「血液内科 Journal Check」の記事一覧

CLLの第1選択治療、30レジメンを比較〜ネットワークメタ解析
CLLの第1選択治療、30レジメンを比較〜ネットワークメタ解析
公開日:2024年10月18日 Wen T, et al. J Natl Cancer Inst. 2024 Oct 11. [Epub ahead of print]  慢性リンパ性白血病(CLL)の治療戦略は、化学療法や免疫化学療法からchemo-freeレジメン時代に移行した。さまざまな治療法による直接的および間接的な比較は、頻度論的ネットワークメタ分析により可能となった。天津医科大学腫瘤医院のTingyu Wen氏らは、CLLの第1選択治療に関するネットワークメタ解析を実施した。Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版2024年10月11日号の報告。  対象は、CLLに対する第1選択治療を評価したランダム化比較試験。アウトカムは、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、検出可能な微小残存病変(MRD)、客観的奏効率、有害事象とした。類似特性を有する研究についても、年齢、併存疾患、免疫グロブリン重鎖可変領域遺伝子(IGHV)変異、細胞遺伝学的異常により層別化を行い、サブグループ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・30研究(1万2,818例)が適格基準を満たし、30種類の治療法を分析対象に含めた。 【有効性】 ・アカラブルチニブは、65歳以上またはIGHV変異なしの患者において、イブルチニブおよびオビヌツズマブ+ベネトクラクスよりもPFSが優れていることが示唆された。 ・併存疾患を有する若年患者では、アカラブルチニブ+オビヌツズマブは、イブルチニブ+オビヌツズマブ、イブルチニブ+ベネトクラクス、オビヌツズマブ+ベネトクラクスよりも優れたPFSが認められた。 ・併存疾患を有する高齢者では、アカラブルチニブ、アカラブルチニブ+オビヌツズマブは、オビヌツズマブ+ベネトクラクスと比較し、いずれも有意な差は認められなかった。 ・併存疾患のない患者では、MRDに基づくイブルチニブ+ベネトクラクスが、オビヌツズマブ+ベネトクラクスよりも有用であった。 ・IGHV変異ありまたはdel(17p)/TP53変異ありの患者では、イブルチニブ+オビヌツズマブは、オビヌツズマブ+ベネトクラクスよりも、PFSの延長が認められた。 【安全性】 ・イブルチニブ+ベネトクラクス、イブルチニブ+オビヌツズマブは、オビヌツズマブ+ベネトクラクスよりも、好中球減少リスクが低かった。 ・イブルチニブ+ベネトクラクスは、アカラブルチニブ、アカラブルチニブ+オビヌツズマブよりも、感染症リスクが低かった。 ・アカラブルチニブ+オビヌツズマブは、イブルチニブ+ベネトクラクスよりも下痢が少なかったが、イブルチニブ+オビヌツズマブ、オビヌツズマブ+ベネトクラクスよりも頭痛が多かった。 ・オビヌツズマブ+ベネトクラクスは、イブルチニブ+オビヌツズマブよりも高血圧が少なかった。 ・イブルチニブ+ベネトクラクスは、アカラブルチニブ+オビヌツズマブよりも関節痛が少なかった。 ・二次性悪性腫瘍のいずれのグレードにおいても、イブルチニブ+ベネトクラクス、オビヌツズマブ+ベネトクラクスは、アカラブルチニブ+オビヌツズマブより低かった。  著者らは「本研究は、年齢、併存疾患、IGHV変異、細胞遺伝学的異常に基づいてカスタマイズされたchemo-freeレジメンの選択、さまざまな奏効スペクトラムを考慮した治療アウトカムの最適化に役立つであろう」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Wen T, et al. J Natl Cancer Inst. 2024 Oct 11. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39392788 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性AMLに対するベネトクラクス併用療法、より良い組み合わせは?〜メタ解析
再発・難治性AMLに対するベネトクラクス併用療法、より良い組み合わせは?〜メタ解析
