「血液内科 Journal Check」の記事一覧

日本人Ph陽性ALL患者の移植後再発予防に有効なテーラーメイドTKI戦略
日本人Ph陽性ALL患者の移植後再発予防に有効なテーラーメイドTKI戦略
公開日:2025年1月27日 Nishiwaki S, et al. Int J Hematol. 2025 Jan 17. [Epub ahead of print]  フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)に対する同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)後の再発予防に、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の移植後投与は有望である。しかし、実臨床における使用やその有効性は、十分に明らかとなっていない。名古屋大学の西脇 聡史氏らは、日本においてallo-HSCTを実施したPh陽性ALL患者に対するTKIの使用状況および有用性を評価した。International Journal of Hematology誌オンライン版2025年1月17日号の報告。  2002〜22年にallo-HSCTを実施したPh陽性ALL患者を対象に、7施設による包括的な研究を行なった。 主な結果は以下のとおり。 ・完全寛解で移植を行った173例中49例(28%)で移植後にTKIが投与されていた。 ・内訳は、分子遺伝学的完全奏効(CMR)における予防的投与は7%、微小残存病変(MRD)陽性への対処として21%であった。 ・移植後、最初のTKI投与期間中央値は、予防的投与で13.7ヵ月、MRD陽性で4.0ヵ月。 ・予防的TKI投与は、allo-HSCTでCMRを達成していない患者に、とくに有用であると考えられ、予防的TKI投与を行わなかった患者と比較し、5年無再発生存期間(RFS)が向上する傾向が示唆された(100% vs.73%、p=0.11)。 ・予防的、非TKI投与、MRD陽性との間では、RFSの有意な差が認められた。 ・診断時に白血球数が1万5,000/μl未満およびその他の染色体異常のない患者では、TKI戦略とは無関係に、同等の5年RFSを示した(100% vs.85% vs.80%、p=0.87)。  著者らは「特定の低リスク患者におけるMRD陽性に対するTKI投与の潜在的な有効性が示唆され、リスク因子に基づくテーラーメイドTKI戦略の重要性が確認された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Nishiwaki S, et al. Int J Hematol. 2025 Jan 17. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39821010 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
CLL患者の肺炎リスクにベネトクラクスはどのくらい影響するか?
CLL患者の肺炎リスクにベネトクラクスはどのくらい影響するか?
公開日:2025年1月24日 Kalicinska E, et al. Cancers (Basel). 2024; 16: 4168.  慢性リンパ性白血病患者(CLL)は、臨床アウトカムに影響を及ぼす感染症リスクが高い。ポーランド・ヴロツワフ医科大学のElzbieta Kalicinska氏らは、CLL患者の実臨床におけるベネトクラクスレジメン治療による肺炎発生率、無イベント生存期間(EFS)のリスク因子、全生存期間(OS)の評価を行った。Cancers誌2024年12月13日号の報告。  医療機関8施設より322例が、本多施設共同研究に参加した。ベネトクラクスベースの治療中における肺炎の発生率およびOSをアウトカムとし、単変量解析および多変量解析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・最も一般的な合併症は、好中球減少(59%)であった。 ・ベネトクラクスベースのレジメンにより肺炎を発症した患者は66例(20%)、リツキシマブ+ベネトクラクス療法で50例(23%)、オビヌツズマブ+ベネトクラクス療法で13例(16%)であった(p=0.15)。 ・多変量解析では、EFSのリスク因子として、COPD/喘息(HR:2.08、95%CI:1.16〜3.74、p=0.014)、脾腫(HR:1.73、95%CI:1.08〜2.78、p=0.020)、クレアチニン高値(HR:2.13、95%CI:1.10〜4.11、p=0.030)、8g/dL未満の貧血(HR:3.58、95%CI:2.18〜5.89、p<0.001)が挙げられた。 ・リツキシマブ+ベネトクラクス療法で治療された再発・難治性CLL患者では、肺炎を伴う患者は、そうでない患者と比較し、OSが不良であった(p<0.001)。 ・オビヌツズマブ+ベネトクラクス療法で治療された患者では、肺炎を伴う患者とそうでない患者との間で、OS中央値に差は認められなかった(p=0.45)。  著者らは「実臨床におけるベネトクラクスレジメンによる肺炎発生率は、臨床試験の報告よりも高く、とくにリツキシマブ+ベネトクラクス療法で治療を行った再発・難治性CLL患者では、OSが不良であることが示唆された。なお、好中球減少は、肺炎のリスク因子ではなかった」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kalicinska E, et al. Cancers (Basel). 2024; 16: 4168.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39766067 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
