair for reduction of tricuspid regurgitation: 6-month outcomes of the TRILUMINATE single-arm study Lancet 2019 Nov 30;394(10213):2002-2011. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】三尖弁閉鎖不全症は、高い罹患率と死亡率を伴う有病率疾患であり、治療選択肢はほとんどない。TRILUMINATE試験の目的は、低侵襲な経カテーテル三尖弁修復システムであるトライクリップの三尖弁逆流の軽減に対する安全性と有効性を評価することです。 【方法】TRILUMINATE試験は、ヨーロッパとアメリカの21施設で行われた前向き、多施設、シングルアーム試験です。NYHA(ニューヨーク心臓協会)クラスII以上の中等度以上の三尖弁逆流を有し、適用される基準に従って十分な治療を受けている患者を登録対象とした。収縮期肺動脈圧が60mmHg以上、三尖弁形成術の既往、TriClip装着を阻害する心血管植込み型電子機器を装着している患者は除外されました。参加者はTriClip三尖弁修復システムを用いてクリップベースのedge-to-edge修復技術を使用して治療を受けた。三尖弁逆流は、標準的な米国心エコー学会の等級分類を拡張した 5 クラスの等級分類(軽度、中等度、重度、巨大、奔流)を用いて評価された。有効性の主要評価項目は、大腿静脈穿刺時に三尖弁修復術を試みたすべての患者さんを対象に、術後30日目に三尖弁逆流の重症度が1グレード以上低下したこととし、35%をパフォーマンスゴールとしました。安全性の主要評価項目は、6ヵ月後の主要有害事象の複合であり、パフォーマンスゴールは39%でした。6ヵ月後のフォローアップに至らず、それまでのフォローアップで主要な有害事象が発生しなかった患者は、安全性の主要評価項目から除外された。本試験は登録を完了し、フォローアップが進行中であり、ClinicalTrials. gov(番号NCT03227757)に登録されている。 【FINDINGS】2017年8月1日から2018年11月29日までに85例(平均年齢77~8歳[SD 7~9]、女性56例[66%])を登録し、トライクリップ植込みを成功させた。心エコー図データおよび画像診断が可能な83例中71例(86%)において、三尖弁逆流の重症度が30日時点で少なくとも1グレード低下していた。片側下限 97-5% 信頼限界は 76% であり,事前に規定したパフォーマンス目標である 35% を上回った(p<0-0001).1名の患者が6ヵ月後のフォローアップまでに重大な有害事象を発症することなく退学したため、主要安全性エンドポイントの解析から除外された。6ヵ月後、84例中3例(4%)に主要な有害事象が発生し、事前に設定したパフォーマンスゴールである39%より低かった(p<0-0001)。72例中5例(7%)に単葉着床が発生した。周術期の死亡、手術への移行、デバイスの塞栓、心筋梗塞、脳卒中は発生しなかった。6ヵ月後、84例中4例(5%)に全死亡が発生した。 【解釈】TriClipシステムは安全で、三尖弁逆流を少なくとも1グレード減少させる効果があると思われる。この減少は、術後6ヶ月での有意な臨床的改善となる可能性がある。 第一人者の医師による解説 設定基準には合格 今後の長期成績および前向き試験結果が待たれる 清末 有宏 東京大学医学部附属病院循環器内科助教 MMJ.June 2020;16(3) 三尖弁閉鎖不全症(tricuspid regurgitation; TR)の所見は心臓超音波検査において日常的に遭遇する所見であり、近年は検査機器の発達にも伴い観察が容易となり、その流速を利用しての右室圧推定が行われることは医師国家試験レベルでも広く知られている。しかし逆にその病的意義あるいは治療介入効果の評価はしばしば困難である。 