公開日:2024年10月17日 Jiao N, et al. BMC Cancer. 2024; 24: 1271.  再発・難治性の急性骨髄性白血病(AML)における患者の臨床アウトカム改善のために今後の研究の方向性、臨床上の意思決定、治療戦略の継続的な進化などを目指し、中国・Zibo Traditional Chinese Medicine HospitalのNing Jiao氏らは、ベネトクラクス併用療法に関するシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMC Cancer誌2024年10月13日号の報告。  2023年11月までに公表された再発・難治性AMLに対するベネトクラクス併用療法に関する英語の研究を、PubMed、Embase、Cochraneデータベースより、システマティックに検索した。重複した研究、不完全な研究、動物実験、文献レビュー、システマテック研究などは対象より除外した。メタ解析には、STATA 15.1を用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・特定された58研究のうち、7研究をメタ解析に含めた。 ・プールされた完全寛解(CR)率は15.4%、複合完全寛解(CRc)率は35.7%、部分寛解(PR)率は2.6%、非寛解(NR)率は24.4%であった。 ・CRc患者における微小残存病変(MRD-CRc)率は39.4%、形質学的無白血病状態(MLFS)率は10.3%。 ・主な有害事象の発生率は、下痢10.0%、悪心4.3%、嘔吐2.6%、低カリウム血症16.4%、低マグネシウム血症0.8%、食欲減退4.2%、疲労9.1%、発熱性好中球減少39.6%、血小板減少28.4%。 ・併用薬に基づくカテゴリ分析では、CR率とCRc率に違いが認められた。 ・ベネトクラクスと併用した際のCR率およびCRc率は、アザシチジンとの併用が最も優れており、idasanutlinは中程度、mivebresibは最も低かった。 【ベネトクラクス+アザシチジン】CR率:31.3%、CRc率:62.7% 【ベネトクラクス+idasanutlin】CR率:6.1%、CRc率:26.5% 【ベネトクラクス+mivebresib】CR率:3.3%、CRc率:8.0%  著者らは「ベネトクラクスとアザシチジンの併用療法は、再発・難治性AMLの良好な治療反応を達成する上で有望であるが、安全性プロファイルの包括的な評価が不可欠である。とくに発熱性好中球減少、血小板減少には注意が必要である」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Jiao N, et al. BMC Cancer. 2024; 24: 1271.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39396935 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ダブルヒット/トリプルヒットリンパ腫、CODOX-M/IVAC+R vs. DA-EPOCH-R
ダブルヒット/トリプルヒットリンパ腫、CODOX-M/IVAC+R vs. DA-EPOCH-R
公開日:2024年10月16日 Atallah-Yunes SA, et al. Haematologica. 2024 Oct 10. [Epub ahead of print]  強化免疫化学療法レジメンは、R-CHOPと比較し、生存率の改善が認められないにも関わらず、ダブルヒット/トリプルヒットリンパ腫(DHL/THL)の若年患者によく用いられる。CODOX-M/IVAC+Rに関するレトロスペクティブな報告では、良好な結果が得られているが、本レジメンに耐えうるのは若くて健康な患者のみであるため、選択バイアスの影響を受けていると考えられる。米国・メイヨークリニックのSuheil Albert Atallah-Yunes氏らは、60歳以下のDHL/THL患者におけるCODOX-M/IVAC+RとDA-EPOCH-Rによるアウトカムの違いを調査するため、レトロスペクティブ分析を実施した。Haematologica誌オンライン版2024年10月10日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者として113例(CODOX-M/IVAC+R群:49例、DA-EPOCH-R群:64例)が特定された。 ・完全寛解(CR)率は、CODOX-M/IVAC+R群で80%(39例)、DA-EPOCH-R群で58%(37例)であった。 ・フォローアップ期間中央値は、CODOX-M/IVAC+R群で5.3年、DA-EPOCH-R群で3.3年。 ・CODOX-M/IVAC+R群は、単変量解析(HR:0.54、95%CI:0.31〜0.97)および年齢、BCL転座(BCL2、BCL6、両方)、IPIスコア、ASCT実施で調整した多変量解析(aHR:0.52、95%CI:0.29〜0.93)において、優れた無イベント生存期間(EFS)を示したが、全生存期間(OS)には有意な影響が認められなかった(aHR:0.92、95%CI:0.46〜1.84)。 ・1、2、5年EFSは、CODOX-M/IVAC+R群では68.3%、64.1%、61.5%であったのに対し、DA-EPOCH-R群では52.4%、48.9%、39.5%であった。 ・primary refractory diseaseまたは再発の発生率は、CODOX-M/IVAC+R群で33%(16例)、DA-EPOCH-R群で54%(35例)、OS中央値は、CODOX-M/IVAC+R群で10.3ヵ月、DA-EPOCH-R群で33.7ヵ月であり、再発・難治性ではCODOX-M/IVAC+Rはアウトカム不良であることが示唆された。 ・DA-EPOCH-R群では、より多くの患者がその後、救援療法を行うことが可能であった。 ・神経毒性により死亡した患者は認められず、中枢神経系の再発および治療関連造血器腫瘍の再発の割合は、両群間で同様であった。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Atallah-Yunes SA, et al. Haematologica. 2024 Oct 10. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39385736 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
Ph陽性ALLに対するアシミニブ+ダサチニブ+プレドニゾロン〜第I相試験/Blood
Ph陽性ALLに対するアシミニブ+ダサチニブ+プレドニゾロン〜第I相試験/Blood
公開日:2024年10月15日 Luskin MR, et al. Blood. 2024 Oct 7. [Epub ahead of print]  ダサチニブは、フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)の治療薬として承認されているが、耐性を生じる患者も少なくない。ダサチニブとSTAMP標的BCR-ABL特異的アロステリック阻害薬アシミニブの併用は、奏効率を高め、ダサチニブ耐性クローンの発現を抑制する可能性がある。米国・ダナ・ファーバー癌研究所のMarlise R. Luskin氏らは、Ph陽性ALLおよびリンパ芽球性急性転化慢性骨髄性白血病(CML-LBC)患者を対象に、アシミニブ+ダサチニブ+プレドニゾロンの最大耐量(MTD)を決定するため、第I相試験を実施した。Blood誌オンライン版2024年10月7日号の報告。  対象は、Ph陽性ALL患者22例(p190:16例、p210:6例)およびCML-LBC患者2例を含む成人患者24例。ダサチニブ140mg/日、プレドニゾロン60mg/m2/日にアシミニブの1日用量を段階的に増量し、MTGを決定した。28日間の導入療法後、ダサチニブおよびアシミニブは、無期限または造血幹細胞移植まで継続した。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者の年齢中央値は64.5歳(範囲:33〜85、65歳以上:50%)。 ・ダサチニブ、プレドニゾロンと併用する際のアシミニブの第II相試験における用量は、80mg/日に決定した。 ・160mg/日での用量制限毒性(DLT)は、無症候性(症状、膵炎と伴わない)の膵酵素上昇(グレード3)であった。 ・血管閉塞性イベントは認められなかった。 ・初発ALL患者における血液学的完全寛解、28日目で84%、84日目で100%であった。 ・84日目では、すべての患者が細胞遺伝学的寛解を達成した。また、マルチカラーフローサイトメトリーによる測定可能残存病変陰性(0.01%未満)達成率89%、BCR::ABL1 RT-PCR(0.1%未満)達成率74%、BCR::ABL1 RT-PCR(0.01%未満)達成率26%であった。  著者らは「初発Ph陽性ALL患者に対するアシミニブ+ダサチニブ+プレドニゾロン併用療法は、安全かつ有望な治療選択肢となりうる可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Luskin MR, et al. Blood. 2024 Oct 7. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39374521 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
超高額なPNH治療、イプタコパンは医療費削減に寄与するか/Blood
超高額なPNH治療、イプタコパンは医療費削減に寄与するか/Blood
