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日本人Ph陽性ALL患者の移植後再発予防に有効なテーラーメイドTKI戦略
公開日:2025年1月27日
Nishiwaki S, et al. Int J Hematol. 2025 Jan 17. [Epub ahead of print]
フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)に対する同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)後の再発予防に、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の移植後投与は有望である。しかし、実臨床における使用やその有効性は、十分に明らかとなっていない。名古屋大学の西脇 聡史氏らは、日本においてallo-HSCTを実施したPh陽性ALL患者に対するTKIの使用状況および有用性を評価した。International Journal of Hematology誌オンライン版2025年1月17日号の報告。
2002〜22年にallo-HSCTを実施したPh陽性ALL患者を対象に、7施設による包括的な研究を行なった。
主な結果は以下のとおり。
・完全寛解で移植を行った173例中49例(28%)で移植後にTKIが投与されていた。
・内訳は、分子遺伝学的完全奏効(CMR)における予防的投与は7%、微小残存病変(MRD)陽性への対処として21%であった。
・移植後、最初のTKI投与期間中央値は、予防的投与で13.7ヵ月、MRD陽性で4.0ヵ月。
・予防的TKI投与は、allo-HSCTでCMRを達成していない患者に、とくに有用であると考えられ、予防的TKI投与を行わなかった患者と比較し、5年無再発生存期間(RFS)が向上する傾向が示唆された(100% vs.73%、p=0.11)。
・予防的、非TKI投与、MRD陽性との間では、RFSの有意な差が認められた。
・診断時に白血球数が1万5,000/μl未満およびその他の染色体異常のない患者では、TKI戦略とは無関係に、同等の5年RFSを示した(100% vs.85% vs.80%、p=0.87)。
著者らは「特定の低リスク患者におけるMRD陽性に対するTKI投与の潜在的な有効性が示唆され、リスク因子に基づくテーラーメイドTKI戦略の重要性が確認された」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)
原著論文はこちら
Nishiwaki S, et al. Int J Hematol. 2025 Jan 17. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39821010
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