日本循環器学会「弁膜疾患の非薬物療法に関するガイドライン(2012年改訂版)」でも、外科的介入がクラス Iとなっているのは「高度 TRで、僧帽弁との同時初回手術としての三尖弁輪形成術」または「高度の1次性 TRで症状を伴う場合」のみとなっており、圧倒的に頻度が高い左心不全や心房細動などに続発する2次性(機能性)TRにおいては逆流が高度でも単独での三尖弁への外科的介入はクラス Iではない。 本論文で報告されたTRILUMINATE試験は、日本でも2017年に承認された経皮的僧帽弁接合不全修復システムのMitraClip®を三尖弁用に改良したTriClip®を用いて、中等度以上の三尖弁逆流を有 す る 患者85人 を 対象 に 経皮的三尖弁接合不全修復を行い、有効性と安全性を前向き多施設共同単群試験で検討している。 その結果、有効性に関して は、事前に規定した術後30日の心臓超音波検査上の三尖弁逆流重症度の1グレード以上改善達成率が 86%、片側97.5%信頼下限は76%であったため、 目標値(信頼下限35%以上)を達成したとの評価に至った。また安全性に関しては事前に規定した術後6カ月の主要有害事象の発現率が4%で、目標値(39%)を下回ったとの評価に至った。 今回の試験は単群試験であり、有効性・安全性の 目標値設定に関しては、同じ研究グループが2017 年に報告したMitraClip®を用いた高リスク患者に対する経皮的三尖弁接合不全修復の論文が引用されているが(1)、そちらを参照しても設定根拠ははっきりしなかった。手技詳細や超音波データの変化詳細などはむしろ2017年の論文に詳しく、自覚症状や予後の信頼できるサロゲートマーカーである 6分間歩行の改善も報告されている。技術的には、 当然ではあるが僧帽弁とは異なり三尖弁は三尖あるため、どの尖間のクリッピングを選択するかというのが1つ大きなポイントであるようだ。 いずれにせよ三尖弁への低侵襲単独介入が本技術により現実的になると思うが、その予後改善効果は上記 の積極的外科介入適応が現在までなかったため、真の有効性評価についてはランダム化対照試験によるハードエンドポイント改善効果判定を待たねばなるまい。 1. Nickenig G et al. Circulation. 2017;135(19):1802-1814.
術前のN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチドと非心臓手術後の心血管系イベント。コホート研究。
術前のN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチドと非心臓手術後の心血管系イベント。コホート研究。
Preoperative N-Terminal Pro-B-Type Natriuretic Peptide and Cardiovascular Events After Noncardiac Surgery: A Cohort Study Ann Intern Med 2020 Jan 21;172(2):96-104. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】予備データでは、術前のN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)が非心臓手術を受ける患者におけるリスク予測を改善する可能性が示唆されている。 【目的】術前NT-proBNPが、術後30日以内の非心臓手術後の血管死と心筋損傷の複合に対して、臨床リスクスコア以上の予測価値を持つかどうかを明らかにする。 【デザイン】前向きコホート研究 【設定】9か国16病院【患者】入院で非心臓手術を受けた45歳以上の患者10402例。 【測定】すべての患者は術前にNT-proBNP値を測定し、術後3日まで毎日トロポニンT値を測定した。 【結果】多変量解析では、術前のNT-proBNP値が100 pg/mL未満(基準群)と比較して、100~200 pg/mL、200~1500 pg/mL、1500 pg/mL以上では調整ハザード比2.27(95%CI 1.0)と関連することが示された。27(95% CI, 1.90 to 2.70),3.63(CI, 3.13 to 4.21),5.82(CI, 4.81 to 7.05),主要転帰の発生率はそれぞれ 12.3%(1843 例中 226 例), 20.8%(2608 例中 542 例), 37.5%(595 例中 223 例)であった.