IDH1変異陽性再発・難治性AMLに対するolutasidenib+アザシチジン療法〜第I/II相試験
IDH1変異陽性再発・難治性AMLに対するolutasidenib+アザシチジン療法〜第I/II相試験
公開日:2025年1月23日 Cortes JE, et al. J Hematol Oncol. 2025; 18: 7.  イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(IDH1)は、細胞質に存在し、クエン酸回路において、イソクエン酸からα-ケトグルタル酸(α-KG)への酸化的脱炭酸を触媒する代謝酵素である。IDH1遺伝子変異がある場合、DNAのメチル化が促進され、幹細胞や前駆細胞の正常な細胞分化の阻害や、腫瘍性形質転換の促進をもたらすと考えられている。米国・Georgia Cancer CenterのJorge E. Cortes氏らは、急性骨髄性白血病(AML)の6〜9%にみられるIDH1変異陽性の再発・難治性AMLに対するIDH1阻害薬olutasidenibとアザシチジンの併用療法の有効性および安全性を評価するため、第I/II相試験の複数のコホートから統合解析を行った。Journal of Hematology & Oncology誌2025年1月16日号の報告。  対象は、olutasidenib(1日2回150mg)とアザシチジン(標準治療)の併用療法を行った再発・難治性IDH1変異(R132)AML患者67例。第I/II相試験の複数のコホートからデータを抽出し、統合解析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・年齢中央値は66歳(範囲:28〜82歳)、男性の割合は54%。 ・2回以上の治療歴を有する患者は83%であり、その内訳は、脱メチル化薬が40%、IDH1阻害薬が31%(olutasidenib:24%)、造血幹細胞移植が10%。 ・細胞遺伝学的リスクは、中程度が72%、不良が18%、不明が10%。 ・完全寛解または血液学的完全寛解(CR/CRh)は、67例中21例(31%、95%CI:21〜44)で達成し、期間中央値は14.7ヵ月(95%CI:4.6〜未達)であった。 ・CR達成は18例(27%、95%CI:17〜39)、期間中央値は20.3ヵ月(95%CI:3.7〜未達)。 ・部分寛解以上の全奏効(OR)は34例(51%、95%CI:38〜63)で達成した。 ・全生存期間中央値は12.9ヵ月(95%CI:18.7〜19.3)。 ・olutasidenibによる前治療歴を有する患者を除いたサブセット解析では、CR/CRhは51例中19例(37%、95%CI:24〜52)、CRは16例(31%、95%CI:19〜46)、ORは30例(59%、95%CI:44〜72)で達成した。 ・CR/CRhを達成し、ベースライン時に輸血依存であった患者における輸血非依存達成率は、赤血球64%(11例中7例)、血小板57%(7例中4例)。 ・主なグレードIII/IVの有害事象(20%以上で発生)は、血小板減少(37%)、赤血球減少(25%)、好中球減少(24%)。 ・IDH分化症候群の発生は、6例(9%)で認められた。 ・有害事象により治療を中止した患者は4例(6%)であった。  著者らは「さまざまな治療歴を有する再発・難治性AMLに対するolutasidenib+アザシチジン併用療法は、高い奏効率と持続的な寛解をもたらし、副作用プロファイルは許容範囲内であることが確認され、IDH1変異陽性AMLに対する新たな治療選択肢となりうる可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Cortes JE, et al. J Hematol Oncol. 2025; 18: 7.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39819505 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性PCNSLにBTK阻害薬ザヌブルチニブレジメンが有用
再発・難治性PCNSLにBTK阻害薬ザヌブルチニブレジメンが有用
