「血液内科 Journal Check」の記事一覧

CAR-T細胞療法抵抗性DLBCL治療に期待される抗体薬物複合体loncastuximab tesirine
CAR-T細胞療法抵抗性DLBCL治療に期待される抗体薬物複合体loncastuximab tesirine
公開日:2024年12月16日 Epperla N, et al. Blood Cancer J. 2024; 14: 210.  CAR-T細胞療法後に治療抵抗性を示すまたは病勢進行が認められた患者に対する抗体薬物複合体loncastuximab tesirineの有効性は明らかになっていない。米国・ユタ大学のNarendranath Epperla氏らは、米国における再発・難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者に対するCAR-T細胞療法後のloncastuximab tesirineの使用実態およびアウトカムを評価するため、レトロスペクティブ研究を実施した。Blood Cancer Journal誌2024年11月28日号の報告。  対象は、2ndラインまたは3rdラインでCAR-T細胞療法を行い病勢進行が認められ、3rdラインまたは4thラインでloncastuximab tesirine単剤療法を行った18歳以上の再発・難治性DLBCL患者。CAR-T細胞療法後のloncastuximab tesirineのアウトカムには、奏効率(全奏効率[ORR]、完全奏効 [CR] 率)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・解析対象患者は118例。2ndラインCAR-T細胞療法後にloncastuximab tesirine単剤療法を行った患者は95例(年齢中央値:66歳、男性の割合:61%)、3rdラインCAR-T細胞療法後にloncastuximab tesirine単剤療法を行った患者は23例(年齢中央値:57歳、男性の割合:43%)。 【2ndラインCAR-T細胞療法後にloncastuximab tesirine単剤療法を行った患者】 ・ORRは73%、CR率は34%。 ・loncastuximab tesirine単剤療法後のフォローアップ期間中央値8.5ヵ月、DOR、PFS、OSの中央値は未達であった。 ・12ヵ月時点でのDORは68%、PFSは77%、OSは84%。 【3rdラインCAR-T細胞療法後にloncastuximab tesirine単剤療法を行った患者】 ・ORRは78%、CR率は17%。 ・loncastuximab tesirine単剤療法後のフォローアップ期間中央値は13ヵ月、DOR中央値は7.6ヵ月、PFS中央値は12.0ヵ月、OS中央値は未達であった。 ・12ヵ月時点でのOSは95%。  著者らは「CAR-T細胞療法後に治療抵抗性を示すまたは病勢進行が認められたDLBCL患者に対する3rdラインまたは4thラインでのloncastuximab tesirine単剤療法は、効果的であり、治療選択肢の1つとなりうる可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Epperla N, et al. Blood Cancer J. 2024; 14: 210.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39609431 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
TKI抵抗性・不耐容のCMLに対するポナチニブ vs.アシミニブ
TKI抵抗性・不耐容のCMLに対するポナチニブ vs.アシミニブ
公開日:2024年12月13日 Garcia-Gutierrez V, et al. Front Oncol. 2024:14:1455378.  ガイドラインでは、2剤抵抗性または不耐容の慢性期慢性骨髄性白血病(CML)に対しポナチニブおよびアシミニブが推奨されており、米国においてT315I変異を有するCMLに唯一承認されている薬剤である。また、欧州では、T315I変異を有するCMLには、ポナチニブのみが承認されている。スペイン・アルカラ大学のValentin Garcia-Gutierrez氏らは、第2世代TKI治療抵抗性またはT315I変異を有する慢性期CML患者に対するポナチニブまたはアシミニブによる治療効果を評価するため、マッチング調整間接比較による検討を行った。Frontiers in Oncology誌2024年11月20日号の報告。  1つ以上の第2世代TKI治療抵抗性またはT315I変異を有する慢性期CML患者を対象にポナチニブまたはアシミニブを評価した臨床試験を、医学文献データベースのシステマテックレビューにより特定した。ポナチニブの患者レベルでのデータを使用したマッチング調整間接比較(MAIC)分析を用いて、ポナチニブとアシミニブのベースライン特定のバランスを調整した。