臨床的層別化(すなわちRevised Cardiac Risk Index[RCRI])にNT-proBNPの閾値を追加したところ,1000人あたり258人の絶対的な再分類が正味で改善された。術前のNT-proBNP値も30日全死亡と統計的に有意に関連していた(100pg/mL未満[発生率、0.3%]、100~200pg/mL未満[発生率、0.7%]、200~1500pg/mL未満[発生率、1.4%]、1500pg/mL以上[発生率、4.0%])。 【結論】術前NT-proBNPは、非心臓手術後30日以内の血管死およびMINSと強く関連しており、RCRIに加えて心臓リスク予測を改善する。【Primary funding source】カナダ保健研究機構。 第一人者の医師による解説 バイオマーカーでの予測 実臨床への応用には課題 阿古 潤哉 北里大学医学部循環器内科学教授 MMJ.June 2020;16(3) 非心臓手術周術期に生じる心血管イベント、特に心筋梗塞の発症は周術期の合併症として非常に重要である。心血管イベントの発生率が高い欧米諸国において、非心臓手術の際の周術期リスク評価は、手術の適応を考えるうえでも重要な要素となる。今まで、周術期のリスク評価ツールとしては Revised Cardiac Risk Index(RCRI)が提唱されてきたが、RCRIの予後予測能力はそれほど高いものではないとされていた。 本研究は、非心臓手術 の 周術期 イ ベ ン ト を 評 価するために行われた前向きコホート研究であるVISION試験 の サ ブ 解析 と し て 実施 さ れ た。 VISION試験では2007年8月~13年10月に9カ国16施設から18,920人の患者が組み入れら れ た。 多変量解析 の 結果、術前 のNT-ProBNP値は主要評価項目である術後30日以内の血管死お よ びMINS(myocardial injury after noncardiac surgery;心臓手術後の心筋障害)からなる複合イ ベントの発生を予測した。さらに、RCRI単独のリスク評価より、RCRIにNT-ProBNPを加えた方が イベント予測に有用であった。論文中のイベント 累積発生曲線をみると、心不全評価にも用いられるこのマーカーは非常に高い予測能を有することが 一目瞭然である。 RCRIは、6つの要素(冠動脈疾患、心不全、脳血管 疾患、インスリンを必要とする糖尿病、腎不全、高リスク手術)の有無で手術のリスクを評価する方法である。比較的簡便であるがためにガイドラインでも推奨されているが、必ずしも予測能が良好ではないという問題点があった。今回、非常に大きい患者数のコホートを用いて、NT-proBNPの有用性に関して力強いデータを出したことが本研究の強みと言える。 しかし、いくつかの点は指摘しておく必要がある。 本研究では、血管死およびMINSが主要評価項目として採用されたが、ほとんどのイベントはMINS であった。MINSは具体的には心筋マーカーの上昇である。MINSが長期にどのようなイベントと関連してくるのかは、VISION試験の既報で述べられているが(1)、まだ他のコホートでは十分には検証されていない。 また、RCRIのc統計量は0.69で、NTproBNPを加えることにより0.75に改善する、すなわち予測能が改善すると著者らは報告しているが、この臨床的意義の大きさは不明である。また、 NT-proBNPの上昇が認められた時にどのような 介入が必要であるのかはまったく不明である。とはいえ、リスク評価にバイオマーカーが取り入れられる流れは間違いなさそうである。その意味で、今回の研究が最初の重要な一歩であることは評価できる。 1. Vascular Events In Noncardiac Surgery Patients Cohort Evaluation (VISION) Study Investigators. JAMA. 2012;307(21):2295-2304.
