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MDSに対する非血縁同種移植の前処置、FLU+BU+低用量ATGが有用〜JSTCT成人MDSワーキンググループ
MDSに対する非血縁同種移植の前処置、FLU+BU+低用量ATGが有用〜JSTCT成人MDSワーキンググループ
公開日:2024年10月9日 Fujioka M, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Oct 5. [Epub ahead of print]  骨髄異形成症候群(MDS)に対する同種造血幹細胞移植におけるフルダラビン(FLU)+静注ブスルファン(BU)12.8mg /kgによる移植前処置に低用量抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン(ATG:5mg/kg以下)または低線量全身放射線照射(TBI:4Gy以下)を併用した場合の予後への影響に関するデータは限られている。佐世保市総合医療センターの藤岡 真知子氏らは、非血縁同種造血幹細胞移植を行ったMDS患者の臨床アウトカムをレトロスペクティブに評価した。Transplantation and Cellular Therapy誌オンライン版2024年10月5日号の報告。  2009〜18年に非血縁同種造血幹細胞移植を行った自然発症(de novo)の成人MDS患者280例を対象に、臨床アウトカムをレトロスペクティブに評価した。移植前処置の違いにより、FLU+BU(FB4)群、FB4+低用量ATG群、FB4+低線量TBI群に分類し、臨床アウトカムの比較を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者の年齢中央値は61歳(範囲:16〜70)。 ・3年全生存率(OS)は、FB4群で39.9%、FB4+低用量ATG群で64.8%、FB4+低線量TBI群で43.7%。 ・3年非再発死亡率(NRM)は、FB4群で32.1%、FB4+低用量ATG群で22.1%、FB4+低線量TBI群で27.1%。 ・3年再発率は、FB4群で34.7%、FB4+低用量ATG群で21.2%、FB4+低線量TBI群で28.9%。 ・多変量解析では、FB4+低用量ATG群は、FB4群よりもOSが有意に良好であることが示唆された(HR:0.51、95%CI:0.27〜0.95、p=0.032)。 ・FB4+低用量ATG群は、FB4群よりもNRMが低い傾向であった(HR:0.36、95%CI:0.13〜1.06、p=0.063)。 ・FB4+低用量ATG群は、FB4+低線量TBI群と比較し、OS(HR:0.52、95%CI:0.27〜0.99、p=0.049)およびNRM(HR:0.34、95%CI:0.11〜0.92、p=0.034)が良好であった。 ・FB4+低線量TBI群とFB4群との間にOSおよびNRMの有意な差は認められなかった。  著者らは「MDS患者に対する非血縁同種造血幹細胞移植におけるFB4+低用量ATGレジメンによる移植前処置は、OSおよびNRMの改善が期待できることが示唆された。FB4+低線量TBIレジメンは、FB4単独レジメンと比較し、明らかなベネフィットが示されなかった」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Fujioka M, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Oct 5. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39374663 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
強力化学療法が適応とならないAML、VEN+AZAはVEN+低用量AraCより優れているのか
強力化学療法が適応とならないAML、VEN+AZAはVEN+低用量AraCより優れているのか
公開日:2024年10月8日 Amador-Medina LF, et al. Hematol Transfus Cell Ther. 2024 Sep 23. [Epub ahead of print]  2020年、米国FDAは、VIALE-A研究およびVIALE-C研究の結果に基づき強力化学療法が適応とならない急性骨髄性白血病(AML)の治療に対し、ベネトクラクス(VEN)+アザシチジン(AZA)またはベネトクラクス+低用量シタラビン(AraC)併用療法を承認した。両研究結果発表後、VEN+AZAは、VEN+低用量AraCよりも優れていると考えられてきたが、これらの研究は、VEN+AZA併用療法の優位性を証明するようには設計されていなかった。そのため、メキシコ・グアナファト大学のLauro Fabian Amador-Medina氏らは、強力化学療法が適応とならない新たに診断されたAMLに対するこれら2つのレジメンの全生存期間(OS)、完全寛解(CR)、複合完全寛解(CRc)を明らかにするため、システマティックレビューを実施した。Hematology, Transfusion and Cell Therapy誌オンライン版2024年9月23日号の報告。  PubMed、Web of Scienceデータベースよりレトロスペクティブ研究を検索し、CR、CRc、OSデータを収集した。 主な結果は以下のとおり。 ・特定された815件のうち、適格基準を満たした研究は11件(VEN+AZA:10件、VEN+低用量AraC:1件)のみであった。 ・OS期間中央値は、VEN+AZAで10.75ヵ月、VEN+低用量AraCで未達(研究発表時点)であった。 ・CRcは、VEN+AZAで63.3%、VEN+低用量AraCで90%であった。 ・有害事象は、両群で同様であった。  著者らは「VEN+低用量AraCを調査した研究は非常に限られているものの、入手可能なデータに基づくと、強力化学療法が適応とならないAMLに対し、VEN+AZAがVEN+低用量AraCより優れているとは言い切れなかった。そのため、VEN+低用量AraCは依然として選択肢の1つとなりうる」と結論付けている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Amador-Medina LF, et al. Hematol Transfus Cell Ther. 2024 Sep 23. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39366887 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
