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超肥満患者にはDOACよりもワルファリンで治療すべきなのか
超肥満患者にはDOACよりもワルファリンで治療すべきなのか
公開日:2025年2月21日 Sagris M, et al. Curr Vasc Pharmacol. 2025 Feb 11. [Epub ahead of print]  現在のガイドラインやコンセンサスステートメントなどでは、超肥満患者に直接経口抗凝固薬(DOAC)を使用する際には、注意が必要であるとされており、このような患者に対する治療では、ワルファリンが最も研究されている。ギリシャ・アテネ国立カポディストリィアコ大学のMarios Sagris氏らは、BMIが40kg/m2超の心房細動または静脈血栓塞栓症患者を対象に、DOACとワルファリンの有効性および安全性を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Current Vascular Pharmacology誌オンライン版2025年2月11日号の報告。  2024年1月4日までに公表された研究をデータベースよりシステマティックに検索した。BMIが40kg/m2超の心房細動または静脈血栓塞栓症患者におけるDOACとワルファリンの有効性および安全性を比較した研究を特定した。全死亡率、大出血・小出血、脳卒中/全身性塞栓、静脈血栓塞栓症およびこれらの複合エンドポイントのアウトカムは、ランダム効果モデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。 ・24研究、11万9,960例の患者をメタ解析に含めた。 ・DOAC使用患者は5万1,363例(43%)、ワルファリン使用患者は6万8,597例(57%)。 ・DOAC使用は、ワルファリン使用と比較し、全死亡率および大出血リスクの低下と有意な関連が認められた。 ・複合エンドポイント、脳卒中/全身性塞栓、静脈血栓塞栓症のリスクは、DOAC使用患者の方が低かったが、統計学的に有意な差は認められなかった。また、DOAC使用と比較したワルファリンの優位性は示されなかった。 ・小出血イベント、出血性脳卒中、虚血性脳卒中のリスクは、ワルファリン使用と比較し、DOAC使用の方が低かった。 ・抗凝固薬の適応(心房細動または静脈血栓塞栓症)に基づくサブグループ解析でも、評価したすべてのエンドポイントにおいて、DOACはワルファリンよりも優れる傾向がみられた。  著者らは「心房細動、静脈血栓塞栓症のいずれにおいても、超肥満患者に対するDOAC使用は、ワルファリンよりも潜在的に有効であり、安全性プロファイルも良好であることが示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Sagris M, et al. Curr Vasc Pharmacol. 2025 Feb 11. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39950453 ヒポクラ(医師限定)へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら
CAR-T細胞療法後の同種HSCT連続治療、メリットがある患者像は?
CAR-T細胞療法後の同種HSCT連続治療、メリットがある患者像は?
公開日:2025年2月20日 Yang T, et al. J Adv Res. 2025 Feb 11. [Epub ahead of print]  CAR-T細胞療法は、再発・難治性B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の治療環境に革命的な変化をもたらした。同種造血幹細胞移植(HSCT)へのCAR-T細胞療法ブリッジングは、再発率低下に寄与する可能性がある。しかし、多くの研究は、短期的アウトカムのみに焦点を当てており、全体的な予後に対する長期的な持続可能性に関する包括的なデータは、不十分であった。中国・浙江大学のTingting Yang氏らは、CAR-T細胞療法後に同種HSCTによる連続治療を行った患者におけるリアルワールドの長期フォローアップデータを評価した。Journal of Advanced Research誌オンライン版2025年2月11日号の報告。  対象は、2016年1月〜2024年5月にCAR-T細胞療法後に微小残存病変(MRD)が完全奏効(CR)と判定され、その後、同種HSCTを行った再発・難治性B-ALL患者51例。主要アウトカムには、全生存期間(OS)、無白血病生存(LFS)、非再発死亡率(NRM)、累積再発割合(CIR)を含めた。急性・慢性の移植片対宿主病(GVHD)およびGVHD-free survival(GRFS)についても調査した。 主な結果は以下のとおり。 ・移植時の年齢中央値は32.1歳。 ・HLA半合致HSCTが88.2%、非血縁または血縁者HSCTが11.8%。 ・100日目の急性GVHDの累積発生率は、グレードI〜IVで31.4%、グレードII〜IVで15.7%。 ・4年後の慢性GVHDの累積発生率は、48.3%。 ・フォローアップ期間中央値は43.2ヵ月。 ・4年後のOSは68.9%、LFSは61.4%、GRFSは39.5%。 ・再発は15例(29.4%)でみられ、11例は抗原陽性再発であった。 ・4年後のNRMは10.6%、CIRは28.0%。 ・多変量解析では、45歳以上および高リスク群の患者において、OS(各々、p=0.018、p=0.038)およびLFS(各々、p=0.010、p=0.030)が有意に低かった。  著者らは「本リアルワールド研究においても、臨床試験で報告された結果と同様に、良好な長期的アウトカムが示され、4年間のフォローアップ調査で、持続的かつ永続的な奏効が認められた。しかし、45歳以上の患者や高リスク群の場合、これらのベネフィットは顕著ではなくなる可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Yang T, et al. J Adv Res. 2025 Feb 11. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39947324 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ アンケート:ご意見箱 ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
花粉症予防に有用なお茶の種類とその摂取頻度は?