日本における院外心停止患者におけるパブリックアクセス除細動と神経学的転帰:集団ベースのコホート研究。
日本における院外心停止患者におけるパブリックアクセス除細動と神経学的転帰:集団ベースのコホート研究。
Public-access defibrillation and neurological outcomes in patients with out-of-hospital cardiac arrest in Japan: a population-based cohort study Lancet 2019 Dec 21;394(10216):2255-2262. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】緊急医療サービス(EMS)要員が到着する前に院外心停止(OHCA)を起こし、ショック状態の心拍動を起こしていた患者では、公衆アクセスによる除細動の80%以上が自然循環の持続的な回復をもたらさない。このような患者の神経学的転帰と生存率は評価されていない。我々は,このような患者の神経学的状態と生存成績を評価することを目的とした。 [METHODS]本研究は,2005年1月1日から2015年12月31日までの間に日本でOHCAを発症した1人の患者(1Zs_2008 ain ainakersZs_2008299 ainakersZs_2008 ainakers784)を対象とした,全国の人口ベースのプロスペクティブな登録簿から得られたコホート研究のレトロスペクティブ解析である。主要転帰はOHCA後30日目の良好な神経学的転帰(Cerebral Performance Category of 1または2)であり,副次的転帰はOHCA後30日目の生存率であった.本研究は、University Hospital Medical Information Network Clinical Trials Registry, UMIN000009918に登録されています。 【FINDINGS】我々は、傍観者から心肺蘇生法を受けた28人の傍観者立会型OHCAとショック性心拍数を持つ28人の患者を同定しました。このうち,2242人(8-0%)の患者はCPR+公衆アクセス除細動で自然循環の回復が得られず,25人(89-5%)の患者は救急隊到着前にCPRのみで自然循環の回復が得られなかった.好ましい神経学的転帰を示した患者の割合は、パブリックアクセス除細動を受けた患者の方が受けなかった患者よりも有意に高かった(845[37-7%]対5676[22-6%];傾向スコアマッチング後の調整オッズ比[OR]、1-45[95%CI 1-24-1-69]、p<0-0001)。OHCA後30日目に生存した患者の割合も、パブリックアクセス除細動を受けた患者の方が受けなかった患者よりも有意に高かった(987[44-0%] vs 7976[31-8%];傾向スコアマッチング後の調整済みオッズ比[OR]、1-31[95% CI 1-13-1-52]、p<0-0001)。 [INTERPRETATION]本知見は、パブリックアクセス除細動の利点、およびコミュニティにおける自動体外式除細動器のアクセス性と利用可能性の向上を支持するものである。 第一人者の医師による解説 AEDを用いた市民へのCPR教育活動推進の意義付けとなる成果 中島 啓裕/安田 聡(副院長・部門長) 国立循環器病センター心臓血管内科冠疾患科・心臓血管系集中治療科 MMJ.June 2020;16(3) 近年、市民による自動体外式除細動器(AED)使用が心室細動(VF)による院外心停止患者の蘇生率向上に有効である可能性が報告された(1)。日本では約60万台のAEDが設置されている。各団体のAED普及啓発活動にもかかわらず、市民によるAED除細動実施率は5%程度と低い。 市民によるAED除細動患者の約80%は救急隊現場到着時点では心停止が持続していることから、AEDを運び込むまでの心肺蘇生(CPR)中断や救急通報の遅れなどのデメリットが除細動不成功例の予後に与える影響を明らかにすれば、より適正なAED使用を推奨できると考えられる。しかしながら、ガイドラインによりAED使用が強く推奨されている現代において、AED使用群と未使用群で予後を比較する無作為化対照試験の実施は困難である。 そこで、本研究では日本の総務省消防庁によるウツタイン様式救急蘇生統計データを活用した。救急隊現場到着時点のVF持続患者を対象に、事前に市民がAEDを用いてCPRを実施した患者とAED なしのCPRを実施した患者の予後が比較された。 2005~15年に日本全国で発生した1,299,784 人の院外心停止患者から、市民による目撃があり CPRが実施されたVF心停止患者28,019人のうち、救急隊現場到着時点の心停止持続患者27,329 人(CPR+ AED併用群 2 ,242 人 、CPR単独群 25,087人)を解析した。 背景因子を傾向スコアで調整したところ、CPR+ AED併用群はCPR単独群 と比較して、発症から救急隊覚知までに中央値1分の遅れ(2分 対 1分:P<0.0001)を認めたものの、 主要評価項目である30日後の神経学的転帰良好な割合は有意に高値であった(38% 対 23%:調整 オッズ比 , 1.45; 95% CI, 1.24~1.69:P< 0.0001)。さらに、救急通報時から救急隊現着までにかかった時間(中央値8分[四分位範囲6~10 分])別の感度分析でも同様の結果が得られた。 本研究では、AEDによる除細動実施で心拍再開 (AEDの主要効果)を得られなかった患者においても、AEDが神経学的予後を改善させうることが示された。AEDの音声ガイダンスなどがCPRの質の改善に寄与していた可能性が示唆された。本結果は救急通報~救急隊現着までの時間に依存しないことから、日本全国において一般化されるものであり、市民に対するAEDを用いたCPR教育活動を推進していく意義付けとなるものと考える。 一般市民のAED使用は、たとえ救急隊の現場到着までに患者の自己心拍再開を得られなかったとしても、 その後の患者の良好な予後につながるという点が本研究からのメッセージである。 1. Kitamura T et al. N Engl J Med. 2016;375(17):1649-1659.