BTK阻害薬不耐容のB細胞性腫瘍に対するピルトブルチニブの有用性〜第I/II相BRUIN試験
BTK阻害薬不耐容のB細胞性腫瘍に対するピルトブルチニブの有用性〜第I/II相BRUIN試験
公開日:2024年10月7日 Shah NN, et al. Haematologica. 2024 Oct 3. [Epub ahead of print]  ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬は、B細胞性腫瘍の治療を一変させたが、いまだ不耐容により中止されるケースも少なくない。米国・ウィスコンシン医科大学のNirav N. Shah氏らは、再発・難治性B細胞性腫瘍患者を対象に、可逆的非共有結合型BTK阻害薬ピルトブルチニブを評価した第I/II相BRUIN試験から、BTK阻害薬に不耐容を示した患者の解析を行った。Haematologica誌オンライン版2024年10月3日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・対象は、病勢進行がなく、1回以上のBTK阻害薬不耐容を示した患者127例。 ・BTK阻害薬中止につながる最も多い有害事象は、心臓関連疾患(40例、31.5%)であり、とくに心房細動(30例、23.6%)が多かった。 ・フォローアップ期間中央値は17.4ヵ月、ピルトブルチニブ投与期間中央値は15.3ヵ月。 ・ピルトブルチニブ投与中止の最も多い理由は、病勢進行(26.8%)、有害事象(10.2%)、死亡(5.5%)であった。 ・治療中に最も多く発現した有害事象は、疲労(39.4%)、好中球減少(37.0%)であった。 ・心臓関連の問題のためBTK阻害薬の中止歴を有する患者のうち、75%では心臓関連有害事象の再発が認められなかった。 ・過去にBTK阻害薬中止に至った有害事象と同じ有害事象により、ピルトブルチニブ中止に至った患者はいなかった。 ・ピルトブルチニブの奏効率(ORR)は、過去にBTK阻害薬不耐容であった慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者78例で76.9%、マントル細胞リンパ腫(MCL)患者21例で81.0%であった。 ・無増悪生存期間(PFS)中央値は、CLL/SLLで28.4ヵ月、MCLでは推定不能であった。  著者らは「過去にBTK阻害薬不耐容であった患者に対するピルトブルチニブ治療は、安全性が良好で、忍容性が高く、有効な治療選択肢であることが示唆された」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Shah NN, et al. Haematologica. 2024 Oct 3. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39363864 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性PCNSLに対する治療選択の現状は?
再発・難治性PCNSLに対する治療選択の現状は?
公開日:2024年10月4日 Primeaux B, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e3313.  中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)は、全身的な病変を伴わずに中枢神経系へ影響を及ぼすアグレッシブリンパ腫である。第1選択治療として、大量メトトレキサート(HDMTX)ベースのレジメンが推奨されるが、その後は、高用量化学療法、全脳放射線療法、テモゾロミド併用または維持療法、自家造血幹細胞移植(auto HSCT)などによる強化療法が行われる。HDMTX+リツキシマブによる治療が進歩したものの、いまだ多くの患者が再発している。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのBrian Primeaux氏らは、再発・難治性PCNSLに対するリアルワールドでの治療の特徴を明らかにするため、本研究を実施した。Hematological Oncology誌2024年11月号の報告。  2016年4月1日〜2022年7月1日にHDMTXベースの第1選択治療を行なった成人PCNSL患者54例を対象に、レトロスペクティブ記述的分析を行なった。二次性中枢神経系リンパ腫、非B細胞由来PCNSL、眼内悪性リンパ腫の治療目的でHDMTXを行なった患者は除外した。再発・難治性PCNSLに対するリアルワールドでの治療の特徴および第1選択治療後の強化療法の特徴について、分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・31例(57%)の患者には、リツキシマブ+大量シタラビン(R-HD-AraC療法)、全脳放射線療法、またはその両方による強化療法が行われていた。 ・13例(24%)は、auto-HSCTに進んでいた。 ・病勢進行は25例で認められ、17例に対し第2選択治療が行われた。 ・第2選択治療の内訳は、臨床試験(18%)、リツキシマブ+レナリドミド(18%)、HDMTXベースのレジメン(18%)、イブルチニブ+リツキシマブ(12%)、R-HD-AraC療法(12%)。 ・さらに7例で病勢進行が認められ、第3選択治療が行われた。 ・第3選択治療はさまざまであり、リツキシマブ+レナリドミド、イブルチニブ+HDMTX、イブルチニブ、リツキシマブ、メトトレキサート、シタラビン、R-HD-AraC療法、リツキシマブ+ニボルマブ、全脳放射線療法などで治療されていた。 ・5例は第4選択治療として、リツキシマブ、リツキシマブ+レナリドミド、R+HDMTX、ニボルマブが行われた。 ・第5選択治療以降を行った患者は3例、これまでのレジメンに加え、リツキシマブ+テモゾロミド、ペムブロリズマブが用いられていた。  著者らは「再発・難治性PCNSLの治療選択肢は多様であり、医師の好み、臨床試験の適格性、治療歴、PS、臓器機能、治療目的など、患者の要因に大きく影響されていることがわかった。最適なマネジメントを実現するためにも、プロスペクティブ臨床試験の必要性が示唆された」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Primeaux B, et al. Hematol Oncol. 2024; 42: e3313.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39340121 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