花粉症予防に有用なお茶の種類とその摂取頻度は?
公開日:2025年2月20日 Aoki N, et al. J Nutr Sci. 2025: 14: e2.  カテキンを含むお茶の摂取は、アレルギー症状に対して潜在的に有益な影響を及ぼすなど、健康関連ベネフィットとの関連が示唆されている。しかし、お茶の摂取量とアレルギー症状との関連についての大規模な疫学研究は、限られている。順天堂大学の青木 のぞみ氏らは、大規模な日本における疫学コホートにより、お茶の摂取頻度と季節性花粉症の主な原因であるスギ花粉アレルギーとの関連を調査した。Journal of Nutritional Science誌2025年1月10日号の報告。  対象は、東北在住の地域住民1万6,623人。血液検査で評価したスギ花粉抗体レベルおよび自己記入質問票によるお茶(緑茶、番茶、烏龍茶、紅茶)の摂取頻度に関するデータを収集した。お茶の摂取頻度により、3群(1回/週未満、1〜6/週、1日1回以上)に分類した。お茶の摂取頻度とスギ花粉特異的IgE血清レベル(lumicount陰性:0〜1.39、陽性:1.40以上)との関連を評価するため、ロジスティック回帰モデルを用いて分析した。 主な結果は以下のとおり。 ・緑茶の摂取量とスギ花粉特異的IgEとの間に、逆相関が認められた。 ・1日1回以上の緑茶の摂取は、それ未満の場合と比較し、調整オッズ比が0.81(95%CI:0.70〜0.94)であった。 ・番茶、烏龍茶、紅茶については、スギ花粉特異的IgEとお茶の摂取頻度との間に、統計学的に有意な関連は認められなかった。  著者らは「カテキンを含むお茶のなかでも緑茶の摂取のみが、スギ花粉特異的IgE陽性率の低下と関連している可能性が示唆された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Aoki N, et al. J Nutr Sci. 2025: 14: e2.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39943933 ヒポクラ(医師限定)へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら
コーヒーでコロナ予防!? 他4本≫ Journal Check Vol.137(2025年02月22日号)
コーヒーでコロナ予防!? 他4本≫ Journal Check Vol.137(2025年02月22日号)
コーヒーでコロナ予防!? コーヒーの健康効果は広く研究されているが、新型コロナウイルス感染症の予防や治療に有益であるかどうかは十分に検証されていない。 著者らは、コーヒーの定期的な摂取が新型コロナウイルス感染症の予防や回復に及ぼす効果について系統的に評価し、分子ドッキング法を用いて考え得る作用機序を調査した。Medicine誌2025年2月14日号の報告。 ≫ヒポクラPLUSで続きを読む 結局、60歳以上の厳格な血圧管理は有用か? 高齢者の最適な降圧目標値は、依然として議論の対象となっている。著者らは60歳以上の高血圧患者における厳格な血圧コントロールの有効性と安全性を評価するために、ランダム化比較試験のメタ解析を行った。Clinical and Experimental Hypertension誌オンライン版2025年2月14日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 片頭痛に効く呼吸法とは? 片頭痛はQOLに大きな影響を及ぼし、治療薬は存在するが副作用や効果不十分などの限界があるため、非薬物療法への関心が高まっている。著者らは、片頭痛発作の頻度と重症度、および関連障害を軽減するための非薬理学的介入として「交互片鼻呼吸」の有効性を評価するため、無作為化比較試験を実施した。Primary Health Care Research & Development誌2025年2月14日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 座りっぱなしでも、抗炎症食摂取で、死亡リスク相殺!? 座りっぱなしによる健康への悪影響には慢性炎症が関与しており、これは食事による炎症の影響を受ける可能性がある。著者らは、米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを分析し、食事性炎症指数、座りっぱなしの時間、死亡リスクとの関連を調査した。Nutrition & Metabolism誌2025年2月14日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 注意すべき超加工食品とは? 米国家庭で購入される食品の大部分(約65%)は、超加工食品(UPF)と考えられている。UPF摂取と認知に関する研究の多くは、UPFとみなされる食品の種類に大きなばらつきがあるにもかかわらず、UPFを単一のものとして測定している。著者らは、UPFの各カテゴリーの摂取量が認知障害発症リスクにどの程度関連しているかを調査した。