公開日:2025年1月22日 Wang Y, et al. Leuk Lymphoma. 2025 Jan 17. [Epub ahead of print]  再発・難治性中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は、予後不良リスクが高く、治療選択肢も限られている。北京・Beijing Tiantan HospitalのYali Wang氏らは、BTK阻害薬ザヌブルチニブを用いたレジメンで治療を行った再発・難治性PCNSL患者の治療アウトカムを検討し、報告した。Leukemia & Lymphoma誌オンライン版2025年1月17日号の報告。  対象は、自施設においてザヌブルチニブレジメンで治療を行った再発・難治性PCNSL患者38例。 主な結果は以下のとおり。 ・全奏効(OR)率は76.3%、完全奏効(CR)率は47.4%、病勢コントロール率は92.1%。 ・無増悪生存期間(PFS)中央値は31.0ヵ月、全生存期間中央値は未達であった。 ・Cox比例ハザードモデルによる単変量解析では、PFS延長の独立した因子は、OR(非奏効と比較したハザード比[HR]:0.18、95%CI:0.07〜0.48、p=0.001)、ザヌブルチニブ長期投与(6ヵ月以上 vs.2〜5ヵ月のHR:0.20、95%CI:0.06〜0.63、p=0.006)であることが明らかとなった。 ・log-rank検定では、ザヌブルチニブベースの治療後に腫瘍遺伝子変異量が高い患者(TMB:14.75muts/Mb以上)でPFS延長が認められた(p=0.016)。  著者らは「実臨床における再発・難治性PCNSLに対するザヌブルチニブレジメンの有効性および許容可能な安全性が確認された。また、PFS延長には、ザヌブルチニブ長期投与が関連している可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Wang Y, et al. Leuk Lymphoma. 2025 Jan 17. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39819306 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性多発性骨髄腫治療、2つの二重特異性抗体併用療法時代は来るか/NEJM
再発・難治性多発性骨髄腫治療、2つの二重特異性抗体併用療法時代は来るか/NEJM
公開日:2025年1月21日 Cohen YC, et al. N Engl J Med. 2025; 392: 138-149.  GPRC5DとCD3に対する二重特異性抗体talquetamabおよびBCMAとCD3に対する二重特異性抗体teclistamabは、 トリプルクラスの標準的な前治療歴を有する再発または難治性多発性骨髄腫(MM)の治療薬として承認されている。イスラエル・テルアビブ・ソウラスキー医療センターのYael C. Cohen氏らは、再発・難治性MM患者に対するtalquetamab+teclistamab併用療法の第Ib-II相試験を実施し、その結果を報告した。NEJM誌2025年1月9日号の報告。  第I相の用量漸増試験では、5つの用量について評価した。その結果を踏まえ、第II相試験では、talquetamab 0.8mg/kg+teclistamab 3.0mg/kgの隔週投与が推奨レジメンとして選択された。第Ib-II相試験の主要な目的は、有害事象と用量制限毒性の評価とした。 主な結果は以下のとおり。 ・94例が治療を受け、そのうち44例に対し推奨された第II相レジメンを用いた。 ・フォローアップ期間中央値は20.3ヵ月。 ・用量制限毒性は3例に認められた(第II相レジメンにおいてグレードIVの血小板減少1例を含む)。 ・すべての用量レジメンで最も多くみられた有害事象は、サイトカイン放出症候群(CRS)、好中球減少、味覚の変化、皮疹を除く皮膚障害。 ・グレードIII/IVの有害事象は、96%にみられ、血液学的イベントが最も多かった。 ・グレードIII/IVの感染症は、64%に発生した。 ・奏効率は、第II相レジメンで80%(髄外病変を有する患者では61%)、すべての用量レジメンで78%であった。 ・18ヵ月後、奏効が持続していた患者の割合は、第II相レジメンで86%(髄外病変を有する患者では82%)、すべての用量レジメンで77%であった。  著者らは「talquetamab+teclistamab併用療法は、グレードIII/IVの感染症の発現率がそれぞれの単剤療法と比較し高率であったが、すべての用量において高い奏効が認められ、推奨された第II相レジメンによる持続的な奏効が示された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Cohen YC, et al. N Engl J Med. 2025; 392: 138-149.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39778168 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ASCT不適格の再発・難治性DLBCL、エプコリタマブ+GemOx療法が有効/Blood
ASCT不適格の再発・難治性DLBCL、エプコリタマブ+GemOx療法が有効/Blood