第一寛解期Ph-like ALLに対する同種造血幹細胞移植の治療成績〜多施設共同研究
第一寛解期Ph-like ALLに対する同種造血幹細胞移植の治療成績〜多施設共同研究
公開日:2024年10月3日 Rahman ZA, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Sep 25. [Epub ahead of print]  フィラデルフィア染色体様急性リンパ性白血病(Ph-like ALL)は,B細胞性ALLの高リスク群であり、従来の治療では予後不良である。最適な治療結果につながらない要因として、診断の難しさや標準化された治療プロトコルの欠如が挙げられる。さらに、成人Ph-like ALL患者には、同種造血幹細胞移植(HSCT)が推奨されるが、これを裏付けるデータも限られている。ヨルダン・King Hussein Cancer CenterのZaid Abdel Rahman氏らは、HSCTを行った第一寛解期Ph-like ALL成人患者の治療アウトカムを、Ph陽性ALLおよびPh陰性ALLと比較するため、多施設共同レトロスペクティブ研究を実施した。Transplantation and Cellular Therapy誌オンライン版2024年9月25日号の報告。  全米の5つの学術センターよりALL患者のHSCTの焦点を当てたデータを収集した。対象は、2006〜21年に第一寛解期でHSCTを行った患者673例とした。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者673例のうち、Ph-like ALLが83例(12.3%)、Ph陽性ALLが271例(40.3%)、Ph陰性ALLが319例(47.4%)。 ・第一寛解期Ph-like ALL患者に対するHSCT後の治療アウトカムは、Ph陰性ALL患者と同等であり、3年全生存率(OS:66% vs. 59%、p=0.1)、無増悪生存期間(PFS:59% vs. 54%、p=0.1)、再発率(22% vs. 20%、p=0.7)に有意な差は認められなかった。 ・対照的に、Ph陽性ALLの治療アウトカムは、3年OS(75%、p<0.001)、PFS(70%、p=0.001)、再発率(12%、p=0.003)ともに良好であり、これはチロシンキナーゼ阻害薬治療によるものであると考えられる。  著者らは「HSCTと効果的な第2選択治療を組み合わせることで、Ph-like ALLの予後不良を軽減し、有用な治療アウトカムをもたらす可能性が示唆された」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Rahman ZA, et al. Transplant Cell Ther. 2024 Sep 25. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39332807 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
運動前のカフェイン摂取は、何に効く? 他4本≫ Journal Check Vol.119(2024年10月05日号)
運動前のカフェイン摂取は、何に効く? 他4本≫ Journal Check Vol.119(2024年10月05日号)
運動前のカフェイン摂取は、何に効く? サプリメントの実際の効果は、プラセボ効果に大きく影響される可能性がある。著者らは、カフェインとそのプラセボ効果がスポーツパフォーマンスに与える影響を評価するため、無作為化比較試験の系統的レビューを実施した。Nutrients誌2024年9月23日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 1日たった〇分の激しい活動で、座りっぱなしによる心血管イベントリスクを減らせる!? 日常生活の一部としての偶発的な身体活動は、従来の運動よりも実現性の点で有利な可能性がある。著者らは、偶発的な身体活動と座りっぱなしと主要な心血管イベントリスクとの関連を検討した。European Journal of Preventive Cardiology誌オンライン版2024年9月26日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 日本人の1日必要水分量は? 水は健康や生命維持に不可欠であるが、1日の必要水分量の指標である水代謝回転と水分不足と死亡率との関連は不明である。著者らは、この関連を調べるために、JACC Studyに参加した40〜79歳の日本人6万3,488人を対象に調査を実施した。The American Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2024年9月23日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 高齢者の中で、特にインフルエンザワクチンが効きにくいのはどんな人? ワクチン接種によるインフルエンザ予防効果は、加齢とともに大幅に低下し、個人差も大きくなる。著者らは、ワクチンに反応しにくい高齢者の体内で何が起きているかを調べるため、65歳以上のワクチン接種者234人のコホートを縦断的に調査した。Science Advances誌オンライン版2024年9月27日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む n-6系脂肪酸は本当に健康に良い? ドコサペンタエン酸(DPA)が認知機能に与える影響は、まだ十分に解明されていない。著者らは、2011〜2014年のNHANESデータを用いて、高齢者の血清中のn-3およびn-6 DPAと認知能力との関連を調査した。The Journal of Nutritional Biochemistry誌オンライン版2024年9月25日号の報告。 ≫ヒポクラ論文検索で続きを読む 知見共有へ アンケート:ご意見箱 ※新規会員登録はこちら ヒポクラ Journal Check Vol.118(2024年9月28日号) 1日何杯のコーヒーが、心血管代謝性多疾患併存リスク低下に最適か? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.117(2024年9月21日号) 老化を遅らせる薬、メトホルミン!? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.116(2024年9月12日号) ご褒美デーが逆効果!?“交互高脂肪食”に潜む動脈硬化のリスク 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.115(2024年9月05日号) 三大栄養素のうち、最も”質”を重視すべきはどれか? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.114(2024年8月29日号) カフェインレスのコーヒーでも利点を享受できるか? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.113(2024年8月22日号) 急激な老化のタイミングは、〇歳と〇歳!? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.112(2024年8月17日号) 1日1個のアボカドを半年食べ続けると…? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.111(2024年8月08日号) 〇gの野菜・果物摂取が、超加工食品の悪影響を打ち消す!? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.110(2024年8月01日号) 男女別 最も効果的な筋トレ方法は? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.109(2024年7月25日号) 10-20-30トレーニングは万人受けする? 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.108(2024年7月18日号) バター vs 植物油 他4本 ヒポクラ Journal Check Vol.107(2024年7月11日号) コーヒーの健康効果はどこまで明らかになったか? 他4本
コロナ時代のFL治療、オビヌツズマブを恐れる必要があるのか
コロナ時代のFL治療、オビヌツズマブを恐れる必要があるのか
公開日:2024年10月2日 Choy J, et al. Br J Haematol. 2024 Sep 27. [Epub ahead of print]  2020年のCOVID-19パンデミック以来、2023年までに世界の感染者は7億7,200万人以上、死者数は約700万人にものぼるといわれている。血液悪性腫瘍患者におけるCOVID-19のアウトカムを評価した研究、大規模メタ解析などが、数多く実施された。中でも、イタリアで行われたURBAN研究は、未治療の進行期濾胞性リンパ腫(FL)患者におけるオビヌツズマブベースの化学療法および維持療法の有効性および安全性を評価した多施設共同観察研究であり、対象患者の組織学的診断が均一であり、治療も比較的均一な研究である。オーストラリア・Sir Charles Gairdner HospitalのJoleen Choy氏らは、URBAN研究でオビヌツズマブベースの化学療法および維持療法を行った未治療の進行期FL患者299例におけるCOVID-19アウトカムを評価するため、URBAN研究サブ解析を実施し、その結果を報告した。British Journal of Haematology誌オンライン版2024年9月27日号の報告。  本研究は、2019年9月より登録を開始し、2022年1月までのデータを分析したものである。 主な結果は以下のとおり。 ・URBAN研究では、主治医の治療選択により、第一選択治療として、オビヌツズマブとの併用によるベンダムスチン(142例、47.5%)、CHOP療法(139例、46.5%)、CVP療法(18例、6%) が行われた。 ・これまでの研究とは対照的に、オビヌツズマブ+ベンダムスチンによる治療を行った患者とCHOP療法またはCVP療法による導入療法を行った患者では、COVID-19、入院、死亡の発生率に統計的に有意な差は認められなかった。 ・同様に、オビヌツズマブ維持療法を開始した患者(266例、88.9%)と開始しなかった患者との間で、COVID-19の発生率に統計的に有意な差は認められなかった。 ・データカットオフ時点で維持療法を完了した患者は少数(10.4%)であった。 ・オビヌツズマブ維持療法を完了した患者と行わなかった患者では、COVID-19による入院率(37.5% vs. 50%、p=0.888)および死亡率(0% vs. 25%、p=0.394)に差は認められなかった。 ・多数の患者(65%)は、維持療法完了前にレジメン変更が行われており、パンデミックに影響された可能性が示唆された。 ・レジメン変更により、ワクチン接種の有効性およびCOVID-19からの回復がより促進された可能性があるものの、詳細な情報は入手できず、不明なままである。 ・本サブ解析は、治療の有効性を評価するために設計されたものではないが、導入療法終了時の有効性は64.6%(193例)、全奏効(OR)は90.7%であり、パンデミック前のランダム化試験(GALLIUM試験)においてオビヌツズマブで治療を行なった患者と同等であった。 ・無増悪生存期間(PFS)またはPOD24イベントに関するデータは入手できず、治療の遅延または変更が治療結果に及ぼす影響は不明である。 ・COVID-19の全体的な発生率は16.1%(48例)であり、より感染力の高いオミクロン変異体が優勢だったパンデミック後期(2021年11月以降)の予測値よりも低かった。 ・ワクチン接種が利用可能になる前の第1波の登録患者数が少なかったため、この研究ではCOVID-19の有害事象の軽減に対するワクチン接種の有効性が過小評価されている可能性が示唆された。  結果を踏まえ、著者らは「ワクチン接種を行った未治療の進行期FL患者に対するオビヌツズマブによる治療は、COVID-19の臨床アウトカムへの影響が少ないと考えられる」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Choy J, et al. Br J Haematol. 2024 Sep 27. [Epub ahead of print]▶https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/39331693 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本における新規MM患者に対する治療、最も選択される治療は?
日本における新規MM患者に対する治療、最も選択される治療は?