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2025年2月12日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む ヒポクラへ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ Journal Check Vol.136(2025年02月15日号) 「ビーフ or チキン」アルツハイマー病に影響する食品は? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.135(2025年02月08日号) コーヒー・紅茶の健康効果が高いのはどんな人? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.134(2025年02月01日号) 筋トレの「神話」と「真実」:ジム利用者は正解を知っている? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.133(2025年01月25日号) 結局、赤肉は健康に是か非か? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.132(2025年01月18日号) コーヒーはいつ飲むのがベストか? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.131(2025年01月11日号) 結局、アジア人にとって乳製品はCVDリスクを減らすのか? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.130(2024年12月21日号) 月1回未満の性行為は、うつ病リスクを高める!? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.129(2024年12月14日号) 寒さによる"震え”は、1日〇時間でダイエット効果あり!? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.128(2024年12月07日号) 筋トレに最適な時間帯は、午前?午後? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.127(2024年11月30日号) コーヒーと筋肉量の関係:性別・年代別の最適なコーヒー摂取量は? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.126(2024年11月23日号) この1時間の追加歩行で、寿命は何時間延長する? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.125(2024年11月16日号) カロリー制限で痩せるのは女性だけ!? 他4本
TKI治療抵抗性CMLに対して新規TKIであるvodobatinibの有用性は示されるか
TKI治療抵抗性CMLに対して新規TKIであるvodobatinibの有用性は示されるか
公開日:2025年2月19日 Cortes JE, et al. Lancet Haematol. 2025 Feb 7. [Epub ahead of print]  慢性骨髄性白血病(CML)において、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に対する抵抗性または不耐性は、依然として治療上の大きな課題である。米国・オーガスタ大学のJorge E. Cortes氏らは、ポナチニブおよびアシミニブを含む3つ以上のTKIにより治療を行ったフィラデルフィア染色体(Ph)陽性CML患者に対する、新しい選択的BCR-ABL1 TKIであるvodobatinibの安全性、抗白血病作用、薬物動態を明らかにするため、非盲検多施設共同国際第I/II相試験を実施した。The Lancet. Haematology誌オンライン版2025年2月7日号の報告。  本非盲検多施設共同国際第I/II相試験は、10ヵ国(ベルギー、フランス、ハンガリー、インド、イタリア、ルーマニア、韓国、スペイン、英国、米国)、28施設で実施された。対象は、ECOG PSが2以下の18歳以上のPh陽性CMLおよびALL患者(ALLは第I相試験のみ)。第I相試験では、3つ以上のTKIによる治療歴があり、他に利用可能な治療オプションがなかった患者を含めた。第II相試験では、3つ以上のTKIで奏効が消失およびポナチニブ治療歴を有する治療抵抗性およびまたは不耐性の患者を対象とした。Thr315Ile変異を有する患者は、第Iおよび第II相試験より除外した。対象患者には、有害事象、病勢進行、フォローアップ調査の失敗、死亡により治療を中止しない限り、1コース28日間で1日1回経口vodobatinib(12〜240mg)の自己投与を最大60ヵ月(65コース)実施した。主要エンドポイントは、vodobatinibの第I相試験の用量制限毒性に基づく最大耐用量、抗白血病作用(第II相試験における慢性期の細胞遺伝学的大奏効[CCyR+PCyR]、移行期または急性転化期の血液学的大奏効)の評価とした。