マッチング後、各患者のMAIC重み付けを用いて奏効率を算出し、その差を2つの独立した比率の差z検定を用いて評価した。ベースライン時に奏効していない患者におけるBCR::ABL1IS≦1%および分子遺伝学的大奏効(MMR)の累積率を比較した。対象患者は、T315I変異の有無によりさらに分類した。 主な結果は以下のとおり。 ・4試験をMAIC分析に含めた。 ・ベースライン時、BCR::ABL1IS≦1%でない患者では、12ヵ月時点での調整済みBCR::ABL1IS≦1%率の差は9.33%であり、ポナチニブの方が良好であった。 【ポナチニブ vs.アシミニブの調整済みBCR::ABL1IS≦1%率の差】9.33%(95%CI:0.79〜17.86) 【ポナチニブ vs.アシミニブの調整済みMMR率の差】6.84%(95%CI:−0.95〜14.62) ・T315I変異を有する患者では、12ヵ月時点での調整済みBCR::ABL1IS≦1%率の差は43.54%であった。 【ポナチニブ vs.アシミニブの調整済みBCR::ABL1IS≦1%率の差】43.54%(95%CI:22.20〜64.87) 【ポナチニブ vs.アシミニブの調整済みMMR率の差】47.37%(95%CI: 28.72〜66.02)  著者らは「ベースライン時に奏効していない慢性期CML患者では、主なベースライン特性を調整後の12ヵ月までのほとんどの比較において、ポナチニブは、アシミニブよりもアウトカムが良好であった。さらに、T315I変異を有する患者においては、ポナチニブの有効性アウトカムは、より強化された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Garcia-Gutierrez V, et al. Front Oncol. 2024:14:1455378.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39634261 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本人AML患者の移植後アウトカム、G-CSF投与の影響は移植タイプにより異なる
日本人AML患者の移植後アウトカム、G-CSF投与の影響は移植タイプにより異なる
公開日:2024年12月12日 Konuma T, et al. Am J Hematol. 2025; 100: 66-77.  東京大学の小沼 貴晶氏らは、日本人急性骨髄性白血病(AML)成人患者におけるG-CSF使用およびそのタイミングが移植後アウトカムに及ぼす影響をレトロスペクティブに評価した。American Journal of Hematology誌2025年1月号の報告。  対象は、日本のデータベースより抽出した2013〜22年のAML成人患者9,766例。移植タイプに基づき、骨髄移植(BMT)群(3,248例)、末梢血幹細胞移植(PBSCT)群(3,066例)、単一ユニット臍帯血移植(CBT)群(3,452例)の3つに分類し、評価を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・多変量解析では、G-CSF投与により、BMT、PBSCT、CBT後の好中球回復が有意に加速することが示唆された。 ・しかし、すべての移植タイプにおいて、グレードII〜IVの急性GVHDリスクの増加が認められた。 ・BMT群およびCBT群では、G-CSF投与により、全体的な慢性GVHDの発生率が増加したが、PBSCT群では認められなかった。 ・CBT後においてのみ、G-CSF投与後の全生存期間(OS)および無白血病生存期間(LFS)の有意な改善が認められた。 ・G-CSF投与のタイミングに関して、4日以内の早期開始は、5〜10日の投与開始と比較し、いずれの移植タイプにおいても造血回復のベネフィットが示されなかった。 ・対照的に、CBT群における5〜10日でのG-CSF投与開始は、グレードII〜IVの急性GVHDリスクの低下およびOS、LFS改善に有意な影響が認められた。  結果を踏まえ、著者らは「AML成人患者に対するCBTにおいては、G-CSFのルーティン使用を検討する必要がある」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Konuma T, et al. Am J Hematol. 2025; 100: 66-77.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39564683 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
DLBCL患者における二次性中枢神経系病変の発生率とその特徴は/Blood Adv
DLBCL患者における二次性中枢神経系病変の発生率とその特徴は/Blood Adv
