「血液内科 Journal Check」の記事一覧

抗体薬物複合体に関連する眼の有害事象〜FDA有害事象報告システム分析
抗体薬物複合体に関連する眼の有害事象〜FDA有害事象報告システム分析
公開日:2024年9月6日 Mao K, et al. Front Pharmacol. 2024: 15: 1425617.  抗体薬物複合体(ADC)は、がん医療で注目され、ホットスポットとなっているが、ADCに伴う眼毒性は、過小評価されている。中国・温州医科大学のKaiLi Mao氏らは、さまざまなADCに関連する眼毒性リスクを包括的に評価するため、FDA有害事象報告システム(FAERS)データベースを用いて、分析を行った。Frontiers in Pharmacology誌2024年8月20日号の報告。  2011年第3四半期〜2023年第3四半期のデータをFAERSデータベースより抽出した。ADC関連の眼の有害事象の臨床的特徴を分析した。ADC誘発性の眼の有害事象のシグナルを検出するため、比例分析およびベイズアプローチによりデータマイニングを行なった。眼の毒性の発現までの期間についても評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・ADCに関連すると判断された眼の有害事象は、1,246件抽出された。 ・眼毒性の兆候が報告された薬剤は、belantamab mafodotin、ブレンツキシマブ ベドチン、エンホルツマブ ベドチン、mirvetuximab soravtansine、sacituzumab govitecan、トラスツズマブ デルクステカン、トラスツズマブ エムタンシンであった。 ・微小管重合阻害剤を結合させたADC(belantamab mafodotin、トラスツズマブ エムタンシン、mirvetuximab soravtansine)は、眼毒性の影響を受けやすかった。 ・ADCに関連する主な眼の有害事象シグナルは、以下のとおりであった。 【角膜症】ROR=1,273.52(95%CI:1,129.26〜1,436.21) 【視力低下】ROR=22.83(95%CI:21.2〜24.58) 【ドライアイ】ROR=9.69(95%CI:8.81〜10.66) 【夜盲症】ROR=259.87(95%CI:228.23〜295.89) 【霧視】ROR=1.78(95%CI:1.57〜2.02) 【羞明】ROR=10.45(95%CI:9.07〜12.05) 【眼の異物感】ROR=23.35(95%CI:19.88〜27.42) 【眼毒性】ROR=144.62(95%CI:117.3〜178.32) 【点状角膜炎】ROR=126.21(95%CI:101.66〜156.69) 【眼障害】ROR=2.71(95%CI:2.21〜3.32) ・発現時期に関しては、最も早かったのはsacituzumab govitecanで21日目、最も遅かったのはトラスツズマブ デルクステカンで223日目であった。  著者らは「ADCは、がん患者の眼毒性リスクを高め、重篤な死亡リスクにもつながる可能性がある。また、添付文書に記載されていない新たな眼毒性シグナルも検出されている」とし「新規ADCが世界各国で汎用されているため、FAERSデータと他のデータを連携し、ADCの眼毒性をモニタリングする必要がある」とまとめている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Mao K, et al. Front Pharmacol. 2024: 15: 1425617.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39228525 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
高齢者DLBCLにR-mini-CHOP+イブルチニブが有効〜第II相ALLG試験/Blood Adv
高齢者DLBCLにR-mini-CHOP+イブルチニブが有効〜第II相ALLG試験/Blood Adv
公開日:2024年9月5日 Verner E, et al. Blood Adv. 2024 Sep 3. [Epub ahead of print]  75歳以上の高齢者の初発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者を対象に、R-mini-CHOP療法にイブルチニブを追加した場合の有効性を評価するため、オーストラリア白血病およびリンパ腫グループ(ALLG)は、多施設共同プロスペクティブコホート試験を実施した。その結果、オーストラリア・Concord Repatriation General HospitalのEmma Verner氏らは、「R-mini-CHOP療法にイブルチニブを追加した本レジメンは、高齢者DLBCL患者に有用である」と報告した。Blood Advances誌オンライン版2024年9月3日号の報告。  R-mini-CHOP+イブルチニブを21日サイクルで6回実施し、その後、リツキシマブ+イブルチニブを21日サイクルで2回実施した。主要エンドポイントは、有効性および2年全生存率(OS)とした。