Vodobatinibの安全性、抗白血病作用、薬物動態の評価は、第Iおよび第II相試験のデータを統合分析することにより決定した。なお、データカットオフ時点(2023年7月15日)で、対象患者募集の課題により、第II相試験は早期終了した。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者数は78例。すべての患者で1回以上vodobatinibが投与され、安全性および有効性の分析対象に含めた。 ・第I相試験登録患者数は58例(2017年4月6日〜2023年6月20日)、第II相試験登録患者数は20例(2023年3月3日〜2023年3月29日)。 ・病期分類では、慢性期66例(85%)、移行期8例(10%)、急性転化期4例(5%)。 ・男性が43例(55%)、女性が35例(45%)。 ・年齢中央値は、59.0歳(IQR:47.0〜66.0)。 ・フォローアップ期間中央値は、22.3ヵ月(IQR:11.1〜43.9)。 ・vodobatinibを240mg投与した患者2例で用量制限毒性が認められたため(グレードIIIの呼吸困難:1例、グレードIIの体液過剰)、最大耐用量は204mgとみなした。 ・治療関連有害事象が認められた患者は73例(94%)、多くはグレードII以下の血液学的または消化器系の有害事象であった。 ・グレードIII以上の治療関連有害事象は47例(60%)でみられ、主な有害事象は、血小板減少(14例、18%)、好中球減少(10例、13%)、貧血(9例、12%)、リパーゼ増加(8例、10%)などであった。 ・試験中に死亡した患者は7例(9%)、そのうち1例は、治験責任医師の判断により治療に関連する死亡とされた。 ・慢性期のCML患者におけるCCyR+PCyRは、データカットオフ時点で63例中44例(70%)、そのうち第II相試験で16例中12例(75%)に認められた。 ・移行期のCML患者における血液学的大奏効は、データカットオフ時点で7例中6例(86%、期間中央値:17.8ヵ月[IQR:10.2〜24.3])、そのうち第II相試験で評価可能であった3例(100%)すべてに認められた。 ・急性転化期のCML患者における血液学的大奏効は、データカットオフ時点で4例中2例(50%)、奏効期間中央値は6.2ヵ月(IQR:3.2〜9.3)であった。なお、第II相試験での患者登録はなかった。  著者らは「第I/II相試験の統合解析により、ポナチニブやアシミニブを含む複数のTKI治療歴を有する進行期CML患者に対し、vodobatinibは臨床的に意味のある抗白血病作用および許容可能な安全性プロファイルを有する薬剤であり、いまだ満たされていない臨床ニーズを改善する可能性が示唆された。第II相試験は、統計学的に検出力が不十分なため、第III相ランダム化試験およびより早期の治療ラインでのさらなる調査が必要とされる」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Cortes JE, et al. Lancet Haematol. 2025 Feb 7. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39929221 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ アンケート:ご意見箱 ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
ベンゾジアゼピン減量・中止のための臨床実践ガイドライン
ベンゾジアゼピン減量・中止のための臨床実践ガイドライン
公開日:2025年2月19日 Palagini L, et al. Sleep Med. 2025 Jan 31. [Epub ahead of print]  現在のガイドラインでは、慢性不眠症の第1選択治療として、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)が推奨されている。欧州ガイドラインにおける薬理学的治療の推奨事項には、短時間または中間作用型のベンゾジアゼピン系睡眠薬・Z薬(エスゾピクロン、zaleplon、ゾルピデム、ゾピクロン)、デュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA:ダリドレキサント)、メラトニン受容体作動薬(徐放性メラトニン2mg)などの薬剤が含まれている。不眠症は慢性的な疾患であり、一部の治療に反応しない患者も少なくないため、さまざまな治療アプローチや治療薬の切り替えが必要とされる。しかし、現在の欧州では、これらの治療薬切り替えを安全かつ効果的に実践するためのプロトコルに関して、明確な指標が示されているわけではない。イタリア・ピサ大学のLaura Palagini氏らは、このギャップを埋めるために、不眠症に使用される薬剤を切り替える手順と妥当性を評価し、実臨床現場で使用可能な不眠症治療薬の減量アルゴリズムを提案した。Sleep Medicine誌オンライン版2025年1月31日号の報告。  