公開日:2024年12月11日 Tolley ER Dr, et al. Blood Adv. 2024 Nov 21. [Epub ahead of print]  二次性中枢神経系病変は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)において、まれな症状で、予後不良因子である。デンマーク・コペンハーゲン大学のElisabeth Reuben Tolley氏らは、二次性中枢神経系病変の発生率および臨床的特徴に関する最新の調査結果を報告した。Blood Advances誌オンライン版2024年11月21日号の報告。  二次性中枢神経系病変の発生率は、二次性中枢神経系病変のない死亡または再発を競合リスクとして考慮し、算出した。二次性中枢神経系病変に関連するリスク因子の特定には、原因別Cox比例ハザードモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・DLBCL患者1,972例のうち、初回再発時に二次性中枢神経系病変が認められた患者は68例(3.4%)であった。 ・二次性中枢神経系病変の粗累積発生率は、1年で2.0%(95%CI:1.5〜2.7)、2年で2.6%(95%CI:2.0〜3.4)であった。 ・高中枢神経系国際予後指数(CNS-IPI)スコアを有する患者における累積発生率は、1年で6.4%、2年で7.5%。 ・二次性中枢神経系病変の最も重要な予測因子は、リンパ節外病変の数と部位であった。 ・リスク増加と関連する部位は、骨髄、心臓、腎臓/副腎、卵巣、精巣、子宮。 ・二次性中枢神経系病変後の全生存期間(OS)中央値は3.2ヵ月。 ・一次治療終了後6ヵ月以内に二次性中枢神経系病変が認められた患者は、6ヵ月以降の場合と比較し、ベースライン時のCNS-IPIスコアが高く、OS不良と関連していた。 ・CNS-IPIスコアが低く、遅発性の二次性中枢神経系病変を認める患者では、予後が最も良好であった。  著者らは「最新の調査結果では、以前の報告よりもDLBCL患者における二次性中枢神経系病変の発生率は低かった。リンパ節外病変の数および部位は、二次性中枢神経系病変の最も重要な予測因子であると考えられる」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Tolley ER, et al. Blood Adv. 2024 Nov 21. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39571170 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
移植前MRD陽性のPh陽性ALL、HSCT後の予防的TKI投与が有望
移植前MRD陽性のPh陽性ALL、HSCT後の予防的TKI投与が有望
公開日:2024年12月10日 Liu H, et al. Am J Hematol. 2024 Nov 16. [Epub ahead of print]  同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)を行ったフィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)における治療失敗の主な原因は、再発である。中国・南方医科大学のHui Liu氏らは、Ph陽性ALL患者におけるallo-HSCT後の予防的チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による再発予防効果を評価するため、プロスペクティブ研究を実施した。American Journal of Hematology誌オンライン版2024年11月16日号の報告。  対象は、allo-HSCTを行うPh陽性ALL患者110例。対象患者は、移植前の微小残存病変(MRD)に基づき予防群または対照群に割り付けられた。主要エンドポイントは、再発累積発生率とした。 主な結果は以下のとおり。 ・予防群には、移植前MRD陽性であった患者38例、対照群にはMRD陰性であった患者72例を含めた。 ・4年間の再発累積発生率は、予防群で25.3%(95%CI:12.1〜41.0)、対照群で20.3%(95%CI:11.6〜30.7)であった(HR:1.272、95%CI:0.551〜2.940、p=0.549)。 ・再発以外の死亡率は、予防群で10.5%(95%CI:3.3〜22.7)、対照群で9.7%(95%CI:4.2〜17.9)であった(HR:1.094、95%CI:0.320〜3.738、p=0.928)。 ・4年間の全生存率は、予防群で71.8%(95%CI:53.2〜84.1)、対照群で84.1%(95%CI:72.9〜90.9)であった(HR:1.746、95%CI:0.741〜4.112、p=0.196)。 ・白血病フリーの無病生存率は、予防群で64.1%(95%CI:45.8〜77.7)、対照群で70.0%(95%CI:57.6〜79.4)であった(HR:1.212、95%CI:0.607〜2.421、p=0.585)。  著者らは「移植前にMRD陽性であったPh陽性ALL患者に対するHSCT後の予防的TKI投与による治療アウトカムは、移植前にMRD陰性であった患者と同レベルまで引き上げられる可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Liu H, et al. Am J Hematol. 2024 Nov 16. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39548804 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ダブルエクスプレッサーDLBCL、R-CHOP+BTK阻害薬はレナリドミド併用より有効
ダブルエクスプレッサーDLBCL、R-CHOP+BTK阻害薬はレナリドミド併用より有効
公開日:2024年12月9日 Feng D, et al. Leuk Res. 2024 Nov 9. [Epub ahead of print]  ダブルエクスプレッサーびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は予後不良であり、最適な治療戦略は依然として明らかになっていない。中国・中山大学がんセンターのDemei Feng氏らは、ダブルエクスプレッサーDLBCLに対するR-CHOP療法単独、レナリドミド併用、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬併用の有効性および安全性を評価するため、本研究を実施した。Leukemia Research誌オンライン版2024年11月9日号の報告。  対象は、2019〜24年に治療を行ったダブルエクスプレッサーDLBCL患者213例。治療の内訳は、R-CHOP療法112例、R-CHOP療法+レナリドミド65例、R-CHOP療法+BTK阻害薬36例。各治療群の臨床特性、全奏効率(ORR)、完全奏効率(CR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、有害事象を評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・ベースライン特性は、すべての治療群間で同等であった。 ・ORRは、R-CHOP単独群95.5%、レナリドミド併用群96.9%、BTK阻害薬併用群97.2%。 ・CRは、R-CHOP単独群76.5%、レナリドミド併用群80.0%、BTK阻害薬併用群75.0%。 ・BTK阻害薬併用群では、PFSの有意な改善が認められたが(p=0.033)、OSでは認められなかった(p=0.165)。 ・レナリドミド併用群では、PFS(p=0.153)またはOS(p=0.351)の有意な改善が認められなかった。 ・フォローアップ期間中央値は、R-CHOP単独群20.6ヵ月、レナリドミド併用群23.5ヵ月、BTK阻害薬併用群17.6ヵ月。 ・1年PFSは、R-CHOP単独群73.6%、レナリドミド併用群82.2%、BTK阻害薬併用群93.3%。 ・1年OSは、R-CHOP単独群96.2%、レナリドミド併用群93.2%、BTK阻害薬併用群100.0%。 ・グレード3〜4の有害事象には、白血球減少、好中球減少、貧血、血小板減少が認められ、治療群間に有意な差は認められなかった。  著者らは「とくに進行期のダブルエクスプレッサーDLBCL患者では、R-CHOP療法にBTK阻害薬を併用すると、新たに重篤な有害事象なしでPFSの向上が期待できることが示された。対照的に、レナリドミド併用では、有効性や生存率の向上に寄与しなかった」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Feng D, et al. Leuk Res. 2024 Nov 9. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39549612 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
シクロホスファミド+JAK1阻害薬の予防投与でハプロ移植後のGVHD、CRSが改善/Blood
シクロホスファミド+JAK1阻害薬の予防投与でハプロ移植後のGVHD、CRSが改善/Blood
公開日:2024年12月6日 Abboud R, et al. Blood. 2024 Nov 22. [Epub ahead of print]  造血器悪性腫瘍に対するハプロ移植は、世界的に増加している。ハプロ移植における移植片対宿主病(GVHD)は、移植後のシクロホスファミド投与により改善したが、依然として生命を脅かす合併症の懸念は残っている。インターフェロンγ(IFNγ)やインターロイキン 6(IL-6)は、GVHDおよびサイトカイン放出症候群(CRS)の病態生理学の中心に位置付けられており、これらのサイトカインは、ヤヌスキナーゼ(JAK)1を介してシグナル伝達している。米国・ワシントン大学のRamzi Abboud氏らは、ハプロ移植による合併症を軽減し、全生存期間を向上させるため、移植後の標準的なGVHD予防であるシクロスポリンにJAK1選択的阻害薬itacitinibを併用した際の有効性および安全性を評価したオープンラベル単群試験を実施した。Blood誌オンライン版2024年11月22日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者は42例。移植3日前から移植後100日または180日までitacitinib 200mg/日投与を行い、その後漸減した。 ・itacitinib併用によりCRSのグレードは低下し、すべての患者はグレード0(22%)または1(78%)となり、グレード2以上のCRSは発生しなかった。 ・一次性生着不全は認められなかった。 ・移植後180日目までにグレード3〜4の急性GVHDは発生しなかった。 ・移植後100日目におけるグレード2の急性GVHDの累積発生率は21.9%。 ・中等度または重度の慢性GVHDの1年累積発生率は5%。 ・再発の2年累積発生率は14%。 ・1年OSは80%。 ・移植後180の非再発死亡の累積発生率は8%。  著者らは「ハプロ移植における標準的なGVHD予防にJAK1選択的阻害薬itacitinibを併用することは、忍容性が良好で、CRS、急性GVHD、慢性GVHD、非再発死亡の発生率が低く、移植後のGVHDフリーの無再発生存期間(RFS)およびOSに寄与することが示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Abboud R, et al. Blood. 2024 Nov 22. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39576962 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
寛解導入療法後のMRD陽性高齢者AML、DNR/AraC療法+クラドリビンによる強力化学療法が有用〜NCRI AML18試験
寛解導入療法後のMRD陽性高齢者AML、DNR/AraC療法+クラドリビンによる強力化学療法が有用〜NCRI AML18試験
公開日:2024年12月5日 Russell NH, et al. J Clin Oncol. 2024 Nov 18. [Epub ahead of print]  英国・Guy's and St Thomas' NHS Foundation TrustのNigel H. Russell氏らは、微小残存病変(MRD)陰性を伴う寛解を達成していない高齢急性骨髄性白血病(AML)患者における強力化学療法による生存率向上への影響を評価するため、NCRI AML18試験を実施し、その結果を報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年11月18日号の報告。  対象は、ダウノルビシン+シタラビン(DNR/AraC療法)の初回コース後にフローサイトメトリーによるMRD陰性を伴う寛解を達成しなかったAML患者523例(非寛解患者165例を含む)。最大2コースのDNR/AraC療法または強力化学療法を行う群にランダムに割り付けた。強力化学療法は、フルダラビン+AraC+G-CSF+イダルビシン(FLAG-IDA療法)またはDNR/AraC療法+クラドリビンとした。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者の年齢中央値は67歳(範囲:51〜79)。 ・強力化学療法群における全生存期間(OS)の改善は認められなかった。  【DNR/AraC療法+クラドリビン vs. DNR/AraC療法】ハザード比(HR):0.74、95%CI:0.55〜1.01、p=0.054  【FLAG-IDA療法 vs. DNR/AraC療法】HR:0.86、95%CI:0.66〜1.12、p=0.270 ・3年OSは、DNR/AraC療法で34%、DNR/AraC療法+クラドリビンで46%、FLAG-IDA療法で42%。 ・早期死亡およびその他の有害事象の発生率は、FLAG-IDA療法群で高かった(60日死亡率:FLAG-IDA療法[9%]、DNR/AraC療法またはDNR/AraC療法+クラドリビン[4%]、p=0.032)。 ・対象患者のうち、131例はMRD不明であった。 ・フローサイトメトリーによる残存白血病が認められない患者では、強力化学療法による生存率の優位性は検出されなかった。 ・これらの患者を除外した感度分析では、DNR/AraC療法+クラドリビンおよびFLAG-IDA療法のいずれにおいても、生存率の優位性が示された。  【DNR/AraC療法+クラドリビン】HR:0.66、95%CI:0.46〜0.93、p=0.018  【FLAG-IDA療法】HR:0.72、95%CI:0.53〜0.98、p=0.035 ・3年OSは、DNR/AraC療法で30%、DNR/AraC療法+クラドリビンで46%、FLAG-IDA療法で46%。 ・再発の減少も同様に認められた。  【DNR/AraC療法+クラドリビン vs. DNR/AraC療法】HR:0.66、95%CI:0.45〜0.98、p=0.039  【FLAG-IDA療法 vs. DNR/AraC療法】HR:0.70、95%CI:0.49〜0.99、p=0.042 ・移植による打ち切りの場合でも、生存期間におけるDNR/AraC療法+クラドリビンのベネフィットは維持された(p=0.042)。  著者らは「初回導入療法後に残存病変が認められる高齢AML患者では、強力化学療法により生存率の改善が認められた。DNR/AraC療法+クラドリビンによる強力化学療法は、FLAG-IDA療法よりも忍容性が良好であった」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Russell NH, et al. J Clin Oncol. 2024 Nov 18. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39556780 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
新規多発性骨髄腫に対するDara-KLd療法、MRD陰性やsCRを改善/Blood Adv
新規多発性骨髄腫に対するDara-KLd療法、MRD陰性やsCRを改善/Blood Adv
公開日:2024年12月4日 Bhutani M, et al. Blood Adv. 2024 Nov 22. [Epub ahead of print]  新たに診断された多発性骨髄腫(MM)では、微小残存病変(MRD)が予後予測にとって重要であるが、治療決定におけるMRDの役割は、明らかになっていない。米国・Atrium Health Levine Cancer InstituteのManisha Bhutani氏らは、ダラツムマブ+カルフィルゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(Dara-KLd療法)による寛解導入療法とその後の次世代シーケンシング(NGS)に基づくMRD陰性化戦略の評価を行うため、第II相試験を実施した。Blood Advances誌オンライン版2024年11月22日号の報告。  主要エンドポイントは、寛解導入療法後の完全奏効(CR)率および厳格な完全奏効(sCR)率とした。フローサイトメトリーを用いて、T細胞プロファイルを作成した。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者39例中、21例(54%)が寛解導入療法後にsCRを達成(p=0.375)、MRD陰性化率は、閾値10-5で59%、10-6で41%であった。 ・MRD陰性患者24例(A群)には、レナリドミド維持療法を行い、18例中14例(77.8%)において12サイクル以上にわたるMRD陰性の継続が認められた。 ・MRD陽性の移植適応のある患者8例(B群)には、自家造血幹細胞移植(ASCT)を行い、5例がMRD陰性(10-5)、3例がMRD陰性(10-6)に移行した。 ・MRD陽性の移植適応のない患者4例(C群)には、Krd療法による地固め療法を行い、MRD陰性化率は、10-5で77%、10-6で72%まで改善が認められた。 ・Dara-KLd療法における、未知の安全性上の懸念は認められなかった。 ・フォローアップ期間中央値30.1ヵ月における病勢進行または死亡例は、A群3例、B群2例、C群1例。 ・2年PFSは82.5%であった。  著者らは「Dara-KLd療法は、メモリーT細胞を強力に活性化し、寛解導入後のMRD陰性化と関連していることが示唆された。新たに診断されたMM患者に対するDara-KLd療法は、主要エンドポイントは未達であったが、未知の安全性の懸念も認められず、高いsCR率およびMRD陰性化を達成した。寛解導入後のMRD陰性化戦略により、MRD陽性患者では奏効が向上し、継続的なMRDコントロールが可能であった」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Bhutani M, et al. Blood Adv. 2024 Nov 22. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39576965 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
造血器悪性腫瘍に対するβ-ラクタマーゼ阻害剤配合抗生物質アビバクタム/セフタジジム投与、実臨床での有用性は
造血器悪性腫瘍に対するβ-ラクタマーゼ阻害剤配合抗生物質アビバクタム/セフタジジム投与、実臨床での有用性は
公開日:2024年12月3日 Tumbarello M, et al. J Antimicrob Chemother. 2024 Nov 15. [Epub ahead of print]  多剤耐性グラム陰性菌感染症治療に対するβ-ラクタマーゼ阻害剤配合抗生物質アビバクタム/セフタジジムの臨床的影響を評価するため、イタリア・シエナ大学のMario Tumbarello氏らは、造血器悪性腫瘍患者の大規模コホートにおける多施設共同観察リアルワールド研究を実施した。The Journal of Antimicrobial Chemotherapy誌オンライン版2024年11月15日号の報告。  対象は、イタリアの17施設の血液病棟で感染症が疑われるまたは確定し、アビバクタム/セフタジジムを投与した造血器悪性腫瘍患者。主要エンドポイントは、感染症発症後30日間における全死亡率とした。副次的エンドポイントには、in vitroでのアビバクタム/セフタジジム耐性の発現、副作用、感染症の再発を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・登録された198例のうち、原因不明の発熱が認められた患者は66例、微生物学的に証明された感染症(MPI:microbiologically proven infection)は132例。 ・MPIの原因としては、腸内細菌目細菌(enterobacterales)が98件、そのうち75%はKPC産生菌であり、MPI の25%はカルバペネム耐性緑膿菌であった。 ・30日以内の死亡率は、全体で17.7%。 ・MPI患者の4例で感染症の再発が認められた。 ・感染症発症から30日以内に死亡した患者には、感染症発症時に脳血管疾患の既往、チャールソン併存疾患指数(CCI)4超、敗血症性ショックを呈し、不適切な初期抗生物質治療の傾向が認められた。 ・30日以内の死亡率は、感染症発症時の敗血症性ショックおよび不適切な初期抗生物質治療との独立した関連が示唆された。  著者らは「造血器悪性腫瘍治療におけるアビバクタム/セフタジジムに関するリアルワールドの有用性が示された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Tumbarello M, et al. J Antimicrob Chemother. 2024 Nov 15. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39545817 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
多発性骨髄腫の3rdライン以降でのCR率、CAR-T細胞療法 vs. 二重特異性抗体
多発性骨髄腫の3rdライン以降でのCR率、CAR-T細胞療法 vs. 二重特異性抗体
公開日:2024年12月2日 Liang X, et al. J Immunother Cancer. 2024; 12: e010064.  CAR-T細胞療法や二重特異性抗体の登場は、多発性骨髄腫(MM)の治療に大きな変革をもたらした。しかし、これら2つの治療アプローチの有効性および安全性を比較した研究は、不足している。中国・首都医科大学のXiaojie Liang氏らは、再発・難治性MMに対する3rdライン以降の介入におけるB細胞成熟抗原(BCMA)を標的とするCAR-T細胞療法とBCMAとCD3を標的とする二重特異性抗体の有効性および安全性を評価するため、メタ解析を実施した。Journal for Immunotherapy of Cancer誌2024年11月17日号の報告。  2024年5月31日までに公表された研究をPubMed、Embase、Web of Science、Cochrane データベースより検索した。主要アウトカムは完全奏効(CR)、副次的アウトカムは全奏効(OR)率とした。ランダム効果モデルを用いて評価し、関連する共変量で調整したのち、メタ回帰分析を行なった。 主な結果は以下のとおり。 ・適格基準を満たした研究11件、1,269例をメタ解析に含めた。 ・CAR-T細胞療法は、二重特異性抗体と比較し、CR率、OR率ともに有意に高かった。 【CR率】CAR-T細胞療法:0.54(95%CI:0.42〜0.69)vs. 二重特異性抗体:0.35(95%CI:0.30〜0.41)、p<0.01 【OR率】CAR-T細胞療法:0.83(95%CI:0.76〜0.90)vs. 二重特異性抗体:0.65(95%CI:0.59〜0.71)、p<0.01 ・CAR-T細胞療法は、二重特異性抗体と比較し、とくにサイトカイン放出症候群(CRS)などの有害事象の発生率が、より高率であった。 【CRS発生率】CAR-T細胞療法:0.83(95%CI:0.70〜0.97)vs. 二重特異性抗体:0.59(95%CI:0.43〜0.74)、p<0.05 ・グレード3以上の重度のCRSの発生率は、CAR-T細胞療法で0.07(95%CI:0.03〜0.14)であったが、二重特異性抗体(0.01、95%CI:0.00〜0.02)ではほとんど認められなかった(p<0.01)。 ・好中球減少、貧血などの血液学的有害事象の発生率も、CAR-T細胞療法の方が多かった。 【グレード3以上の好中球減少発生率】CAR-T細胞療法:0.88(95%CI:0.81〜0.95)vs. 二重特異性抗体:0.48(95%CI:0.30〜0.67)、p<0.01 【グレード3以上の貧血発生率】CAR-T細胞療法:0.55(95%CI:0.47〜0.62)vs. 二重特異性抗体:0.34(95%CI:0.28〜0.40)、p<0.01 ・CAR-T細胞療法では製品間の有効性にも違いが認められ、シルタカブタゲン オートルユーセル(cilta-cel)は、イデカブタゲン ビクルユーセル(ide-cel)よりもCR率およびOR率が高く、より有効であった。 【CR率】cilta-cel:0.77(95%CI:0.71〜0.84)vs. ide-cel:0.37(95%CI:0.32〜0.41)、p<0.01 【OR率】cilta-cel:0.91(95%CI:0.83〜0.99)vs. ide-cel:0.73(95%CI:0.68〜0.77)、p<0.01  著者らは「MMに対するCAR-T細胞療法は、二重特異性抗体と比較し、重篤な有害事象の増加が認められるものの、CR率が優れていることが確認された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Liang X, et al. J Immunother Cancer. 2024; 12: e010064.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39551604 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
血流感染症に対する適切な抗生物質投与期間はどのくらいか/NEJM
血流感染症に対する適切な抗生物質投与期間はどのくらいか/NEJM
公開日:2024年11月29日 Daneman N, et al. N Engl J Med. 2024 Nov 20. [Epub ahead of print]  血流感染症は、罹患率が非常に高く、死亡リスクに大きな影響を及ぼす。より早期に適切な抗生物質治療を行うことは重要であるが、治療期間についてはよくわかっていない。カナダ・トロント大学のNick Daneman氏らは、血流感染症に対する適切な抗生物質投与期間を明らかにするため、7日間または14日間の抗生物質治療における多施設共同非劣性試験を実施した。NEJM誌オンライン版2024年11月20日号の報告。  集中治療室(ICU)患者を含む血流感染症入院患者を対象に、7日間または14日間の抗生物質治療群にランダムに割り付けた。抗生物質の選択、投与量、投与経路は、治療チームにより決定した。除外対象は、重度の免疫抑制、長期治療が必要な病巣、コンタミの可能性のある単一培養、黄色ブドウ球菌が検出された患者。主要アウトカムは、血流感染症診断後90日以内における、すべての原因による死亡とし、非劣性マージンは4%ポイントに設定した。 主な結果は以下のとおり。 ・7ヵ国74施設により3,608例が登録され、ITT分析に含めた。 ・対象患者は、抗生物質7日間投与群1,814例、14日間投与群1,794例にランダムに割り付けられた。 ・登録時点で、患者の55.0%はICU、45.0%は病棟に入院していた。 ・感染の発生率は、市中で75.4%、病棟で13.4%、ICUで11.2%。 ・菌血症の発生部位は、尿路(42.2%)、腹部(18.8%)、肺(13.0%)、血管カテーテル(6.3%)、皮膚または軟部組織(5.2%)であった。 ・90日までの死亡率は、7日間投与群で14.5%(261例)、14日間投与群で16.1%(286例)であり(群間差:−1.6%ポイント、95.7%信頼区間[CI]:−4.0〜0.8)、短期治療期間の非劣性が示された。 ・割り当て期間よりも抗生物質の長期投与が行われた患者の割合は、7日間投与群で23.1%、14日間投与群で10.7%。 ・プロトコル毎の解析でも、非劣性が示された(群間差:−2.0%ポイント、95%CI:−4.5〜0.6)。 ・これらの結果は、副次的臨床アウトカムおよび患者、病原体、症候群の特性により事前に定義されたサブグループ解析においても、概ね一貫していた。  著者らは「血流感染症入院患者に対する抗生物質治療は、その期間が7日間であっても、14日間治療に劣っていないことが示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Daneman N, et al. N Engl J Med. 2024 Nov 20. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39565030 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
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