公開日:2024年10月11日 Ito S, et al. Blood. 2024 Oct 7. [Epub ahead of print]  補体B因子阻害薬イプタコパンは、持続性補体介在性溶血性貧血を特徴とするまれな血液疾患である発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療薬として承認された薬剤である。従来の標準療法では、補体C5阻害薬エクリズマブやラブリズマブが用いられてきたが、血管外溶血による持続性貧血や静脈内投与などの課題もあった。イプタコパンの第III相試験では、標準療法と比較し、イプタコパン単独療法の有用性が示されている。米国・イェール大学の伊藤 怜子氏らは、補体C5阻害薬による標準治療とイプタコパン単独療法における費用対効果分析を実施した。Blood誌オンライン版2024年10月7日号の報告。  主要アウトカムは、生涯にわたる増分純金銭便益(IMMB)および標準療法と比較したイプタコパン単独療法の費用対効果最大月額閾値とした。副次的アウトカムは、経口イプタコパン療法による患者および看護師の節約時間とした。 主な結果は以下のとおり。 ・費用は、イプタコパン単独療法で952万ドル、標準療法で1,350万ドル。 ・質調整生存年(QALY)は、イプタコパン単独療法で12.6QALY、標準療法で10.8QALY。 ・広範な感度分析およびシナリオ分析(貧血改善のための代替パラメータ、集計された個人レベルでの効果、遷移確率を含む)では、イプタコパンのコスト削減効果が認められた。 ・すべての確率的感度分析では、1万回のモンテカルロ法において100%の確率で、イプタコパン療法は、標準療法よりも優れていた。 ・標準療法に対するイプタコパンのコスト削減閾値は、ブラジルで1.1以下、日本で1.4、米国で1.4であった。  著者らは「イプタコパン単独療法は、いずれの国においてもPHNの医療費削減に貢献し、患者のQALYの延長に寄与することが示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Ito S, et al. Blood. 2024 Oct 7. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39374533 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本人真性多血症に対するロペグインターフェロンα-2bの3年間長期有用性
日本人真性多血症に対するロペグインターフェロンα-2bの3年間長期有用性
公開日:2024年10月10日 Kirito K, et al. Int J Hematol. 2024 Oct 3. [Epub ahead of print]  新世代のインターフェロン製剤であるロペグインターフェロンα-2b(ropegIFN)は、既存治療が効果不十分または不適当な真性多血症(PV)に対する治療薬として、本邦で承認されている薬剤である。しかし、日本人PV患者におけるropegIFNの長期的なアウトカムは、明らかになっていない。山梨大学の桐戸 敬太氏らは、日本人PV患者におけるropegIFNの長期的な安全性および有効性を評価し、JAK2V617Fの遺伝子変異割合の経時的な変化を明らかにするため、第II相試験とその後36ヵ月間の延長試験のデータについて、中間解析結果を報告した。International Journal of Hematology誌オンライン版2024年10月3日号の報告。  対象は、日本人PV患者27例。主要エンドポイントは、瀉血のない血液学的完全奏効(CHR)の維持率とした(過去12週間で瀉血がない、ヘマトクリット値45%未満、血小板数400×109/L以下、白血球数10×109/L以下)。 主な結果は以下のとおり。 ・CHR維持率は、12ヵ月で29.6%(8例)、24ヵ月で66.7%(18例)、36ヵ月で81.5%(22例)。 ・血栓症または出血性イベントは認められなかった。 ・ベースラインからのJAK2V617Fの遺伝子変異割合変化の中央値は、36ヵ月時点で−74.8%であった。 ・すべての患者が有害事象を経験し、薬物有害反応(ADR)は92.6%(25例)で認められたが、重篤なADRまたは死亡は認められなかった。  著者らは「日本人PV患者における36ヵ月にわたるropegIFNの安全性および有効性が実証された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kirito K, et al. Int J Hematol. 2024 Oct 3. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39361233 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
MDSに対する非血縁同種移植の前処置、FLU+BU+低用量ATGが有用〜JSTCT成人MDSワーキンググループ