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者79例中、R-mini-CHOP 6サイクルを完了した患者は63例(80%)、レジメン全体の平均相対総用量中央値は97%(IQR:82〜100)、平均相対用量強度中央値は97%(IQR:88〜100)であった。 ・フォローアップ期間中央値は35.5ヵ月、2年OSは68%(95%CI:55.6〜77.4)、2年無増悪生存率(PFS)は60.0%(95%CI:47.7〜70.3)。 ・OS中央値は72ヵ月(95%CI:35〜未達)、PFS中央値は40ヵ月(95%CI:20.4〜未達)であった。 ・全奏効率(ORR)は76%(79例中61例)、完全奏効(CR)は71%(79例中56例)。 ・死亡は79例中34例(43%)でみられ、内訳は病勢進行17例、治療関連死亡5例であった。 ・1つ以上の重篤な有害事象が認められた患者の割合は67%。 ・最も一般的な有害事象は、感染症と下痢であり、そのほとんどがグレード1〜2であった。 ・健康関連QOLは、時間経過とともに改善が認められた。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Verner E, et al. Blood Adv. 2024 Sep 3. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39226464 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
AMLにおける最良のドナー選択肢は?〜EBMT WG研究
AMLにおける最良のドナー選択肢は?〜EBMT WG研究
公開日:2024年9月4日 Baron F, et al. Am J Hematol. 2024 Aug 31. [Epub ahead of print]  HLA適合ドナーのいない急性骨髄性白血病(AML)患者にとって、最適なドナー選択肢に関しては、議論の的となっている。ベルギー・リエージュ大学のFrederic Baron氏らは、初回完全寛解(CR1)のAML患者を対象に、造血幹細胞移植のアウトカムを比較した大規模レトロスペクティブレジストリ研究の結果を報告した。American Journal of Hematology誌オンライン版2024年8月31日号の報告。  2013〜21年までの移植でCR1の成人AML患者を対象に、ダブルユニット臍帯血移植(dCBT群)209例とシクロホスファミドをベースとしたGVHD予防を伴う9/10 HLA非血縁ドナー(UD 9/10群)270例における移植後アウトカムを比較した。 主な結果は以下のとおり。 ・グレード2〜4の急性GVHDの180日間における累性発生率は、UD 9/10群で29%、dCBT群で44%であった(p=0.001)。 ・共変量で調整したのち、dCBT群はUD 9/10群と比較し、非再発死亡率が高く(HR:2.35、95%CI:1.23〜4.48、p=0.01)、再発発生率は同程度(HR:1.12、95%CI:0.67〜1.86、p=0.66)、無白血病生存割合が低く(HR:1.5、95%CI:1.01〜2.23、p=0.47)、全生存割合(OS)が低かった(HR:1.66、95%CI:1.08〜2.55、p=0.02)。  著者らは「CR1のAML患者に対する移植結果では、dCBTよりもシクロホスファミドをベースとしたGVHD予防を伴うUD 9/10の方が良好であることが示唆された」とし「HLA適合ドナーのいないAML患者には、シクロホスファミドをベースとしたGVHD予防を伴うUD 9/10が支持される可能性がある」とまとめている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Baron F, et al. Am J Hematol. 2024 Aug 31. [Epub ahead of print]▶https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/39215605 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
低悪性度NHLに対する抗CD47抗体magrolimab+リツキシマブ〜3年間フォローアップ試験/Blood Adv
低悪性度NHLに対する抗CD47抗体magrolimab+リツキシマブ〜3年間フォローアップ試験/Blood Adv
公開日:2024年9月3日 Mehta A, et al. Blood Adv. 2024 Aug 30. [Epub ahead of print]  再発・難治性低悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療において、現在の治療法では、治癒不能であると考えられている。これまで実施された抗CD47抗体magrolimabと抗CD20抗体リツキシマブとの併用による第Ib/II相試験では、再発・難治性低悪性度NHLに対する抗腫瘍効果が示されている。米国・アラバマ大学バーミンガム校のAmitkumar Mehta氏らは、再発・難治性低悪性度NHLに対するmagrolimab+リツキシマブの長期における安全性および有効性を評価するため、第Ib/II相試験の3年間フォローアップ調査を行い、その結果を報告した。Blood Advances誌オンライン版2024年8月30日号の報告。  