公開日:2025年1月20日 Brody JD, et al. Blood. 2025 Jan 10. [Epub ahead of print]  再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の予後は不良である。標準的な救援療法の1つであるリツキシマブ+ゲムシタビン+オキサリプラチン併用療法(R-GemOx療法)による完全奏効(CR)率は約30%、全生存期間(OS)中央値は10〜13ヵ月となっている。難治性ではさらに不良であり、CR率は7%、OS中央値は6ヵ月である。2ライン以上の治療歴を有する再発・難治性DLBCLに承認されているCD30およびCD20二重特異性抗体であるエプコリタマブは、さまざまな薬剤との組み合わせにより良好な安全性および有効性が示されている。米国・マウントサイナイ医科大学のJoshua D. Brody氏らは、自家造血幹細胞移植(ASCT)の適応のないまたはASCT治療不成功の再発・難治性DLBCL患者を対象にエプコリタマブ+GemOx療法の有用性を評価するため、第Ib/II相EPCORE NHL-2試験を実施し、その結果を報告した。Blood誌オンライン版2025年1月10日号の報告。  対象は、ASCTの適応のないまたはASCT治療不成功の再発・難治性DLBCL患者103例(2023年12月15日現在)。病勢進行または許容できない毒性が認められるまで3段階のステップアップ用量レジメンによりエプコリタマブ48mgまで増量し、GemOx(q2w for 8 doses)投与した。主要エンドポイントは、全奏効率(ORR)とした。 主な結果は以下のとおり。 ・フォローアップ期間中央値は13.2ヵ月。 ・対象患者の年齢中央値は72歳。 ・2ライン以上の治療歴が62%、CAR-T細胞療法治療歴が28%、primary refractory diseaseが52%、最終治療で難治性が70%。 ・ORRは85%、CR率は61%であった。 ・CR期間中央値は23.6ヵ月、OS期間中央値は21.6ヵ月。 ・主な治療中の有害事象は、血球減少、サイトカイン放出症候群(CRS)であった。 ・CRSは、時期が予測可能であり、主に低グレード(全体:52%、グレードIII:1%)で、治療中止に至ることはなかった。  著者らは「ASCTの適応のないまたはASCT治療不成功の再発・難治性DLBCLに対するエプコリタマブ+GemOx療法は、良好かつ持続的な奏効を示し、長期アウトカムの改善が認められた」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Brody JD, et al. Blood. 2025 Jan 10. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39792928 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
LEN抵抗性多発性骨髄腫に対するCAR-T細胞療法 vs.標準療法〜第III相試験
LEN抵抗性多発性骨髄腫に対するCAR-T細胞療法 vs.標準療法〜第III相試験
公開日:2025年1月17日 Mina R, et al. Lancet Haematol. 2025; 12: e45-e56.  レナリドミド(LEN)抵抗性再発多発性骨髄腫(MM)に対するシルタカブタゲン オートルユーセル(cilta-cel)によるCAR-T 細胞療法は、標準療法と比較し、主要エンドポイントである無増悪生存期間(PFS)の有意な改善を示すことが、CARTITUDE-4試験で報告された。イタリア・トリノ大学のRoberto Mina氏らは、本試験における患者報告アウトカムについて報告した。The Lancet. Haematolog誌2025年1月号の報告。  現在進行中の第III相オープンラベルCARTITUDE-4試験では、米国、ヨーロッパ、アジア、オーストラリアの81施設の患者を対象に、cilta-cel群(0.75 x106 CAR-T cells/kg)または標準療法群(DPd療法[ダラツムマブ+ポマリドミド+デキサメタゾン]、PBd療法[ポマリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン])にランダムに割り付けた。対象患者は、プロテアソーム阻害薬および免疫調整薬を含む1〜3種類の治療歴を有するLEN抵抗性MM患者(PS:0〜1)。本件で報告する副次的エンドポイントには、持続的な症状悪化までの期間(MySIm-Q:主要副次的エンドポイント)、ITT集団におけるEORTC QLQ-C30およびEQ-5D-5LによるQOLの変化を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・2020年7月10日〜2021年11月17日までにスクリーニングを受けた516例のうち419例がランダム化された(cilta-cel群:208例、標準療法群:211例、フォローアップ期間中央値:15.9ヵ月[IQR:12.4〜17.8]、年齢中央値:61歳)。 ・ベースライン評価を完了した患者は、cilta-cel群で208例中191例(92%)、標準療法群で209例中190例(91%)。 ・ベースライン後のMySIm-Qのコンプライアンスは、cilta-cel群で70〜81%、標準療法群で79〜89%。 ・MySIm-Qによる持続的な症状悪化までの期間中央値は、cilta-cel群で23.7ヵ月、標準療法群で18.9ヵ月であった(ハザード比:0.42、95%CI:0.26〜0.68)。 ・12ヵ月間のEORTC QLQ-C30 GHSスコアの平均変化は、cilta-cel群で+10.1ポイント(95%CI:7.0〜13.1)、標準療法群で−1.5ポイント(95%CI:−5.3〜2.3)。 ・12ヵ月間のEQ-5D-5L VASスコアの平均変化は、cilta-cel群で+8.0ポイント(95%CI:5.2〜10.7)、標準療法群で+1.4ポイント(95%CI:−1.9〜4.7)。 ・GHSおよびVASスコアにおける臨床的に意味のある改善率は、標準療法群よりもcilta-cel群の方が高かった。  著者らは「cilta-celによる健康関連QOLの改善および症状悪化の遅延は、LEN抵抗性MMにおける臨床的な有効性を裏付けている」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Mina R, et al. Lancet Haematol. 2025; 12: e45-e56.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39756844 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性AMLに対するCD33標的CAR-NK細胞療法の可能性〜前臨床/第I相試験
再発・難治性AMLに対するCD33標的CAR-NK細胞療法の可能性〜前臨床/第I相試験
公開日:2025年1月16日 Huang R, et al. Exp Hematol Oncol. 2025; 14: 1.  再発・難治性急性骨髄性白血病(AML)は、効果的な治療法が不十分なため、依然として予後が不良である。CAR-T細胞療法は、急性リンパ性白血病(ALL)および悪性リンパ腫に対して有効性が示されているが、再発・難治性AMLに対しては、オフターゲット効果による重度の骨髄抑制が懸念されるため制限されている。一方、CAR-NK細胞は、抗腫瘍効果が期待できるだけでなく、安全性および普遍性の向上も認められている。中国・陸軍軍医大学のRuihao Huang氏らは、造血幹細胞への重度の副作用を軽減した上で、AML細胞を特異的に排除する、CD33を標的としNK細胞をモディファイした新たなCAR構造を開発した。Experimental Hematology & Oncology誌2025年1月2日号の報告。  CD33標的ドメインは、CAR-T細胞により選択し、その後CARコンストラクトはレトロウイルスベクターを介して臍帯血由来のNK細胞に導入した。前臨床における有効性および安全性の研究は、in vitroおよびin vivoの両方で実施した。対象は、前処置レジメン後、抗CD33 CAR-NK細胞の注入を1回以上実施した18〜65歳の再発・難治性AML患者10例。CAR-NK細胞注入後の奏効率、治療関連副作用および長期的な有効性を評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・CD33配列は、in vitroおよびin vivoの両方で実施したCAR-T細胞研究における抗腫瘍効果と安全性に基づき選択した。 ・CD33 CAR-NK細胞は、CD33 CAR-T細胞と同等の有効性を示したが、造血幹細胞に対する毒性は限定的であった。 ・平均5回の治療歴を有する患者10例は、有効性評価を完了した(範囲:3〜8)。 ・骨髄抑制を除き、グレードIII〜IVの有害事象は認められなかった。また、骨髄抑制は、1ヵ月に軽減が認められた。 ・CAR-NK細胞注入後、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)または移植片対宿主病(GVHD)は認められなかった。 ・1例でグレードIIのサイトカイン放出症候群(CRS)がみられ、持続帝な発熱を呈した。 ・28日までに、10例中6例において、微小残存病変(MRD)陰性の完全寛解(CR)を達成した。  著者らは「再発・難治性AMLに対するCD33 CAR-NK細胞療法の、主要な有効性および安全性が確認された。さらに有効性に関するデータを収集するため、今後は、サンプル数の拡大およびフォローアップ期間の延長が求められる」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Huang R, et al. Exp Hematol Oncol. 2025; 14: 1.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39748428 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
高腫瘍量初発FLに対するオビヌツズマブ+BEN、日本の実臨床における有用性は
高腫瘍量初発FLに対するオビヌツズマブ+BEN、日本の実臨床における有用性は
公開日:2025年1月15日 Nagata H, et al. Int J Clin Oncol. 2025 Jan 7. [Epub ahead of print]  高腫瘍量の初発濾胞性リンパ腫(FL)では、20年以上にわたりR-CHOP療法が標準治療の中心となっていた。日本では、オビヌツズマブ+ベンダムスチン(BEN)併用療法が2018年に承認され、現在では標準治療の1つとなっている。しかし、日常臨床におけるオビヌツズマブ+BENの長期的な有効性および安全性は、これまで十分に評価されていなかった。京都府立医科大学の長田 浩明氏らは、京都血液臨床研究グループ(KOTOSG)において、高腫瘍量初発FLに対するオビヌツズマブ+BENの実臨床アウトカムを評価するため、多施設共同レトロスペクティブ研究を実施した。International Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年1月7日号の報告。  対象は、KOTOSGにおいて2018〜21年にオビヌツズマブ+BENによる1stライン治療を行った高腫瘍量の初発FL患者53例。すべての患者に、2年以上のフォローアップ期間を設けた。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者の年齢中央値は67歳。 ・濾胞性リンパ腫国際予後指標(FLIPI)に基づく分類では、60.4%が高リスク群に分類された。 ・オビヌツズマブ+BEN導入療法後の全奏効率(OR)は98%、完全奏効率(CR)は83%。 ・フォローアップ期間中央値は38.5ヵ月、3年無増悪生存期間(PFS)は77.3%、3年全生存率(OS)は91.2%。 ・グレードIII〜IVの血液学的有害事象(AE)は一般的であり、好中球減少(58.5%)、リンパ球減少(98.1%)が含まれた。 ・非血液学的AEは、肺感染症、新型コロナウイルス感染症、敗血症などの感染症が含まれ、そのうち2例(3.8%)は死亡した。 ・傾向スコアマッチング解析では、2001〜19年にKOTOSGにおいてオビヌツズマブ+BEN治療を行った患者46例とR-CHOP療法を行った患者46例におけるPFSに、有意な差は認められなかった。  著者らは「高齢患者が対象となる実臨床においては、患者の背景や病状に基づき慎重な治療選択が求められることが浮き彫りとなった」とまとめている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Nagata H, et al. Int J Clin Oncol. 2025 Jan 7. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39776016 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性CLLに最も有効なレジメンとは〜ネットワークメタ解析
再発・難治性CLLに最も有効なレジメンとは〜ネットワークメタ解析
公開日:2025年1月14日 Kim J, et al. Blood Res. 2025; 60: 1.  再発・難治性慢性リンパ性白血病(CLL)に対する治療の相対的な有効性を評価するため、韓国・仁荷大学のJinchul Kim氏らは、とくに17p欠失もしくはTP53変異を有する患者に焦点を当て、ネットワークメタ解析を実施した。Blood Research誌2025年1月2日号の報告。  2023年12月までに公表されたすべてのランダム化比較試験(RCT)をPubMed、EMBASE、Cochraneデータベースおよび会議録をシステマティックに検索し、文献レビューを実施した。ベイジアンネットワークメタ解析を実施し、無増悪生存期間(PFS)のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を推定した。含まれた治療レジメンのランク付けを行った。 主な結果は以下のとおり。 ・メタ解析には、13の治療レジメンを対象とした12件の試験(4,437例)を含めた。 ・全体として、再発・難治性CLLに対して最も効果的な治療レジメンは、ベネトクラクス+リツキシマブおよびザヌブルチニブであり、PFSのHRはイブルチニブと比較し最も低く、含まれたすべてのレジメンの中で最上位(SUCRA値:90%未満)にランク付けされた。 【ベネトクラクス+リツキシマブ】PFSのHR:0.62(95%CI:0.32〜1.20) 【ザヌブルチニブ】PFSのHR:0.65(95%CI:0.49〜0.86) ・17p欠失もしくはTP53変異を有する患者では、ザヌブルチニブが最も良好な有効性を示し、SUCRA値も最も高かった(97%)。イブルチニブと比較したHRは0.52(95%CI:0.31〜0.88)。 ・17p欠失もしくはTP53変異のない患者では、ベネトクラクス+リツキシマブが最も効果的であり、SUCRA値は94%であった。イブルチニブと比較したHRは0.49(95%CI:0.26〜0.94)。  著者らは「本結果より、再発・難治性CLLに対するベネトクラクス+リツキシマブとザヌブルチニブの優れた有効性が示され、変異の有無に応じて両レジメンを使い分ける必要性が改めて確認された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kim J, et al. Blood Res. 2025; 60: 1.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39747710 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
CAR-T細胞療法後の再発多発性骨髄腫に対する二重特異性抗体、その有効性は
CAR-T細胞療法後の再発多発性骨髄腫に対する二重特異性抗体、その有効性は
