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COVID-19感染後の長期にわたる嗅覚・味覚障害5.6%に嗅覚障害、4.4%に味覚障害が残存と推定
COVID-19感染後の長期にわたる嗅覚・味覚障害5.6%に嗅覚障害、4.4%に味覚障害が残存と推定
Prognosis and persistence of smell and taste dysfunction in patients with covid-19: meta-analysis with parametric cure modelling of recovery curves BMJ. 2022 Jul 27;378:e069503. doi: 10.1136/bmj-2021-069503. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [目的]covid-19患者における嗅覚と味覚の回復率、嗅覚と味覚の持続的な機能障害の割合、および嗅覚と味覚の回復に関連する予後因子を明らかにすること。 [設計]系統的レビューとメタ分析。 [データソース]PubMed、Embase、Scopus、Cochrane Library、および medRxiv の開始から 2021 年 10 月 3 日まで。イベントまでの時間曲線を用いた記述的予後研究と、あらゆる予後因子の予後関連研究が含まれていました。ガイドライン。反復数値アルゴリズムを使用して、イベントまでの時間の個々の患者データ (IPD) が再構築およびプールされ、生存を維持した参加者の回復率が 30 日間隔で報告され、配布なしの要約生存曲線が取得されました。永続的な嗅覚と味覚の機能障害の割合を推定するために、プラトー生存曲線のワイブル非混合治癒モデルからの治癒分画をロジット変換し、2 段階のメタ分析でプールしました。予後因子と回復との未調整の関連性を調査するために、従来の集計データ メタアナリシスが実施されました。副次的アウトカムは、嗅覚と味覚の回復に関連する予後変数のオッズ比でした。バイアスのリスクは低から中程度でした。リスクの高い 4 つの研究を除外した後も、結論は変わりませんでした。エビデンスの質は中程度から高かった。パラメトリック治癒モデリングに基づくと、持続的な自己申告による嗅覚と味覚の機能障害が推定 5.6% (95% 信頼区間 2.7% ~ 11.0%、I 2 =70%、τ 2 =0.756、95% 予測区間 0.7% ~ 33.5%)および4.4%(1.2%~14.6%、I 2 =67%、τ 2 =0.684、95%予測区間0.0%~49.0%)の患者であった。感度分析は、これらが過小評価される可能性があることを示唆しています。 30、60、90、および 180 日で、それぞれ 74.1% (95% 信頼区間 64.0% から 81.3%)、85.8% (77.6% から 90.9%)、90.0% (83.3% から 94.0%)、および 95.7% (89.5% から 98.3%) の患者が嗅覚を回復し (I 2 =0.0-77.2%、τ 2 =0.006-0.050)、78.8% (70.5% から 84.7%)、87.7% (82.0% から 91.6%) 、90.3%(83.5%~94.3%)、98.0%(92.2%~95.5%)が味覚を回復した(I 2 =0.0~72.1%、τ 2 =0.000~0.015の範囲)。女性は、嗅覚 (オッズ比 0.52、95% 信頼区間 0.37 ~ 0.72、7 件の研究、I 2 =20%、τ 2 =0.0224) および味覚 (0.31、0.13 ~ 0.72、7 件の研究、I 2 =78%、τ 2 =0.5121)、男性よりも機能障害の初期重症度が高い患者 (0.48、0.31 ~ 0.73、5 つの研究、I 2 =10%、τ 2 <0.001) または鼻づまり (0.42、0.18 ~ 0.97、3 つの研究、I 2 =0%、τ 2 <0.001) は、嗅覚を回復する可能性が低かった. .これは、長期にわたるcovidの負担の増大に寄与する可能性があります.[体系的レビュー登録] PROSPERO CRD42021283922. 第一人者の医師による解説 “long COVID”研究に大変貴重なデータだが 2021年10月までのデルタ株でのデータである点に留意すべき 荒岡 秀樹 虎の門病院臨床感染症科部長 MMJ.February 2023;19(1):5 嗅覚・味覚障害は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の診断において重要な契機となることが広く知られているが、その臨床経過、回復期間の大規模なデータは寡少である。COVID-19に関連する嗅覚・味覚の機能障害は一過性なのか持続性なのか、嗅覚・味覚機能障害が持続する患者の割合はどの程度なのか、そして嗅覚・味覚の回復に関連する予後因子も明らかになっていない。本論文は、これらの疑問について系統的レビューとメタ解析により検討した研究の報告である。文献検索により、COVID-19に関連する嗅覚・味覚障害を有する成人の観察研究を選択し、研究の偏りやエビデンスの質を評価し、主要評価項目である嗅覚・味覚障害が残存する患者の割合、副次評価項目である嗅覚・味覚の回復に関連する予後因子について解析した。 その結果、18件の研究(患者3,699人)がtimeto-event individual patient data(IPD)のメタ解析、68の論文が集計データの系統的レビューとメタ解析の対象とされた。バイアスのリスクは低~中程度で、リスクの高い4件の研究を除外しても結論は変わらなかった。エビデンスの質は中~高程度であった。モデリング解析の結果では、持続的な嗅覚障害は5.6%(95%信頼区間[CI], 2.7~ 11.0%)、味覚障害は4.4%(1.2 ~ 14.6%)の患者に発症すると推定された。嗅覚の回復率は、30、60、90、180日時点でそれぞれ74.1%(95% CI, 64.0 ~ 81.3%)、85.8%(77.6 ~90.9%)、90.0%(83.3~94.0%)、95.7%(89.5~ 98.3%)であった。味覚の回復率は各時点でそれぞ れ78.8%(95% CI, 70.5 ~ 84.7%)、87.7 %(82.0 ~ 91.6 %)、90.3 %(83.5 ~94.3%)、98.0%(92.2 ~ 95.5%)であった。女性は男性に比べて嗅覚(オッズ比[OR], 0.52;95% CI, 0.37 ~ 0.72)と味覚(0.31;0.13 ~0.72)の回復率が低く、機能障害の初期重症度が高い患者(OR, 0. 48;95% CI, 0.31 ~ 0.73)と鼻づまり(0.42;0.18 ~ 0.97)を有する患者は嗅覚の回復が悪かった。 本研究が明らかにした長期の嗅覚・味覚障害の推定発症率、そして回復の予後因子は、今後の“long COVID”に関する研究を進めるうえで大変貴重なデータである。ただし、文献検索期間が2021年10月までとなっており、主にデルタ株までのデータである点に留意すべきである。2022年以降流行の主流を占めているオミクロン株についてのデータは含まれていない。各国からの暫定的なオミクロン株流行以降の嗅覚・味覚障害のデータも一定の見解は未だ得られていない。BA.1系統では嗅覚・味覚障害の頻度は低下し、BA.5系統では再び上昇しているとの知見もあり、今後発表される論文にも注意を払う必要がある。
COVID-19ワクチン後の心筋炎と心膜炎に関するエビデンスとレビュー
COVID-19ワクチン後の心筋炎と心膜炎に関するエビデンスとレビュー
Incidence, risk factors, natural history, and hypothesised mechanisms of myocarditis and pericarditis following covid-19 vaccination: living evidence syntheses and review BMJ. 2022 Jul 13;378:e069445. doi: 10.1136/bmj-2021-069445. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [目的] covid-19に対するmRNAワクチン接種後の心筋炎および心膜炎の発生率と危険因子、臨床症状、症例の短期および長期転帰、および提案されたメカニズムに関する証拠を統合すること。 [設計] 生きている証拠の統合とレビュー. [データ ソース] 2020 年 10 月 6 日から 2022 年 1 月 10 日まで、Medline、Embase、およびコクラン ライブラリが検索されました。参考文献リストと灰色文献 (2021 年 1 月 13 日まで)。 1 人のレビュアーがスクリーニングを完了し、別のレビュアーが除外の 50% を検証し、機械学習プログラムを使用してレコードに優先順位を付けました。 2 人目のレビュアーは、修正された Joanna Briggs Institute ツールを使用して、すべての除外を全文で検証し、データを抽出し、(発生率と危険因子については) バイアス評価のリスクを検証しました。チームのコンセンサスにより、GRADE (推奨事項、評価、開発および評価の等級付け) を使用した発生率および危険因子のエビデンス評価の確実性が決定されました。 (発生率と危険因子)covid-19 mRNAワクチン接種後に確認された心筋炎または心膜炎に関する報告。ケースシリーズ(n≧5、プレゼンテーション、短期臨床経過および長期転帰); [RESULTS] 46件の研究が含まれた(発生率に関する14件、危険因子に関する7件、特徴と短期経過に関する11件、長期転帰に関する3件、および21件の研究)。メカニズムについて)。 mRNAワクチン接種後の心筋炎の発生率は、男性の青年および男性の若年成人で最も高かった(12~17歳、100万あたり50~139例(確実性が低い);18~29歳、100万あたり28~147例(確実性が中程度))。 5~11 歳の少女と少年、および 18~29 歳の女性の場合、BNT162b2 (ファイザー/BioNTech) のワクチン接種後の心筋炎の発生率は、100 万件あたり 20 件未満である可能性があります (確実性は低い)。 mRNAワクチンの3回目の投与後の発生率は、確実性が非常に低いという証拠がありました。 18 ~ 29 歳の個人では、mRNA-1273 (モデルナ) のワクチン接種後、ファイザーよりも心筋炎の発生率がおそらく高くなります (中程度の確実性)。 12〜17歳、18〜29歳、または18〜39歳の個人では、covid-19のmRNAワクチンの2回目の投与後の心筋炎または心膜炎の発生率は、1回目の投与後30日以内と比較して、31日以上投与された場合に低くなる可能性があります(確実性は低い)。 18 ~ 29 歳の男性に固有のデータは、心筋炎または心膜炎の発生率を大幅に下げるには、投与間隔を 56 日以上に増やす必要があるかもしれないことを示しています。臨床経過と短期転帰については、5 ~ 11 歳の小さな症例シリーズ (n=8) が 1 つだけ見つかりました。青年および成人では、ほとんど(90%以上)の心筋炎症例は、2回目の投与の2~4日後に症状が発症した中央値20~30歳の男性(71~100%)でした。ほとんどの人 (≥84%) は短期間 (2 ~ 4 日) 入院しました。心膜炎については、データは限られていましたが、患者の年齢、性別、発症時期、および入院率において、心筋炎よりも多くの変動が報告されています。長期 (3 か月; n=38) の追跡調査を行った 3 つのケース シリーズでは、患者の 50% を超える患者において、進行中の症状または薬物治療の必要性または活動の制限と同様に、持続的な心エコー図の異常が示唆されました。 [結論] これらの発見は、思春期および若年成人男性がmRNAワクチン接種後に心筋炎のリスクが最も高いことを示しています。モデルナ ワクチンよりもファイザー ワクチンを使用し、投与間隔を 30 日以上空けることが、この集団に好まれる可能性があります。 5~11歳の小児における心筋炎の発生は非常にまれですが、確実性は低かった.臨床的危険因子のデータは非常に限られていました。長期追跡データは限られていましたが、mRNA 関連の心筋炎の臨床経過は良性であると思われました。適切な検査(生検や組織形態など)による前向き研究は、機序の理解を深めるでしょう。 第一人者の医師による解説 疫学や臨床経過、およびアウトカムまで示した 最新で重要な知見 小倉 翔 虎の門病院臨床感染症科 MMJ.February 2023;19(1):4 本論文では、2020年10月6日~22年1月10日に発表された合計46件の研究を対象に、COVID-19に対するmRNAワクチン接種後の心筋炎および心膜炎の①発症率②危険因子③臨床経過④症例の短期的・長期的なアウトカム、および⑤メカニズムに関するエビデンスの統合が行われた。 その結果、① mRNAワクチン 2回目接種後の心筋炎の発症率は青年男性と若年成人男性において最も高く、それぞれ12~17歳 で50~139例/100万人、18~29歳 で28~147例 /100万人であった。②18~29歳の男女および18~39歳の男性において、2回目のワクチン接種後の心筋炎の発症率はPfizer社製よりもModerna社製の方が高いと考えられた。12~39歳において2回目のmRNAワクチン接種後の心筋炎または心膜炎の発症率は、1回目接種後30日以内と比較して31日以上で接種した場合に低くなる可能性がある。18~29歳の男性に限ったデータでは、発症率を大きく低下させるために接種間隔を56日以上にする必要があるかもしれない。③心筋炎症例のほとんど(90%超)は年齢中央値を20~29歳とする男性で、最後のワクチン接種から症状発現までの期間は平均2~4日であり、ほとんど(報告により71~100%)が2回目の接種後に発症した。胸痛や胸部圧迫感、トロポニン上昇を伴い、検査では少数例(研究全体で14~29%)に左室機能障害(左室駆出率[LVEF]50%未満)が認められた。心膜炎については、報告によりばらつきがあるもののほとんどが男性であり、症状発現までの中央値は20日であり、60%が2回目の接種後に発症した。治療には非ステロイド系抗炎症薬が最も使用された。④短期的な経過はほとんどの場合が軽度でselflimitedであることが示されている。長期的な経過に関してはデータが乏しいが、50%以上の症例で心電図異常や症状の持続、治療薬や活動制限の必要性を示唆するデータもある。⑤過剰免疫や炎症反応、分子模倣やその他メカニズムによる自己免疫などさまざまな機序が提唱されているが、直接的な裏付けはほとんどない。 対象となった文献に含まれる症例は、心筋炎と心膜炎の区別が明確でなかったり診断が主観的である場合があり、また心臓 MRIや心筋生検がすべてに実施されていないことから、ほとんどがprobable程度の症例と考えられ、小児や一部の重篤な症例に関するデータは限られている。しかし、8,000例以上の心筋炎や心膜炎の報告例について症状や臨床経過、さらには長期的なアウトカムまで示した重要な知見といえる。
SGLT-2阻害薬はすべての心不全患者に有用 軽~中等症含むメタ解析
SGLT-2阻害薬はすべての心不全患者に有用 軽~中等症含むメタ解析
SGLT-2 inhibitors in patients with heart failure: a comprehensive meta-analysis of five randomised controlled trials Lancet. 2022 Sep 3;400(10354):757-767. doi: 10.1016/S0140-6736(22)01429-5. Epub 2022 Aug 27. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景]SGLT2 阻害剤は、駆出率が低下した心不全患者を治療するためのガイドラインで強く推奨されていますが、より高い駆出率での臨床的利点は十分に確立されていません。駆出率が軽度に低下または保持されている心不全を対象とした 2 つの大規模な試験 DELIVER および EMPEROR-Preserved が実施されており、駆出率が低下した初期の試験と組み合わせて、心血管死亡率および患者サブグループにおける治療効果を調べる力が得られます。 [METHODS] DELIVER および EMPEROR-Preserved の事前に指定されたメタ分析を行い、その後、駆出率が低下した患者 (DAPA-HF および EMPEROR-Reduced) と心不全が悪化して入院した患者 (駆出に関係なく) を登録した試験を含めました。分数 (SOLOIST-WHF)。エンドポイントの定義が調和した試験レベルのデータを使用して、心不全のさまざまな臨床的エンドポイントに対する SGLT2 阻害剤の効果を推定するために、固定効果のメタ分析を行いました。このメタ分析の主要なエンドポイントは、無作為化から心血管死または心不全による入院の複合。関心のあるサブグループ全体で、主要エンドポイントの治療効果の不均一性を評価しました。この研究は、PROSPERO、CRD42022327527 に登録されています。 [調査結果] DELIVER および EMPEROR-Preserved からの 12,251 人の参加者のうち、SGLT2 阻害剤は複合心血管死または心不全による最初の入院を減少させました (ハザード比 0.80 [95% CI 0.73-0 ·87]) 両方の要素の一貫した減少: 心血管死 (0.88 [0.77-1.00]) と心不全による最初の入院 (0.74 [0.67-0.83])。 21,947 人の参加者を対象とした 5 つの試験のより広い文脈では、SGLT2 阻害剤は複合心血管死または心不全による入院のリスク (0.77 [0.72-0.82])、心血管死 (0.87 [0.0]) を減少させました。 ·79-0.95])、心不全による最初の入院 (0.72 [0.67-0.78])、および全死亡率 (0.92 [0.86-0.99])。調査された各エンドポイントに対するこれらの治療効果は、駆出率が軽度に低下または維持された心不全の試験と、5 つの試験すべてで一貫して観察されました。主要評価項目に対する治療効果は、駆出率を含め、調査した 14 のサブグループ全体で概ね一貫していました。駆出率やケア設定に関係なく、心不全の基礎療法。[資金提供]なし。 第一人者の医師による解説 LVEFの程度、人種、性別、糖尿病の有無に関わらず心不全の予後を改善 ガイドラインにもインパクト 森 保道 虎の門病院内分泌代謝科(糖尿病・代謝部門)部長 MMJ.February 2023;19(1):17 Na+/グルコース共役輸送担体2(SGLT-2)阻害薬の慢性心不全への効果は、従来、左室駆出率(LVEF)が低下した(LVEF 40 % 未満 )心不全(HFrEF)を主な対象とし、DAPA-HF試験およびEMPEROR-Reduced試験のいずれでも心不全による入院の減少、心血管死の減少が確認された。これらの試験は、HFrEFに対する有用性が確立されたアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)、ミネラルコルチコイド受容体阻害薬(MRA)などによる適切な基礎治療にSGLT-2阻害薬のダパグリフロジンやエンパグリフロジンの追加投与の効果を検証したデザインであった。その一方で、LVEFが軽度低下(LVEF 40%以上50%未満)し た 心不全(HFmrEF)、LVEFの保たれた(LVEF 50%以上)心不全(HFpEF)に関しては既存の心不全治療薬の有用性も確立されておらず、SGLT-2阻害薬の効果への関心が高まっていた。 本論文は、LVEF40%を超えるHFmrEF/HFpEFを対象としたDELIVER試験とEMPEROR-Preserved試験を統合したメタ解析を行い、心不全による入院と心血管死の複合エンドポイントをハザード比(HR)で20%抑制したことを主成績として示した。このうち心不全による入院のリスクは26%低下(P<0.0001)、心血管死のリスクは12%低下(P=0.052)していた。 上記の2試験にHFrEFを対象としたDAPA-HF試験 とEMPEROR-Reduced試験、さらに心不全が最近悪化した糖尿病患者へのソタグリフロジンの効果を検討したSOLOIST-WHF試験の計5試験(参加者21,947人)でのメタ解析が追加され、心不全による入院の減少、心血管死の減少に加えて全死亡の減少(HR, 0.92)を明らかにした。特筆すべきは、心不全による入院と心血管死の複合エンドポイントを14のサブカテゴリー(LVEF、年齢、性別、人種、居住する大陸別、NYHA分類、NT-proBNP値、KCCQ-TSSスコア、糖尿病の有無、腎機能、肥満度、1年以内の心不全入院の有無、ARNIやMRAの併用の有無)で解析し、いずれのサブカテゴリーでもSGLT-2阻害薬の有用性が確認された点である。従来から論点となっていたEF 60%以上の集団でもSGLT-2阻害薬の有用性が確認されている。また、NYHA分類別に比較した複合エンドポイントのハザード比はIII~Ⅳ度の患者で0.86、II度の患者で0.72と、心不全の重症度によりSGLT-2阻害薬の有効性が異なる可能性も示唆された。本研究はSGLT-2阻害薬の慢性心不全治療における有用性を軽症から中等症、重症を含む広いスペクトラムで検証し、今後の心不全治療のガイドラインにも大きな影響を与える可能性が考えられる。
COPDの疾病負荷は減少傾向だが 世界的には依然大きな問題
COPDの疾病負荷は減少傾向だが 世界的には依然大きな問題
Burden of chronic obstructive pulmonary disease and its attributable risk factors in 204 countries and territories, 1990-2019: results from the Global Burden of Disease Study 2019 BMJ. 2022 Jul 27;378:e069679. doi: 10.1136/bmj-2021-069679. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [目的] 1990 年から 2019 年までの慢性閉塞性肺疾患 (COPD) の世界的、地域的、および全国的な負担と、それに起因する危険因子を、年齢、性別、および社会人口統計学的指標別に報告すること。 [設計] 系統的分析。 [データ ソース] Global Burden of Disease Study 2019. [MAIN OUTCOME MEASURES] COPD の有病率、死亡率、障害調整生存年数 (DALY)、およびそれに起因する危険因子に関するデータは、204 か国を対象とした Global Burden of Disease 2019 プロジェクトから取得され、 1990 年から 2019 年までの地域。人口 100,000 人あたりの数と割合、および 95% の不確実性区間が各推定値について提示されました。 100 万人の死者と 7,440 万人の DALY。 COPD の世界的な年齢標準化ポイント有病率、死亡率、および DALY 率は、人口 10 万人あたり 2638.2 (95% 不確実性区間 2492.2 から 2796.1)、42.5 (37.6 から 46.3)、および 926.1 (848.8 から 997.7) であり、これらは 8.7% でした。 1990 年よりそれぞれ 41.7% と 39.8% 低い。 2019 年には、デンマーク (4299.5)、ミャンマー (3963.7)、およびベルギー (3927.7) で、COPD の年齢標準化ポイント有病率が最も高かった。エジプト (62.0%)、ジョージア (54.9%)、およびニカラグア (51.6%) は、研究期間全体で年齢標準化されたポイントの有病率の最大の増加を示しました。 2019 年には、ネパール (182.5) と日本 (7.4) が 10 万人あたりの年齢標準化死亡率がそれぞれ最高と最低で、ネパール (3318.4) とバルバドス (177.7) が 10 万人あたりの年齢標準化 DALY 率が最高と最低でした。それぞれ。男性では、COPD の世界的な DALY 率は 85 ~ 89 歳まで増加し、その後年齢が上がるにつれて減少しましたが、女性では、その率は最も古い年齢層 (95 歳以上) まで増加しました。地域的には、社会人口学的指標と COPD の年齢標準化 DALY 率との間に、全体的に逆 V 字型の関連性が見られました。 COPD の DALYs 率に最も寄与する要因は、喫煙 (46.0%)、周囲の粒子状物質による汚染 (20.7%)、および粒子状物質、ガス、煙霧への職業的曝露 (15.6%) でした。 COPD、この疾患は、特に社会人口統計学的指数が低い国では、依然として主要な公衆衛生上の問題です。予防プログラムは、COPD の負担をさらに軽減するために、禁煙、空気の質の改善、および職業曝露の削減に焦点を当てるべきです。 第一人者の医師による解説 世界疾病負荷研究(GBD)に基づく COPDの最新情報を提供する重要な報告 玉岡 明洋 虎の門病院呼吸器センター内科部長 MMJ.February 2023;19(1):23 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、世界保健機関(WHO)の報告によると、2019年に世界の死亡原因の第3位であった。日本では厚生労働省の統計によるとCOPDは2010年以降、男女合計での死因の第9位に位置していたが、2014年からは順位を下げている。世界疾病負荷研究(GBD)は、米国ワシントン大学保健指標・保健評価研究所(IHME)を中心に、156超の国・地域の大学、研究所、政府機関が参加する共同研究である。本論文では、GBD2019のデータに基づいて、204の国・地域別に1990年~19年におけるCOPDの有病率、死亡率、障害調整生存年(DALY)についての最新の動向を提供している。DALYは、損失生存年(YLL)+障害生存年(YLD)で算出され、1 DALYは、本来健康な状態で過ごすはずだった人生を1年失うことを意味する。 解析の結果、2019年では、COPDによる10万人当たりの年齢調整死亡率が最も高かったのはネパールで、最も低かったのは日本だった。10万人当たりの年齢標準化 DALYもネパールで3318.4と最も高かった。ネパールでは急速な都市化の進行による自動車数の増加などが大きな影響を及ぼしていると思われる。また社会経済指標とDALY の関係を国別にみると、社会経済指標が中程度の国までDALYは上昇傾向を示し、それ以上になると減少傾向に転じる逆 V字型を呈していた。中程度の国には中国やインドのような急速な工業化が進んでいる国が含まれPM2.5の増加がCOPDによる死亡に大きな影響を及ぼしている可能性がある(1)。一方、社会経済指標の高い国ほど喫煙率が低下してきており、それがこれらの国・地域でのDALY低下に関与しているだろう。 COPDの最も大きな危険因子は喫煙であるが、特に社会経済指標の低い国では大気汚染の影響が大きく関与しており今後の環境対策が必須と考えられる(2)。COPDによる疾病負荷は数値の上では世界的には減少傾向であるが、依然大きな問題である。国ごとのCOPDの診断の正確性の問題などはあるかもしれないが、本研究は世界のCOPDの疾病負荷の最新の情報を提供する重要な報告と言えるだろう。 1. Yang X, et al. Sci Total Environ. 2021;796:148819. 2. GBD 2019 Risk Factors Collaborators. Lancet. 2020;396(10258):1223-1249.
急性疾患で入院した患者の血栓症予防 中用量低分子ヘパリンは有益性と有害性のバランスが最も優れる
急性疾患で入院した患者の血栓症予防 中用量低分子ヘパリンは有益性と有害性のバランスが最も優れる
Anticoagulants for thrombosis prophylaxis in acutely ill patients admitted to hospital: systematic review and network meta-analysis BMJ. 2022 Jul 4;378:e070022. doi: 10.1136/bmj-2022-070022. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [目的] 急性疾患で入院している患者の静脈血栓塞栓症を予防するための、さまざまな種類と用量の抗凝固薬の利益と害を評価すること。 [設計] システマティック レビューとネットワーク メタ分析。 [データ ソース] コクランCENTRAL、PubMed/Medline、Embase、Web of Science、臨床試験登録、および国家保健機関データベース。検索の最終更新日は 2021 年 11 月 16 日です。 [研究を選択するための適格基準] 低用量または中用量の低分子量ヘパリン、低用量または中用量の非分画ヘパリン、直接経口抗凝固薬、五糖類、プラセボを評価した、発表済みおよび未発表のランダム化比較試験。 、または入院中の急性期成人患者における静脈血栓塞栓症の予防のための介入なし。 90日またはそれに最も近いタイミングでの重大な有害事象。バイアスのリスクも、Cochrane risk-of-bias 2.0 ツールを使用して評価されました。エビデンスの質は、Confidence in Network Meta-Analysis フレームワークを使用して等級付けされました。低から中程度の質のエビデンスは、どの介入もプラセボと比較して全死因死亡率を低下させなかったことを示唆しています。五糖類(オッズ比 0.32、95% 信頼区間 0.08 ~ 1.07)、中用量の低分子量ヘパリン(0.66、0.46 ~ 0.93)、直接経口抗凝固薬(0.68、0.33 ~ 1.34)、中用量の未分画ヘパリン(0.71、 0.43 から 1.19) は、症候性静脈血栓塞栓症を軽減する可能性が最も高かった (非常に低いエビデンスから低いエビデンス)。中用量の未分画ヘパリン (2.63、1.00 ~ 6.21) および直接経口抗凝固薬 (2.31、0.82 ~ 6.47) は、大出血を増加させる可能性が最も高かった (低から中程度の質のエビデンス)。重大な有害事象に関する介入間に決定的な違いは認められませんでした(非常に低いエビデンスから低いエビデンス)。プラセボの代わりに介入を行わなかった場合と比較すると、静脈血栓塞栓症と死亡のリスクに関してはすべての積極的な介入が有利であり、大出血のリスクに関しては不利でした。結果は、事前に指定された感度およびサブグループ分析で確固たるものでした。 [結論]中用量の低分子量ヘパリンは、静脈血栓塞栓症の予防に対する利益と害の最良のバランスを与えるようです。未分画ヘパリン、特に中間用量、および直接経口抗凝固薬は、最も好ましくないプロファイルを示しました。基準治療がプラセボか介入なしかによって、介入効果に系統的な不一致が見られました。この研究の主な制限には、不正確さと研究内バイアスのために一般的に低から中程度であった証拠の質、および事後的に対処された統計的不一致が含まれます.[SYSTEMATIC REVIEW REGISTRATION] PROSPERO CRD42020173088. 第一人者の医師による解説 参考になるが現時点では最新ガイドラインに従うべき 最善の方法にはさらなる知見の蓄積が必要 児玉 隆秀 虎の門病院循環器センター内科部長 MMJ.February 2023;19(1):13 血栓症イベントの半分が現在または最近の入院に起因すると推定されており、日本における肺血栓塞栓症が発症した場合の院内死亡率は14%と報告されている(1)。死亡例の40%以上が発症から(1)時間以内とされていることから1、入院中の静脈血栓塞栓症(VTE)の予防および早期発見が予後改善には非常に重要である。欧米では抗凝固療法による介入無作為化対照試験(RCT)が多数実施されているが、入院中の急性期成人患者におけるVTE予防のための最適な抗凝固薬の種類と用量は不明であり、これまでのペアワイズメタ解析では、数種類の異なる抗凝固薬と用量の直接比較は限定的であった。 本論文は、急性疾患で入院した患者におけるVTE予防のための異なる種類と用量による抗凝固薬の有用性と有害性を評価するために行われたネットワークメタ解析の報告である。参加者90,095人を無作為に割り付けた44件のRCTを主解析の対象とし、低・中用量の未分画ヘパリン、低・中用量の低分子ヘパリン、直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)、ペンタサッカライド(フォンダパリヌクス)、プラセボおよび介入なしの各群における全死亡、症候性 VTE、大出血、90日後または90日に直近の重篤な有害事象を評価した。いずれの介入もプラセボと比較して全死亡を減少させなかったが、ペンタサッカライド(オッズ比[OR], 0.32;95%CI, 0.08 ~ 1.07)、中用量低分子ヘパリン(0.66;0.46 ~ 0.93)、DOAC(0.68;0.33 ~ 1.34)および中用量未分画ヘパリン(0.71;0.43~1.19)は症候性 VTEを減少させる可能性が最も高かった。中用量未分画ヘパリン(OR, 2.63;95% CI, 1.00~ 6.21)およびDOAC(2.31;0.82 ~ 6.47)は、大出血を増加させる可能性が最も高く、重篤な有害事象に関してはそれぞれの介入間で明確な差は認められなかった。以上の結果から中用量低分子ヘパリンは、VTE予防において、有益性と有害性のバランスが最も優れており、中用量未分画ヘパリンおよびDOACは最も好ましくないプロファイルであったと報告している。 ネットワークメタ解析は薬剤同士の直接比較試験が行われる可能性の低い状況では、治療選択上の参考になるデータを提供してくれるものではあるが、前提条件についての入念な確認が必要である。本研究に採用された44試験のうち3分の1以上の試験が大出血イベントに関する情報を提供しておらず、関連する抗凝固薬の安全性において正確性に限界がある。参考になるデータではあるが、現時点では最新のガイドラインに従うしかなく、ベストプラクティスにはさらなる知見の蓄積が必要と思われる。
2010〜19年の世界の発がん頻度と危険因子の解析 男性50.6%、女性36.3%が危険因子起因のがんで死亡
2010〜19年の世界の発がん頻度と危険因子の解析 男性50.6%、女性36.3%が危険因子起因のがんで死亡
The global burden of cancer attributable to risk factors, 2010-19: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2019 Lancet. 2022 Aug 20;400(10352):563-591. doi: 10.1016/S0140-6736(22)01438-6. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景]潜在的に修正可能な危険因子に起因するがんの負担の大きさを理解することは、効果的な予防および緩和戦略の開発に不可欠です。 2019 年の疾病、傷害、危険因子の世界的負担に関する研究(GBD)の結果を分析し、がん対策計画の取り組みを世界的に知らせました。 [方法] GBD 2019 の比較リスク評価フレームワークを使用して、行動、環境、および職業、および代謝の危険因子。世界がん研究基金の基準に基づいて、合計 82 のリスクと結果のペアが含まれていました。 2019 年の推定がん死亡数と障害調整生存年数 (DALY)、および 2010 年から 2019 年までのこれらの指標の変化が示されています。 % 不確実性区間 4.01-4.94) の死亡と 1 億 500 万 (95.0-116) の DALY を合わせて、がんによる全死亡の 44.4% (41.3-48.4) と 42.0すべての DALY の % (39·1-45·6)。男性では2.88百万(2.60-3.18)のリスクに起因する癌による死亡があり(すべての男性の癌による死亡の50.6%[47.8-54.1])、1.58百万(1. 36-1.84) 女性のリスクに起因する癌による死亡 (全女性の癌による死亡の 36.3% [32.5-41.3])。 2019 年の両性を合わせたリスクに起因するがんによる死亡と DALY について、世界で最も詳細なレベルでの主要な危険因子は喫煙であり、アルコール使用と高 BMI がそれに続きました。リスクに起因するがんの負荷は、世界の地域と社会人口統計学的指標 (SDI) によって異なり、2019 年のリスクに起因するがんの DALY が低い SDI の場所では、喫煙、危険なセックス、アルコールの使用が 3 つの主要な危険因子でした。 SDI の場所は、上位 3 つの世界的な危険因子ランキングを反映しています。 2010 年から 2019 年にかけて、世界のリスクに起因するがんによる死亡は 20.4% (12.6-28.4) 増加し、DALY は 16.8% (8.8-25.0) 増加し、代謝の増加率が最も高かったリスク (34.7% [27.9-42.8] および 33.3% [25.8-42.0]).危険因子は、2010 年から 2019 年の間に最大の増加を示しました。これらの修正可能な危険因子への曝露を減らすことで、世界中のがん死亡率と DALY 率が低下し、政策は地域のがん危険因子負担に合わせて適切に調整する必要があります。[資金提供]ビル & メリンダ ゲイツ財団。 第一人者の医師による解説 がんの半数近くは対策可能な危険因子による予防が可能なことを明示 西原 広史 慶應義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット教授 MMJ.February 2023;19(1):22 予防医学的に対応可能な危険因子に起因するがんの発症頻度を把握しておくことは、がんの発症回避や早期発見・治療につながり、総合的ながん対策として重要である。世界の疾病・傷害・危険因子負荷研究(GBD)2019からは、204国・地域におけるがんの発症数・死亡数、障害調整生存年(DALY)(1)、危険因子(2)の2019年推計値、2010~19年の推移が報告されており、本論文はさらに、がんの発症にどのような危険因子がどの程度関わっているのかを明らかにした大変興味深い報告である。著者らは、がん発症との因果関係が証明されている危険因子(日常的な行動、生活環境・職業、代謝関連[食事、BMIなど])とアウトカム(がん死亡など)の合計82のペア(がん23種類、危険因子34種類)を対象に、危険因子、がん種、地域別に2019年のがん死亡数、がんDALYを推計し、2010年の数値との比較を行った。 その結果、全体では、何かしらの危険因子に起因するがん死亡者の割合は、男性で50.6%、女性で36.3%であった。そのうちがん死亡とDALYへの影響が最も大きい危険因子は男女ともに喫煙であり、続いてアルコールとBMI高値であった。喫煙、大気汚染、職業因子は肺がん、アルコールは男性では喉頭・咽頭がんと消化管がん、女性では乳がんと消化管がん、薬物摂取歴は肝がん、食生活は消化管がん、BMI高値は男性では肝がんと消化管がん、女性で子宮がん、乳がんと強い関連が認められた。この結果は先行疫学研究の報告を裏付けるとともに、がんの発症機序を考えれば当然のことと言える。社会人口指数(SDI:収入、教育、出生率の混合指標)の低い地域では、高い地域に比べ、がん死亡者数が多く、感染対策なしの性交渉が高い危険因子となっているのはヒトパピローマウイルス(HPV)感染による子宮頸がんやヒト免疫不全ウイルス(HIV)による発がんが考えられる。2010~19年にかけて、危険因子に起因するがん死亡者数は20.4%、DALYは16.8%増加した。特に代謝関連リスクの上昇が顕著なのは世界的な生活レベル上昇とそれに伴う肥満や糖尿病者の増加に起因すると考えられる。 本研究は、がんの半数近くは対策が可能な危険因子によるものであり、がんは予防が可能であることを明示している。日本は年間約100万人の新規発症がん患者を抱える国3であり、がん予防対策は喫緊の課題である。近年は喫煙者が減っている一方で、肥満や糖尿病などの代謝関連疾患患者が増えており、こうした部分に対する集中的な対策が重要だと考えられる。 1. Global Burden of Disease 2019 Cancer Collaboration. JAMA Oncol.2022;8(3):420-444. 2. GBD 2019 Risk Factors Collaborators. Lancet. 2020;396(10258):1223-1249. 3. 最新がん統計(がん情報サービス)https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
PCI後1年でルーチンに負荷検査を実施しても 2年間での転帰改善なし
PCI後1年でルーチンに負荷検査を実施しても 2年間での転帰改善なし
Routine Functional Testing or Standard Care in High-Risk Patients after PCI N Engl J Med. 2022 Sep 8;387(10):905-915. doi: 10.1056/NEJMoa2208335. Epub 2022 Aug 28. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景] 心筋血行再建術後の特定の追跡調査アプローチを導く無作為化試験から得られたデータは限られています。定期的な機能検査を含むフォローアップ戦略が、経皮的冠動脈インターベンション (PCI) を受けたハイリスク患者の臨床転帰を改善するかどうかは不明です。 PCI から 1 年後の定期的な機能検査 (核負荷試験、運動心電図検査、負荷心エコー検査) のフォローアップ戦略、または標準治療単独への PCI。主要転帰は、あらゆる原因による死亡、心筋梗塞、または不安定狭心症による 2 年間の入院の複合でした。重要な副次的アウトカムには、侵襲的冠動脈造影と繰り返しの血行再建術が含まれていました。 38.7% が糖尿病で、96.4% が薬剤溶出性ステントで治療されていました。 2 年後、機能検査群では 849 人中 46 人 (Kaplan-Meier 推定、5.5%)、標準治療群では 857 人中 51 人 (Kaplan-Meier 推定、6.0%) で、主要転帰事象が発生した。グループ (ハザード比、0.90; 95% 信頼区間 [CI]、0.61 から 1.35; P = 0.62)。主要アウトカムの構成要素に関して、グループ間で違いはありませんでした。 2 年後、機能検査群の患者の 12.3%、標準治療群の 9.3% の患者が侵襲的冠動脈造影を受けており (差、2.99 パーセント ポイント、95% CI、-0.01 ~ 5.99)、8.1% およびそれぞれ 5.8% の患者が繰り返し血行再建術を受けていた (差、2.23 パーセンテージ ポイント; 95% CI、-0.22 ~ 4.68)。 [結論] PCI を受けた高リスク患者では、定期的な機能検査の追跡戦略は、標準治療単独と比較して、2 年で臨床転帰を改善しませんでした。 (CardioVascular Research Foundation および Daewoong Pharmaceutical から研究助成を受けた。POST-PCI ClinicalTrials.gov 番号、NCT03217877)。 第一人者の医師による解説 高リスク患者でもルーチン負荷検査実施に臨床的意義なし 背景に冠動脈ステント性能の向上 清末 有宏 森山記念病院循環器センター長 MMJ.February 2023;19(1):11 金属ステントを冠動脈に留置していた時代にはステント内再狭窄が20~30%に見られたため、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施後6カ月前後で再入院のうえ経皮的冠動脈造影(CAG)を必ず実施していたし、実際に20~30%の患者は再 PCIとなった。しかし2004年以降薬剤溶出性ステントの時代に突入し、免疫抑制薬の新生内膜増殖抑制作用により、ステント内再狭窄率は5~10%に低下した。第1世代薬剤溶出性ステントではポリマーによる血管炎症が問題となったが、その後第2世代、第3世代と日進月歩の勢いで進化を遂げ、近年ではどのステントを用いてもステント内再狭窄率は高リスクな背景を有する患者でなければ1~2%と驚異的な数字となっている。また同時に画像診断技術も大きく進歩し、心電図同期造影 CTによる冠動脈の描出はCAGに引けを取らないレベルまで質が高まりつつあり、各種の非侵襲的な機能的負荷試験も心筋虚血の検出において感度・特異度を上げてきている。 上記状況を踏まえPCI実施後の患者の臨床的経過観察をどのようにすべきか、ということに関しては各国の医療環境を考慮に入れながら長期にわたって世界的に議論が続いており、またその議論は常に最新のエビデンスとともにアップデートされることを余儀なくされている。日本では欧米諸国に比べ再CAGの敷居が低い時代が長く続いたが、近年は再 CAGをルーチンで実施することは推奨されていない。ガイドラインには本件に関する記載はないものの、日本のReACT試験では再 CAG実施群において非実施群に比べ冠疾患関連複合エンドポイントの改善は認められなかった(ハザード比 , 0.94;95%信頼区間[CI], 0.67~1.31)(1)。本論文のPOST-PCI試験ではさらに一歩進んで、PCI後の解剖学的または臨床的な高リスク患者に対して1年後にルーチンの機能的負荷試験(負荷心筋シンチ、運動負荷心電図、負荷心エコーのいずれか)を実施しても、2年間の冠疾患関連複合エンドポイントは非実施群と比較し改善しなかった(HR,0.90;95% CI, 0.61~1.35)。いろいろな方向性での解釈が可能な試験結果かとは思うが、一つ確実に言えることは冠動脈ステントの性能がいわば“Fire-and-forget”に耐えられるほどに向上したということであろうか。 1. Shiomi H, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2017;10(2):109-117.
FFRガイドのPCIはIVUSガイドのPCIと比較して 心血管イベント発生は非劣性
FFRガイドのPCIはIVUSガイドのPCIと比較して 心血管イベント発生は非劣性
Fractional Flow Reserve or Intravascular Ultrasonography to Guide PCI N Engl J Med. 2022 Sep 1;387(9):779-789. doi: 10.1056/NEJMoa2201546. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景] 経皮的冠動脈インターベンション (PCI) の評価を受けている冠動脈疾患患者では、血行再建術とステント留置に関する意思決定のために、フラクショナル フロー リザーブ (FFR) または血管内超音波検査 (IVUS) によって手技をガイドできます。しかし、両方の目的に 1 つの方法のみを使用した場合の臨床転帰の違いは明らかではありません。血管造影) を 1:1 の比率で行い、FFR ガイドまたは IVUS ガイドのいずれかの手順を実行します。 FFR または IVUS を使用して、PCI を実行するかどうかを決定し、PCI の成功を評価する必要がありました。 FFR 群では、FFR が 0.80 以下の場合に PCI を実施することとした。 IVUS群では、PCIの基準は、70%を超えるプラーク負荷を伴う3mm 2以下または3~4mm 2の最小管腔面積であった。主要転帰は、無作為化から 24 か月後の死亡、心筋梗塞、または血行再建術の複合でした。 IVUS 群と比較した FFR 群の非劣性をテストしました (非劣性マージン、2.5 パーセント ポイント)。 [結果] PCI の頻度は、FFR 群の患者で 44.4%、IVUS 群の患者で 65.3% でした。 24 か月の時点で、FFR 群の患者の 8.1% と IVUS 群の患者の 8.5% で主要転帰イベントが発生しました (絶対差、-0.4 パーセント ポイント; 片側 97.5% 信頼度の上限間隔、2.2 パーセント ポイント; 非劣性の P = 0.01)。シアトル狭心症アンケートで報告された患者報告のアウトカムは、2 つのグループで類似していた。心筋梗塞、または 24 か月での血行再建術。 (Boston Scientific から研究助成を受けた。FLAVOR ClinicalTrials.gov 番号 NCT02673424)。 第一人者の医師による解説 FFR 対 IVUS 我が国のプラクティスに与える影響は少ない 阿古 潤哉 北里大学医学部循環器内科学教授 MMJ.February 2023;19(1):10 冠動脈の内圧を測定し冠動脈の狭窄が生理学的に有意かどうかを判断する方法がfractional flow reserve(FFR)である。また、冠動脈の解剖学的狭窄を正確に評価する方法がintravascular ultrasonography(IVUS)である。両者は基本的には全く異なるものを評価しているが、いずれの検査法も経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける患者の評価において、冠動脈造影を補完する診断法であるという点では共通項があると言える。 今回報告されたFLAVOUR試験は、PCIガイド用の検査法としてFFRはIVUSに勝るかという臨床的疑問を解くべく計画された。FFRガイド PCIは冠動脈造影ガイドのPCIに比べ心血管イベントが少なくなるというデータがすでにある(1)。対するIVUSガイド PCIにはそのようなデータがないため、FFRガイドの優越性を検証する試験デザインが組まれた。しかし試験開始後に、IVUSガイド PCIは冠動脈造影ガイド PCIに比べ予後の改善がみられるというデータが複数報告されたため、FFRガイド PCIのIVUSガイド PCIに対する非劣性を検討するデザインに変更された。韓国と中国の18施設で中等度狭窄のある患者1,682人を組み入れ、FFRあるいはIVUSでPCI適応の有無を判断した。結果、FFR群では44.4%、IVUS群では65.3%の患者にPCIが実施された。24カ月時点の心血管イベント(死亡、心筋梗塞、再血行再建)発生率はFFRガイド群で8.1%、IVUSガイド群で8.5%であり、非劣性が示された。 生理的虚血の評価法であるFFRと、解剖学的形態の評価法であるIVUSを比較するというのは、ともすると非常にわかりにくい試験デザインである。そもそも、安定冠動脈疾患に対する治療法の選択において、PCIか内科的治療先行かという比較試験がいくつか行われたが、死亡、心筋梗塞などのいわゆるハードエンドポイントにおいて有意差をつけた臨床試験はない。その意味では、PCIのガイド方法の変化程度ではイベントに有意差が出ないであろうというのは十分に予想される結果である。非劣性を検証するデザインに変更されたために本試験の意味合いが少し不明確になったと言える。この結果をもって、冠動脈造影ガイド PCIが標準となっている多くの国の医療環境下では、FFRガイドでad-hoc PCI(診断目的の冠動脈造影に続いて実施するPCI)を行うことにお墨付きを与える形になるかもしれない。しかし、従来から基本的にPCIをIVUSなどの冠動脈イメージングガイド下で行っている我が国では、今回の試験結果が与えるインパクトはほとんどなさそうである。 1. Xaplanteris P, et al. N Engl J Med. 2018;379(3):250-259.
2022年4月〜6月に16カ国でみられたサル痘感染症 典型的な特徴は発疹と性器病変
2022年4月〜6月に16カ国でみられたサル痘感染症 典型的な特徴は発疹と性器病変
Monkeypox Virus Infection in Humans across 16 Countries - April-June 2022 N Engl J Med. 2022 Aug 25;387(8):679-691. doi: 10.1056/NEJMoa2207323. Epub 2022 Jul 21. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景] 2022 年 4 月以前は、サル痘ウイルスが風土病であるアフリカ地域以外では、ヒトのサル痘ウイルス感染はほとんど報告されていませんでした。現在、世界中で症例が発生しています。伝染、危険因子、臨床症状、および感染の転帰は十分に定義されていません。 -確認されたサル痘ウイルス感染。 [結果] 2022 年 4 月 27 日から 6 月 24 日の間に 16 か国の 43 か所で診断された 528 の感染を報告します。全体として、感染者の 98% がゲイまたはバイセクシュアルの男性で、75% が白人で、41% がヒト免疫不全ウイルスに感染していました。年齢の中央値は 38 歳でした。伝染は、感染者の 95% で性行為を介して発生した疑いがありました。この症例シリーズでは、95% の人に発疹があり (64% は 10 個未満の病変)、73% は肛門性器病変、41% は粘膜病変 (54 人は単一の性器病変) でした。発疹に先行する一般的な全身的特徴には、発熱 (62%)、無気力 (41%)、筋肉痛 (31%)、および頭痛 (27%) が含まれていました。リンパ節腫脹も一般的でした (56% で報告されました)。検査を受けた 377 人中 109 人 (29%) で性感染症の併発が報告されました。暴露歴が明らかな 23 人のうち、潜伏期間の中央値は 7 日 (範囲、3 ~ 20 日) でした。サル痘ウイルス DNA は、精液を分析した 32 人中 29 人で検出されました。全体の 5% の人に抗ウイルス治療が施され、70 人 (13%) が入院しました。入院の理由は疼痛管理であり、主に肛門直腸の重度の痛み(21 人)であった。軟部組織重複感染 (18);経口摂取を制限する咽頭炎 (5);眼病変 (2);急性腎障害 (2);心筋炎 (2);および感染制御目的(13)。死亡例は報告されていません。 [結論] このケース シリーズでは、サル痘はさまざまな皮膚科学的および全身的な臨床所見とともに現れました。サル痘が伝統的に風土病であった地域以外での症例の同時同定は、さらなる地域での広がりを封じ込めるために、症例の迅速な同定と診断の必要性を浮き彫りにしています。 第一人者の医師による解説 過去のサル痘と比べて非典型的な症状が多く 病歴などを詳細に聴取し積極的に診断すべき 谷口 俊文 千葉大学医学部附属病院感染制御部准教授 MMJ.February 2023;19(1):21 2022年4月前までサル痘(現在では世界保健機関[WHO]によりMpoxと名称変更)はアフリカ以外ではほとんど報告されなかったが、現在、世界中でみかけるようになった。本論文はその感染経路や危険因子、臨床的特徴などに関する報告である。サル痘は英国保健安全保障庁(UKHSA)の定義、すなわち病変からのサル痘 PCR陽性で確定診断している。 本研究では約2カ月間に英国を中心に16カ国から528人の感染者が報告された。サル痘患者の98%はゲイまたはバイセクシュアル男性で、2%は異性愛者であった。95%で性行為による感染が疑われた。9%が天然痘ワクチン接種の既往を報告。発疹(黄斑、膿疱、小水疱、痂皮)は95%に認められ、肛門、性器に最も多く(73%)、次いで体幹・上下肢(55%)、顔(25%)、手掌または足底(10%)であった。病変は10個以下が多く、5個以下は39%にみられた。その他の所見としては、性器潰瘍(10%)、直腸痛、直腸炎、テネスムスなどを伴う直腸粘膜病変(12%)、そして口腔咽頭症状(5%)などがみられた。発熱は62%と一般的であったが、すべての患者に全身性の前駆症状があったわけではない。時系列的な評価を受けた30人の患者では、最初の皮膚病変から追加の皮膚病変までの期間中央値は5日間であった。41%がHIVに感染しており、このうちほぼ全員が有効な抗 HIV薬で治療されていた。そしてサル痘の臨床症状は、HIV感染者と非感染者で同様であった。性感染症のスクリーニングを受けた患者の29%は、微生物学的に確定された性感染症を併発していた。全患者の13%が入院し、その多くは疼痛管理や軟部組織への2次感染のためであり、2人が心筋炎、1人が喉頭蓋炎を発症した。5%がサル痘に対する治療(テコビリマット、シドホビル外用など)を受けていた。 今回の流行におけるサル痘の典型的な特徴は、発疹と性器病変であり、後者は性的接触時の感染を反映している可能性がある。過去に報告されたサル痘と比べてあまり典型的ではない症状(単一の性器潰瘍、手掌と足底の病変など)が多いため、病歴などを詳細に取った上で積極的に診断する必要がある。WHOは最近、サル痘を世界的な健康上の緊急事態と宣言し、診断、検査、ワクチン接種、治療へのアクセスの迅速化を含む、効果的かつ公平な対応の必要性を強調している。 1. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン;失神の診断・治療ガイドライン(2012 年改訂版) 2. Vyas A, et al. Int J Cardiol. 2013;167(5):1906-1911. 3. Sheldon R, et al. Eur Heart J. 2006;27(3):344-350.
コロナ禍の2022年前半の英国で小児に重症急性肝炎が流行
コロナ禍の2022年前半の英国で小児に重症急性肝炎が流行
Clinical Spectrum of Children with Acute Hepatitis of Unknown Cause N Engl J Med. 2022 Aug 18;387(7):611-619. doi: 10.1056/NEJMoa2206704. Epub 2022 Jul 13. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 【背景】2022年1月以降、小児における原因不明の急性肝炎の報告が増加しています。症例は複数の大陸で報告されていますが、ほとんどは英国で報告されています。原因物質を特定するための調査が進行中です。血清に関連して、A型肝炎からE型肝炎ではなく、代謝的、遺伝的、遺伝的、先天的、または機械的原因を持たない、確認された急性肝炎の英国健康安全保障局の症例定義を満たす肝炎を持っていた1リットルあたり500 IUを超えるアミノトランスフェラーゼレベル。医療記録をレビューし、人口学的特徴、臨床的特徴、肝生化学的検査、血清学的検査、肝向性ウイルスやその他のウイルスの分子検査の結果、および放射線学的および臨床的転帰を文書化しました。結果は、状態の改善、肝移植、または死亡として分類されました。年齢の中央値は 4 歳 (範囲、1 ~ 7 歳) でした。一般的な症状は、黄疸 (93% の子供)、嘔吐 (54%)、下痢 (32%) でした。ヒトアデノウイルスの分子検査を受けた30人の患者のうち、27人(90%)が陽性でした。劇症肝不全は 6 人の患者 (14%) で発生し、その全員が肝移植を受けました。死亡した患者はいなかった。肝移植を受けた 6 人を含むすべての子供は退院した.この病気は確立されていません。 第一人者の医師による解説 アデノウイルス 41Fとアデノ随伴ウイルス 2型のツインデミックが関与か 森内 浩幸 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科小児科学教授 MMJ.February 2023;19(1):6 2022年初頭、英国から原因不明の小児重症肝炎が多発していると報告され、世界を驚かせた。その後世界中から同様の症例が世界保健機関(WHO)に登録され、9月29日までに555例が集まったが、そのほとんどは地域的(スコットランド)・時間的(1~6月[ピーク 3~4月])に集積していた。 本論文は英国の小児肝移植センターで2022年1月1日~4月11日に経験された重症急性肝炎44人の報告である。いずれも従来は健康な1~7歳児で、6人に肝移植が行われた。既知の原因は否定されたが、30人中27人(90%)でアデノウイルスが検出された。肝組織中にウイルス封入体やアデノウイルス抗原は検出されなかったが、肝組織粉砕液からは6人中3人でアデノウイルス DNAがPCR法で検出され、塩基配列よりアデノウイルス41Fと推定された。アデノウイルスは免疫健常宿主に肝炎を起こさず、41Fは胃腸炎ウイルスに過ぎない。その後も英国ではアデノウイルスが過半数の症例から検出され、その多くが41Fであった(1)。 その後の知見に基づく仮説はこうだ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防策の緩和後、スコットランドにおいてアデノウイルス 41Fとアデノ随伴ウイルス 2型(AAV2)が同時流行した。AAV2は単独では増殖できず、ヘルパーウイルスを必要とし、アデノウイルスは代表的なヘルパーウイルスである。この2つのウイルスに同時感染した子どもの肝臓でAAV2が活発に増殖し、感染した肝細胞に対して宿主免疫系(特に細胞性免疫)が攻撃を加えることによって肝炎が起こる。このような免疫攻撃はある種のヒト白血球抗原(HLA)(DRB1*04:01)を有する人に起こりやすい。このHLA型は北欧に多く、スコットランド人の15.6%が保有する。スコットランドの研究では患児の多くからAAV2が検出されたが、健常対照児からは検出されなかった。また患児の89%が上述のHLA型であった(2)。 このような機序の肝炎には前例がある。D型肝炎ウイルスもB型肝炎ウイルスというヘルパーウイルスがいなければ増殖できず肝炎は起こせない。またウイルス性肝炎の多くは、ウイルスが直接肝細胞を破壊するのではなく、ウイルス感染肝細胞を宿主の細胞性免疫が認識して破壊する。そしてHLA型と感染症との相性も以前から知られている(HIV、C型肝炎など)。まだ完全に証明されたわけではないが、これが本当ならコロナ禍に生じた各 種感染症の疫学の乱れから起こったツインデミック(アデノウイルス 41FとAAV2)が起こした現象だったと言える。「新興感染症」が既知の2種類のウイルスと宿主の遺伝背景の組み合わせでも起こるかもしれないということだ。 1. Gong K, et al. Front Pharmacol. 2022;13:1056385. 2. Ho A, et al. medRxiv 2022.07.19.22277425.
週1回皮下注持続性 GLP-1アゴニストは10〜18歳未満の肥満2型糖尿病患者の糖代謝を改善
週1回皮下注持続性 GLP-1アゴニストは10〜18歳未満の肥満2型糖尿病患者の糖代謝を改善
Once-Weekly Dulaglutide for the Treatment of Youths with Type 2 Diabetes N Engl J Med. 2022 Aug 4;387(5):433-443. doi: 10.1056/NEJMoa2204601. Epub 2022 Jun 4. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [背景] 2 型糖尿病の発生率は若者の間で増加しています。グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニストであるデュラグルチドによる週1回の治療は、2型糖尿病の若者の血糖コントロールに関して有効である可能性があります.ライフスタイルの変更のみまたはメトホルミンで、基礎インスリンの有無にかかわらず、1:1:1 の比率で治療を受けている参加者 (10 歳から 18 歳未満、ボディマス指数 [BMI]、> 85 パーセンタイル) を無作為に割り当てました。週に 1 回、プラセボ、デュラグルチド 0.75 mg、またはデュラグルチド 1.5 mg の皮下注射を受けます。その後、参加者は 26 週間の非盲検延長試験に参加し、プラセボを投与されていた人が毎週 0.75 mg のデュラグルチドの投与を開始しました。主要評価項目は、26 週での糖化ヘモグロビン レベルのベースラインからの変化でした。二次エンドポイントには、7.0%未満の糖化ヘモグロビンレベルと、空腹時グルコース濃度およびBMIのベースラインからの変化が含まれていました。安全性も評価されました。 [結果] 合計 154 人の参加者が無作為化されました。 26 週の時点で、糖化ヘモグロビンの平均レベルはプラセボ群で増加し (0.6 パーセント ポイント)、デュラグルチド群で減少しました (0.75 mg 群で -0.6 パーセント ポイント、1.5 mg 群で -0.9 パーセント ポイント、プラセボに対する両方の比較で P < 0.001)。 26 週の時点で、プールされたデュラグルチド群の参加者の割合が、プラセボ群よりも高く、7.0% 未満の糖化ヘモグロビン レベルでした (51% 対 14%、P < 0.001)。空腹時血糖値はプラセボ群で増加し(1デシリットルあたり17.1mg)、プールされたデュラグルチド群で減少し(1デシリットルあたり-18.9mg、P <0.001)、BMIの変化にグループ間差はありませんでした.胃腸の有害事象の発生率は、プラセボよりもデュラグルチド療法の方が高かった.デュラグルチドの安全性プロファイルは、成人で報告されたものと一致していました。メトホルミンまたは基礎インスリンの有無にかかわらず、BMI に影響を与えずに治療を受けている。 (Eli Lilly から研究助成を受けた。AWARD-PEDS ClinicalTrials .gov 番号 NCT02963766)。 第一人者の医師による解説 消化器症状の懸念はあるが デュラグルチドは血糖管理に有効 内潟 安子 東京女子医科大学附属足立医療センター病院長 特任教授 MMJ.February 2023;19(1):18 肥満2型糖尿病患者、特に若い年代の当該患者は世界的に急増し、糖尿病性合併症の急速な進展もみられる。若い糖尿病患者に対する治療指針の根拠の1つに米国 TODAY試験が有名であるが、推奨の第1治療薬メトホルミンでは対象患者のおよそ半数が血糖管理に失敗し、膵β細胞機能の急激な悪化を阻止できなかった(1)。若い糖尿病患者は成人の糖尿病患者と比較し、その病因的背景は相等であると言われるのだが、インスリン抵抗性、膵β細胞機能不全ともに成人2型糖尿病より迅速に重症化しやすいのではないかと考えられる(2),(3)。その一方、若い糖尿病患者への薬物療法は成人2型糖尿病の薬物療法ほどには進歩していない。 本論文は、10歳~18歳未満の肥満2型糖尿病患者を対象に、成人の2型糖尿病に広く使用されているグルカゴン様ペプチド(GLP)-1アゴニストのデュラグルチドを0.75mg、1.5mg、もしくはプラセボを週1回皮下投与する群に無作為に割り付け、26週間後の経過を比較した第3相二重盲検優越性試験(AWARD-PEDS)の報告である。対象は各群約50人で、年齢分布、性別、人種構成、体格指数(BMI)(34前後)、HbA1c値(8.0%前後)、ベースライン治療(メトホルミン単独63%前後、メトホルミン+基礎インスリン併用25%前後、基礎インスリン治療単独3%前後)に関して3群間で同様であった。 26週時点の結果は以下のとおりである。平均HbA1c値はプラセボ群で0.6%上昇し、デュラグルチド 0.75mg群、1.5mg群ではそれぞれ0.6%、0.9%低下した(いずれもP<0.001)。HbA1c値が7.0%未満であった参加者の割合は、プラセボ群14%に対して、デュラグルチド 0.75mg群と1.5mg群の統合群では51%であった(P<0.001)。空腹時血糖値は、プラセボ群で17.1mg/dL上昇、デュラグルチド統合群では18.9mg/dL低下した(P<0.001)。BMIの増減に関して有意な群間差はなかった。消化器症状はデュラグルチド群に多くみられたが、デュラグルチドの安全性プロファイルは成人2型糖尿病での報告と同様であった。 今回の検討から、10代の肥満2型糖尿病患者において、メトホルミン服用の有無や基礎インスリン治療の有無に関係なく、デュラグルチドは0.75mgであれ1.5mgであれ投与26週間後に、減量効果はみられなかったが、血糖値の良好化に関してプラセボよりも有意な効果を得られることが明らかとなった。 1. TODAY Study Group. N Engl J Med. 2012;366(24):2247-2256. 2. RISE Consortium. Diabetes Care. 2018;41(8):1696-1706. 3. Utzschneider KM, et al. Diabetes Res Clin Pract. 2021;178:108948.
冠動脈造影における急性腎障害 臨床意思決定支援ツールで発生率低下
冠動脈造影における急性腎障害 臨床意思決定支援ツールで発生率低下
Effect of Clinical Decision Support With Audit and Feedback on Prevention of Acute Kidney Injury in Patients Undergoing Coronary Angiography: A Randomized Clinical Trial JAMA. 2022 Sep 6;328(9):839-849. doi: 10.1001/jama.2022.13382. 上記論文のアブストラクト日本語訳 ※ヒポクラ×マイナビ 論文検索(Bibgraph)による機械翻訳です。 [重要] 造影剤関連急性腎障害 (AKI) は、冠動脈造影および経皮的冠動脈インターベンション (PCI) の一般的な合併症であり、高額な費用と有害な長期転帰に関連しています。冠動脈造影または PCI 後の AKI の予防に効果的です。 [デザイン、設定、および参加者] カナダのアルバータ州で、3 つの心臓カテーテル研究所のすべての侵襲性心臓専門医を対象に無作為化されたステップウェッジ クラスター無作為化臨床試験が実施されました。 2018 年 1 月から 2019 年 9 月までの介入のさまざまな開始日。適格な患者は、非緊急冠動脈造影、PCI、またはその両方を受けた 18 歳以上でした。透析を受けていない人; 5%を超えるAKIリスクが予測された人。 34 人の医師が、選択基準を満たした 7,106 人の患者の中で 7,820 の処置を行いました。参加者のフォローアップは 2020 年 11 月に終了しました。 [介入] 介入期間中、心臓専門医は教育的アウトリーチ、造影剤量と血行動態に基づく輸液目標に関するコンピュータ化された臨床的意思決定支援、および監査とフィードバックを受けました。コントロール(介入前)期間中、心臓専門医は通常のケアを提供し、介入を受けませんでした。 [主な結果と測定値]主要な結果はAKIでした。造影剤量、静脈内輸液投与、主要な有害心血管イベントおよび腎臓イベントを含む 12 の二次的転帰がありました。分析は、時間調整モデルを使用して実施されました。 [結果] 診療グループとセンターによって 8 つのクラスターに分割された 34 人の参加心臓専門医のうち、介入グループには、4032 人の患者 (平均年齢、70.3 [SD、 10.7] 年; 1384 人は女性 [32.0%]) であり、対照群には 3251 人の患者のうち 3493 回の手術を行った 34 人が含まれていた (平均年齢、70.2 [SD, 10.8] 歳; 1151 人は女性 [33.0%])。 AKI の発生率は、介入期間中 7.2% (4327 処置後の 310 イベント)、対照期間中の 8.6% (3493 処置後の 299 イベント) でした (グループ間差、-2.3% [95% CI、-0.6% to -4.1%]; オッズ比 [OR], 0.72 [95% CI, 0.56 ~ 0.93]; P = .01)。事前に指定された 12 の副次的結果のうち、8 つは有意差を示しませんでした。過剰な造影剤を使用した手技の割合は、対照期間中の 51.7% から介入期間中に 38.1% に減少しました (グループ間差、-12.0% [95% CI、-14.4% から -9.4%];または、0.77 [95% CI、0.65 ~ 0.90]; P = .002)。輸液が不十分な適格患者の処置の割合は、対照期間中の 75.1% から介入期間中に 60.8% に減少しました (グループ間差、-15.8% [95% CI、-19.7% ~ -12.0] %]; OR、0.68 [95% CI、0.53 ~ 0.87]; P = .002)。主要な有害心血管イベントまたは主要な有害腎イベントにおいて、グループ間で有意差はありませんでした。対照期間中に治療を受けた患者と比較して AKI を発症し、時間調整後の絶対リスクは 2.3% 減少しました。この介入がこの研究設定の外で有効性を示すかどうかは、さらなる調査が必要です.[試験登録]ClinicalTrials.gov 識別子: NCT03453996. 第一人者の医師による解説 LVEDPに代わる別な因子の利用で より応用範囲が拡大する可能性 小泉 淳 千葉大学大学院医学研究院画像診断・放射線腫瘍学(放射線科)特任教授 MMJ.February 2023;19(1):15 造影剤関連の急性腎障害(AKI)は、冠動脈造影および経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の一般的な合併症であり、高額な費用と患者に透析など長期的な悪影響を及ぼしうる。本論文は、カナダ・アルバータ州で実施された、34人の心臓専門医による7,820の処置を対象とした、侵襲性心臓専門医に対する臨床意思決定支援システムのAKI軽減に関するステップウェッジクラスター無作為化臨床試験の報告である。透析患者、ST上昇型心筋梗塞への緊急 PCI、およびAKIのリスクが5%以下の患者は除外された。参加医師は、まずAKIおよびその予防に関する1時間の教育セッションを受講した。心臓専門医は、手技前にスタッフからePRISMツール(Health Outcomes Sciences)を元に計算された安全な造影剤の量の目標を受け、心臓カテーテル検査中に得られた左心室拡張末期圧測定値(LVEDP)を元に計算された静脈内輸液量目標値を告知された。実際に使用された造影剤量と輸液量が記録され、以後3カ月ごとにAKI発生率について報告された。その結果、ePRISMにより計算された造影剤量に比べて過剰な造影剤量を使用した手技の割合は、対照期間中の51.7%から介入期間中に38.1%に低下した(群間差 , -12.0%;95%信頼区間[CI],-14.4 ~-9.4%;時間調整オッズ 比[OR], 0.77;95 % CI, 0.65 ~ 0.91;P=0.002)。LVEDPを元に計算された静脈内輸液量目標値に比べて不十分な静脈内輸液が与えられた割合は、対照期間中の75.1%から介入期間中に60.8%に低下したが(群間差 , -15.8%;95%CI, -19.7~ -12.0%;OR, 0.68;95%CI, 0.53~ 0.87;P=0.002)、主要な心血管・腎イベントに関して有意な群間差はなかった。しかし、介入期間中のAKI発生率は7.2%と対照期間の8.6%に対して有意差がみられ、時間調整されたAKI絶対リスク低下は2.3%であった。なお、ePRISMの入力項目に“Black or African American”はあるが、日本人を含む黄色人種の選択肢はなく、糖尿病に関しても有無のみで程度を入力する項目はない。今回の介入が本研究環境以外の日本でも有効であるかどうかは国内でさらなる検討が必要であろう。一方、左室造影に代わって超音波検査が行われている時代で,LVEDPを測らなければいけないのは現実的ではないようにも思われる。CTの普及・実施率が世界一である日本では、CT時に使用される造影剤によるAKI予防も重要であり、LVEDPに代わる別な因子が輸液量決定に使えるなら、より応用範囲が拡大するかもしれない。今後の研究が待たれる。 1. James MT, et al. Can J Cardiol.2019;35(9):1124-1133. 2. Malik AO, et al. Am Heart J.2021;234:51-59. 3. Brar SS, et al. Lancet 2014;383(9931):1814-1823.
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