公開日:2024年10月1日 Moribe T, et al. PLoS One. 2024; 19: e0310333.  日本における新たに診断された多発性骨髄腫(MM)に対する治療は、これまで十分に評価されていなかった。また、再発・難治性MMにおいてトリプルクラス曝露患者の予後は不良であり、治療選択肢も限られている。ファイザーの森部 豊輝氏らは、日本におけるMM患者の特徴、治療傾向、トリプルクラス曝露の現状を明らかにするため、レトロスペクティブ非介入研究を実施した。PLoS ONE誌2024年9月30日号の報告。  2015〜22年の日本のレセプトデータよりMM患者のデータを抽出した。本研究では、第1選択治療としてダラツムマブ、レナリドミド、ボルテゾミブを使用した新規MM患者を特定した。患者の特徴および治療傾向は、非移植群と移植群について分析を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・分析対象患者数は1,784例。 ・非移植群1,656例の年齢中央値は75歳(範囲:37〜94)、第1選択の治療レジメンはLd療法(24.7%)、Bd療法(23.8%)、BLd療法(15.6%)の順で実施されていた。 ・移植群128例の年齢中央値は61歳(範囲:35〜73)、第1選択の治療レジメンはBLd療法(49.5%)、Bd療法(18.7%)、DBd療法(8.4%)の順で実施されていた。 ・非移植群に対する治療レジメンは、75歳以上でLd療法、65〜74歳でBd療法、65歳未満でBLd療法が一般的に行われていた。 ・腎機能障害を有する患者ではBd療法、心機能障害を有する患者ではLd療法が一般的であった。 ・移植群では、1stラインでの移植が107例(83.6%)、2ndラインが20例(15.6%)。 ・1stラインでの移植例における上位3つの導入療法は、BLd療法(49.5%)、Bd療法(18.7%)、DBd療法(8.4%)であった。 ・5thラインまでの累積トリプルクラス曝露患者は、非移植群で351例(21.2%)、移植群で56例(43.8%)であった。 ・各ラインでのトリプルクラス曝露率は、1stラインから5thラインにかけて徐々に増加していた(非移植群:11.1〜69.2%、移植群:21.1〜100%)。 ・非移植群のトリプルクラス曝露患者184例に対する第1選択治療は、89.7%でDLd療法、BLd療法、DBd療法を含む治療が行われており、10.3%でD-BLd療法が行われていた。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Moribe T, et al. PLoS One. 2024; 19: e0310333.▶https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/39348401 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
第86回日本血液学会学術集会 会長インタビュー
第86回日本血液学会学術集会 会長インタビュー
掲載日:2024年10月1日 来る2024年10月11日(金)~13日(日)、国立京都国際会館にて開催される第86回日本血液学会学術集会会長で、日本血液学会副理事長もお務めになられる高折 晃史 先生(京都大学医学部付属病院 病院長)に今大会への想いをはじめ、注目のプログラム、若手血液内科医やヒポクラ 血液内科 Proユーザーへのメッセージなどをお聞きしました。 「再会を深化させたい」 ―大会テーマ「交流の深化」に込めた想いをお聞かせください。  昨年5月から新型コロナウイルス感染症が5類感染症となったことで“ポストコロナ”の時代に入り、人々が再会を始めました。そのような時流を捉えて、前大会長の豊嶋 崇徳 先生(北海道大学)が昨年の学術集会のテーマを「再会」と設定され、本格的な対面開催を再開いたしました。  今年は、それをさらに進化・深化させたいという想いから「交流の深化」をテーマに掲げました。それまで会えなかった人々が再会し、さまざまな形での交流を深めていただきたいと考えています。  例えば「医師と患者さん」「医師と医療従事者」「若い医師と経験豊富な医師」「基礎研究者と臨床医」「男性医師と女性医師」「地方と都市部」など、さらには「日本の学会と諸外国の学会」という多彩な視点で交流を深めたいという想いが今回のテーマを決めた理由となります。  また、日本血液学会としても、長いコロナの期間に研修医になったバーチャル空間の学会しか参加したことがない方に、会場に足を運ぶ価値を感じていただきたいと思っており、若い先生方に限らず、ヒポクラ 血液内科 Proなど、普段はWEBで交流をされている先生方にも、会場で直接交流することで、新たな出会いが生まれてほしいと考えています。近年は、交流によって、研究や臨床での学びが生まれるという機会も少なくなりましたので、「人々の交流を復活させる」という点に強い意義を感じています。  そのため、今大会は“再会を深化させる学術集会”として位置づけているところとなります。 ―さまざまな分野に分かれている血液領域において、参加者同士のつながりはどのように意識されていますか。  例えば、消化器系の大きな学会ですと、さまざまな関連学会がありますよね。もちろん、血液分野でもいくつかの関連学会が存在していますが、基本的には血液領域の学会としては、唯一の学会という認識ではおります。そのため、職種を問わず、さまざまな分野が一堂に集まりますので、成人だけでなく、小児、移植、凝固、輸血など、すべての運用を網羅できる、すべての知識を学べる場が日本血液学会の学術集会だと思っています。ですので、ぜひ、さまざまな分野の先生方にご参加いただきたいと思っています。 