片頭痛の急性期治療における痛みと最も煩わしい関連症状に対するウブロゲパントとプラセボの効果。ACHIEVE II Randomized Clinical Trial(無作為化臨床試験)。
片頭痛の急性期治療における痛みと最も煩わしい関連症状に対するウブロゲパントとプラセボの効果。ACHIEVE II Randomized Clinical Trial(無作為化臨床試験)。
Effect of Ubrogepant vs Placebo on Pain and the Most Bothersome Associated Symptom in the Acute Treatment of Migraine: The ACHIEVE II Randomized Clinical Trial JAMA 2019 Nov 19;322(19):1887-1898. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【重要性】Ubrogepantは、片頭痛の急性期治療薬として検討されている経口カルシトニン遺伝子関連ペプチド受容体拮抗薬である。 【目的】片頭痛発作1回の急性期治療におけるubrogepantの有効性と忍容性をプラセボと比較して評価することである。 【デザイン・設定・参加者】米国で実施した第3相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照単発臨床試験(ACHIEVE II)(プライマリーケアおよび研究クリニック99施設、2016年8月26日~2018年2月26日)。参加者は、月に2~8回の片頭痛発作を経験している前兆のある片頭痛または前兆のない片頭痛の成人である。 【介入】中等度または重度の疼痛強度の片頭痛発作に対してウブロゲパント50mg(n=562)、ウブロゲパント25mg(n=561)またはプラセボ(n=563)である。【主要評価項目及び測定 【方法】有効性の主要評価項目は、服用後2時間における疼痛緩和及び参加者が指定した最も煩わしい片頭痛関連症状(羞明、幻覚、吐き気のうち)の消失とした。 【結果】無作為化参加者1686名のうち1465名が試験治療を受け(安全集団、平均年齢41.5歳、女性90%)、1465名のうち1355名が有効性として評価可能であった(92.5%)。2時間後の痛みの消失は、ウブロゲパント50mg群では464人中101人(21.8%)、ウブロゲパント25mg群では435人中90人(20.7%)、プラセボ群では456人中65人(14.3%)に認められました(50mg vs プラセボの絶対差、7.5%、95%CI, 2.6%-12.5%; P = .01; 25mg vs プラセボ, 6.4%; 95%CI、 1.5%-11.5%; P = .03)。2時間後に最も煩わしい関連症状がなかったと報告されたのは、ウブロゲパント50mg群463人中180人(38.9%)、ウブロゲパント25mg群434人中148人(34.1%)、そしてプラセボ群456人中125人(27.4%)であった。4%)であった(50mg対プラセボの絶対差、11.5%;95%CI、5.4-17.5%;P = .01;25mg対プラセボ、6.7%;95%CI、0.6-12.7%;P = .07)。いずれかの投与後48時間以内に最も多く見られた有害事象は、吐き気(50 mg、488人中10人[2.0%];25 mg、478人中12人[2.5%];およびプラセボ、499人中10人[2.0%])およびめまい(50 mg、488人中7人[1.4%];25 mg、478人中10人[2.1%];プラセボ、499人中8人[1.6%])であった。 