不眠症治療薬の切り替え手順の評価には、RAND/UCLA適切性評価法を用いた。PRISMAガイドラインに従い実施された文献をシステマティックにレビューし、いくつかの推奨事項を作成した。 主な結果は以下のとおり。 ・選択された文献は21件。 ・ベンゾジアゼピン系睡眠薬およびZ薬の中止は、段階的に行う必要があり、1週間当たり10〜25%ずつ減少すること。 ・マルチコンポーネントCBT-I、DORA、エスゾピクロン、メラトニン受容体作動薬は、必要に応じて減量期間を延長可能なクロステーパプログラムにより、ベンゾジアゼピン系睡眠薬およびZ薬の中止を促進することが示唆された。 ・DORA、メラトニン受容体作動薬は、特別な切り替えや処方中止のプロトコルは不要であった。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Palagini L, et al. Sleep Med. 2025 Jan 31. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39923608 ヒポクラ(医師限定)へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら
多発性骨髄腫の1stラインにD-BLd療法は支持されるか〜CEPHEUS試験
多発性骨髄腫の1stラインにD-BLd療法は支持されるか〜CEPHEUS試験
公開日:2025年2月18日 Usmani SZ, et al. Nat Med. 2025 Feb 5. [Epub ahead of print]  多発性骨髄腫(MM)の治療において、ダラツムマブをベースとした3剤併用および4剤併用の標準治療レジメンは、未治療MM患者の生存率向上に寄与することが実証されている。現在、未治療で移植適応のないMM患者では、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(DLd療法)またはボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(BLd療法)のいずれかによる3剤併用療法が、標準療法とされている。米国・メモリアルスローンケタリングがんセンターのSaad Z. Usmani氏らは、未治療で移植適応のないMM患者または初期治療として移植が計画されていないMM患者を対象に、ダラツムマブ+BLd療法(D-BLd療法)の有用性を評価するため、ランダム化第III相試験であるCEPHEUS試験を実施した。Nature Medicine誌オンライン版2025年2月5日号の報告。  対象は、未治療で移植適応のないまたは初期治療として移植が計画されていないMM患者約395例。D-BLd療法群またはBLd療法群のいずれかにランダムに割り付けられた。8コースのD-BLd療法またはBLd療法を実施した。その後、病勢進行が認められるまでD-Ld療法またはLd療法を継続した。主要エンドポイントは、次世代シーケンサー(NGS)による10−5での全体的な微小残存病変(MRD)陰性化率とした。主な副次的エンドポイントは、完全奏効(CR)以上の割合、無増悪生存期間(PFS)、10−5での持続的なMRD陰性化を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・フォローアップ期間中央値は58.7ヵ月。 ・MRD陰性化率は、D-BLd療法群で60.9%、BLd療法群で39.4%であった(オッズ比:2.37、95%信頼区間[CI]:1.58〜3.55、p<0.0001)。 ・D-BLd療法群では、BLd療法群よりもCR以上の割合、持続的なMRD陰性化率が有意に高かった。  【CR以上の割合】81.2% vs.61.6%、p<0.0001  【持続的なMRD陰性化率(12ヵ月以上)】48.7% vs. 26.3%、p<0.0001 ・病勢進行または死亡リスクは、D-BLd療法群の方がBLd療法群よりも43%低かった(ハザード比:0.57、95%CI:0.41〜0.79、p=0.0005)。 ・有害事象は、ダラツムマブおよびBLd療法で報告されている既知の安全性プロファイルと一致していた。  著者らは「BLd療法にダラツムマブを併用することで、MRD陰性などの奏効がより深く、持続的にみられることが示された。未治療で移植適応のないまたは初期治療として移植が計画されていないMM患者に対する新たな標準治療として、D-BLd療法による4剤併用は支持されるものである」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Usmani SZ, et al. Nat Med. 2025 Feb 5. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39910273 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ アンケート:ご意見箱 ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
消化器がんリスクを上げる食事と下げる食事は?