第Ib相試験では、magrolimabプライミング後に4群に対し、リツキシマブ375mg/m2+magrolimab維持用量10〜45mg/kgを投与した。第II相試験では、magrolimab 30mg/kgまたは45mg/kgの検討を行った。主要エンドポイントは、治療中に発生した有害事象(TEAE)および全奏効率(ORR)とした。副次的エンドポイントには、奏効持続期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を含めた。探索的分析には、循環腫瘍DNA、magrolimab抗腫瘍効果のバイオマーカー、薬物標的発現の評価を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・第Ib/II相試験で治療を行った患者46例の内訳は、濾胞性リンパ腫42例、辺縁帯リンパ腫4例であった。 ・すべての患者で1つ以上のTEAEが認められ、治療関連TEAEは44例で認められた。 ・長期フォローアップ期間中、新たな毒性および治療関連死亡は、いずれも報告されなかった。 ・フォローアップ期間中央値は36.7ヵ月(範囲:1.2〜62.3)。 ・ORR達成率は52.2%、完全奏効(CR)達成率は30.4%であった。 ・DOR中央値は15.9ヵ月(95%CI:5.6〜推定不能)であった。 ・奏効までの期間中央値は1.8ヵ月(範囲:1.6〜5.5)、PFS中央値は7.4ヵ月(95%CI:4.8〜13.0)、OS中央値は未達であった。  著者らは「低悪性度NHLに対するmagrolimab+リツキシマブの長期的な安全性および有効性が示され、CD47とCD20を標的とした治療の組み合わせの有用性が裏付けられた」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Mehta A, et al. Blood Adv. 2024 Aug 30. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39213421 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ベンダムスチン療法のリンパ球回復までの期間はどの程度か?
ベンダムスチン療法のリンパ球回復までの期間はどの程度か?
公開日:2024年9月2日 Donzelli L, et al. Ann Hematol. 2024 Aug 30. [Epub ahead of print]  ベンダムスチン+リツキシマブ療法(BR療法)またはベンダムスチン+リツキシマブ+シタラビン療法(R-BAC療法)は、マントル細胞リンパ腫(MCL)の高齢患者、集中治療または自家移植適応のない患者に対する標準的な第1選択化学療法である。ベンダムスチンは、長期にわたるリンパ球減少を引き起こすことが知られているが、MCL患者における持続性に関するエビデンスは乏しい。イタリア・ローマ・ラ・サピエンツァ大学のLivia Donzelli氏らは、CAR-T細胞療法による免疫療法の可能性も考慮し、MCL患者におけるベンダムスチン療法後のリンパ球回復までの期間を推定するため、レトロスペクティブに分析を行った。Annals of Hematology誌オンライン版2024年8月30日号の報告。  対象は、2011年5月~2022年4月にサピエンツァ大学病院血液内科においてベンダムスチンによる第1選択治療(BR療法またはR-BAC療法)を行ったMCL患者44例(連続登録)。患者データを収集し、レトロスペクティブに分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・BR療法は24例(55%)、R-BAC療法は20例(45%)に用いられた。 ・ベースライン時のリンパ球数中央値は1,795/μL(範囲:370〜1万1,730)であった。 ・治療終了から1ヵ月後には450/μL(範囲:50〜3,300)、3ヵ月後には768/μL(範囲:260〜1,650)であった。 ・リンパ球数中央値は徐々に増加し、6、9ヵ月後には900/μLまで回復した(6ヵ月後:370〜2,560、9ヵ月後:130〜2,770)。 ・12ヵ月後のリンパ球数中央値は、1,256/μL(範囲:240〜4,140)であった。  著者らは「MCL患者におけるベンダムスチン療法後のリンパ球数中央値は、治療後1、3、6、9ヵ月時点ではベースラインより有意に低かったが、12ヵ月後には回復がみられた」とし「MCL患者に対するCAR-T細胞療法を検討する際、ベンダムスチン投与とリンパ球除去との間に9ヵ月以上間隔を空ける必要がある」とまとめている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Donzelli L, et al. Ann Hematol. 2024 Aug 30. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39212720 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
イキサゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン療法を用いる最適なタイミングは?
イキサゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン療法を用いる最適なタイミングは?
公開日:2024年8月30日 Fric D, et al. Eur J Haematol. 2024 Aug 26. [Epub ahead of print]  実臨床において、ダラツムマブによる治療歴を有する再発・難治性多発性骨髄腫(MM)に対してイキサゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン療法(ILd療法)を行った患者における有用性を評価するため、チェコ・マサリク大学のDominik Fric氏らは、レトロスペクティブに分析を行った。European Journal of Haematology誌オンライン版2024年8月26日号の報告。  本研究は、ダラツムマブによる治療歴を有する再発・難治性MM患者に対するILd療法の有効性を評価し、ILd療法によるメリットが最も大きい患者サブタイプを明らかにすることを目的として実施した。全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)のハザード比(HR)の評価も行った。 主な結果は以下のとおり。 ・対象は、ダラツムマブによる治療歴を有する再発・難治性MM患者43例。 ・最小奏効(MR)以上を達成した患者は53.3%であった。 ・PFS中央値は4.56ヵ月(95%CI:2.56~8.03)、OS中央値は28.92ヵ月(95%CI:5.4~未達)であった。 ・奏効持続期間(DOR)の評価が可能であった28例におけるDOR中央値は21.3ヵ月(95%CI:6.85~未達)に達した。 ・3クラス抵抗性でない患者(HR:0.39、95%CI:0.14~1.10、p=0.07)および前治療歴が3ライン未満の患者(HR:0.13、95%CI:0.03~0.6、p=0.003)で、OSの改善が認められた。 ・OSと同様に、3クラス抵抗性でない患者(HR:0.52、95%CI:0.25~1.10、p=0.08)において、PFSの改善も認められた。  著者らは「ダラツムマブによる治療歴を有する再発・難治性MM患者においてILd療法が最も有効であった患者は、3クラス抵抗性でなく、前治療歴が3ライン未満の患者であることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Fric D, et al. Eur J Haematol. 2024 Aug 26. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39187373 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ポラツズマブ併用療法時のG-CSF製剤予防投与はどの程度有用なのか
ポラツズマブ併用療法時のG-CSF製剤予防投与はどの程度有用なのか
公開日:2024年8月29日 Kodama A, et al. Gan To Kagaku Ryoho. 2024; 51: 741-745.  びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の治療では、ポラツズマブ ベドチン(Pola)併用療法が広く用いられる。Pola併用療法の臨床試験では、90%以上の症例に対しG-CSF製剤が一次予防目的で投与されているが、予防投与のメリットを調査した報告はほとんどない。大阪・市立吹田市民病院の児玉 暁人氏らは、Pola併用療法時における持続型G-CSF製剤による1次予防の有無により、発熱性好中球減少症(FN)の発生率に影響を及ぼすかを調査した。癌と化学療法2024年7月号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・Pola-BP療法によるFN発生率は、G-CSFあり群で0%、G-CSFなし群で9.5%であった。 ・Pola-R-CHP療法によるFN発生率は、G-CSFあり群で0%、G-CSFなし群で31.2%であり、より高くなる傾向が認められた。 ・Pola-BP療法G-CSFあり群の入院期間は11日、G-CSFなし群は18日であり、G-CSF予防投与による入院期間の有意な短縮が認められた(p=0.046)。 ・G-CSF予防投与によりグレード3以上の白血球減少、好中球減少の発生率に減少傾向が認められたが、統計学的に有意な差は認められなかった。 ・Pola併用療法におけるG-CSF製剤の一次予防投与は、血液毒性の軽減に寄与する可能性が示唆された。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kodama A, et al. Gan To Kagaku Ryoho. 2024; 51: 741-745.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39191692 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
CAR-T細胞療法関連毒性の予防にトシリズマブは推奨されるか
CAR-T細胞療法関連毒性の予防にトシリズマブは推奨されるか