【結論と妥当性】成人の片頭痛患者において、ウブロゲパントの急性期治療では、プラセボと比較して、50mgと25mgの用量で2時間後の痛みの解放率が有意に高く、50mgの用量でのみ2時間後の最も煩わしい片頭痛関連症状の欠如がみられた。ウブロゲパントの他の片頭痛急性期治療に対する有効性を評価し、非選択的患者集団におけるウブロゲパントの長期安全性を評価するために、さらなる研究が必要です。 【試験登録】ClinicalTrials. gov Identifier:NCT02867709。 第一人者の医師による解説 トリプタン無効例や禁忌例の第1選択候補 反復投与での安全性検証が必要 今井 昇 静岡赤十字病院脳神経内科部長 MMJ.June 2020;16(3) 片頭痛は急性期に頭痛だけではなく随伴症状により日常生活が著しく障害される神経疾患である。 片頭痛の急性期治療にトリプタン系薬剤や非ステ ロイド系抗炎症薬(NSAID)が使用されているが、効果が不十分である、あるいは副作用や禁忌項目のために使用できない患者は多い。 多くの研究によりカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は片頭痛の病態に重要な役割を演じていることが示され、CGRPを標的とした治療薬が開発されている。すでに抗 CGRPモノクロー ナル抗体は2019年に欧米で片頭痛予防薬として上市されている。ユブロゲパントは小分子の経口 CGRP受容体拮抗薬で、片頭痛急性期治療薬として開発された。多施設ランダム化二重盲検プラセボ 対照第 IIb相試験において、ユブロゲパントの有効性が5用量(1、10、25、50、100mg)で検討され、 25、50、100mgはプラセボに比べ服薬2時間後 の頭痛消失率が有意に高かった。 本論文は、ユブロゲパント 25、50mgの有効性 と安全性を評価するために、米国99施設で実施された多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照第 III 相(ACHIEVE II)試験の報告である。18 ~ 65歳(平 均41.5歳)の前兆のない片頭痛または前兆のある 片頭痛の病歴を1年以上有し、発作に中等度以上の光過敏、音過敏、悪心のいずれかの随伴症状が認められる1,686人(女性90%)を対象に、中等度・ 重度の発作に対してユブロゲパント 25、50mg、 またはプラセボが投与された。主要評価項目は投与2時間後の頭痛消失と最も負担となる随伴症状(最 大負担随伴症状)の消失。最大負担随伴症状の内訳 は光過敏57%、音過敏26%、悪心17%。 解析の 結果、2時間後 の 頭痛消失率 は50mg群21.8%、 25mg群20.7%、プラセボ群14.3%で、50mg群、 25mg群ともにプラセボ群と比較し有意な頭痛改 善効果が示された(それぞれP=0.01、P=0.03)。 最大負担随伴症状 の 消失率 は50mg群38.9 %、 25mg群34.1%、プラセボ群27.4%で、50mg 群のみプラセボ群に対し有意な効果が認められた(P =0.01)。投与48時間以内の重篤な有害事象はなく、主な事象は悪心、めまいで各群に有意差はなかった。 本試験におけるユブロゲパント 50mgの有効性と安全性は、トリプタン系薬剤で報告されているものとおおむね同程度であることが示唆される。現在他の経口 CGRP受容体拮抗薬の開発も進んでいる。経口 CGRP受容体拮抗薬はトリプタン系薬 剤やNSAIDでみられる心血管・消化器への影響が少ないと考えられており、新しい片頭痛急性期治 療薬として期待される。ただ、以前開発された経口 CGRP受容体拮抗薬は肝機能障害のため開発中止に至った経緯を考慮すると、今後反復投与での安全性の確認が必要と思われる。
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