学術集会への想いを語る、高折先生 コミュニティへマトロジスト、血液ゲノムなど最新の議論が目白押し ―注目のプログラムや企画についてお聞かせください。  “メインのシンポジウム”では、それぞれの分野・疾患で、最先端であり、一流の先生方に海外からも来ていただいてお話をいただきます。また、毎年盛り上がりを見せている“女性医師のシンポジウム”も、前理事長の赤司 浩一 先生(九州大学)と三谷 絹子 先生(獨協医科大学)が中心になって、今年も熱い議論がなされると期待しています。  今回が初めての、大きな取組としましては「地域や地方の血液内科医」、例えば、地域で血液内科のクリニックを開業されている先生や、医療過疎地で血液内科医をされている先生、いわゆる“コミュニティへマトロジスト”のセッションを設けて、地域で頑張っている先生方にも発表していただくことを企画しています。  そのほかに注目すべきプログラムですと、JSH(日本血液学会)とASH(アメリカ血液学会)での合同シンポジウム、また、EHA(欧州血液学会)との合同シンポジウムも通常通りの開催を予定しているのに加え、JSH会員がトラベルグラント制度でEHAに参加しているのと同じように、EHAからトラベルグラントを受けているヨーロッパの血液内科医との交流を深める企画もあります。このJSHとEHAのトラベルアワード受賞者による交流セッションや、ドイツ血液学会との合同WEBシンポジウムは非常に見どころです。  特別講演では、山中 伸弥 先生(京都大学iPS細胞研究所)に「iPS細胞についての最新研究」のご発表をしていただきますし、Tak W. Mak(Princess Margaret Cancer Centre,Canada)先生には、「白血病の代謝」について、最新の研究成果について、ご発表をいただきますので、こちらも注目です。    もう一つ、注目のプログラムとしては、この秋に承認される“血液ゲノム検査”のセッションです。血液ゲノム検査を用いた診療が、おそらく来年の春以降には始まりますので、ゲノム医療をどのように医療現場で実施していくかというシンポジウムは、今大会の目玉の一つになると考えています。  ただし、それもいろいろな病院でできるわけではなく、一部のがんゲノム連携病院でしかできないので、どういう形で実臨床の現場に持ち込むかなど、今後の課題も語られるセッションになるか思います。 ―コミュニティへマトロジストのセッションについて、詳しくお聞かせください。  血液内科医が地域で足りない状況というのは、地域ごとにさまざまな問題があって非常に難しいところです。  例えば、大阪ですと大きな病院がいっぱいありますが、患者さんを帰すための小さなクリニックも多くあり、双方の医療機関同士の連携が良く、上手く対応ができています。一方、私の関わっている京都には、大きい病院はあるけれども、小さな血液内科のクリニックというのがほとんどありません。他にも、沖縄の場合は、血液を診られる病院自体がほとんどない状態で、琉球大学の先生方がアルバイトとして出向く形で、地域の患者さんを診ています。  地方というのは、ご存じの通り、都市部と違って医療過疎・医療格差があります。“元々血液内科医が少ない”、“医師が少ない”という状況でも、患者数はそれなりにいますし、昔と違って「治療法がない」ということもなく、専門医に掛かれば長生きできるような病気がいっぱいあります。一方で、“輸血”が近くで受けられないことなどは非常に大きな問題であると考えています。  このように、それぞれの地域の、それぞれの現状があるので、コミュニティへマトロジストのセッションでは、そのような問題を「うちはこうやっています」などの意見交換が出来る、貴重な場になればと思っています。 弊社代表のインタビューに答える、高折先生 「若い先生たちには、自分のフィールドを広げてほしい」 ―海外の学会との合同セッションについて、詳しくお聞かせください。  実は、先ほどお話しした、トラベルグラント受賞者の若手研究者、臨床医を交流させたいという取り組みは、EHAの強い希望もあり、今回が初めての企画実施となります。  EHAの学術集会では、受賞した若手血液内科医を集めて、学会期間の前日に、丸一日かけて、教育セッションをしたり、有名な先生と座談会をするという企画をしています。ただ、今回はさまざまな事情から、そのままの形で企画をすることが現実的に難しいところもあり、学会のセッション内で、さまざまな分野の若い医師たちで交流を深めていただくことを考えています。  海外学会との交流については、国際交流委員会の三谷 絹子 先生が、ずっとご尽力してこられて、ASH、EHAとも非常に良好な関係を築かれており、常にJSHのことをリスペクトしていただいています。そういったご尽力もあり、必ずASH、EHAともにプレジデントにご来日いただいた上で、企画講演の実施もできていますし、ジョイントシンポジウムも継続して行うことができています。  また近年では、それに加えて、諸外国、特にアジアの血液学会の先生方も多くいらっしゃいます。そのため、英語のセッションも多く企画していますので、ぜひ積極的に参加していただければと思います。 ―若手の先生方に向けて、学会活用法をご教示ください。  単に口演を聞くだけではなくて、ベテランの先生でも、同世代の先生でもいいので、そこに来ている先生方と直接お話をするなどして、知り合い、交流を深めていくことで、自分のフィールドを広げてほしいと考えています。  私たちの世代の経験で見ると、学会の会場で、同じ研究・分野の先生と知り合って共同研究が生まれるということはよくあることでしたが、WEBでの交流がメインになると、なかなかそういうことも生まれづらくなってしまうのかな、という印象です。単に研究だけのことではなく、臨床の情報交換もできますよ、とお伝えしたいです。  また、シンポジウムは10プログラムあり、それぞれの分野の最先端の話になりますので、ぜひ勉強したいという人はシンポジウムに参加して欲しいと思いますし、一方で自分がやっていることを深めたい、という場合には、一般口演を聞いて、他の方がどのような発表をされているかなどを聞いて、参考にしていただきたいと思います。 「演題数は過去最高の1,344演題。大規模な学会に」 ―最後に、学会参加者や読者(血液内科 Proユーザー)へメッセージをお願いいたします。  今大会は、演題数も過去最高の1,344演題となっていますので、かなり会場全体にわたって企画を準備しています。血液内科Pro(エクスメディオ社)をはじめ、企業ブースもたくさんありますし、ポスター会場も3つに分かれているなど、現地会場はとても大規模な学会となりますので、そういったところも活用しつつ、ヒポフェス #86JSH(血液内科Pro)のほうでも、忌憚のない意見交換がなされることを期待しています。  また、京都らしい学会にしているところも特徴です。毎日会場内で、表千家 久田家の方に、お点前を頂戴する形で、お茶をいただいたり、オープニングイベントでは、華道家元池坊の池坊 専好さんに“いけばな”をお願いしています。海外からの先生方も多く来られる予定ですので、お土産も京都らしいものをたくさん用意しています。  最後になりますが、演題数は昨年記録した最高数を今年も更新しました。学会参加者数でみても、日本血液学会会員数が約8,000名ほどであるのに対して、昨年の学会参加者は8,082名となっており、今年はそれ以上の参加者が来場されることも期待しております。  血液の分野はさまざまな薬剤、技術が進歩しており、今問題となっている最新の課題をキャッチアップするために多くの方が参加されますので、そういう意味でも非常に活気のある学術集会になると考えております。  第86回日本血液学会学術集会へのご参加を、お待ちしております。 インタビュー後の高折先生 学会開催概要名称:第86回日本血液学会学術集会 会期:2024年10月11日(金)~13日(日) 会場:国立京都国際会館 〒606-0001 京都府京都市左京区岩倉大鷺町422番地 会長:高折 晃史 先生(京都大学大学院医学研究科 血液内科学) テーマ:交流の深化 開催形式:現地開催中心に開催(一部プログラムをライブ配信・後日オンデマンド予定) 大会HP:http://www.jshem.or.jp/86/index.html 
経過観察FL患者、2年以内に治療を行うとアウトカム不良になることが判明
経過観察FL患者、2年以内に治療を行うとアウトカム不良になることが判明
公開日:2024年9月30日 Liu J, et al. Br J Haematol. 2024 Sep 26. [Epub ahead of print]  経過観察中の濾胞性リンパ腫(FL)患者では、短期間で急速に病勢進行する患者も存在する。このような患者を特定し、診断時のリスクをスクリーニングするためのリスクスコアの開発を目指して、中国・天津医科大学のJing Liu氏らは、本検討を行った。British Journal of Haematology誌オンライン版2024年9月26日号の報告。  2008〜22年にがんセンター16施設で経過観察中のFL患者411例をレトロスペクティブに登録し、悪性リンパ腫治療開始までの期間および無増悪生存期間(PFS)を評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・経過観察中のFL患者のうち、診断後24ヵ月以内に悪性リンパ腫治療を行なった患者の割合は、35%であった。 ・24ヵ月以内に治療を行った患者の5年PFSは、24ヵ月時点で治療を行わなかった患者よりも有意に低かった(62.3% vs. 89.5%)。 ・多変量解析では、24ヵ月以内に治療を行うことの独立した予測因子として、次の5つが特定された。 ●ステージIII〜IV ●β2マイクログロブリン3mg/L以上 ●リンパ球対単球比3.8未満 ●骨髄浸潤 ●脾腫 ・24ヵ月以内に治療を行うことについてのAUCは、トレーニングコホートで0.76(95%CI:0.70〜0.82)、検証コホートで0.76(95%CI:0.67〜0.85)であった。 ・リスク群においてもPFSとの関連が認められた(p<0.001)。  著者らは「経過観察中のFL患者では、24ヵ月以内に治療を行うとアウトカム不良になることが示唆された。本研究で特定された予測因子をスクリーニングに用いることで、早期治療介入が必要な患者の特定に役立つ可能性がある」としている。 (鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Liu J, et al. Br J Haematol. 2024 Sep 26. [Epub ahead of print]▶https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/39327747 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
PCNSLに対するR-MPV+レナリドミド/イブルチニブ併用療法〜第Ib/II相試験
PCNSLに対するR-MPV+レナリドミド/イブルチニブ併用療法〜第Ib/II相試験
公開日:2024年9月27日 Marion A, et al. J Hematol Oncol. 2024; 17: 86.  これまでの中枢神経系原発悪性リンパ腫(PCNSL)に対する導入化学療法の結果は、改善の余地がある。BTK阻害薬イブルチニブおよび免疫調整薬レナリドミドは、再発PCNSLへの有効性が示されている薬剤である。フランス・Institut CurieのAlcantara Marion氏らは、新規PCNSL患者を対象に、高用量メトトレキサートベースの化学療法にイブルチニブまたはレナリドミドを併用した際の有効性および安全性を評価するため、第Ib/II相試験を実施した。Journal of Hematology & Oncology誌2024年9月19日号の報告。  本試験は、3+3デザインで実施した。新規PCNSL患者26例を対象に、リツキシマブ+メトトレキサート+プロカルバジン+ビンクリスチン+prednisone(R-MPV療法)とイブルチニブまたはレナリドミドの28日サイクル×4回にランダムに割り付けた。奏効が得られた患者には、リツキサン+シタラビンによる強化療法および自家幹細胞移植による集中化学療法を実施した。第Ib相試験の目的は、最初の導入サイクル中に発生する用量制限毒性(DLT)に基づき、第II相試験の推奨用量を決定することとした。 主な結果は以下のとおり。 ・年齢中央値は、52歳であった。 ・次の4件のDLTが観察された。 ●グレード5のアスペルギルス症およびニューモシスチス症:1件 ●グレード4のカテーテル関連感染症:1件 ●グレード3のALT上昇:2件 ・R-MPV療法と併用した際のイブルチニブおよびレナリドミド推奨用量は、それぞれ560mg /日(day3-14およびday17-28)、15mg /日(day1-21)であった。 ・両群で最も多く認められたグレード3以上の治療関連有害事象は、肝細胞融解、好中球減少、感染症であった。 ・レナリドミド群では、2サイクル目にグレード4のライエル症候群が1件報告された。 ・4サイクル後の全奏効(OR)率は、レナリドミド群76.9%、イブルチニブ群83.3%であった。  著者らは「PCNSLに対しR-MPV療法とレナリドミドまたはイブルチニブとの併用療法は、第1選択治療として利用可能であることが示唆された。安全性については、既知の安全性プロファイルと同様であった」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Marion A, et al. J Hematol Oncol. 2024; 17: 86.▶https://bibgraph.hpcr.jp/abst/pubmed/39300447 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
同種造血幹細胞移植後のシクロホスファミド投与による心血管イベントリスク
同種造血幹細胞移植後のシクロホスファミド投与による心血管イベントリスク
公開日:2024年9月26日 Salas MQ, et al. Bone Marrow Transplant. 2024 Sep 14. [Epub ahead of print]  スペイン・Hospital Clinic de BarcelonaのMaria Queralt Salas氏らは、急性骨髄性白血病(AML)患者を対象に、移植後シクロホスファミドを用いた同種造血幹細胞移植後の心血管イベントの発生率およびその予測因子を調査した。Bone Marrow Transplantation誌オンライン版2024年9月14日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・対象は、AML患者453例。 ・心血管イベントの発生率は12.3%(57例)、発生までの中央値は52日(IQR:13〜289)、100日時点での累積発生率は7.7%、5年間の累積発生率は13.5%であった。 ・早期(100日以内)発生率は7.7%、後期発生率は4.8%。 ・最も多かった心血管イベントは、心不全(31.6%、18例)であり、次いで心膜合併症(28.1%、16例)、不整脈(24.6%、14例)であった。 ・心血管イベントが発生した患者は、55歳以上(64.9% vs. 46.1%、p=0.010)、高血圧(36.8% vs. 18.4%、p=0.001)、脂質異常症(28.1% vs. 11.1%、p=0.001)の割合が高かった。 ・ハプロ移植の患者では、心血管イベントが多くなる傾向が認められた(68.4% vs. 56.8%、p=0.083)。 ・多変量回帰分析では、心血管イベントの予測因子として高血圧(HR:1.88、p=0.036)、脂質異常症(HR:2.20、p=0.018)が挙げられた。ドナーの種類により、差は認められなかった(ハプロ移植 vs. その他のHR:1.33、p=0.323)。 ・心血管イベントが発生した患者57例の死亡率は、12.2%であった。 ・とくに、心血管イベントの発生は、非再発死亡率(HR:2.57、p=0.011)や全生存期間(HR:1.80、p=0.009)に悪影響を及ぼすことが示唆された。  著者らは「AML患者に対する移植後シクロホスファミドを用いた同種造血幹細胞移植後には、これらの合併症を抑制するため、心血管イベントのリスク因子を積極的に治療し、移植後の心臓モニタリングを実施する必要性が示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Salas MQ, et al. Bone Marrow Transplant. 2024 Sep 14. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/39277653 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
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