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子どもの笑顔がキラキラ輝く-第52回日本救急医学会総会・学術集会 WINK企画-取材レポート(後編)
子どもの笑顔がキラキラ輝く-第52回日本救急医学会総会・学術集会 WINK企画-取材レポート(後編)
掲載日:2024年11月7日 前編に続き  2024年10月13日(日)~15日(火)に開催された、第52回日本救急医学会総会・学術集会(於:仙台国際センター)にて、実施されたお子さま参加型企画“WINK”の現地レポート後編です。  前編をまだお読みでない方は、ぜひ 前編から、お読みください。  後編は、WINKセッション(子ども聴講可の口演セッション)と参加者へのインタビューを中心に、大会長の久志本 先生、企画担当の谷河 先生から、企画開催後にいただいた感想などをお伝えいたします。    子どもたちへ -WINKセッション-  このWINK企画、なんといっても最大の魅力は、子どもも聴講可能な口演セッション“WINKセッション”が行われたことです。「演題発表の場に子どもを入れるなんて」と思った先生方にこそ、ぜひ触れていただきたい、大変すばらしい企画でした。  まず、驚いたのが会場前方に子ども用の椅子(乳児用含む)が用意されていたことです。これは、この企画が単に「子どもを連れて入れるセッションですよ」ということではなく、「子どもたちにも口演を聞いてほしい」「演題発表するお母さん、お父さんの姿を目に焼き付けて欲しい」という、大会校の先生方の強い想いが、この可愛らしい椅子に表れているのだと感じました。  WINKセッションの各テーマはセッション1から順番に「かがやき(輝き)」「がんばり(頑張り)」「やさしさ(優しさ)」「くつろぎ(寛ぎ)」「こころ(心)」「どりょく(努力)」「もえ(萌え)」「たのしみ(楽しみ)」「ちから(力)」となっており、各テーマの頭文字を並べると、WINKセッションのテーマ「か・が・や・く・こ・ど・も・た・ち」となります。 これは、学術集会のメインテーマ「君は輝く」にも通じるもので、「ひとりひとりの考え方、価値観、背景と現在、すべての多様性を尊重する大会にしたい」という大会長の想いが込められています。  お子さんと一緒に発表をする先生に、お子さんを抱っこしたまま質問をする先生の姿など、普通の学会発表では見られない、この企画ならではの光景が広がっていたことに加え、このWINKセッションでは各発表スライドの最後に「子どもたちへ(家族へ)」というメッセージスライドが添えられており、発表者の口から直接、会場内で聴講している家族の方々へ、休みの日に一緒に居られないことへの謝罪が伝えられたり、胸を張って「ママはこういう仕事をしているんだよ!」と伝えている姿を見ることが出来ました。最後のスライドでの子どもたちへのメッセージ、すべての発表には必ず大きな拍手をーこれらは大会長からお願いをして、みなさんに実践していただいたようで、すべての演題が温かい雰囲気の中、発表を終えられていました。 各家庭ご状況は様々とお見受けしましたが、“医師であり、親でもある”という点において、WINKセッション登壇者の誰しもが同じ課題を抱えて暮らしている、ということを強く感じ、筆者の胸にも、迫るものがありました。  また、このWINKセッションへの演題応募、発表演題数が60演題を超えたことも注目すべき点であると考えます。演題数や学会参加者が減少傾向にあると耳にする、昨今の学術集会運営の課題を鑑みると、そういった課題を打開するための手段としても、効果的な企画になり得るのではないか、と感じました。 全く新しい学会のカタチ -参加者の声-  ここで、いくつか、参加者の声をお伝えしたいと思います。 参加者の女の子 小学三年生(9歳) の声 「お父さんがお医者さんなので、来ました。聴診器の体験では、心臓の音がすごい聞こえました。VRの手術体験もできてよかったです。お父さんのお仕事はすごいんだなと思いました」 女の子(上記)のお母様の声「少しずつ職業体験をし始める学年ではあったので、こういった形で職業体験ができ、娘も、とても身近に感じている様子だったので、参加してよかったと感じています。学会参加となると、これまでは“家族が一緒に居られない時間”としか考えられませんでしたが、”WINK”は、発表にも立ち会うことが出来るなど、家族みんなで同じ時間を過ごすことが出来た、それが一番ありがたいと思える企画でした。この企画に感謝しています」 お孫さんとご一緒に参加された おじい様の声「今日は孫と一緒に来ました。息子が救急医なので参加したのですが、私は医者ではないので、学会というものがどういうものなのかすら、わかりませんでした。実際に参加してみると、先生方は大変ご苦労されているんだなと、いち“市民”として、非常に勉強になりました。また、たくさんの子どもたちが笑顔で体験参加している姿を見て、こちらも笑顔になりました。」 同上 おばあ様の声「息子が救急医であることは、夫からお伝えしましたが、実は、娘も医師で、内科医をしています。娘から、学会参加で子どもの面倒が見れないから手伝いに来てくれと言われ、一緒に学会会場に行ったこともありますが、あまり子どもの参加は歓迎されていないように感じました。そういった経験もあるので、この企画はとてもいい企画だと感じましたし、ぜひ、こういう企画が広まってほしいなと感じています。」 インタビューにお応えいただいたみなさま、誠にありがとうございました。 みなさま、笑顔でお応えいただき、インタビューしているこちらも楽しくなる、素敵な雰囲気でした。 インタビューを通して感じたことは、単に、子どもが楽しいと感じればいい、ということではなく、まさに「Together With Your Darling Kids!」、家族が一緒に参加して、みんなが楽しく過ごせるカタチこそが、この全く新しい、”WINK”という企画の神髄なのだろうと、感じました。 言葉では伝えきれない -取材写真ギャラリー-  このWINK企画では、キラキラ輝く子どもたちの姿が会場の随所で見ることができました。この“キラキラ感”は言葉では伝えきれないので、筆者が撮影した写真を何点か掲載します。 “WINK”という新しい風が吹いた  第52回日本救急医学会総会・学術集会の閉会式、大会長 久志本 先生からのご挨拶の中で「今大会の参加者は約4,500名、そのうちお子さんの参加が300名を超えています」と発表があり、会場がどよめきました。事前登録よりも、さらに多い、300名のお子さまたちが学術集会という場に参加した、という事実に学会参加者が感嘆の声を上げ、賛辞の拍手を送っていました。  その万雷の拍手こそ、前人未到の学会企画“WINK”が大成功したことを証明していたのだと感じます。    大会後、久志本 先生は「どこの学会もやったことのない規模で、お子さん参加型企画を実施できたこと、これは素晴らしい仲間がいなければ成し得なかったことです。すべての仲間に感謝し、誇りに思います。また、今回の企画が、これからの学会運営において一つのモデルとなることを期待しています。ぜひ、多くの人に知っていただきたいと思います。」と仰っていました。  また、企画担当の谷河 先生は「皆さんが楽しんでいる姿は一生忘れません。とても大変な企画でしたが、大会長をはじめ、いつも大変な症例に対して、力を合わせて診療にあたっている東北大学病院 救急科・高度救命救急センターの仲間だから実現できたんだと思います。とはいえ、この企画の成功はスタートラインに立ったというだけ。僕たち若い世代がリードして、医療界を変えていかないといけないんです。次世代を担う子どもたちが安心して暮らせる社会を医療から作るために、それが僕たちの世代の役割なんです。」と、熱く、お話いただく姿に、WINK企画の先にある、今よりもっと、キラキラ輝く、明るい未来の日本医療界を垣間見た気がしました。 会期中の久志本 先生(左)と谷河 先生(右)   筆者はこの企画を現地取材し、率直に「日本の医学会史に“事件”が起きた」と感じました。 医師の働き方改革、医師不足の問題、地域医療格差など、さまざまな問題のある、現代日本の医療界において、学術集会という貴重な機会に、この先進的な企画が実施されたことは、伝統を重んじる日本の医学会において、大きな風穴を開ける出来事であった、まさに、久志本 先生が大会前に示唆された“新しい風”が吹いた瞬間であったと感じています。  今後、この企画モデルがあらゆる学会で採用され、子どもたちも、先生たちも笑顔溢れる学術集会が、各地で開催されることを期待いたします。 最後に  本取材企画を快くご承諾いただきました、久志本 成樹 先生、谷河 篤 先生に厚く、御礼を申し上げますとともに、取材実施に際し、お力添えいただきました、東北大学病院 救急科・高度救命救急センターの先生方やスタッフの皆さま、WINK企画ご参加の先生方とご家族の皆さま、協賛企業の皆さま、学会運営の日本コンベンションサービスの皆さまにも改めて、御礼申し上げます。  誠にありがとうございました。 文責:ヒポクラ事務局 カワウソくん ※本レポート記事は前編・後編の二本立てです。ぜひ、前編と併せてお読みください。 子どもの笑顔がキラキラ輝く-第52回日本救急医学会総会・学術集会 WINK企画-取材レポート(前編)はこちら 医師・医学生専用SNS ヒポクラ  無料会員登録はこちら▼     日本救急医学会HP▼ https://www.jaam.jp/ 第52回日本救急医学会総会・学術集会HP▼ https://site.convention.co.jp/jaam52/
子どもの笑顔がキラキラ輝く-第52回日本救急医学会総会・学術集会 WINK企画-取材レポート(前編)
子どもの笑顔がキラキラ輝く-第52回日本救急医学会総会・学術集会 WINK企画-取材レポート(前編)
掲載日:2024年11月7日 はじめに  2024年10月13日(日)~15日(火)に開催された、第52回日本救急医学会総会・学術集会(於:仙台国際センター)にて、注目の学会企画が実施されました。その名も「WINK」。一体、どんな企画になるのか、現地取材を敢行しました。  参加している子どもたちと熱い想いをカタチにした先生方の、燦然と輝く笑顔がたくさん目に飛び込んでくる、こんなに温かな空気に包まれた学会は前代未聞!  これから学会運営を控える先生方は必見のレポートです。    Together With Your Darling Kids!  現地取材に先立ち、大会長の久志本 成樹 先生(東北大学病院 救急科・高度救命救急センター)、企画担当の谷河 篤 先生(同所属)にお話をお伺いしました。  この企画を実施しようと考えたきっかけについて、久志本 先生は「ご両親の留学などで海外生活をしたことのある先生たちから、子どもの頃、親に連れられて学会に参加し、その思い出がきっかけで医師になったと聞くことがあります。多様性を尊重すべき時代においては、次世代、特に子育て世代の先生たちが気軽に学会に参加できるように、新しい風を吹かせたいんです」と力強く、お話をしてくださいました。  また、谷河 先生も「自分や妻(小児科医)も、専攻医時代から育児と医師業務の狭間で大変な思いをしてきました。今回、大会長から『学会に子どもたちを連れてこられるようにする』と言われたとき、自分が抱えていたジレンマを少しでも解消できる企画に挑戦できる機会をいただけたと、大変光栄に思いました。絶対に成功させます!」と笑顔でお話されていたのが、非常に印象的でした。 WINK企画スケジュール表(下記、大会ホームページより)https://site.convention.co.jp/jaam52/wink/ この「WINK」企画は“Together With Your Darling Kids!”という、本企画のスローガンをもじり、名づけられた企画で、その言葉の通り、「学術集会に、あなたの愛する子どもたちと一緒に参加してね!」、“親子でウィンク”という想いが込められています。 企画は、 ① Kids ERさまざまなER関連医療機器に触れることが出来る体験コーナー ② イベント親子一緒に体験参加できるイベント企画 ③ WINKセッション子どもも一緒に聴講できる口演セッション と、大きく3つのコーナーに分かれており、2日間(集会自体は3日間)に渡り、それぞれの企画が実施されました。 また、企画参加のお子さんには、子ども用医療スクラブのプレゼントも用意されるという力の入れ様で、後日談によると、谷河 先生が、キッザニア東京で施設見学をした際「スクラブを着ることで、子どもたちが真剣に医療を体験すると思います。Kids用のスクラブを作らせてください!」とすぐに久志本 先生に直談判をし、了承をいただいた、という想いの詰まったプレゼント企画だったようです。 このように、準備段階から先生方の熱い想いが非常に強く反映されたWINK企画、なんと開幕前には、すでに、お子さんの事前参加登録が250名を超えるという大注目の企画になっていました。 流石は救急医のお子さん -Kids ER-  企画への注目度が高まる中、第52回日本救急医学会総会・学術集会が開幕し、それと同時に、待望のWINK企画も幕を開けました。  初日の朝から、多くのお子さんが来場し、振り返れば、事前に用意された200枚のKids用スクラブが午前中で配り終わるほどの大盛況。「まさか、こんなに早くスクラブがなくなるとは・・・」と、谷河 先生の嬉しい悲鳴とともに、各コーナーがスタートしていきました。  “Kids ER”と銘打たれた体験コーナーには、VR機器を使ったハンズオン、聴診器体験、心電図の伝送体験、エコーで身体を見る体験、心肺蘇生(AEDを用いた)体験、救急車両体験、災害時のアウトドア実践などが用意され、年齢学年問わず多くお子さんが参加されていました。  各ブースにはスタンプラリーも併設しており、各所を回ると、救急車両のトミカや開催地(仙台)のご当地グッズ、絆創膏などがもらえるようになっていました。景品の一番人気はまさかの、“キャラクターの付いていない、機能性のある絆創膏”だったとのことで、「流石、救急医さんのお子さまです」と運営の方がつぶやいていました。  体験コーナーは、お子さまが実践するとあって、「お医者さんごっこ」の様になるのかな、と予想していましたが、その予想は良い方向に裏切られました。どのコーナーを見回しても、体験参加しているお子さんの表情は真剣そのもの。出展されている医療機器メーカーの方にお話をお伺いしても「普段、このような雰囲気の中で出展をすることがないので、楽しかったです。その反面、お子さんたちがとても真剣だったので、メーカーとして身が引き締まりました」と、直に接していた方々も同様に感じていらっしゃったようです。  日頃、親御さんが「お医者さん」として、患者さんに真摯に向き合っている、そんな姿をお子さんたちが、きっと理解をしているからこそ「これは遊びではない」という、空気が流れていたように感じました。  体験後に、子どもから色々と質問を受けている、救急医お父さんの真剣な表情も、非常に印象的なKids ERでした。 子どもも、大人も、同じ時を -イベント企画-  イベント企画は「ドクターヘリを知ろう!」「銀次さん(元プロ野球選手)と医療体験!」「RISAさん(仙台のヨガインストラクター)の『めぐるヨガ』!」の3企画が行われました。  「ドクターヘリを知ろう!」では、現役で活躍されているフライトドクターとフライトナースさんが登場し、トークショーを実施。スーツの試着体験なども用意され、普段は聞くことのできない、ドクターヘリのお仕事について、学びを深める企画でした。  「RISAさんの『めぐるヨガ』!」では、小さなお子さんを連れた救急医の方々をはじめ、未就学児から小学生くらいのお子さまが、一緒に出来るヨガ体験を実施。  「身も心もほっこり整いました。家でも実践します」と参加者の方から一言。また、出展企業の皆さんも、ニコニコ笑顔でヨガに参加されていたのも、非常に印象的な企画でした。  「銀次さんと医療体験!」では、元プロ野球選手の銀次さんが急に倒れてしまった!というシチュエーションの下、AEDを用いた心肺蘇生法の実践が行われました。  お子さんたちはどのように実践するのだろうかと、見ていましたが、流石はみなさん、救急医のご子息たち。司会者のお話を細かく聞かずとも、AEDを開き、指示に従って胸骨圧迫を開始していました。また、胸骨圧迫する姿勢も、しっかり膝立ち。機材をご提供されていたメーカー担当者さんも「これじゃ、大人が教えることは何もないですね。流石は救急医のお子さまたちです」と、ここでも、流石は救急医の子どもたち、と大人を唸らせていました。  イベント企画はどれを取っても、お子さんも親御さんも、さらにはメーカーさんも運営スタッフさんも、みんなが心の底から笑顔で参加されている様子が印象的でした。筆者の私も、学術集会の会場にいるということを忘れてしまうくらい、参加者の笑顔がキラキラ光る、そんな素敵な時を過ごすことができた、イベント企画でした。 配布されたスクラブを着て参加する子どもたち  さて、ここまでWINK企画の様子をレポートいたしましたが、これはまだまだ、ほんの一部。伝えきれていないことがたくさんございますので、本取材記事は前編・後編と分けてお伝えしたいと思います。 後編は、WINKセッション(子ども聴講可の口演セッション)と参加者へのインタビューを中心に、大会長の久志本 先生、企画担当の谷河 先生からの企画後の感想などをお伝えいたします。 ぜひ、後編もお読みください。 文責:ヒポクラ事務局 カワウソくん 子どもの笑顔がキラキラ輝く-第52回日本救急医学会総会・学術集会 WINK企画-取材レポート(後編)はこちら 医師・医学生専用SNS ヒポクラ  無料会員登録はこちら▼     日本救急医学会HP▼ https://www.jaam.jp/ 第52回日本救急医学会総会・学術集会HP▼ https://site.convention.co.jp/jaam52/
PCNSLの生存率改善に効果的な治療はどの組み合わせか?
PCNSLの生存率改善に効果的な治療はどの組み合わせか?
公開日:2024年11月6日 de Groot FA, et al. Eur J Cancer. 2024 Oct 13. [Epub ahead of print]  中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は、稀であるため、大量メトトレキサート(MTX)ベースのさまざまな治療レジメンの評価が十分に行われているとはいえない。オランダ・ライデン大学メディカルセンターのFleur A. de Groot氏らは、PCNSLに対する5つの大量MTXベースの多剤化学療法レジメンと2つの地固め療法後の臨床的特徴およびアウトカム(無増悪生存期間[PFS]、全生存期間[OS]、疾患特異的生存率[DSS])を評価するため、レトロスペクティブ多施設共同研究を実施した。European Journal of Cancer誌オンライン版2024年10月13日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・対象は、組織学的にPCNSLと確認され、大量MTXベースの治療(3g/m2/サイクル以上)を1サイクル以上行った患者346例。 ・レジメンには、MATRix(大量MTX+大量シタラビン[AraC]+チオテパ+リツキシマブ)、MBVP±HD-AraC±R(大量MTX+teniposide /エトポシド+カルムスチン+プレドニゾロン±大量AraC±リツキシマブ)、MP±R(大量MTX+プロカルバジン±リツキシマブ)、大量MTX+大量AraCを含めた。 ・導入後の全奏効(OR)率は69%、完全奏効(CR)率は28%、病勢進行は29%(100例)で観察された。 ・地固め療法を行った患者は126例(36%)。内訳は、HD-BCNU-TT/ASCT(大量BCNU/チオテパ+自家幹細胞移植)59例(17%)、全脳放射線療法67例(19%)。 ・多変量予後予測による死亡リスク不良に関連する臨床的特徴は、次のとおりであった。 【60歳超】HR:1.61、p=0.011 【LDH上昇】HR:1.75、p=0.004 【WLOステータス2以上】HR:1.56、p=0.010 ・大量AraCを含む導入レジメンは、含まないレジメンと比較し、生存率に有意なベネフィットをもたらした(HR:0.59、p=0.002)。 ・HD-BCNU-TT/ASCT(HR:0.44)または全脳放射線療法(HR:0.42)のどちらを優先するかに関わらず、地固め療法のベネフィットが確認された(p<0.001)。地固め療法は時間依存変数であった。 ・競合リスク分析では、地固め療法を行った患者と行わなかった患者では、リンパ腫に関連しない死亡率はいずれも低かった。  著者らは「PCNSLの死亡リスクには、年齢、LDH上昇、WHOステータスが関連することが確認された。大量AraCを含むレジメンおよびHD-BCNU-TT/ASCTまたは全脳放射線療法による地固め療法は、良好な生存率との関連が認められた」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら de Groot FA, et al. Eur J Cancer. 2024 Oct 13. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39427440 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
TP53変異MCLの第一選択に期待されるザヌブルチニブ+オビヌツズマブ+ベネトクラクス併用療法/Blood
TP53変異MCLの第一選択に期待されるザヌブルチニブ+オビヌツズマブ+ベネトクラクス併用療法/Blood
公開日:2024年11月5日 Kumar A, et al. Blood. 2024 Oct 22. [Epub ahead of print]  TP53変異を有するマントル細胞リンパ腫(MCL)は、標準的な免疫化学療法では生存率が不良であることが知られている。抗CD20モノクローナル抗体の有無に関わらず、BTKとBCL-2を阻害することでTP53変異を有するMCLに対する有効性が示唆されている。 米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのAnita Kumar氏らは、未治療のTP53変異を有するMCL患者を対象に、BTK阻害薬ザヌブルチニブ+抗CD20モノクローナル抗体オビヌツズマブ+BCL-2阻害薬ベネトクラクス併用療法の多施設共同第II相試験を実施した。Blood誌オンライン版2024年10月22日号の報告。  未治療のTP53変異を有するMCL患者に対し、1日目にザヌブルチニブ160mgを1日2回およびオビヌツズマブの投与を行った。サイクル1の1、8、15日目およびサイクル2〜8の1日目にオビヌツズマブ1,000mgを投与した。2サイクル以降、ベネトクラクスを週1回漸増しながら400mg /日まで増量し、追加した。24サイクル後、免疫シークエンシングアッセイで微小残存病変(MRD)が検出されず、患者が完全寛解(CR)となった場合、治療を中止した。主要エンドポイントは、2年無増悪生存期間(PFS)とした。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者数は25例。 ・最良総合効果(best overall response)は96%(24例)、完全奏効(CR)率は88%(22例)であった。 ・13サイクルでのMRD陰性(uMRD)は、uMRD5で95%(19例中18例)、uMRD6で84%(19例中16例)。 ・フォローアップ期間中央値は28.2ヵ月、2年PFS達成率は72%、疾患特異的生存率(DSS)は91%、全生存率(OS)は76%であった。 ・副作用は、一般的に軽度であり、下痢(64%)、好中球減少(32%)、輸注反応(24%)などが認められた。  著者らは「ザヌブルチニブ+オビヌツズマブ+ベネトクラクス併用療法は忍容性が良好であり、TP53変異を有するMCLに対する有効性が示された。本結果は、高リスク集団に対するザヌブルチニブ+オビヌツズマブ+ベネトクラクス併用療法レジメン使用および評価を裏付けるものである」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kumar A, et al. Blood. 2024 Oct 22. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39437708 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ステロイド抵抗性慢性GVHDに対するイブルチニブ〜多施設共同リアルワールド解析/Blood Adv
ステロイド抵抗性慢性GVHDに対するイブルチニブ〜多施設共同リアルワールド解析/Blood Adv
公開日:2024年11月1日 Pidala JA, et al. Blood Adv. 2024 Oct 25. [Epub ahead of print]  米国・H. Lee Moffitt Cancer Center and Research InstituteのJoseph A. Pidala氏らは、ステロイド治療抵抗性の慢性移植片対宿主病(GVHD)に対するイブルチニブ治療のリアルワールドでの有効性および安全性を評価するため、多施設共同レトロスペクティブ研究を実施した。Blood Advances誌オンライン版2024年10月25日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・対象データは、19施設より標準的に収集された270例。 ・慢性GVHDの臓器別内訳は、皮膚(75%)、眼球(61%)、口腔(54%)、筋/関節(47%)、消化管(26%)、肺(27%)、肝臓(19%)、生殖器(7%)、その他(4.4%)。 ・NIHの重症度は、軽症5.7%、中等症42%、重症53%。 ・重複型は39%にみられた。 ・KPSは80%以上が72%であった。 ・プレドニゾロンの用量中央値は0.21mg/kg(0〜2.27)。 ・イブルチニブは、慢性GVHD発症後、18.2ヵ月(中央値)で開始され、より早期の治療ラインで用いられていた(2次:26%、3次:30%、4次:21%、5次:9.6%、6次:10%、7次以降:1.2%)。 ・評価可能な対象患者のうち、6ヵ月のNIH全奏効率(CR/PR)は45%であった(PR:42%、CR:3%)。 ・奏効期間中央値は15ヵ月(1〜46)。 ・肝臓病変と6ヵ月全奏効率との関連が認められた(多変量OR:5.49、95%CI:2.3〜14.2、p<0.001)。 ・Best overall response(BOR)は56%であり、その多くは1〜3ヵ月で達成していた(86%)。 ・生存者のフォローアップ期間中央値は30.5ヵ月。 ・治療成功生存期間(FFS)は、6ヵ月で59%(53〜65)、12ヵ月で41%(36〜48)。 ・多変量解析では、高齢、ベースライン時のプレドニゾロン高用量、肺病変は、FFS不良と関連が認められた。 【高齢】HR:1.01、95%CI:1.00〜1.02、p=0.033 【ベースライン時のプレドニゾロン高用量】HR:1.92、95%CI:1.09〜3.38、p=0.032 【肺病変】HR:1.58、95%CI:1.10〜2.28、p=0.016 ・イブルチニブ中止の主な因子は、慢性GVHDの進行(44%)、毒性(42%)であった。  著者らは「リアルワールドにおけるイブルチニブのステロイド抵抗性慢性GVHDに対する有効性が確認された。本検討により、奏効率やFFSに関連する新たな洞察および治療中止と関連する毒性プロファイルが示された」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Pidala JA, et al. Blood Adv. 2024 Oct 25. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39454280 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
AMLに対するアザシチジン+ベネトクラクス短縮レジメンの有用性
AMLに対するアザシチジン+ベネトクラクス短縮レジメンの有用性
公開日:2024年10月31日 Fleischmann M, et al. Ann Hematol. 2024 Oct 25. [Epub ahead of print]  現在、ベネトクラクスと脱メチル化薬との併用療法は、強化化学療法が適応とならない高齢者急性骨髄性白血病(AML)に対する標準治療となっている。その有効性は良好であるにもかかわらず、臨床では寛解後の血球減少を伴うことが多く、治療期間の延長や用量変更を余儀なくされることも少なくない。ドイツ・ライプツィヒ大学のMaximilian Fleischmann氏らは、ベネトクラクスの治療期間を短縮したレジメンを使用した場合の有効性および安全性を評価するため、多施設共同研究を実施した。Annals of Hematology誌オンライン版2024年10月25日号の報告。  対象は、2021〜24年、ドイツの学術センター4施設において、ベネトクラクス(7日間投与:9例、14日間投与:11例)+5-アザシチジン(5〜7日間投与)併用療法による1stライン治療を行った成人AML患者20例。アウトカム指標には、骨髄奏効、輸血依存、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者の年齢中央値は73.5歳、二次性AMLが70%。 ・分子的な有害リスクは75%の患者で認められた。 ・全体として、全奏効(OR)率は100%、複合完全寛解(CR)率は78%であった。 ・ベネトクラクスの7日間投与と14日間投与との間に、奏効率の有意な差は認められなかった。 ・OS中央値は15ヵ月。 ・感染症関連の合併症は、55%に認められ、重度の敗血症が20%で認められた。  著者らは「AMLに対するアザシチジン+ベネトクラクス短縮レジメンは、標準レジメンと同等の有効性を示し、血液毒性を軽減する可能性が示唆された。これらの結果は、副作用を最小限にコントロールしながら、臨床アウトカムを最適化するための個別化治療の必要性を裏付けている」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Fleischmann M, et al. Ann Hematol. 2024 Oct 25. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39453477 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
アルコール摂取で寿命は何年縮むのか? 他4本≫ Journal Check Vol.123(2024年11月02日号)
アルコール摂取で寿命は何年縮むのか? 他4本≫ Journal Check Vol.123(2024年11月02日号)
アルコール摂取で寿命は何年縮むのか? アルコールが寿命に与える影響についてはまだ議論の余地があり、評価を行うための臨床試験は存在しない。著者らは、喫煙や教育の影響も考慮しつつ、男女におけるアルコール摂取と寿命の関係を評価するために、メンデルランダム化研究を実施した。Scientific Reports誌2024年10月25日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む キャベツの葉で即席湿布!? 著者らは、現在一般的に使用されている局所鎮痛剤の有効性と安全性を提示するため、2000~2023年の、PubMedとコクランライブラリーから得られた86件の二次文献をレビューし、推奨度分類(SORT)レベルを示した。Sports Health誌オンライン版2024年10月26日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 45歳以上に最適な運動量とは? 筋骨格系疾患(MSD)は高齢者の障害の主な原因であり、その予防のための身体活動(PA)の役割を理解することは重要である。著者らは、45歳以上の成人におけるPAレベルとMSDリスクとの関連や用量反応関係を明らかにして、ガイドライン作成の一助とするため、横断研究を実施した。BMC Public Health誌2024年10月25日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む コーヒー〇杯で便秘解消!? コーヒー摂取が便秘に与える影響は、依然として明らかではない。著者らは、コーヒー摂取量と便秘リスクの関連を調査し、さらに潜在的な効果修飾因子について検討するため、横断研究を実施した。PLOS ONE誌オンライン版2024年10月25日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 日本人において、SGLT2阻害薬はがんリスクを低下させるか? SGLT2阻害薬ががんの罹患と関連するかどうかは不明である。著者らは、日本の大規模な疫学データベースを用いて、糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬新規処方後のがん罹患率を比較した。Diabetes & Metabolism誌オンライン版2024年10月23日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ Journal Check Vol.122(2024年10月26日号) 運動するベストな時間帯は? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.121(2024年10月19日号) 長寿も結局は遺伝なのか? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.120(2024年10月12日号) 老化を遅らせるために、必要な運動量は? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.119(2024年10月05日号) 運動前のカフェイン摂取は、何に効く? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.118(2024年9月28日号) 1日何杯のコーヒーが、心血管代謝性多疾患併存リスク低下に最適か? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.117(2024年9月21日号) 老化を遅らせる薬、メトホルミン!? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.116(2024年9月12日号) ご褒美デーが逆効果!?“交互高脂肪食”に潜む動脈硬化のリスク 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.115(2024年9月05日号) 三大栄養素のうち、最も”質”を重視すべきはどれか? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.114(2024年8月29日号) カフェインレスのコーヒーでも利点を享受できるか? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.113(2024年8月22日号) 急激な老化のタイミングは、〇歳と〇歳!? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.112(2024年8月17日号) 1日1個のアボカドを半年食べ続けると…? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.111(2024年8月08日号) 〇gの野菜・果物摂取が、超加工食品の悪影響を打ち消す!? 他4本
FLに対する二重特異性抗体 vs. CAR-T細胞療法
FLに対する二重特異性抗体 vs. CAR-T細胞療法
公開日:2024年10月30日 Morabito F, et al. Eur J Haematol. 2024 Oct 27. [Epub ahead of print]  再発・難治性濾胞性リンパ腫(FL)の治療は、CAR-T細胞療法と二重特異性抗体の間で、議論の的となっている。いずれの薬剤も免疫生物学的および分子学的マーカーを標的としているが、臨床試験における直接比較が行われていないため、有効性の比較は不明なままである。イタリア・Gruppo Amici Dell'Ematologia FoundationのFortunato Morabito氏らは、再発・難治性FLに対する二重特異性抗体とCAR-T細胞療法の比較を行うため、文献レビューを実施した。European Journal of Haematology誌オンライン版2024年10月27日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・ZUMA-5試験などの重要な試験において、再発・難治性FLに対してアキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)は、完全奏効(CR)率79%、奏効期間中央値3年以上を達成しており、その有効性が報告されている。 ・同様に、TRANSCEND FL試験において、リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)は、CR率94%と報告されており、複数の治療歴を有する(heavily pretreated)患者における良好なアウトカムが示されている。 ・二重特異性抗体mosunetuzumabは、GO29781試験において、有望なアウトカムを示しており、heavily pretreatedの再発・難治性FL患者における全奏効(OR)率は62%であった。 ・CAR-T細胞療法は、1回の輸注で治療効果が得られる可能性があるものの、サイトカイン放出症候群(CRS)、神経毒性、血球減少などの重篤な有害事象のリスクもあるため、専門的なマネジメントおよび患者モニタリングが必要となる。 ・対照的に、二重特異性抗体は、CAR-T細胞療法と比較し、奏効率が低く、頻繁な投与が求められる点でリスク/ベネフィットが相殺されるが、より許容度の高い治療オプションでると考えられる。 ・CAR-T細胞療法と二重特異性抗体では、有効性・安全性プロファイルが異なるため、個別化治療戦略が不可欠である。 ・費用対効果を考慮する際には、両治療法における臨床アウトカムおよびQOLの改善の観点から評価する必要がある。CAR-T細胞療法は、初期費用が高額になるが、長期間寛解の可能性により反復治療や入院に伴う費用が軽減される可能性がある。  著者らは「今後の研究により、耐性メカニズムや最適な治療の順序が明らかになることで、再発・難治性FLのマネジメント戦略は、さらに改善されると考えられる」とまとめている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Morabito F, et al. Eur J Haematol. 2024 Oct 27. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39462177 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
7つのMM承認モノクローナル抗体の神経精神学的有害事象〜FDA有害事象報告分析
7つのMM承認モノクローナル抗体の神経精神学的有害事象〜FDA有害事象報告分析
公開日:2024年10月29日 Cicala G, et al. Pharmaceuticals (Basel). 2024; 17: 1266.  多発性骨髄腫(MM)の治療において、モノクローナル抗体は、革命をもたらした。しかし、モノクローナル抗体の神経精神学的安全性に関する市販後のデータは限られている。イタリア・メッシーナ大学のGiuseppe Cicala氏らは、MMに用いられるモノクローナル抗体に関連する神経精神学的有害事象を評価するため、FDA有害事象報告システム(FAERS)を用いて、レトロスペクティブファーマコビジランス分析を行なった。Pharmaceuticals(Basel, Switzerland)誌2024年9月25日号の報告。  2015〜23年の個別症例安全性報告(ICSR)より、1つ以上の神経精神学的有害事象が認められ、MMに承認されているモノクローナル抗体(ダラツムマブ、エロツズマブ、イサツキシマブ、belantamab、teclistamab、エルラナタマブ、talquentamab)を使用していた報告を、記述的および不均衡アプローチを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。 ・不均衡性に基づくデータマイニング手法を用いて検出されたSignals of Disproportionate Reporting(SDR)の未知のシグナルには、次の神経精神学的有害事象が含まれた。 【脳梗塞】 ・ダラツムマブ:45件(報告オッズ比[ROR]:2.39、95%信頼区間[CI]:1.79〜3.21、information component(IC):1.54、IC025-IC075:1.05〜1.90) ・エロツズマブ:25件(ROR:7.61、95%CI:5.13〜11.28、IC:3.03、IC025-IC075:2.37〜3.51) ・イサツキシマブ:10件(ROR:2.56、95%CI:1.38〜4.76、IC:1.67、IC025-IC075:0.59〜2.40) 【精神状態の変化】 ・ダラツムマブ:40件(ROR:2.66、95%CI:1.95〜3.63、IC:1.67、IC025-IC075:1.14〜2.04) ・belantamab:10件(ROR:4.23、95%CI:2.28〜7.88、IC:2.30、IC025-IC075:1.22〜3.03) 【変性意識状態】 ・ダラツムマブ:32件(ROR:1.97、95%CI:1.39〜2.78、IC:1.32、IC025-IC075:0.73〜1.74) ・belantamab:6件(ROR:2.35、95%CI:1.05〜5.23、IC:1.60、IC025-IC075:0.19〜2.52) 【ギランバレー症候群】 ・ダラツムマブ:23件(ROR:6.42、95%CI:4.26〜9.69、IC:2.81、IC025-IC075:2.11〜3.30) ・イサツキシマブ:8件(ROR:10.72、95%CI:5.35〜21.48、IC:3.57、IC025-IC075:2.35〜4.37) ・エロツズマブ:3件(ROR:4.74、95%CI:1.53〜14.7、IC:2.59、IC025-IC075:0.52〜3.80) 【起立不耐症】 ・ダラツムマブ:10件(ROR:12.54、95%CI:6.71〜23.43、IC:3.75、IC025-IC075:2.67〜4.48) ・エロツズマブ:4件(ROR:28.31、95%CI:10.58〜75.73、IC:5.00、IC025-IC075:3.24〜6.08)  著者らは「本分析により、MMに承認されているモノクローナル抗体のこれまで認識されていなかったいくつかのSDRが明らかとなった。ギランバレー症候群を含む一部の神経精神疾患については、有害事象の病因が複雑であり、完全には解明されていないため、さらなる調査が求められる」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Cicala G, et al. Pharmaceuticals (Basel). 2024; 17: 1266.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39458907 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
輸血依存性低リスクMDSに対するルスパテルセプトの治療効果をさらに向上させるポイントは
輸血依存性低リスクMDSに対するルスパテルセプトの治療効果をさらに向上させるポイントは
公開日:2024年10月28日 Jonasova A, et al. Front Oncol. 2024: 14: 1398331.  赤血球成熟促進薬ルスパテルセプトは、TGF-βシグナル伝達経路を阻害する薬剤であり、赤血球造血刺激因子(ESA)療法で治療反応が得られないまたは適さない輸血依存性の低リスク骨髄異形成症候群(MDS)に伴う貧血患者に対する新たな治療薬である。チェコ・カレル大学のAnna Jonasova氏らは、チェコの血液センター2施設におけるルスパテルセプトのリアルワールドデータを報告した。Frontiers in Oncology誌2024年10月2日号の報告。  対象は、2024年1月までに、カレル大学血液センター2施設(プラハおよびフラデツ・クラーロヴェー)で、ルスパテルセプト±ESAによる治療を行ったMDS患者54例(平均年齢:74歳、範囲:55〜95歳、男性:33例、女性:21例)。WHO2016分類では、MDS-RS-MLDが32例、MDS-MLDが7例、5q-+RSが2例、RARS-Tが12例、CMML-0+RSが1例であった。SF3B1変異のデータが入手可能であった患者は45例。4例のIPSS-M高リスクを除き、すべての患者がIPSS-RおよびIPSS-Mの低リスクに分類された。フォローアップ期間中央値は17ヵ月(範囲:1〜54)。すべての患者が輸血依存であった。8週間当たり4単位以上の高輸血依存患者は35例(64.8%)、4単位未満の低輸血依存患者は19例(35.2%)であった。診断からルスパテルセプト投与開始までの期間中央値は27ヵ月(範囲:4〜156)。ルスパテルセプト使用前にESAを使用していた患者は45例、第1選択薬としてルスパテルセプトを使用した患者は9例。ESAと併用した患者は31例(61%)であった。 主な結果は以下のとおり。 ・ルスパテルセプトを8週間以上投与した51例を評価した。 ・輸血非依存の達成率は、8週間以上が32例(62.7%)、12週間以上が31例(60.7%)、16週間以上が29例(56.8%)、24週間以上が25例(49%)であった。 ・輸血非依存でない血液学的改善が6例(11.7%)で認められた。 ・全体として、血液学的改善+輸血非依存を達成した患者は38例(74.5%)であった。 ・エポエチン アルファを併用した患者は31例(60.7%)。 ・治療反応が認められたすべての患者のうち21例(55.2%)において、エポエチン アルファとの併用により治療反応が改善し、16例で非輸血依存を達成した。 ・効果不十分であった患者は13例(25.5%)。再度、輸血依存に至った患者は8例(21%)。 ・ルスパテルセプトによる最適な治療反応を得るためには、最大35例において1.75mg/kgまで増量する必要があり、血液学的改善+輸血非依存を達成した患者は23例であった。 ・治療反応率は、輸血依存度により異なり、低輸血依存患者では79%、高輸血依存患者では50%が非輸血依存を達成した。 ・RS+患者では、非輸血依存達成率が70%であったのに対し、RS−患者では5人に1人だけだった。 ・SF3B1陽性患者39例の非輸血依存達成率は61.6%。 ・IPSS-MリスクがLow、Very lowの患者における血液学的改善+輸血非依存達成率は86%であったが、Moderate lowの患者では62%であった。 ・ルスパテルセプトは忍容性が良好であり、グレード2超の有害事象は認められなかった。  著者らは「実臨床におけるルスパテルセプトの輸血依存性MDSに対する有効性が確認された。とくに、IPSS-MリスクがLow、Very lowの患者に対して有用であると考えられる。このように良好な治療反応率を達成できた要因として、高用量(1.75mg/kg)での使用およびESAの併用を積極的に行ったことが影響していると推察される」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Jonasova A, et al. Front Oncol. 2024: 14: 1398331.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39416466 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性CLLの治療選択、新規薬剤の安全性プロファイル比較〜ネットワークメタ解析
再発・難治性CLLの治療選択、新規薬剤の安全性プロファイル比較〜ネットワークメタ解析
公開日:2024年10月25日 Monica M, et al. Ther Adv Med Oncol. 2024: 16: 17588359241285988.  ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬、ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ(PI3K)阻害薬、B細胞性リンパ腫-2(BCL-2)阻害薬など、新たな白血病治療薬の登場により再発・難治性慢性リンパ性白血病(CLL)の治療アウトカムは、有意に改善した。治療薬の進歩にも関わらず、これらの新規薬剤と従来の化学療法や免疫療法に関する総合的な安全性プロファイルは、十分にわかっておらず、直接比較した研究もほとんどない。ポーランド・ヤギェウォ大学のMagdalena Monica氏らは、再発・難治性CLLにおける新規治療薬、化学療法、免疫療法の安全性プロファイルを比較するため、ベイジアンネットワークメタ解析を行った。Therapeutic Advances in Medical Oncology誌2024年10月9日号の報告。 再発・難治性CLLに関するランダム化比較試験(RCT)を特定するため、システマティック文献レビューを実施した。検索には、主要な医療データベース(MEDLINE、Embase、CENTRAL)およびグレード文献を含め、安全性アウトカムを評価するため、ベイジアンNMAフレームワークに統合した。 主な結果は以下のとおり。 ・安全性アウトカムを比較するための、RCT14件が特定された。 ・全体的な有害事象に関しては、治療法により違いが認められなかった。 ・ベンダムスチン+リツキシマブ(BR療法)は、イブルチニブ(リスク比[RR]:0.62 、95%信頼区間[CI]:0.40〜0.86)、アカラブルチニブ(RR:0.69、95%CI:0.45〜0.94)、zanubrutinib(RR:0.64、95%CI:0.42〜0.91)、ベネトクラクス+リツキシマブ(RR:0.87、95%CI:0.79〜0.96)と比較し、グレード3以上の有害事象に対する安全性プロファイルがより良好であった。 ・グレード3以上の有害事象、重篤な有害事象、有害事象による治療中止および死亡率は、アカラブルチニブ、zanubrutinib、ベネトクラクス+リツキシマブでは同等であった。 ・ベネトクラクス+リツキシマブとBTK阻害薬とのほとんどの比較において、血液学的イベント、QOLに影響を及ぼすイベント、感染症関連の安全性プロファイルに有意な差は認められなかった。 ・BTK阻害薬固有のイベントでは、zanubrutinibは、アカラブルチニブよりも高血圧(RR:2.96、95%CI:1.74〜5.16)および出血(RR:1.38、95%CI:1.06〜1.81)のリスクが高かった。 ・アカラブルチニブとzanubrutinibの心房細動リスクには、差が認められなかった(RR:1.56、95%CI:0.74〜3.34)。  著者らは「ベネトクラクス+リツキシマブ、アカラブルチニブ、zanubrutinibの安全性プロファイルは許容可能であり、再発・難治性CLLにおける推奨可能な治療オプションである可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Monica M, et al. Ther Adv Med Oncol. 2024: 16: 17588359241285988.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39391352 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
1stラインでのダラツムマブ使用はauto-SCT後の生着に影響を及ぼすのか
1stラインでのダラツムマブ使用はauto-SCT後の生着に影響を及ぼすのか
公開日:2024年10月24日 Martino M, et al. Cancers (Basel). 2024; 16: 3307.  移植適応の未治療多発性骨髄腫(MM)に対し、ダラツムマブ+ボルテゾミブ+サリドマイド+デキサメタゾン(D-BTd療法)による導入療法は、欧州で自家幹細胞移植(auto-SCT)前の標準療法となっている。イタリア・Grande Ospedale Metropolitano Bianchi Melacrino MorelliのMassimo Martino氏らは、D-BTd療法がauto-SCT後の生着に及ぼす影響を調査した。Cancers誌2024年9月27日号の報告。  連続した未治療MM患者60例を対象に、導入療法としてD-BTd療法を4サイクル実施した。コンディショニングレジメンには、メルファラン200mg/m2を用いた。BTd療法を4サイクル実施した80例を対照群とし、比較を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・D-BTd療法群とBTd療法群における好中球および血小板の生着に達するまでの平均日数に、有意な違いが認められた。 【D-BTd療法群】好中球:11日、血小板:13日 【BTd療法群】好中球:10日、血小板:12日 ・単変量Cox解析では、D-BTd療法群における好中球生着のハザード比(HR)は、BTd療法群と比較し、42%有意に低いことが示唆された(HR:0.58、p=0.002)。また、多変量モデルでも同様の結果が確認された。 ・D-BTd療法群では、発熱性好中球減少症(FN)の頻度が高かった。 ・単変量および多変量ロジスティック回帰では、D-BTd療法とFNとの間に関連性が認められた。 ・移植の遅延と入院期間の延長との間に相関は認められなかった。 ・移植後、6ヵ月以内に死亡した患者はいなかった。  著者らは「本研究結果より、移植適応の未治療MM患者に対するダラツムマブを含む4剤併用による導入療法は、移植後の好中球および血小板の生着に遅延がみられるものの、移植の安全性アウトカムに影響を及ぼす可能性が低いことが示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Martino M, et al. Cancers (Basel). 2024; 16: 3307.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39409927 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
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