公開日:2024年8月28日 Locke FL, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Aug 24. [Epub ahead of print]  再発・難治性大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)に対する抗CD19CAR-T細胞療法薬であるアキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)で治療を行った患者の多くは、サイトカイン放出症候群(CRS)や有害な神経学的イベントを経験する。axi-celによるCAR-T細胞関連毒性を軽減するための潜在的なアプローチを調査するため、ZUMA-1試験に追加し、安全性拡張コホートが実施された。米国・Moffitt Cancer CenterのFrederick L. Locke氏らは、その結果を報告した。Transplantation and Cellular Therapy誌オンライン版2024年8月24日号の報告。  探索的安全性コホートであるZUMA-1コホート3試験では、axi-cel治療患者におけるCRSおよび神経学的イベントの予防としてのIL-6受容体抗体トシリズマブおよび抗てんかん薬レベチラセタムの使用に関して、調査を行った。再発・難治性LBCL患者を対象に、Day−5~−3に前処置化学療法を実施し、Day0にaxi-cel(2×106cells/kg)を注入した。Axi-cel注入48時間後に、トシリズマブ(8mg/kg)を予防的に投与した。主要エンドポイントは、CRSおよび神経学的イベントの発生率と重症度とした。主な副次的エンドポイントには、有害事象の発生率、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、バイオマーカー分析(循環CAR-T細胞、サイトカイン、ケモカイン)が含まれた。 主な結果は以下のとおり。 ・本コホート3には42例が登録され、そのうち38例にaxi-celが投与された。 ・24ヵ月の解析では、すべてのグレードのCRS発生率は92%、神経学的イベント発生率は87%であった。グレード3以上のCRSは3%、神経学的イベントは42%で認められた。 ・グレード5の神経学的イベント(脳浮腫)が1件認められた。 ・24ヵ月以上のフォローアップ調査では、ORRは63%、継続的な奏効は39.5%でみられた。 ・48ヵ月のフォローアップ調査では、OS中央値は34.8ヵ月(95%CI:5.4~判定不能)であった。 ・ZUMA-1コホート3試験におけるCAR-T細胞の増殖は、コホート1および2と同等であった。 ・コホート1、2と比較し、トシリズマブによるIL-6受容体阻害にマッチし、血清IL-6レベルの増加が認められた。 ・グレード3以上の神経学的イベントは、脳脊髄液中のIL-6レベル、炎症誘発性サイトカイン、骨髄細胞上昇との関連が認められた。  著者らは「再発・難治性LBCLに対するCAR-T細胞療法関連有害事象の予防において、トシリズマブの使用は推奨されなかった。また、レベチラセタム予防投与の有用性も、依然として不明なままであった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Locke FL, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Aug 24. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39187161 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性FLT3変異陽性AMLに対するギルテリチニブ+VEN+AZAは第1選択に支持されるか
再発・難治性FLT3変異陽性AMLに対するギルテリチニブ+VEN+AZAは第1選択に支持されるか
公開日:2024年8月27日 Fu Q, et al. Leuk Res. 2024 Aug 22. [Epub ahead of print]  FLT3阻害薬ギルテリチニブは、再発・難治性FLT3遺伝子変異陽性の急性骨髄性白血病(AML)に対する標準治療薬として用いられるが、全生存期間(OS)は20%程度であり、深い奏効や持続的な奏効を達成する患者は限られている。中国・北京大学のQiang Fu氏らは、ギルテリチニブ+ベネトクラクス(VEN)+アザシチジン(AZA)による3剤併用療法で治療を行った再発・難治性FLT3変異陽性AML患者29例をレトロスペクティブに分析した。Leukemia Research誌オンライン版2024年8月22日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者29例中、FLT3阻害薬治療歴を有していた患者は19例(65.5%)であった。 ・modified複合的寛解率(mCRc)は62.1%(18例)であった(完全寛解[CR]:4例[13.8%]、正常な血球回復が不完全な寛解[CRi]:6例[20.7%]、形態学的に白血病細胞がない状態[MLFS]:8例[27.6%])。 ・mCRcを達成した18例のうち、FLT3-PCR陰性は94.4%(17例)、フローサイトメトリー陰性は77.7%(14例)であった。 ・mCRc 率は、FLT3チロシンキナーゼ阻害薬治療歴のない患者で70%(10例中7例)、治療歴のある患者で57.8%(19例中11例)であった(p=0.52)。 ・1サイクル目終了時点での治療反応者におけるANC 0.5×109/L超までの期間中央値は38日、血小板 50×109/L超までの期間中央値は31日であったが、60日間の死亡率は0%であった。 ・すべての患者における推定2年OSは60.9%であった。 ・1年OSは、FLT3チロシンキナーゼ阻害薬治療歴のない患者で80%、治療歴のある患者で58.8%(p=0.79)。 ・3剤併用療法後に同種造血幹細胞移植を行った19例(65.5%)における推定2年OSは62%、移植を行わなかった10例における推定2年OSは37%であった(p=0.03)。  著者らは「ギルテリチニブ+VEN+AZAによる3剤併用療法は、効果的かつ安全であり、再発・難治性FLT3変異陽性AMLに対する第1選択治療として有望であることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Fu Q, et al. Leuk Res. 2024 Aug 22. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39180903 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
抗BCMA/CD3二重特異性抗体teclistamab、抗BCMA治療歴の有無に関わらず有効/Blood
抗BCMA/CD3二重特異性抗体teclistamab、抗BCMA治療歴の有無に関わらず有効/Blood
公開日:2024年8月26日 Touzeau C, et al. Blood. 2024 Aug 20. [Epub ahead of print]  teclistamabは、トリプルクラス曝露の再発・難治性多発性骨髄腫(MM)の治療薬として、FDAやEMAより承認されているB細胞成熟抗原(BCMA)およびCD3を標的とする二重特異性抗体である。第I/II相試験であるMajes TEC-1試験の対象には、抗体薬物複合体(ADC)やCAR-T細胞療法などのBCMAを標的とした治療を過去に行った患者も含まれていた。フランス・ナント大学のCyrille Touzeau氏らは、抗BCMA治療歴を有する再発・難治性MM患者に対するteclistamabの有用性を検討するため、Majes TEC-1試験コホートCを実施した。Blood誌オンライン版2024年8月20日号の報告。  対象は、抗BCMA治療歴を有する再発・難治性MM患者40例。対象患者には、teclistamab 1.5mg/kgを毎週皮下注射で投与した。 主な結果は以下のとおり。 ・フォローアップ期間中央値は28.0ヵ月(範囲:0.7〜31.1)。 ・過去の治療歴の中央値は、6ライン(範囲:3〜14)であった。 ・過去の抗BCMA治療には、ADC29例、CAR-T細胞療法15例、ADCとCAR-T細胞療法4例が含まれた。 ・全奏効(OR):52.5% ・最良部分奏効(PR):47.5% ・完全奏効(CR)以上:30.0% ・奏効期間中央値:14.8ヵ月 ・無増悪生存期間(PFS)中央値:4.5ヵ月 ・全生存期間(OS)中央値:15.5ヵ月 ・最も発生した治療関連有害事象(TEAE)は、好中球減少、感染症、サイトカイン放出症候群、貧血であり、グレード3以上のTEAEは、血球減少、感染症であった。 ・感染症が発生した患者は28例(70.0%)、グレード3〜4が13例(35.5%)、グレード5が4例(10%)であった。 ・teclistamab治療開始前のベースライン時のBCMA発現および免疫特性は、過去の抗BCMA治療の影響を受けなかった。  著者らは「本Majes TEC-1試験コホートCにおいて、重度および抗BCMA治療歴を有する再発・治療抵抗性MM患者に対するteclistamabの有効性および安全性が確認された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Touzeau C, et al. Blood. 2024 Aug 20. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39172760 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
真性多血症に対するルキソリチニブ+PEG-IFN-α2a併用療法/Blood Adv
真性多血症に対するルキソリチニブ+PEG-IFN-α2a併用療法/Blood Adv
公開日:2024年8月23日 Soerensen. AL Dr, et al. Blood Adv. 2024 Aug 20. [Epub ahead of print]  新たに真性多血症(PV)と診断された患者を対象に、ルキソリチニブと低用量ペグインターフェロンアルファ-2a(PEG-IFN-α2a)併用療法の有用性を評価した第II相COMBI II試験における2年間の研究結果を、デンマーク・Zealand University HospitalのAnders Lindholm Soerensen Dr.氏らが、報告した。Blood Advances誌オンライン版2024年8月20日号の報告。  主要アウトカムは安全性、主な副次的エンドポイントは血液学的パラメータ、QOL、JAK2V617F変異アレル量(VAF)に基づく有効性とした。IWG-MRTとELNによるPVの2013年版治療効果判定基準(PV-A)を用いた。寛解基準には、症状、脾腫、末梢血球数、骨髄の寛解が含まれた。 主な結果は以下のとおり。 ・対象は、真性多血症患者25例(平均年齢:70歳)。そのうち5例は血栓塞栓症の既往歴があり、3例はCTで脾腫が認められた。 ・両薬剤を中止した患者は2例。そのうち1例はPV後に骨髄線維症へ進行し、この症例においてのみグレード3の感染症が認められた。 ・帯状疱疹の症状は観察されなかった。 ・精神症状により治療中止した患者はいなかった。 ・末梢血球数の寛解率は、24ヵ月時点で92%であった。 ・PV-Aを用いた評価では、24ヵ月時点での寛解達成は14例(56%)、完全寛解(CR)は3例(12%)、部分寛解(PR)は11例(44%)であった。 ・骨髄増殖性腫瘍症状総合スコアの腹部不快感、寝汗、掻痒感、骨痛の有意な改善が認められた。 ・JAK2V617F VAF中央値は、47%(95%CI:35〜59)から7%(95%CI:3〜15)へ減少し、分子遺伝学的寛解達成率は60%であった。  著者らは「ルキソリチニブ+PEG-IFN-α2a併用療法は、真性多血症患者の細胞数、骨髄細胞密度、繊維化を改善し、JAK2V617F VAFの減少および許容範囲内の毒性を有する治療法であることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Soerensen. AL Dr, et al. Blood Adv. 2024 Aug 20. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39163611 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
フレッドハッチンソンがん研究センターの慢性GVHD発生率が減少、その詳細を分析/Blood Adv
フレッドハッチンソンがん研究センターの慢性GVHD発生率が減少、その詳細を分析/Blood Adv
公開日:2024年8月22日 Carpenter PA, et al. Blood Adv. 2024 Aug 21. [Epub ahead of print]  2005年以降、フレッドハッチンソンがん研究センターにおける慢性移植片対宿主病(cGVHD)の発生率は、着実に減少している。この現象をより理解するため、米国・フレッドハッチンソンがん研究センターのPaul A. Carpenter氏らは、2005〜19年の生存患者3,066例を対象に、造血幹細胞移植を行った時期を関数として、全身免疫抑制療法を必要とするcGVHD(cGVHD-IS)リスクを評価した。Blood Advances誌オンライン版2024年8月21日号の報告。  造血幹細胞移植を行った時期とcGVHDの原因特有のハザード比(HR)との関連を評価するため、未調整および調整済みのCox回帰モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・平均フォローアップ期間は7.0年(範囲:1.0〜17.2)。 ・全生存者における2年以内に発生したcGVHD-ISの発生率は、2005〜07年の45〜52%から、2008〜12年の約40%に減少し、2017年には約26%にまで減少が認められた。 ・小児生存患者502例における分析では、2013年以降のcGVHD-ISの発生率は10%未満であった。 ・非悪性疾患で移植を行った成人および小児生存患者305例では、cGVHDの発生率により大きな変動が認められ、2016年以降は20%未満であった。 ・造血幹細胞移植を行った時期が5年進むごとに、cGVHDの原因別HRは27%低下した(未調整HR:0.73、95%CI:0.68〜0.78、p<0.0001)。この関連は、cGVHDの減少につながる可能性あるさまざまな因子(年齢、ドナー/幹細胞ソース、人種、性別、コンディショニング強度、GVHD予防など)で調整した後でも同様であり、HRは0.81(95%CI:0.75〜0.87、p<0.0001)であった。 ・cGVHDの減少は、人口動態の変化やcGVHD低下が期待される移植アプローチの使用率増加などの普及が考えられるが、これを完全に説明することは困難であった。  著者らは「cGVHDの減少因子を明らかにするためにも、対照を過去の事例に設定するのではなく、同時期の対照群を用いた観察研究が必要とされる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Carpenter PA, et al. Blood Adv. 2024 Aug 21. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39167805 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら