「血液内科 Journal Check」の記事一覧

再発・難治性MMに対するイキサゾミブ+ダラツムマブ+デキサメタゾン〜第II相試験最終分析
再発・難治性MMに対するイキサゾミブ+ダラツムマブ+デキサメタゾン〜第II相試験最終分析
公開日:2024年6月21日 Delimpasi S, et al. Am J Hematol. 2024 Jun 10. [Epub ahead of print]  新規治療法の進歩により、多発性骨髄腫(MM)の臨床アウトカムは改善したが、いまだ多くの患者は再発し、再発・難治性MMの治療決定は、ますます困難となっている。ギリシャ・General Hospital EvangelismosのSosana Delimpasi氏らは、プロテアソーム阻害薬イキサゾミブ+ダラツムマブ+デキサメタゾンの併用療法を評価したシングルアーム第II相試験の最終分析結果を報告した。American Journal of Hematology誌オンライン版2024年6月10日号の報告。  再発・難治性MM患者61例(イキサゾミブ、ダラツムマブの治療歴なし、治療歴1〜3回)が登録され、病勢進行およびまたは許容できない毒性が発現するまでイキサゾミブ+ダラツムマブ+デキサメタゾン併用療法(28日サイクル)を実施した。主要エンドポイントは、最良部分奏効(VGPR)、副次的エンドポイントは、全奏効率(OR)、無増悪生存期間(PFS)、無増悪期間(TTP)、全生存期間(OS)などとした。 主な結果は以下のとおり。 ・年齢中央値は69歳、国際病期分類(ISS)ステージIIIの患者が14.3%、治療歴3回の患者が14.8%であった。 ・イキサゾミブ+ダラツムマブ+デキサメタゾン併用療法の平均サイクル数は16サイクル。 ・有効性評価可能な59例におけるORは64.4%、VGPRは30.5%であった。 ・各サブグループにおけるVGPRの割合は、次のとおりであった。   細胞遺伝学的高リスク(15例):26.7%   細胞遺伝学的拡大高リスク(24例):29.2%   75歳以上(12例):16.7%   レナリドミド抵抗性(21例):28.6%   プロテアソーム阻害薬/免疫調整薬の治療歴(58例):31.0% ・フォローアップ期間中央値は31.6ヵ月、PFS中央値は16.8ヵ月(95%CI:10.1〜23.7)であった。 ・グレード3以上の治療薬に関連する有害事象(TEAE)は、患者の54.1%で認められた。 ・重篤なTEAE発生率は44.3%、TEAEによる薬剤の用量調整、減量、中止の割合は、それぞれ62.3%、36.1%、16.4%であった。 ・本試験中に死亡した患者は5例。 ・末梢神経障害の発生率は、すべてのグレードで18.0%、グレード3以上で1.6%であった。 ・治療中のQOLは、概ね維持されていた。  著者らは「再発・難治性MMに対するイキサゾミブ+ダラツムマブ+デキサメタゾン併用療法は、良好なリスク-ベネフィットプロファイルを有し、臨床的に関連するサブグループにおいても有効性が示された治療法であり、本試験による新たな安全性シグナルは確認されなかった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Delimpasi S, et al. Am J Hematol. 2024 Jun 10. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38856176 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性の高齢者LBCLに対するCAR-T細胞療法の有用性
再発・難治性の高齢者LBCLに対するCAR-T細胞療法の有用性
公開日:2024年6月20日 Tun AM, et al. Am J Hematol. 2024 Jun 4. [Epub ahead of print]  CAR-T細胞療法は、再発・難治性の大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の潜在的な治療法であるにもかかわらず、臨床データが限られているため、高齢者では十分に活用できていない。米国・カンザス大学のAung M. Tun氏らは、再発・難治性LBCLの高齢患者に対するCAR-T細胞療法の安全性および有効性を検討した。American Journal of Hematology誌オンライン版2024年6月4日号の報告。  米国・7施設でCAR-T細胞療法を行った65歳以上の再発・難治性LBCL患者を対象に、多施設共同レトロスペクティブ観察研究を実施した。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者数は226例(平均年齢:71歳、範囲:65〜89歳)。 ・最良客観的奏効率(best objective response)は86%、完全奏効率(CR)は62%であった。 ・CAR-T細胞療法後の平均フォローアップ期間は18.3ヵ月。 ・無増悪生存期間(PFS)中央値は6.9ヵ月、6ヵ月および12ヵ月のPFS推定値は、それぞれ54%、44%であった。 ・非再発死亡率(NRM)は、180日間で10.9%であり、主な原因は感染症であり、年齢による影響は認められなかった。 ・グレード3以上のサイトカイン放出症候群は7%、神経毒性は26%で発生した。 ・単変量解析では、年齢またはCAR-TタイプとPFSに有意な差は認められなかったが、ECOG PSが2以上、LDH上昇、バルキー病変、進行期、ブリッジングの必要性、ベンダムスチン治療歴は、PFSの短縮と関連が認められた。  著者らは「本知見は、80歳以上を含む高齢者の再発・難治性LBCDに対するCAR-T細胞療法を支持するものである。CAR-T細胞療法の安全性、生存率、NRMに対する年齢の影響は少ないと考えられるため、年齢だけを理由に治療選択肢からCAR-T細胞療法を除外すべきではない」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Tun AM, et al. Am J Hematol. 2024 Jun 4. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38837403 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性のCCR4陽性PTCL、CTCLに対するモガムリズマブの有用性〜国内市販後調査
再発・難治性のCCR4陽性PTCL、CTCLに対するモガムリズマブの有用性〜国内市販後調査
公開日:2024年6月19日 Ishitsuka K, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e3292. [Epub ahead of print]  CCケモカイン受容体4(CCR4)を標的としたヒト化モノクローナル抗体であるモガムリズマブは、2014年に再発または難治性のCCR4陽性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)および皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)への適応拡大が承認された。鹿児島大学の石塚 賢治氏らは、モガムリズマブの市販後調査結果を報告した。Hematological Oncology誌2024年7月号の報告。  本市販後調査は、再発・難治性のCCR4陽性PTCLまたはCTCTに対するモガムリズマブの安全性および有効性を確認するため、2014〜2020年に日本で実施された。安全性および有効性のデータは、治療開始後最大31週間収集した。 主な結果は以下のとおり。 ・登録総患者数は142例、安全性評価対象は136例。 ・投与回数の中央値は、8.0回(範囲:1〜18)。 ・治療中止の主な原因は、治療反応不十分(22.1%)、有害事象(13.2%)であった。 ・すべてのグレードの有害事象の発生率は57.4%であり、主な有害事象は、皮膚障害(26.5%)、感染症および免疫系障害(16.2%)、注射部位反応(13.2%)などであった。 ・モガムリズマブ投与後、同種造血幹細胞移植を行った2例のうち1例において、GVHD(グレード2)の発症が認められた。 ・有効性評価対象131例の内訳は、PTCLが103例、CTCLが28例。 ・最良総合評価(best overall response)は45.8%(PTCL:47.6%、CTCL:39.3%)であった。 ・31週時点での生存率は69.0%(95%CI:59.8〜76.5)であり、PTCLは64.4%(95%CI:54.0〜73.0)、CTCLは90.5%(95%CI:67.0〜97.5)であった。 ・安全性および有効性は、70歳未満と70歳以上、再発と難治性との間で同等であった。  著者らは「リアルワードにおけるPTCLおよびCTCLに対するモガムリズマブの安全性・有効性は、これまでの臨床試験で報告されたデータと同等であった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Ishitsuka K, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e3292. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38847317 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
慢性GVHD発症が非再発死亡率に及ぼす影響
慢性GVHD発症が非再発死亡率に及ぼす影響