消化器がんリスクを上げる食事と下げる食事は?
公開日:2025年2月18日 Qin X, et al. Front Nutr. 2025: 12: 1539401.  近年、消化器がんの発生率は増加している。消化器がんは、世界においてがんの死因の主な原因の1つであり、生命や健康に深刻な脅威をもたらしている。主な消化器がんである胃がん、大腸がん、肝がんの進行に対する食事の影響は、とくに注目されている。しかし、食事因子と消化器がんとの関連は、十分に調査されていない。中国・吉林大学のXinxin Qin氏らは、30種の食事因子と消化器がんとの関連性を評価するため、横断的研究を実施した。Frontiers in Nutrition誌2025年1月22日号の報告。  対象は、2007〜18年のNHANES調査に参加した20歳以上の成人3万789人。食事因子30種と消化器がんとの関連を評価した。参加者の人口統計学的特徴は、記述式分析により調査した。加重線形回帰モデルを用いてp値を算出した。カテゴリ変数は、パーセントで記述し、加重カイ二乗検定を用いてp値を算出した。  大腸がん、胃がん、肝がんと相関が認められた食事因子は次のとおり。 ・大腸がんと正の相関:タンパク質、ビタミンB1、カルシウム、鉄 ・大腸がんと負の相関:ビタミンB2、リン ・胃がんと正の相関:ビタミンD、銅 ・胃がんと負の相関:葉酸、ビタミンB12 ・肝がんと正の相関:リコピン、ビタミンB2、カルシウム、鉄、亜鉛 ・肝細胞がんと負の相関:ビタミンE ・それ以外では、食事因子と消化器がんとの関連は認められなかった。  著者らは「食事摂取は消化器がんと関連しており、これらの結果を検証するためにも更なる疫学研究が求められる」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Qin X, et al. Front Nutr. 2025: 12: 1539401.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39911800 ヒポクラ(医師限定)へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら
再発・難治性MCLに対するイブルチニブ+ベネトクラクス併用療法〜SYMPATICO試験
再発・難治性MCLに対するイブルチニブ+ベネトクラクス併用療法〜SYMPATICO試験
公開日:2025年2月17日 Wang M, et al. Lancet Oncol. 2025; 26: 200-213.  イブルチニブとベネトクラクスの併用療法は、互いに補完し合う作用機序により、マントル細胞リンパ腫(MCL)において、有望な臨床効果を示すことが期待されている。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのMichael Wang氏らは、再発・難治性MCL患者を対象に、イブルチニブ+ベネトクラクス併用療法の有効性および安全性を評価するため、多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験(SYMPATICO試験)を実施した。The Lancet. Oncology誌2025年2月号の報告。  SYMPATICO試験には、ヨーロッパ、北米、アジア太平洋地域の84施設が参加した。対象患者は、2018年4月26日〜2019年8月28日の登録された1〜5回の治療歴を有するEOCG PSが0〜2の病理学的に再発または難治性のMCLと診断された18歳以上の成人患者267例。患者は、イブルチニブ+ベネトクラクス併用療法群(IBT+VEN群)134例またはイブルチニブ+プラセボ療法群(対照群)133例にランダムに割り付けられ、病勢進行または許容できない毒性が認められない限り2年間治療を継続した。イブルチニブの用量は560mg/日、ベネトクラクスは5週間かけて400mg/日まで増量した。ランダム化および治療割り付けは、EOCGのPS、治療歴、腫瘍崩壊症候群リスクにより層別化されたstratified permuted block scheme(ブロックサイズ:2 and 4)を用いて行った。患者および治験責任医師は、治療割り当てについて盲検化された。主要エンドポイントは、ITT集団における無増悪生存期間(PFS)の治験責任医師による評価とした。安全性については、研究期間中に1回以上治療を行ったすべての患者を評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者267例のうち、男性は211例(79%)、女性は59例(21%)。 ・フォローアップ期間中央値は51.2ヵ月(IQR:48.2〜55.3)。 ・PFS中央値は、IBT+VEN群で31.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:22.8〜47.0)、対照群で22.1ヵ月(95%CI:16.5〜29.5)であった(ハザード比[HR]:0.65、95%CI:0.47〜0.88、p=0.0052)。 ・主なグレードIII〜IVの有害事象は、好中球減少、血小板減少、肺炎であった。  【好中球減少】IBT+VEN群:31%(134例中42例)、対照群:11%(132例中14例)  【血小板減少】IBT+VEN群:13%(17例)、対照群:8%(10例)  【肺炎】IBT+VEN群:12%(16例)、対照群:11%(14例) ・重篤な有害事象は、IBT+VEN群で60%(81例)、対照群で60%(79例)にみられた。 ・治療関連死亡は、IBT+VEN群で3例(COVID-19感染、心停止、呼吸不全)、対照群で2例(心不全、COVID-19関連肺炎)に発生した。  著者らは「再発・難治性MCL患者に対するIBT+VEN併用療法は、対照群(IBT単剤療法)と比較し、PFSの有意な改善をもたらし、未知の安全性プロファイルは検出されなかった」とし、このことから「再発・難治性MCLに対するIBT+VEN併用療法は、ベネフィット・リスクプロファイルが良好な治療選択肢である」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Wang M, et al. Lancet Oncol. 2025; 26: 200-213.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39914418 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ アンケート:ご意見箱 ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
赤ワインの新たな生物学的効果、ヘプシジン発現調節メカニズムとは?
赤ワインの新たな生物学的効果、ヘプシジン発現調節メカニズムとは?
公開日:2025年2月17日 Nazlic J, et al. Food Funct. 2025 Feb 11. [Epub ahead of print]  アルコール摂取は、鉄代謝制御の中心を担うペプチドホルモンであるヘプシジンの発現低下と関連しており、体内の鉄蓄積に影響を及ぼす可能性がある。ワインに含まれるポリフェノールは、ヘプシジン発現や鉄吸収に対するアルコールとは異なる影響が示唆されている。クロアチア・スプリット大学のJurica Nazlic氏らは、血清ヘプシジン濃度に対する赤ワインの影響およびそのメカニズムを評価した。Food & Function誌オンライン版2025年2月11日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・以前の研究において、健康成人13例および2型糖尿病患者18例を対象に2週間のアルコールフリー後、赤ワイン300mlを3週間摂取した際の血清ヘプシジン濃度の変化を検討した。その結果、赤ワイン摂取による血清ヘプシジン濃度の減少が確認された。 ・赤ワイン摂取後のヘプシジン減少メカニズムを明らかにするため、対象者の予備の血清サンプルを用いて、追加の生物学的分析を行った。 ・両群において、エリスロポエチンレベルの上昇を伴うヘプシジン減少が認められた。 ・2型糖尿病患者のみで、エリスロフェロンの有意な増加が確認された。 ・これらの結果は、赤ワインの摂取により、エリスロポエチン−エリスロフェロン−ヘプシジン経路が活性化されることを示唆している。 ・エリスロポエチン−エリスロフェロン−ヘプシジン経路の活性化の指標として、両群で赤血球分布幅が増加した。また、2型糖尿病患者では、網状赤血球数の増加および血清フェリチンの減少がみられた。  著者らは「鉄分の恒常性およびヘプシジンの機能全般に影響を及ぼす条件において重要な、赤ワインの新たな生物学的効果が明らかとなった」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Nazlic J, et al. Food Funct. 2025 Feb 11. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39931951 ヒポクラ(医師限定)へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら
「ビーフ or チキン」アルツハイマー病に影響する食品は?
「ビーフ or チキン」アルツハイマー病に影響する食品は?
公開日:2025年2月15日 Huang Y, et al. Food Funct. 2025 Feb 3. [Epub ahead of print]  食習慣とアルツハイマー病との因果関係を評価するため、中国・The First Affiliated Hospital of Ningbo UniversityのYi Huang氏らは、2サンプルのメンデルランダム化解析を用いて、本研究を実施した。Food & Function誌オンライン版2025年2月3日号の報告。  ゲノムワイド関連研究(GWAS)データと並行し、2サンプルのメンデルランダム化(MR)解析を用いて、17食品の食習慣とアルツハイマー病リスクとの因果関係を包括的に評価した。結果のロバストを保証するため、単変量MR解析および多変量MR解析の両方を使用した。すべての分析には、逆分散重み付け(IVW)法を用いた。感度分析には、最尤法、MR-RAPS法、MR-Egger法を用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・単変量MR解析では、アルツハイマー病リスク上昇と有意な関連が認められた食品は、加工肉、鶏肉、牛肉であった。  【加工肉】オッズ比(OR):1.26、95%信頼区間(CI):1.01〜1.59、p=0.044  【鶏肉】OR:2.06、95%CI:1.18〜3.59、p=0.011  【牛肉】OR:1.79、95%CI:1.25〜2.57、p=0.002 ・感度分析では、加工肉、鶏肉、牛肉の摂取との関連は、各方法において一貫しており、正の相関を示すことが明らかとなった。 ・多変量MR解析では、うつ病で調整した後、加工肉、鶏肉、牛肉の摂取量と正の相関(有意または傾向)が確認された。  【加工肉摂取量】OR:1.376、95%CI:1.015〜1.864、p=0.040  【鶏肉摂取量】OR:2.174、95%CI:1.205〜3.922、p=0.010  【牛肉摂取量】OR:1.428、95%CI:0.866〜2.355、p=0.163  著者らは「加工肉、鶏肉、牛肉の摂取は、アルツハイマー病リスクと相関していることが明らかとなった」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Huang Y, et al. Food Funct. 2025 Feb 3. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39898984 ヒポクラ(医師限定)へ ※新規会員登録はこちら
80歳以上の日本人DLBCLに対する減量Pola-R-CHP療法、実臨床での有用性は
80歳以上の日本人DLBCLに対する減量Pola-R-CHP療法、実臨床での有用性は
公開日:2025年2月14日 Sato S, et al. Blood Res. 2025; 60: 10.  80歳以上で未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者に対するポラツズマブ ベドチンとR-CHP療法(リツキシマブ+シクロホスファミド+ドキソルビシン+プレドニゾロン)の併用療法(Pola-R-CHP療法)の有効性および安全性は、ほとんど調査されていない。神奈川県・湘南鎌倉総合病院の佐藤 淑氏らは、高齢者コホートであるPOLARIX試験の結果を拡張し、リアルワールドにおける80歳以上の日本人DLBCL患者における減量Pola-R-CHP療法の有効性および安全性を評価するため、レトロスペクティブに分析を行った。Blood Research誌2025年2月5日号の報告。  対象は、2022年9月〜2024年2月に当院でPola-R-CHP療法を行った80歳以上のDLBCL患者38例。毒性や病勢進行により早期に治療を中止した患者も含め、1コース以上の化学療法を行った。すべての患者の相対用量強度(RDI)をモニタリングした。Pola-R-CHP療法の用量調整は、主治医の裁量で実施した。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者の年齢中央値は84.3歳(範囲:80〜95)、PS2以上の患者は8例(21%)。 ・MYCおよびBCL2再構成を伴う高悪性度B細胞リンパ腫患者1例も対象に含めた。 ・ステージIII〜IVが30例(79%)、IPIの高リスク群16例(42%)、CNS-IPIの高リスク群4例(10%)。 ・治療コース中央値は5コース(範囲:1〜6)、全6コースを完了した患者は24例(63%)。 ・フォローアップ期間中央値は11.6ヵ月(範囲:1〜24)。 ・12ヵ月後の全生存割合(OS)は86.2%(95%CI:70.0〜94.0)、無増悪生存割合(PFS)は78.5%(95%CI:59.2〜89.5)。 ・発熱性好中球減少症の発生率は、比較的高かったものの(32%)、平均RDIが70%未満の患者では、治療強度が低下してもリスク増加が認められた。 ・末梢神経障害のためにポラツズマブ ベドチンの減量が必要であった患者はいなかった。  著者らは「新たにDLBCLと診断された80歳以上の高齢患者に対し、減量Pola-R-CHP療法は、実行可能な効果的な治療選択肢である可能性が示された」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Sato S, et al. Blood Res. 2025; 60: 10.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39907880 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
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