「血液内科 Journal Check」の記事一覧

ダブルエクスプレッサーPCNSLの鑑別に役立つMR画像の特徴は〜熊本大学
ダブルエクスプレッサーPCNSLの鑑別に役立つMR画像の特徴は〜熊本大学
公開日:2025年1月8日 Sasaki G, et al. Neuroradiology. 2024 Dec 19. [Epub ahead of print]  2016年のWHO分類においてMYCおよびBCL2タンパク質の過剰発現は、ダブルエクスプレッサーリンパ腫と定義されている。ダブルエクスプレッサー中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)患者は、そうでない患者よりも再発リスクが高く、予後不良であると報告されている。熊本大学の佐々木 剛氏らは、ダブルエクスプレッサーPCNSLの臨床的およびMR画像に特徴的な所見が認められるかを調査した。Neuroradiology誌オンライン版2024年12月19日号の報告。  対象は、ダブルエクスプレッサーPCNSL患者(DE-PCNSL群)16例および非ダブルエクスプレッサーPCNSL患者(非DE-PCNSL群)20例。DE-PCNSL群と非DE-PCNSL群における増強パターン、病変の見かけの拡散係数(ADC)、相対的脳血液量(rCBV)、漏出補正rCBV、K2値を比較した。ADCマップ上のROIの平均値(ADCmean)および最小値(ADCmin)を算出した。rCBV、漏出補正rCBV 、K2値のデータは、DSC法によるMR灌流画像より収集した。無増悪生存期間(PFS)の差の推定には、カプランマイヤー法を用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・DE-PCNSL群は、非DE-PCNSL群と比較し、女性の割合が高かった(12例[75%] vs.7例[35%]、p=0.02)。 ・rCBV(p=0.02)、漏出補正rCBV(p=0.03)は、非DE-PCNSL群と比較しDE-PCNSL群で有意に低かった。 ・増強パターン、ADCmean、ADCmin、K2値には、両群間で有意な差が認められなかった。 ・DE-PCNSL群は、非DE-PCNSL群よりもPFSが短い傾向であったが、有意な差は認められなかった。  結果を踏まえ、著者らは「PCNSL患者のダブルエクスプレッサーの鑑別には、rCBVおよび漏出補正rCBVが役立つ可能性が示唆された」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Sasaki G, et al. Neuroradiology. 2024 Dec 19. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39699645 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
GVHD予防に最適な移植後シクロホスファミドの投与量は?
GVHD予防に最適な移植後シクロホスファミドの投与量は?
公開日:2025年1月7日 Ulas T, et al. Transfus Apher Sci. 2024 Dec 17. [Epub ahead of print]  トルコ・University of Health SciencesのTurgay Ulas氏らは、造血器悪性腫瘍患者に対する移植後シクロホスファミドの投与量が生着日数、移植片対宿主病(GVHD)発生率、再発率、全生存率(OS)に及ぼす影響を評価した。Transfusion and Apheresis Science誌オンライン版2024年12月17日号の報告。  対象は、2018〜24年に骨髄破壊的前処置レジメンおよび末梢血幹細胞移植を受けた後、移植後シクロホスファミド25mg/kg2(45例)または50 mg/kg2(117例)の投与を行った患者162例。生着日数、GVHD発生率、再発率、OSを両群間で比較した。 主な結果は以下のとおり。 ・研究終了時の生存率は61.1%(99例)であった(25mg群:60%[27例]、50mg群:61.5%[72例])。 ・フォローアップ期間中央値は25mg群で6.9ヵ月、50mg群で7ヵ月。 ・OS中央値は25mg群で15.5ヵ月、50mg群で49.5ヵ月であったが、統計学的に有意な差は認められなかった(log rank=0.796)。 ・25mg群における生着日数は、血小板で13日、好中球で17日。 ・50mg群における生着日数は、血小板で18日、好中球で17日であり、血小板では有意な差が認められたが(p<0.001)、好中球では差が認められなかった(p=0.839)。 ・急性GVHDの発生率は、25m群で40%(18例)、50mg群で23%(27例)であり、25mg群は50mg群よりも高かった(p=0.031)。 ・慢性GVHDの発生率は、25m群で15.5%(7例)、50mg群で5.12%(6例)であり、25mg群は50mg群よりも高かった(p=0.048)。 ・再発率は、25m群で55.6%(25例)、50mg群で16.2%(19例)であった(p<0.001)。  著者らは「移植後シクロホスファミドの2種類の投与量の比較では、OSに差はなかったが、血小板生着日数、急性GVHD、慢性GVHDの発生率、再発率に違いが認められた」と報告した。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Ulas T, et al. Transfus Apher Sci. 2024 Dec 17. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39700842 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
予後不良因子を有するLBCL治療、同種HSCTとCAR-T細胞療法どちらが優れるか〜岡山大学
予後不良因子を有するLBCL治療、同種HSCTとCAR-T細胞療法どちらが優れるか〜岡山大学
公開日:2025年1月6日 Hayashino K, et al. Int J Hematol. 2024 Dec 16. [Epub ahead of print]  これまで、予後不良因子を有する再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)患者においてCAR-T細胞療法が同種造血幹細胞移植(allo-HSCT)よりも有効であるか、毒性が低いかについては、直接比較で検討されていなかった。岡山大学の林野 健太氏らは、予後不良因子を伴う再発・難治性LBCL患者に対するCAR-T細胞療法チサゲンレクルユーセル(tisa-cel)とallo-HSCTの有効性を調査し、比較を行った。International Journal of Hematology誌オンライン版2024年12月16日号の報告。  対象は、2003年1月〜2023年5月に岡山大学病院でall-HSCTまたはtisa-celによる治療を行った18歳以上の再発・難治性LBCL患者67例(allo-HSCT群:24例、tisa-cel群:43例)。予後不良因子の定義は、PS2以上、複数の節外病変、化学療法抵抗性、血清LDH上昇とした。 主な結果は以下のとおり。 ・全体として、allo-HSCT群は、tisa-cel群と比較し、無増悪生存期間(PFS)が不良であり、非再発死亡率が高かった。再発/病勢進行の割合は、同程度であった。 ・化学療法治療抵抗性患者または高LDH患者では、tisa-cel群は、allo-HSCT群よりもPFSが良好であった。一方、PS2以上または複数の節外病変を有する患者では、PFSは同等であった。 【化学療法治療抵抗性】tisa-cel群:PFS 3.2ヵ月、allo-HSCT群:PFS 2.0ヵ月(p=0.092) 【高LDH】tisa-cel群:PFS 4.0ヵ月、allo-HSCT群:PFS 2.0ヵ月(p=0.018) 【PS2以上】tisa-cel群:PFS 1.6ヵ月、allo-HSCT群:PFS 1.9ヵ月(p=0.56) 【複数の節外病変】tisa-cel群:PFS 3.2ヵ月、allo-HSCT群:PFS 2.0ヵ月(p=0.40) ・予後不良因子を有する患者における細胞療法後の再発後生存期間は、allo-HSCT群で1.6ヵ月、tisa-cel群で4.6ヵ月であった。 ・これらの結果は、傾向スコアマッチングコホートで確認された。  著者らは「予後不良因子を有する再発・難治性LBCL患者において、tisa-celはallo-HSCTよりも良好な生存率をもたらすことが示唆された。しかし、細胞療法後に再発した患者では、いずれの治療でも予後不良であるため、さらなる治療戦略が求められる」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Hayashino K, et al. Int J Hematol. 2024 Dec 16. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39680351 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性濾胞性リンパ腫に対するリツキシマブ+レナリドミド+BTK阻害薬、レナリドミドの適切な用量は〜第Ib相用量設定試験
再発・難治性濾胞性リンパ腫に対するリツキシマブ+レナリドミド+BTK阻害薬、レナリドミドの適切な用量は〜第Ib相用量設定試験
公開日:2024年12月27日 Strati P, et al. Br J Haematol. 2024 Dec 12. [Epub ahead of print]  再発・難治性の濾胞性リンパ腫(FL)に対する有効な治療選択肢は限られている。腫瘍関連マクロファージの抗腫瘍フェノタイプを増加させるブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬は、リツキシマブ+レナリドミドとの併用療法を検討する根拠となりうる。第2世代BTK阻害薬であるアカラブルチニブは、IL-2誘導性T細胞キナーゼ阻害作用がないため、T細胞媒介性細胞障害を増加させることなく、リツキシマブ+レナリドミドの有効性を向上させる可能性があると考えられる。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのPaolo Strati氏らは、再発・難治性FLに対するアカラブルチニブ+リツキシマブ+レナリドミド併用療法の安全性および有効性を評価するため実施した第Ib相用量設定試験の結果を報告した。British Journal of Haematology誌オンライン版2024年12月12日号の報告。  対象は、再発・難治性FL患者29例。2種類のレナリドミド用量によるアカラブルチニブ+リツキシマブ+レナリドミド併用療法を行った(レナリドミド15mg群:8例、レナリドミド20mg群:21例)。 主な結果は以下のとおり。 ・アカラブルチニブ投与期間中央値は21ヵ月、頻度の高かったグレードIII以上の治療関連有害事象(TEAE)は好中球減少(37.9%)であった。 ・グレードIII以上の重篤なTEAE発生率は、レナリドミド15mg群で37.5%、レナリドミド20mg群で52.4%であり、COVID-19肺炎、COVID-19感染、肺炎の頻度が高かった。 ・レナリドミド20mg群では、早期の治療中止およびまたは減量が観察された。 ・フォローアップ期間中央値34.1ヵ月における全奏効率(OR)は75.9%であった。 ・完全奏効率(CR)は、レナリドミド15mg群で25.0%、レナリドミド20mg群で42.9%。  著者らは「再発・難治性FLに対するアカラブルチニブ+リツキシマブ+レナリドミド併用療法において、レナリドミド20mgは、許容可能な毒性と有効性が期待できることから、適切な用量であると考えられる」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Strati P, et al. Br J Haematol. 2024 Dec 12. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39667721 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ISA-BLd療法による寛解導入療法が未治療で移植適応のある多発性骨髄腫に有用
ISA-BLd療法による寛解導入療法が未治療で移植適応のある多発性骨髄腫に有用
公開日:2024年12月26日 Mai EK, et al. J Clin Oncol. 2024 Dec 9. [Epub ahead of print]  未治療で移植適応のある多発性骨髄腫(MM)患者を対象に、レナリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン(BLd療法)にイサツキシマブ(ISA)を併用したISA-BLd療法を評価したGMMG-HD7試験において、寛解導入療法後の微小残存病変(MRD)陰性率が有意に増加したことが報告された。ドイツ・ハイデルベルク大学のElias K. Mai氏らは、GMMG-HD7試験の初回ランダム化から移植までの期間における試験結果を報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年12月9日号の報告。  GMMG-HD7試験の対象は、未治療で移植適応のあるMM患者662例。対象患者は、寛解導入療法においてISA-BLd療法群またはBLd療法群にランダムに割り付けられ、その後シングルまたはタンデム自家移植を行った後、維持療法においてレナリドミド単独群またはISA+レナリドミド群に再度ランダム化された。本報告では、初回ランダム化から移植までの期間における更新された結果を報告した。 主な結果は以下のとおり。 ・2024年1月末の段階で、MRD陰性化率は、移植後も引き続き良好であった(ISA-BLd療法群:66%、BLd療法群:48%)。 ・維持療法の種類にかかわらず、ISA-BLd療法群はBLd療法群と比較し、無増悪生存期間(PFS)の有意な延長が確認された(ハザード比:0.70、95%CI:0.52〜0.95、p=0.0184)。 ・維持療法においてレナリドミド単独群にランダム化された患者の重み付けリスクセット推定分析では、BLd療法後よりもISA-BLd療法後にレナリドミドによる維持療法を行った方が、統計学的に有意なベネフィットが認められた(層別化加重ログランク検定:p=0.016)。  著者らは「未治療で移植適応のあるMM患者に対して、18週間の寛解導入化学療法後に地固め療法なしで移植を行った場合、維持療法の種類を問わず、ISA-BLd療法による寛解導入療法のPFS延長に対する有意なベネフィットが確認された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Mai EK, et al. J Clin Oncol. 2024 Dec 9. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39652594 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ザヌブルチニブはベストインクラスのBTK阻害薬なのか?〜SEQUOIA試験フォローアップ結果
ザヌブルチニブはベストインクラスのBTK阻害薬なのか?〜SEQUOIA試験フォローアップ結果
公開日:2024年12月25日 Shadman M, et al. J Clin Oncol. 2024 Dec 8. [Epub ahead of print]  臨床試験では、時期の異なる複数のエンドポイントを含めることが少なくない。通常、主要エンドポイントに基づく最初の報告では、計画されている一部の主要な分析または副次的評価が行われないまま、公開されることがある。そのため、臨床試験の最新情報アップデートは、既に主要エンドポイントが報告されている研究においても、新たな知見を得る機会となりうる。米国・フレッド・ハッチンソンがんセンターのMazyar Shadman氏らは、未治療の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)患者を対象に、経口ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるザヌブルチニブとベンダムスチン+リツキシマブ(BR療法)を比較した第III相ランダム化オープンラベル試験であるSEQUOIA試験の長期フォローアップ結果を報告した。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2024年12月8日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・フォローアップ期間中央値26.2ヵ月の事前に指定された解析結果とその後43.7ヵ月までフォローアップを行った解析結果では、BR療法群と比較し、ザヌブルチニブ群の方が、主要エンドポイントである無増悪生存期間(PFS)が良好であることが示唆された。 ・フォローアップ期間中央値61.2ヵ月におけるPFS中央値は、ザヌブルチニブ群で未達、BR療法群で44.1ヵ月であった(ハザード比[HR]:0.29、片側p=0.0001)。 ・免疫グロブリン重鎖可変部体細胞遺伝子変異(IGHV)の変異あり(HR:0.40、片側p=0.0003)および変異なし(HR:0.21、95%CI:0.14〜0.33、片側p<0.0001)のいずれにおいても、BR療法群と比較し、ザヌブルチニブ群でPFSの延長が認められた。 ・両群ともに全生存期間(OS)は、中央値に達しなかったが、60ヵ月の推定OSは、ザヌブルチニブ群で85.8%、BR療法群85.0%であった。 ・新たな安全性シグナルは検出されなかった。 ・ザヌブルチニブ群の有害事象は、想定の範囲内であり、心房細動の発生率は7.1%であった。  著者らは「SEQUOIA試験の長期フォローアップ(期間中央値:61.2ヵ月)において、最初に報告されたザヌブルチニブの有用性が裏付けられた」とし「未治療のCLL/SLL患者に対するザヌブルチニブ治療は、望ましい治療選択肢である」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Shadman M, et al. J Clin Oncol. 2024 Dec 8. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39647999 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
DLBCLの1stライン、Pola+R-CHPはR-CHOPを超えられるか
DLBCLの1stライン、Pola+R-CHPはR-CHOPを超えられるか
公開日:2024年12月24日 Zhao P, et al. Hematol Oncol. 2025; 43: e70017.  ポラツズマブ ベドチン併用R-CHP(Pola-R-CHP)療法は、国際共同第III相ランダム化二重盲検試験であるPOLARIX試験に基づき、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する新たな第1選択治療として承認された。しかし、リアルワールドにおける有効性および安全性に関するデータは、十分とはいえない。中国・天津医科大学のPeiqi Zhao氏らは、中国の日常診療におけるPola-R-CHP療法とR-CHOP療法のアウトカムを評価するため、レトロスペクティブコホート研究を実施した。Hematological Oncology誌2025年1月号の報告。  2024年2月までにポラツズマブ ベドチンによる治療を1回以上行ったすべての患者を対象に、多施設レトロスペクティブコホート研究を実施した。6施設より適格患者600例(Pola-R-CHP療法群:131例、R-CHOP療法群:469例)が特定された。1:2の傾向スコアマッチング後、128組が生存および予後分析に含また。 主な結果は以下のとおり。 ・フォローアップ期間中央値は12.8ヵ月、12ヵ月無増悪生存割合(PFS)は、Pola-R-CHP療法群の方がR-CHOP療法群よりも高かった(90.3% vs.84.1%、p=0.18)。 ・分子生物学的サブグループ全体で一貫したベネトットが認められ、とくに進行期、全身状態(ECOG)2以上、リンパ節外病変2以上、non-GCB-DLBCLにおいて顕著であった。 ・完全奏効率は、Pola-R-CHP療法群の方がR-CHOP療法群よりも高かったが、統計学的に有意な差は認められなかった(86.8% vs.79.7%、p=0.09)。 ・安全性プロファイルは、両群間で同等であり、新たな懸念は見当たらなかった。 ・Pola-R-CHP療法群128例のうち、96例でゲノムシーケンス解析を実施した。結果の内訳は、MCDタイプ(25.0%)、EZBタイプ(13.5%)、複合サブタイプ(12.5%)、ST2タイプ(12.5%)、その他/分類不能(30.2%)。 ・25%以上で認められた最も一般的な変異は、PIM1、TP53、BCL-6、KMT2D、SOCS1、BCL-2であった。 ・遺伝子検査の結果では、遺伝子型やPIM1/TP53の遺伝子変異と治療効果との相関関係が示唆された。  著者らは「Pola-R-CHP療法は、リアルワールドの対象集団において、DLBCLに対する有効な第1選択治療であることが裏付けられ、R-CHOP療法よりも持続的な有効性が示された。12ヵ月PFSに有意差は認められなかったものの、サブグループ解析では、Pola-R-CHP療法の方が良好であった」と結論付け「今後は、より大規模な研究、長期フォローアップ研究、より有効な患者群を対象とした研究が求められる」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Zhao P, et al. Hematol Oncol. 2025; 43: e70017.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39641321 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
承認から5年、B-ALLに対するtisa-celの国内治療成績を分析
承認から5年、B-ALLに対するtisa-celの国内治療成績を分析
公開日:2024年12月23日 Kato I, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Nov 30. [Epub ahead of print]  CAR-T細胞療法は、再発・難治性B細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)の小児、青年、若年成人患者に対する新たな治療選択肢となった。世界中でCAR-T細胞療法のアウトカムに関するリアルワールドでの使用経験が蓄積されている。とくに医学的および民族的背景が異なる患者におけるCAR-T細胞療法のアウトカムを比較することは、非常に重要である。京都大学の加藤 格氏らは、日本において承認から5年以上経過したチサゲンレクル ユーセル(tisa-cel)の国内リアルワールドにおける使用経験を調査し、その結果を報告した。Transplantation and Cellular Therapy誌オンライン版2024年11月29日号の報告。  全国規模の日本CAR-Tコンソーシアム(JCTC)は、tisa-cel市販後にCAR-T細胞療法を行った小児、青年、若年成人患者を対象に、多施設レトロスペクティブ研究を実施した。解析対象は、tisa-cel市販後に白血球アフェレーシスサンプルをノバルティスに輸送した再発・難治性B-ALL患者42例。本報告では、ベースラインパラメータと臨床アウトカムとの関連を評価した。奏効、毒性、生存の解析には、CAR-T輸注を行ったすべての患者を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・最良総合効果率は93%。 ・CAR-T輸注後の1年全生存割合(OS)は82%、無イベント生存割合(PFS)は56%。 ・tisa-cel輸注前、低腫瘍量(骨髄中のリンパ芽球が5%未満)であった患者は27例(64%)。 ・低腫瘍量は、良好な臨床アウトカムとの関連が認められた。 ・1年無イベント生存割合(EFS)は、低腫瘍量では80%であり、高腫瘍量(骨髄中のリンパ芽球が5%以上)の24%と比較し、高値であった。 ・多変量解析では、造血幹細胞移植(HSCT)歴と良好なアウトカムとの関連が特定され、1年EFSは75%であり、HSCT歴のない患者(24%)と比較し、高値であった。  著者らは「日本において市販後にtisa-celによる治療を行った小児、青年、若年成人の再発・難治性B-ALLに関する最初の解析において、臨床試験や他のリアルワールド研究と同様に、有効性が確認された。低腫瘍量やHSCT歴は、良好なEFSと関連していることが示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kato I, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Nov 30. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39617098 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
抗CD20モノクローナル抗体関連の遅発性好中球減少、オビヌツズマブとリツキシマブでの違いは
抗CD20モノクローナル抗体関連の遅発性好中球減少、オビヌツズマブとリツキシマブでの違いは
公開日:2024年12月20日 Fadaos N, et al. Ann Hematol. 2024 Dec 12. [Epub ahead of print]  抗CD20モノクローナル抗体関連の遅発性好中球減少の発生率は、8〜27%と報告されている。濾胞性リンパ腫(FL)の維持療法には、抗CD20モノクローナル抗体が広く使用されているにも関わらず、遅発性好中球減少の発生や臨床結果に及ぼす影響に関するデータは限られている。イスラエル工科大学のNashwa Fadaos氏らは、維持療法中のFL患者における遅発性好中球減少の発生率、重症度、リスク因子について評価を行った。Annals of Hematology誌オンライン版2024年12月12日号の報告。  対象は、2006〜21年にイスラエル・ラムバン病院で治療を行ったFL患者。対象患者のデータは、電子カルテより収集した。 主な結果は以下のとおり。 ・維持療法群には165コースの治療による155例、非維持療法群には67コースの治療による58例を含めた。 ・維持療法の期間中央値は1.81±0.28年。 ・維持療法中に遅発性好中球減少が発生した患者は23.2%、1回以上の再発は13.8%で認められた。 ・非維持療法群では、遅発性好中球減少が29.3%、再発が38.8%でみられた。 ・維持療法群における維持療法開始から最初の好中球減少までの期間中央値は5ヵ月(1.25〜12)であり、非維持療法群の方がより早期に好中球減少が発生した(1.9ヵ月[0.97〜3.71]、p=0.06)。 ・維持療法群における遅発性好中球減少のリスク因子は、オビヌツズマブ+ベンダムスチン併用療法またはオビヌツズマブ維持療法であった。 【オビヌツズマブ+ベンダムスチン併用療法】オッズ比(OR):4.546、95%信頼区間(CI):1.419〜14.563、p=0.011 【オビヌツズマブ維持療法】OR:3.138、95%CI:1.23〜7.94、p=0.016 ・非維持療法群における遅発性好中球減少のリスク因子は、1つ以上の治療ライン(OR:3.93、95%CI:1.00〜15.38、p=0.04)、導入化学療法完了時の好中球絶対数の低さであった。 ・リツキシマブまたはオビヌツズマブによる維持療法を行った患者における遅発性好中球減少の発生率の違いは、抗CD20抗体のタイプI抗体またはII抗体のメカニズムの差が影響している可能性が示唆された。  著者らは「FL患者に対する抗CD20モノクローナル抗体による長期維持療法は、遅発性好中球減少の再発減少に有用である」としたうえで「本知見は、個々のFL患者における遅発性好中球減少リスクを予測し、治療選択を最適化するうえで役立つであろう」とまとめている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Fadaos N, et al. Ann Hematol. 2024 Dec 12. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39663256 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
輸血非依存の低リスクMDSに対するルスパテルセプト〜日本人対象第II相試験
輸血非依存の低リスクMDSに対するルスパテルセプト〜日本人対象第II相試験
公開日:2024年12月19日 Kosugi H, et al. Int J Hematol. 2024 Nov 21. [Epub ahead of print]  輸血依存の低リスク骨髄異形成症候群(MDS)の貧血治療に対し、ルスパテルセプトは、持続的な臨床効果が認められている。岐阜県・大垣市民病院の小杉 浩史氏らは、輸血非依存の日本人低リスクMDS患者を対象にルスパテルセプトの有効性および安全性を検討した第II相試験の一次解析結果を報告した。International Journal of Hematology誌オンライン版2024年11月21日号の報告。  ルスパテルセプトは、開始用量1.0mg/kgで、3週間に1回皮下投与を行った。主要エンドポイントは、治療開始から24週以内における輸血なしで血液学的改善-赤血球反応(HI-E)を達成した患者(8週間のヘモグロビン値1.5g/dL以上の上昇)の割合とした。一時解析データカットオフ時点での登録患者数は21例、24週治療完了患者数は17例、48週治療完了患者数は10例。 主な結果は以下のとおり。 ・HI-E達成は、24週以内に10例(47.6%、95%CI:25.7〜70.2、p<0.0001)で認められ、この値は事前に定義した閾値(10%)よりも有意に高かった。 ・48週までのHI-E達成は12例(57.1%)で認められた。 ・48週まで輸血非依存が維持された患者は17例(81.0%)であった。 ・ルスパテルセプトの忍容性は良好であった。 ・グレードIII〜IVの治療関連有害事象は、3例(14.3%)にみられた。  著者らは「ルスパテルセプトは、ヘモグロビン値の統計学的および臨床的に有意な改善を示し、輸血非依存の低リスクMDS患者において輸血開始までの期間を延長させる可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kosugi H, et al. Int J Hematol. 2024 Nov 21. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39572468 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性多発性骨髄腫に対する二重特異性抗体teclistamab、日本人対象第I/II相試験
再発・難治性多発性骨髄腫に対する二重特異性抗体teclistamab、日本人対象第I/II相試験
公開日:2024年12月18日 Ishida T, et al. Int J Hematol. 2024 Nov 28. [Epub ahead of print]  日本赤十字社医療センターの石田 禎夫氏らは、日本人再発・難治性多発性骨髄腫(MM)に対する二重特異性抗体teclistamabの安全性および有効性を評価した第I/II相試験の結果を報告した。International Journal of Hematology誌オンライン版2024年11月28日号の報告。  対象患者は、プロテアソーム阻害薬、免疫調整薬(IMiDs)、抗CD38モノクローナル抗体を含む少なくとも3つの標準的な治療歴を有する日本人再発・難治性MM患者。主要エンドポイントは、第I相試験では治療関連有害事象(TEAE)の頻度および種類、第II相試験では全奏効率(ORR:部分奏効[PR]以上)とした。 主な結果は以下のとおり。 ・第I相試験では、14例を対象に週1回teclistamabの投与を行った(0.72mg/kg [5例]、1.5mg/kg [5例]、3mg/kg [4例])。 ・用量制限毒性は観察されなかった。 ・第II相試験において、推奨用量のteclistamab(1.5mg/kg)が投与された患者は26例(2024年4月現在)。 ・6ヵ月以上奏効を維持したのち、隔週投与が可能であった。 ・フォローアップ期間中央値14.32ヵ月におけるORRは76.9%(最良部分奏効以上:76.9%、完全奏効以上:65.4%)。 ・奏効期間中央値、無増悪生存期間中央値、全生存期間中央値は未達であった。 ・一般的なTEAEは、グレードII以下のサイトカイン放出症候群(CRS)、好中球減少、感染症。 ・免疫細胞関連神経毒性症候群(ICANS)を経験した患者やTEAEによる用量減量を必要とした患者はいなかった。  著者らは「日本人再発・難治性MM患者に対する二重特異性抗体teclistamab治療は、ピボタル試験である海外第I/II相MajesTEC-1試験の結果と同様に、臨床的に意義のある深く持続的な奏効を示し、新たな標準治療となりうる可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Ishida T, et al. Int J Hematol. 2024 Nov 28. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39607603 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
イブルチニブ+BR療法、再発・難治性B細胞リンパ腫に対する有効性は示されるか
イブルチニブ+BR療法、再発・難治性B細胞リンパ腫に対する有効性は示されるか
公開日:2024年12月17日 Kedmi M, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e70001.  自家造血幹細胞移植(ASCT)後の再発・難治性の進行期B細胞性非ホジキンリンパ腫または高齢患者に対する治療は、しばしば困難である。イスラエル・Sheba Medical CenterのMeirav Kedmi氏らは、1stまたは2ndライン後に再発した移植適応のないまたはASCT後に2回目の再発を認めた再発・難治性の進行期B細胞性非ホジキンリンパ腫患者を対象に、ベンダムスチン+リツキシマブ(BR療法)にイブルチニブを併用した場合の有効性を評価するため、単一施設シングルアーム第II相臨床試験を実施した。Hematological Oncology誌2024年11月号の報告。  対象は、1stまたは2ndライン後に再発した移植適応のないまたはASCT後に2回目の再発を認めた再発・難治性の進行期B細胞性非ホジキンリンパ腫患者56例(男性の割合:54%、年齢中央値:69.7歳)。対象患者には、標準用量で28日6サイクルのBR療法+イブルチニブ(1日1回560mg)併用による治療を行った。主要エンドポイントは、全奏効率(ORR)とした。 主な結果は以下のとおり。 ・BR療法+イブルチニブ治療を1サイクル以上行った55例におけるORRは49.1%、3サイクル以上行った36例におけるORRは69.4%であった。 ・再発患者は、難治性患者よりもORRが有意に高かった(72.3% vs.37.8%、p=0.024)。 ・全生存期間(OS)中央値は11.6ヵ月(95%CI:7.1〜22.3)、無増悪生存期間(PFS)中央値は5.3ヵ月(95%CI:2.5〜7.4)。 ・完全奏効および部分奏効の患者は、安定および進行患者と比較し、OS中央値が有意に延長した(28.1ヵ月 vs.5.2ヵ月、p<0.0001)。 ・有害事象は、血小板減少(19.6%)、貧血(16.1%)、好中球減少(7.1%)、疲労(35.7%)、下痢(28.6%)、悪心(28.6%)などであった。 ・移植に移行した患者は、最初の有効性評価時点で8例、フォローアップ期間中で3例。 ・BR療法+イブルチニブ治療レジメンは、移植までのブリッジングとしても利用可能で、安全かつ効果的な治療オプションである可能性が示唆された。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kedmi M, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e70001.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39572395 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
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