公開日:2025年1月10日 Merz M, et al. Blood Cancer J. 2024; 14: 214.  再発・難治性多発性骨髄腫(MM)に対するCAR-T細胞療法は、良好な治療アウトカムをもたらしたが、依然として多くの患者は最終的に再発する。BCMAを標的としたCAR-T細胞療法後の再発に対する救援療法に関しては、利用可能なデータが限られている。ドイツ・ライプツィヒ大学のMaximilian Merz氏らは、再発・難治性MM患者におけるCAR-T細胞療法後の再発アウトカムに対する救援療法の影響を分析した。Blood Cancer Journal誌2024年12月5日号の報告。  対象は、国際コホートに登録された再発・難治性MM患者139例(ide-cal:139例、cilta-cel:9例)。救援療法として、talquetamab(28例)、teclistamab(37例)、免疫調整薬(IMiDs)/プロテアソーム阻害薬/CD38モノクローナル抗体の併用(43例)、その他(31例)が選択された。 主な結果は以下のとおり。 ・CAR-T細胞療法後の再発までの期間中央値は5ヵ月であり、再発時に髄外病変が認められた患者(53%)のアウトカムは不良であった(p=0.005)。 ・救援療法後の全奏効率(OR)および完全奏効率(CR)は次のとおりであり、二重特異性抗体の方が良好な反応が認められた(p<0.001)。 【talquetamab】OR:79%、CR:39% 【teclistamab】OR:64%、CR:32% 【IMiDs/プロテアソーム阻害薬/CD38モノクローナル抗体の併用】OR:30%、CR:0% 【その他】OR:26%、CR:3% ・奏効期間および生存期間中央値は、二重特異性抗体により有意な改善が認められた(各々:p<0.001)。 ・二重特異性抗体は、早期再発および髄外病変に関連する予後不良を改善し、多変量解析においても生存率改善の独立した予測因子であることが示唆された。  著者らは「再発・難治性MMにおけるCAR-T細胞療法後の再発に対する二重特異性抗体による治療は、標準治療と比較し、有効であることが示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Merz M, et al. Blood Cancer J. 2024; 14: 214.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39632797 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性AMLの低強度移植前処置、FM140 vs.FBM110〜EBMTレジストリ研究
再発・難治性AMLの低強度移植前処置、FM140 vs.FBM110〜EBMTレジストリ研究
公開日:2025年1月9日 Duque-Afonso J, et al. Bone Marrow Transplant. 2024 Dec 19. [Epub ahead of print]  再発・難治性急性骨髄性白血病(AML)は、予後不良である。同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)は、救援療法として高頻度に用いられる。低強度移植前処置は、毒性を増加させることなく、白血病の負担軽減を目的に開発されたプロトコルである。ドイツ・フライブルク大学のJesus Duque-Afonso氏らは、再発・難治性AMLに対する2つの低強度移植前処置の比較を行った。Bone Marrow Transplantation誌オンライン版2024年12月19日号の報告。  対象は、欧州骨髄移植学会(EBMT)急性白血病ワーキングパーティレジストリより抽出したallo-HSCT前の再発・難治性AML成人患者293例。フルダラビン150mg/m2+メルファラン140mg/m2(FM140群)118例とフルダラビン150mg/m2+carmustine(BCNU)300〜400mg/m2+メルファラン110mg/m2(FBM110群)175例の比較を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・年齢(FM140群:59.5歳、FBM110群:65.1歳、p<0.001)、T細胞除去(TCD)による移植片対宿主病(GVHD)予防(FM140群:39%、FBM110群:75%、p<0.001)など、両群間でいくつかの違いが認められた。 ・FM140群とFBM100群との間で、全生存率(OS)、無増悪生存期間(PFS)、非再発死亡率、再発率に差は認められなかった。 【2年OS】FM140群:39.3%、FBM110群:45.7%(p=0.58) 【2年PFS】FM140群:36.1%、FBM110群:37.3%(p=0.69) 【2年非再発死亡率】FM140群:15.3%、FBM110群:25.7%(p=0.10) 【2年再発率】FM140群:48.6%、FBM110群:37.0%(p=0.70)  著者らは「年齢やGVHD予防に違いがあるにも関わらず、FBM110による移植前処置を行ったAML患者は、FM140と比較し、同様のアウトカムが示された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Duque-Afonso J, et al. Bone Marrow Transplant. 2024 Dec 19. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39702670 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
/ 20