MDSに対する非血縁同種移植の前処置、FLU+BU+低用量ATGが有用〜JSTCT成人MDSワーキンググループ
公開日:2024年10月9日 Fujioka M, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Oct 5. [Epub ahead of print]  骨髄異形成症候群(MDS)に対する同種造血幹細胞移植におけるフルダラビン(FLU)+静注ブスルファン(BU)12.8mg /kgによる移植前処置に低用量抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン(ATG:5mg/kg以下)または低線量全身放射線照射(TBI:4Gy以下)を併用した場合の予後への影響に関するデータは限られている。佐世保市総合医療センターの藤岡 真知子氏らは、非血縁同種造血幹細胞移植を行ったMDS患者の臨床アウトカムをレトロスペクティブに評価した。Transplantation and Cellular Therapy誌オンライン版2024年10月5日号の報告。  2009〜18年に非血縁同種造血幹細胞移植を行った自然発症(de novo)の成人MDS患者280例を対象に、臨床アウトカムをレトロスペクティブに評価した。移植前処置の違いにより、FLU+BU(FB4)群、FB4+低用量ATG群、FB4+低線量TBI群に分類し、臨床アウトカムの比較を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者の年齢中央値は61歳(範囲:16〜70)。 ・3年全生存率(OS)は、FB4群で39.9%、FB4+低用量ATG群で64.8%、FB4+低線量TBI群で43.7%。 ・3年非再発死亡率(NRM)は、FB4群で32.1%、FB4+低用量ATG群で22.1%、FB4+低線量TBI群で27.1%。 ・3年再発率は、FB4群で34.7%、FB4+低用量ATG群で21.2%、FB4+低線量TBI群で28.9%。 ・多変量解析では、FB4+低用量ATG群は、FB4群よりもOSが有意に良好であることが示唆された(HR:0.51、95%CI:0.27〜0.95、p=0.032)。 ・FB4+低用量ATG群は、FB4群よりもNRMが低い傾向であった(HR:0.36、95%CI:0.13〜1.06、p=0.063)。 ・FB4+低用量ATG群は、FB4+低線量TBI群と比較し、OS(HR:0.52、95%CI:0.27〜0.99、p=0.049)およびNRM(HR:0.34、95%CI:0.11〜0.92、p=0.034)が良好であった。 ・FB4+低線量TBI群とFB4群との間にOSおよびNRMの有意な差は認められなかった。  著者らは「MDS患者に対する非血縁同種造血幹細胞移植におけるFB4+低用量ATGレジメンによる移植前処置は、OSおよびNRMの改善が期待できることが示唆された。FB4+低線量TBIレジメンは、FB4単独レジメンと比較し、明らかなベネフィットが示されなかった」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Fujioka M, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Oct 5. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39374663 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
強力化学療法が適応とならないAML、VEN+AZAはVEN+低用量AraCより優れているのか
強力化学療法が適応とならないAML、VEN+AZAはVEN+低用量AraCより優れているのか
公開日:2024年10月8日 Amador-Medina LF, et al. Hematol Transfus Cell Ther. 2024 Sep 23. [Epub ahead of print]  2020年、米国FDAは、VIALE-A研究およびVIALE-C研究の結果に基づき強力化学療法が適応とならない急性骨髄性白血病(AML)の治療に対し、ベネトクラクス(VEN)+アザシチジン(AZA)またはベネトクラクス+低用量シタラビン(AraC)併用療法を承認した。両研究結果発表後、VEN+AZAは、VEN+低用量AraCよりも優れていると考えられてきたが、これらの研究は、VEN+AZA併用療法の優位性を証明するようには設計されていなかった。そのため、メキシコ・グアナファト大学のLauro Fabian Amador-Medina氏らは、強力化学療法が適応とならない新たに診断されたAMLに対するこれら2つのレジメンの全生存期間(OS)、完全寛解(CR)、複合完全寛解(CRc)を明らかにするため、システマティックレビューを実施した。Hematology, Transfusion and Cell Therapy誌オンライン版2024年9月23日号の報告。  PubMed、Web of Scienceデータベースよりレトロスペクティブ研究を検索し、CR、CRc、OSデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。 ・特定された815件のうち、適格基準を満たした研究は11件(VEN+AZA:10件、VEN+低用量AraC:1件)のみであった。 ・OS期間中央値は、VEN+AZAで10.75ヵ月、VEN+低用量AraCで未達(研究発表時点)であった。 ・CRcは、VEN+AZAで63.3%、VEN+低用量AraCで90%であった。 ・有害事象は、両群で同様であった。  著者らは「VEN+低用量AraCを調査した研究は非常に限られているものの、入手可能なデータに基づくと、強力化学療法が適応とならないAMLに対し、VEN+AZAがVEN+低用量AraCより優れているとは言い切れなかった。そのため、VEN+低用量AraCは依然として選択肢の1つとなりうる」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Amador-Medina LF, et al. Hematol Transfus Cell Ther. 2024 Sep 23. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39366887 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
BTK阻害薬不耐容のB細胞性腫瘍に対するピルトブルチニブの有用性〜第I/II相BRUIN試験
BTK阻害薬不耐容のB細胞性腫瘍に対するピルトブルチニブの有用性〜第I/II相BRUIN試験
公開日:2024年10月7日 Shah NN, et al. Haematologica. 2024 Oct 3. [Epub ahead of print]  ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬は、B細胞性腫瘍の治療を一変させたが、いまだ不耐容により中止されるケースも少なくない。米国・ウィスコンシン医科大学のNirav N. Shah氏らは、再発・難治性B細胞性腫瘍患者を対象に、可逆的非共有結合型BTK阻害薬ピルトブルチニブを評価した第I/II相BRUIN試験から、BTK阻害薬に不耐容を示した患者の解析を行った。Haematologica誌オンライン版2024年10月3日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・対象は、病勢進行がなく、1回以上のBTK阻害薬不耐容を示した患者127例。 ・BTK阻害薬中止につながる最も多い有害事象は、心臓関連疾患(40例、31.5%)であり、とくに心房細動(30例、23.6%)が多かった。 ・フォローアップ期間中央値は17.4ヵ月、ピルトブルチニブ投与期間中央値は15.3ヵ月。 ・ピルトブルチニブ投与中止の最も多い理由は、病勢進行(26.8%)、有害事象(10.2%)、死亡(5.5%)であった。 ・治療中に最も多く発現した有害事象は、疲労(39.4%)、好中球減少(37.0%)であった。 ・心臓関連の問題のためBTK阻害薬の中止歴を有する患者のうち、75%では心臓関連有害事象の再発が認められなかった。 ・過去にBTK阻害薬中止に至った有害事象と同じ有害事象により、ピルトブルチニブ中止に至った患者はいなかった。 ・ピルトブルチニブの奏効率(ORR)は、過去にBTK阻害薬不耐容であった慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者78例で76.9%、マントル細胞リンパ腫(MCL)患者21例で81.0%であった。 ・無増悪生存期間(PFS)中央値は、CLL/SLLで28.4ヵ月、MCLでは推定不能であった。  著者らは「過去にBTK阻害薬不耐容であった患者に対するピルトブルチニブ治療は、安全性が良好で、忍容性が高く、有効な治療選択肢であることが示唆された」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Shah NN, et al. Haematologica. 2024 Oct 3. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39363864 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性PCNSLに対する治療選択の現状は?
再発・難治性PCNSLに対する治療選択の現状は?