公開日:2024年6月18日 Jiang J, et al. Leuk Lymphoma. 2024 Jun 12. [Epub ahead of print]  慢性移植片対宿主病(GVHD)は、同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)を行なった患者の死亡率に影響を及ぼす主な原因の1つである。近年、allo-HSCTの進歩により、とくに高齢者を中心に、幅広い患者が移植適応可能となっている。米国・オハイオ州立大学のJustin Jiang氏らは、高齢患者と非高齢患者におけるallo-HSCT後のアウトカムに対する慢性GVHDの影響を評価した。Leukemia & Lymphoma誌オンライン版2024年6月12日号の報告。  1999〜2018年にallo-HSCTを行ったすべての患者を対象に、レトロスペクティブに分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・allo-HSCT後180日間で慢性GVHDを発症した患者は、発症しなかった患者と比較し、非再発死亡のリスクおよび発生率が高かった。 ・60歳以上と60歳未満による、慢性GVHDのアウトカムに有意な差は認められなかった。  著者らは「allo-HSCT後の慢性GVHDは、年齢により発症率の違いは認められず、非再発死亡リスクを増加させることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Jiang J, et al. Leuk Lymphoma. 2024 Jun 12. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38865104 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本での再発・難治性LBCLの2nd治療におけるaxi-celの費用対効果
日本での再発・難治性LBCLの2nd治療におけるaxi-celの費用対効果
公開日:2024年6月17日 Tsutsue S, et al. Future Oncol. 2024 Jun 5: 1-13. [Epub ahead of print]  再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)に対する2ndライン治療として、 CAR-T細胞療法アキシカブタゲン シロルユーセ(axi-cel)と大量化学療法+自家造血幹細胞移植による標準治療の有効性および安全性を比較した第III相多施設共同ランダム化比較試験であるZUMA-7試験において、 axi-celは標準治療と比べて全生存期間(OS)を有意に延長することが報告された。ギリアド・サイエンシズ株式会社のSaaya Tsutsue氏らは、日本でのLBCLの2ndライン治療におけるaxi-celの費用対効果を分析するため、標準療法との比較検討を行った。Future Oncology誌オンライン版2024年6月5日号の報告。  LBCL再発後の2ndライン標準治療は、サルベージ化学療法により奏効した患者に対する自家移植併用大量化学療法とした。ZUMA-7試験のデータより収集した人口統計学的および臨床的情報を利用した。分析には、3ステート分割生存時間モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・axi-celは標準療法と比較し、質調整生存年数の増加(QALY:2.06)、総コストの増加(690万円[4万8,685.59ドル])と関連していた。 ・QALYあたりの費用対効果比の増加は、330万円(2万3,590.34ドル)であった。  著者らは「axi-celは、再発LBCLに対する2ndライン治療において標準療法に代わる、費用対効果の高い治療法である」とまとめている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Tsutsue S, et al. Future Oncol. 2024 Jun 5: 1-13. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38861283 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性FLに対するliso-cel〜TRANSCEND FL試験
再発・難治性FLに対するliso-cel〜TRANSCEND FL試験
公開日:2024年6月14日 Morschhauser F, et al. Nat Med. 2024 Jun 3. [Epub ahead of print]  再発・難治性の濾胞性リンパ腫(FL)患者や第1選択の免疫化学療法から24ヵ月以内に疾患が進行する、抗CD20抗体とアルキル化剤の両方に難治性(ダブルリフラクトリー)を示すなどの高リスクの疾患特性を有する患者に対する標準治療は確立されておらず、アウトカム不良であるため、アンメットニーズが存在する。キメラ抗原受容体T細胞療法(CAR-T細胞療法)は、2ライン以上の全身療法後の再発・難治性FLの選択肢の1つとして期待されるが、FLの疾患経過におけるCAR-T細胞療法の最適なタイミングについてのコンセンサスはなく、高リスク特性を有する患者の第2選択治療としてのデータもない。 フランス・リール大学のFranck Morschhauser氏らは、再発・難治性FL患者に対するCD19を標的とし、4-1BB共刺激ドメインを有するCAR-T細胞療法薬リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)を評価した第II相試験であるTRANSCEND FL試験の結果を報告した。Nature Medicine誌オンライン版2024年6月3日号の報告。  第II相TRANSCEND FL試験では、FL診断後6ヵ月以内に抗CD20抗体とアルキル化剤による治療を行った後、診断から24ヵ月以内の病勢進行が見られた2ライン以上の患者および/またはmGELF(modified Groupe d'Etude des Lymphomes Folliculaires)基準を満たした患者を対象に、liso-celの評価を行った。主要エンドポイントは、独立審査委員会が評価した全奏効率(ORR)、主な副次的エンドポイントは、完全奏効(CR)率などであった。 主な結果は以下のとおり。 ・データカットオフ時点で、liso-celが投与された患者は130例(フォローアップ期間中央値:18.9ヵ月)。 ・ORRおよびCRは達成された。 ・3ライン以降のFL患者101例では、ORRが97%(95%CI:91.6〜99.4)、CR率が94%(95%CI:87.5〜97.8)であった。 ・2ラインのFL患者23例では、ORRが96%(95%CI:78.1〜99.9)、すべての奏効患者がCRを達成した。 ・サイトカイン放出症候群は58%(グレード3以上:1%)、神経学的イベントは15%(グレード3以上:2%)で発生した。  著者らは「本試験により、高リスクの2ライン以上の再発・難治性FL患者に対するliso-celの有効性と安全性が実証された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Morschhauser F, et al. Nat Med. 2024 Jun 3. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38830991 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
血友病患者の血栓性心血管疾患の治療〜日本コンセンサス研究
血友病患者の血栓性心血管疾患の治療〜日本コンセンサス研究
公開日:2024年6月13日 Nagao A, et al. Haemophilia. 2024 May 23. [Epub ahead of print]  出血リスク軽減のために血液凝固因子補充療法を行なっている血友病患者では、長期にわたる抗凝固療法や抗血小板療法を必要とする心血管疾患(CVD)が問題となりうる。現在、CVDを伴う血友病患者のマネジメントに関する日本におけるガイドラインは存在しない。東京・荻窪病院の長尾 梓氏らは、日本における血友病患者のCVDマネジメントに関するエキスパートガイドの作成を試みた。Haemophilia誌オンライン版2024年5月23日号の報告。  4人の専門家(血友病専門医:2名、血栓症専門医:1名、心臓専門医:1名)で構成された運営委員会が、5つの主要テーマに関連する44のステートメントを特定した。4ポイントリッカート尺度および多肢選択式質問を組み合わせたオンラインアンケートを作成し、日本でCVDを伴う血友病患者のマネジメントに従事する専門家に、回答を依頼した。ステートメントに同意した回答者が75%以上の場合をコンセンサスが「高い」、90%以上の場合を「非常に高い」と定義した。 主な結果は以下のとおり。 ・リッカート尺度の質問では、コンセンサスが「非常に高い」が71%(29/41)、「高い」が17%(7/41)、合意に達しなかったが15%(6/41)であった。 ・3つの多肢選択式質問では、コンセンサスの特定ができなかった。 ・非弁膜性心房細動や心筋梗塞を有する場合など、特定の臨床状況をマネジメントするための特定の目標トラフ抗凝固因子レベルについて、合意が得られた。  著者らは「本コンセンサス研究の結果は、CVDリスクを有するまたはCVDを伴う血友病患者に対し、心臓専門医と血液専門医がマネジメントとするための枠組みを提供しており、推奨事項を実現することで、CVDを伴う血友病患者のアウトカムが改善される可能性がある」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Nagao A, et al. Haemophilia. 2024 May 23. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38783547 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
未治療で移植適応のないMM患者に対するISA+BLd療法〜国際オープンラベル第III相試験
未治療で移植適応のないMM患者に対するISA+BLd療法〜国際オープンラベル第III相試験
公開日:2024年6月12日 Facon T, et al. N Engl J Med. 2024 Jun 3. [Epub ahead of print]  ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(BLd療法)は、未治療MM患者に対する好ましい第1選択治療である。抗CD38モノクローナル抗体イサツキシマブ(ISA)のBLd療法への追加が、移植適応のないMM患者の病勢進行または死亡リスクの軽減に寄与するかは、不明である。フランス・リール大学のThierry Facon氏らは、未治療で移植適応のないMM患者に対するISA+BLd療法の有効性を評価するため、国際オープンラベル第III相試験を実施した。NEJM誌オンライン版2024年6月3日号の報告。  本研究は、国際オープンラベル第III相試験として実施した。対象は、未治療で移植適応のない18〜80歳のMM患者446例。対象患者は、ISA+BLd療法群とBLd療法群に3:2でランダムに割り付けた。有効性の主要エンドポイントは無増悪生存期間(PFS)とし、副次的エンドポイントには完全奏効(CR)またはそれ以上の奏効、CR患者における微小残存病変(MRD)陰性率を含めた。 主な結果は以下のとおり。 フォローアップ期間(中央値:59.7ヵ月)における60ヵ月時点でのPFS推定値は、ISA+BLd療法群で63.2%、BLd療法群で45.2%であった(病勢進行または死亡のハザード比:0.60、98.5%信頼区間:0.41〜0.88、p<0.001)。 ・CR以上の奏効を示した患者の割合は、ISA+BLd療法群の方が、BLd療法群よりも有意に高く(74.7% vs.64.1%、p=0.01)、MRD陰性でCRを示した患者の割合も同様であった(55.5% vs.40.9%、p=0.003)。 ・ISA+BLd療法レジメンでは、新たな安全性シグナルは観察されなかった。 ・治療中の重篤な有害事象発生率および治療中止につながる有害事象発生率は、両群間で同程度であった。  著者らは「移植適応のない18〜80歳の未治療MM患者の初期療法として、ISA+BLd療法は、BLd療法よりも効果的であった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Tagami N, et al. Int J Hematol. 2024 May 29. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38811413 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
MMに対するbelantamab+Bd療法 vs. DBd療法〜DREAMM-7試験
MMに対するbelantamab+Bd療法 vs. DBd療法〜DREAMM-7試験
公開日:2024年6月11日 Hungria V, et al. N Engl J Med. 2024 Jun 1. [Epub ahead of print]  belantamab mafodotinは、再発・難治性の多発性骨髄腫(MM)に対し、単剤療法で有効であり、この結果は、標準療法と併用したbelantamabの更なる評価を支持するものである。ブラジル・Clinica Sao GermanoのVania Hungria氏らは、1ライン以上の前治療歴がある再発・難治性MM患者を対象にbelantamabを併用したボルテゾミブ+デキサメタゾン(Bd療法)の有効性および安全性を評価した第III相オープンラベルランダム化試験(DREAMM-7試験)の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2024年6月1日号の報告。  対象は、1ライン以上の治療後に病勢が進行したMM患者494例。対象患者は、belantamab+Bd療法群またはダラツムマブ+ボルテゾミブ+デキサメタゾン(DBd療法)群にランダムに割り付け、両群の比較評価を行った。主要エンドポイントは、無増悪生存期間(PFS)とした。主要副次的エンドポイントは、全生存期間(OS)、奏効期間、微小残存病変(MRD)陰性化率とした。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者は、belantamab+Bd療法群243例、DBd療法群251例にランダムに割り付けられた。 ・フォローアップ期間中央値は28.2ヵ月(範囲:0.1〜40.0)。 ・PFS中央値は、belantamab+Bd療法群で36.6ヵ月(95%CI:28.4〜未達)、DBd療法群で13.4ヵ月(95%CI:11.1〜17.5)であった(病勢進行または死亡のハザード比:0.41、95%CI:0.31〜0.53、p<0.001)。 ・18ヵ月時点でのOS率は、belantamab+Bd療法群で84%、DBd療法群で73%であった。 ・境界内平均奏効期間の分析では、belantamab+Bd療法群はDBd療法群よりも優れていた(p<0.001)。 ・完全奏効(CR)以上のMRD陰性化率は、belantamab+Bd療法群で25%、DBd療法群で10%に認められた。 ・グレード3以上の有害事象の発生率は、belantamab+Bd療法群で95%、DBd療法群で78%であった。 ・眼の有害事象の発生率は、belantamab+Bd療法群で79%、DBd療法群で29%であった。belantamab+Bd療法群における眼の有害事象は、belantamabの用量調節により大部分は管理可能であった。  著者らは「belantamab+Bd療法は、DBd療法と比較し、1ライン以上の前治療歴がある再発・難治性MM患者に対しPFSに関して有意なベネフィットを示した。一方で、ほとんどの患者においてグレード3以上の有害事象が発現することには注意が必要である」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Hungria V, et al. N Engl J Med. 2024 Jun 1. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38828933 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
MMに対するbelantamab+Pd療法 vs. PBd療法〜DREAMM-8試験
MMに対するbelantamab+Pd療法 vs. PBd療法〜DREAMM-8試験
公開日:2024年6月10日 Dimopoulos MA, et al. N Engl J Med. 2024 Jun 2. [Epub ahead of print]  プロテアソーム阻害薬、免疫抑制薬、抗CD38抗体を組み合わせた3剤、4剤の併用療法により、新規多発性骨髄腫(MM)患者の生存期間は延長されたが、ほとんどの患者で再発が見られる。第1選択治療にレナリドミドを使用することで、初回再発時にレナリドミド抵抗性を有する患者が増加している。ギリシャ・National and Kapodistrian University of AthensのMeletios Athanasios Dimopoulos氏らは、レナリドミドを含むレジメンで治療後に再発または治療抵抗性を呈したMM患者を対象に、belantamab mafodotinを併用したポマリドミド+デキサメタゾン(Pd療法)の有効性および安全性を評価した第III相ランダム化オープンラベル試験(DREAMM-8試験)の結果を報告した。NEJM誌オンライン版2024年6月2日号の報告。  対象は、レナリドミドを含む1ライン以上の治療後に再発または治療抵抗性を呈したMM患者302例。対象患者は、belantamab+Pd療法群またはポマリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン(PBd療法)群にランダムに割り付け、両群の比較評価を行った。主要エンドポイントは、無増悪生存期間(PFS)とし、病勢進行および安全性も合わせて評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者は、belantamab+Pd療法群155例、PBd療法群147例にランダムに割り付けられた。 ・フォローアップ期間中央値は21.8ヵ月(範囲:0.1未満〜39.2)。 ・12ヵ月の推定PFS率は、belantamab+Pd療法群で71%(95%CI:63〜78)、PBd療法群で51%(95%CI: 42〜60)であった(病勢進行または死亡のハザード比:0.52、95%CI:0.37〜0.73、p<0.001)。 ・全生存期間(OS)は未達であった。 ・部分奏効(PR)以上の奏効率は、belantamab+Pd療法群で77%(95%CI:70〜84)、PBd療法群で72%(95%CI:64〜79)であった。完全奏効(CR)以上の奏効率は、belantamab+Pd療法群で40%(95%CI:32〜48)、PBd療法群で16%(95%CI:11〜23)であった。 ・グレード3以上の有害事象の発生率は、belantamab+Pd療法群で94%、PBd療法群で76%であった。 ・眼の有害事象の発生率は、belantamab+Pd療法群で89%(グレード3/4:43%)、PBd療法群で30%(グレード3/4:2%)であった。belantamab+Pd療法群における眼の有害事象は、belantamabの用量調節により管理可能であった。 ・眼の有害事象による治療中止率は、belantamab+Pd療法群で9%に見られたが、PBd療法群では1例もなかった。  著者らは「レナリドミド抵抗性の再発・難治性MM患者のPFSおよびより持続的な寛解に関して、belantamab+Pd療法はPBd療法よりも、有意に大きなベネフィットを示した。眼の有害事象については注意が必要だが、belantamabの用量調節により制御可能であった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Dimopoulos MA, et al. N Engl J Med. 2024 Jun 2. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38828951 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
慢性期CMLに対する一次治療薬としてのポナチニブ〜第II相長期フォローアップ試験
慢性期CMLに対する一次治療薬としてのポナチニブ〜第II相長期フォローアップ試験
公開日:2024年6月7日 Haddad FG, et al. Cancer. 2024 May 28. [Epub ahead of print]  ポナチニブは、フィラデルフィア染色体陽性(Ph+)白血病に強力な活性を有する第3世代のBCR-ABL1を標的とするチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)である。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのFadi G. Haddad氏らは、慢性期の慢性骨髄性白血病(CML)におけるポナチニブの第II相試験の長期フォローアップ調査の結果を報告した。Cancer誌オンライン版2024年5月28日号の報告。  慢性期CML患者を対象に、ポナチニブ30〜45mg/日投与を行った。主要エンドポイントは、6ヵ月の細胞遺伝学的完全奏効(CCyR)率とした。本試験は、心毒性リスクのためにTKIを変更する必要があったため、2014年6月に実施された。 主な結果は以下のとおり。 ・対象は、ポナチニブ治療を行った患者51例(平均用量:45mg/日)。 ・年齢中央値は48歳(範囲:21〜75歳)、ベースライン時に心血管合併症を有していた患者は30例(59%)であった。 ・治療期間の中央値は13ヵ月(範囲:2〜25ヵ月)。 ・毒性のためにポナチニブを中止した患者は14例(28%)、FDAの研究終了後の中止患者は36例(71%)、服薬コンプライアンス不良による中止患者が1例であった。 ・第2選択TKIとして最も選択された薬剤は、ダサチニブ(34例、66%)であった。 ・6ヵ月時点で評価可能であった46例のうち、CCyRが44例(96%)、分子遺伝学的大奏効(MMR)が37例(80%)、MR4達成が28例(61%)、MR4.5達成が21例(46%)であった。 ・6ヵ月間の累積達成率は、CCyRで96%、MMRで78%、MR4で50%、MR4.5で36%であった。 ・持続的なMR4達成率は、24ヵ月以上で67%、60ヵ月以上で51%の患者で認められた。 ・24ヵ月の無イベント生存期間(EFS)は97%であった。 ・フォローアップ終了後(中央値:128ヵ月)の10年全生存割合(OS)は90%であった。 ・重篤なグレード2〜3の心血管系有害事象は8例(16%)で認められ、治療中止は5例(10%)であった。  著者らは「ポナチニブは、新規の慢性期CMLに対して細胞遺伝学的および分子学的反応の高さが確認されたが、動脈閉塞性/血管閉塞性およびその他の重篤な毒性が、第1選択治療としての妨げとなっている」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Haddad FG, et al. Cancer. 2024 May 28. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38804723 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本人再発・難治性MMに対するISA-Pd療法〜国内市販後調査
日本人再発・難治性MMに対するISA-Pd療法〜国内市販後調査
公開日:2024年6月6日 Tagami N, et al. Int J Hematol. 2024 May 29. [Epub ahead of print]  日本のリアルワードにおける再発・難治性多発性骨髄腫(MM)に対するイサツキシマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン(ISA-Pd療法)の有効性および安全性を評価した国内市販後調査の結果について、サノフィ株式会社の田上 奈海氏らは、報告を行った。International Journal of Hematology誌オンライン版2024年5月29日号の報告。  対象は、2020年10月〜2021年10月、日本においてISA-Pd療法で治療を行った再発・難治性MM患者211例。ISA-Pd療法開始後、最大12ヵ月間または治療中止までフォローアップを実施した。薬物有害反応(ADR)、とくにInfusion reaction、骨髄抑制、感染症、心臓障害、グレード3以上のその他ADRおよび重篤なADRの発生率を評価した。最良総合効果(BOR)、全奏効率(ORR)も評価した。 主な結果は以下のとおり。   ・安全性解析対象患者は120例、ADRの発生率は57.5%であった。 ・ほとんどのADRは、血液学的であり、重篤なADRの発生率は28.3%であった。  骨髄抑制:46.7%(重篤なADR:19.2%)  Infusion reaction:18.3%(重篤なADR:6.7%)  感染症:11.7%(重篤なADR:8.3%)  重篤な心臓障害:1例  グレード3以上のその他ADR:3.3%(重篤なADR:1.7%) ・有効性解析対象患者は108例、最も多く見られたBOPは最良部分奏効(VGPR)で24.1%、ORRは51.9%であった。  著者らは「日本のリアルワールドにおける再発・難治性MMに対するISA-Pdの安全性および有効性が、本結果より裏付けられた」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Tagami N, et al. Int J Hematol. 2024 May 29. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38811413 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
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