公開日:2024年10月4日 Primeaux B, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e3313.  中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は、全身的な病変を伴わずに中枢神経系へ影響を及ぼすアグレッシブリンパ腫である。第1選択治療として、大量メトトレキサート(HDMTX)ベースのレジメンが推奨されるが、その後は、高用量化学療法、全脳放射線療法、テモゾロミド併用または維持療法、自家造血幹細胞移植(auto HSCT)などによる強化療法が行われる。HDMTX+リツキシマブによる治療が進歩したものの、いまだ多くの患者が再発している。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのBrian Primeaux氏らは、再発・難治性PCNSLに対するリアルワールドでの治療の特徴を明らかにするため、本研究を実施した。Hematological Oncology誌2024年11月号の報告。  2016年4月1日〜2022年7月1日にHDMTXベースの第1選択治療を行なった成人PCNSL患者54例を対象に、レトロスペクティブ記述的分析を行なった。二次性中枢神経系リンパ腫、非B細胞由来PCNSL、眼内悪性リンパ腫の治療目的でHDMTXを行なった患者は除外した。再発・難治性PCNSLに対するリアルワールドでの治療の特徴および第1選択治療後の強化療法の特徴について、分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・31例(57%)の患者には、リツキシマブ+大量シタラビン(R-HD-AraC療法)、全脳放射線療法、またはその両方による強化療法が行われていた。 ・13例(24%)は、auto-HSCTに進んでいた。 ・病勢進行は25例で認められ、17例に対し第2選択治療が行われた。 ・第2選択治療の内訳は、臨床試験(18%)、リツキシマブ+レナリドミド(18%)、HDMTXベースのレジメン(18%)、イブルチニブ+リツキシマブ(12%)、R-HD-AraC療法(12%)。 ・さらに7例で病勢進行が認められ、第3選択治療が行われた。 ・第3選択治療はさまざまであり、リツキシマブ+レナリドミド、イブルチニブ+HDMTX、イブルチニブ、リツキシマブ、メトトレキサート、シタラビン、R-HD-AraC療法、リツキシマブ+ニボルマブ、全脳放射線療法などで治療されていた。 ・5例は第4選択治療として、リツキシマブ、リツキシマブ+レナリドミド、R+HDMTX、ニボルマブが行われた。 ・第5選択治療以降を行った患者は3例、これまでのレジメンに加え、リツキシマブ+テモゾロミド、ペムブロリズマブが用いられていた。  著者らは「再発・難治性PCNSLの治療選択肢は多様であり、医師の好み、臨床試験の適格性、治療歴、PS、臓器機能、治療目的など、患者の要因に大きく影響されていることがわかった。最適なマネジメントを実現するためにも、プロスペクティブ臨床試験の必要性が示唆された」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Primeaux B, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e3313.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39340121 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
第一寛解期Ph-like ALLに対する同種造血幹細胞移植の治療成績〜多施設共同研究
第一寛解期Ph-like ALLに対する同種造血幹細胞移植の治療成績〜多施設共同研究
公開日:2024年10月3日 Rahman ZA, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Sep 25. [Epub ahead of print]  フィラデルフィア染色体様急性リンパ性白血病(Ph-like ALL)は,B細胞性ALLの高リスク群であり、従来の治療では予後不良である。最適な治療結果につながらない要因として、診断の難しさや標準化された治療プロトコルの欠如が挙げられる。さらに、成人Ph-like ALL患者には、同種造血幹細胞移植(HSCT)が推奨されるが、これを裏付けるデータも限られている。ヨルダン・King Hussein Cancer CenterのZaid Abdel Rahman氏らは、HSCTを行った第一寛解期Ph-like ALL成人患者の治療アウトカムを、Ph陽性ALLおよびPh陰性ALLと比較するため、多施設共同レトロスペクティブ研究を実施した。Transplantation and Cellular Therapy誌オンライン版2024年9月25日号の報告。  全米の5つの学術センターよりALL患者のHSCTの焦点を当てたデータを収集した。対象は、2006〜21年に第一寛解期でHSCTを行った患者673例とした。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者673例のうち、Ph-like ALLが83例(12.3%)、Ph陽性ALLが271例(40.3%)、Ph陰性ALLが319例(47.4%)。 ・第一寛解期Ph-like ALL患者に対するHSCT後の治療アウトカムは、Ph陰性ALL患者と同等であり、3年全生存率(OS:66% vs. 59%、p=0.1)、無増悪生存期間(PFS:59% vs. 54%、p=0.1)、再発率(22% vs. 20%、p=0.7)に有意な差は認められなかった。 ・対照的に、Ph陽性ALLの治療アウトカムは、3年OS(75%、p<0.001)、PFS(70%、p=0.001)、再発率(12%、p=0.003)ともに良好であり、これはチロシンキナーゼ阻害薬治療によるものであると考えられる。  著者らは「HSCTと効果的な第2選択治療を組み合わせることで、Ph-like ALLの予後不良を軽減し、有用な治療アウトカムをもたらす可能性が示唆された」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Rahman ZA, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Sep 25. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39332807 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
コロナ時代のFL治療、オビヌツズマブを恐れる必要があるのか
コロナ時代のFL治療、オビヌツズマブを恐れる必要があるのか
公開日:2024年10月2日 Choy J, et al. Br J Haematol. 2024 Sep 27. [Epub ahead of print]  2020年のCOVID-19パンデミック以来、2023年までに世界の感染者は7億7,200万人以上、死者数は約700万人にものぼるといわれている。血液悪性腫瘍患者におけるCOVID-19のアウトカムを評価した研究、大規模メタ解析などが、数多く実施された。中でも、イタリアで行われたURBAN研究は、未治療の進行期濾胞性リンパ腫(FL)患者におけるオビヌツズマブベースの化学療法および維持療法の有効性および安全性を評価した多施設共同観察研究であり、対象患者の組織学的診断が均一であり、治療も比較的均一な研究である。オーストラリア・Sir Charles Gairdner HospitalのJoleen Choy氏らは、URBAN研究でオビヌツズマブベースの化学療法および維持療法を行った未治療の進行期FL患者299例におけるCOVID-19アウトカムを評価するため、URBAN研究サブ解析を実施し、その結果を報告した。British Journal of Haematology誌オンライン版2024年9月27日号の報告。  本研究は、2019年9月より登録を開始し、2022年1月までのデータを分析したものである。 主な結果は以下のとおり。 ・URBAN研究では、主治医の治療選択により、第一選択治療として、オビヌツズマブとの併用によるベンダムスチン(142例、47.5%)、CHOP療法(139例、46.5%)、CVP療法(18例、6%) が行われた。 ・これまでの研究とは対照的に、オビヌツズマブ+ベンダムスチンによる治療を行った患者とCHOP療法またはCVP療法による導入療法を行った患者では、COVID-19、入院、死亡の発生率に統計的に有意な差は認められなかった。 ・同様に、オビヌツズマブ維持療法を開始した患者(266例、88.9%)と開始しなかった患者との間で、COVID-19の発生率に統計的に有意な差は認められなかった。 ・データカットオフ時点で維持療法を完了した患者は少数(10.4%)であった。 ・オビヌツズマブ維持療法を完了した患者と行わなかった患者では、COVID-19による入院率(37.5% vs. 50%、p=0.888)および死亡率(0% vs. 25%、p=0.394)に差は認められなかった。 ・多数の患者(65%)は、維持療法完了前にレジメン変更が行われており、パンデミックに影響された可能性が示唆された。 ・レジメン変更により、ワクチン接種の有効性およびCOVID-19からの回復がより促進された可能性があるものの、詳細な情報は入手できず、不明なままである。 ・本サブ解析は、治療の有効性を評価するために設計されたものではないが、導入療法終了時の有効性は64.6%(193例)、全奏効(OR)は90.7%であり、パンデミック前のランダム化試験(GALLIUM試験)においてオビヌツズマブで治療を行なった患者と同等であった。 ・無増悪生存期間(PFS)またはPOD24イベントに関するデータは入手できず、治療の遅延または変更が治療結果に及ぼす影響は不明である。 ・COVID-19の全体的な発生率は16.1%(48例)であり、より感染力の高いオミクロン変異体が優勢だったパンデミック後期(2021年11月以降)の予測値よりも低かった。 ・ワクチン接種が利用可能になる前の第1波の登録患者数が少なかったため、この研究ではCOVID-19の有害事象の軽減に対するワクチン接種の有効性が過小評価されている可能性が示唆された。  結果を踏まえ、著者らは「ワクチン接種を行った未治療の進行期FL患者に対するオビヌツズマブによる治療は、COVID-19の臨床アウトカムへの影響が少ないと考えられる」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Choy J, et al. Br J Haematol. 2024 Sep 27. [Epub ahead of print]▶https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/39331693 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら