「血液内科 Journal Check」の記事一覧

再発・難治性MCLに対するリツキシマブ+高用量シタラビン+デキサメタゾン+ボルテゾミブ療法〜ランダム化非盲検第III相試験
再発・難治性MCLに対するリツキシマブ+高用量シタラビン+デキサメタゾン+ボルテゾミブ療法〜ランダム化非盲検第III相試験
公開日:2024年5月20日 Fischer L, et al. Leukemia. 2024 Apr 27. [Epub ahead of print]  再発・難治性マントル細胞リンパ腫(MCL)患者に対する治療は、主要な臨床課題の1つである。ドイツ・ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンのLuca Fischer氏らは、自家造血幹細胞移植の適応なしまたは移植後再発した再発・難治性MCL患者に対するリツキシマブ+高用量シタラビン+デキサメタゾン+ボルテゾミブ療法(R-HAD+B)のランダム化非盲検並行群間第III相試験を実施した。Leukemia誌オンライン版2024年4月27日号の報告。  R-HAD+B療法の有効性を評価するため、ボルテゾミブを併用しないR-HADとの比較を行った。主要エンドポイントは、治療成功期間(TTTF)とし、副次的エンドポイントには、奏効率、無増悪生存期間、全生存期間、安全性を含めた。 主な結果は以下のとおり。 ・128例がR-HAD+B群(64例)またはR-HAD群(64例)にランダムに割り付けられた。 ・TTTF中央値は、R-HAD+B群で12ヵ月、R-HAD群で2.6ヵ月であった(p=0.045、MIPIスコア調整ハザード比[aHR]:0.69、95%CI:0.47〜1.02)。 ・全奏効率は、R-HAD+B群で63%、R-HAD群で45%(p=0.049)であった。 ・完全奏効率は、R-HAD+B群で42%、R-HAD群で19%(p=0.0062)であった。 ・サブグループ解析では、65歳以上の患者(aHR:0.48、95%CI:0.29〜0.79)、自家移植歴のない患者(aHR:0.52、95%CI:0.28〜0.96)において、有意な治療効果が認められた。 ・毒性は、主に血液学的毒性であり、化学療法のバックボーンに起因していた。 ・グレード3以上の白血球減少症およびリンパ球減少症は、R-HAD+B群でより認められたが、両群間で重篤な感染症に差は認められなかった。  著者らは「再発・難治性MCLに対するボルテゾミブと化学療法との併用は、有効である可能性があり、とくにBTK阻害薬による治療が選択肢とならない場合には、さらに評価されるべきであろう」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Fischer L, et al. Leukemia. 2024 Apr 27. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38678093 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性MMに対するILd療法の有効性に対するレナリドミドまたはプロテアソーム阻害薬曝露の影響
再発・難治性MMに対するILd療法の有効性に対するレナリドミドまたはプロテアソーム阻害薬曝露の影響
公開日:2024年5月17日 Lee HC, et al. Eur J Haematol. 2024 Apr 23. [Epub ahead of print]  米国・テキサス大学のHans C. Lee氏らは、再発・難治性の多発性骨髄腫(MM)におけるイキサゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン(ILd)の有効性および安全性に対するレナリドミドまたはプロテアソーム阻害薬の治療歴と難治性への影響を評価した。European Journal of Haematology誌オンライン版2024年4月23日号の報告。  INSIGHT MM試験、UVEA-IXA試験、REMIX試験より、2ライン以上の治療でIRd療法を行った成人再発・難治性MM患者562例を対象に、統合解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。 ・全体として、治療歴別の患者の内訳は、次の通りであった。 【レナリドミド】未治療:391例、治療歴:100例、不応:68例 【プロテアソーム阻害薬】未治療:37例、治療歴:411例、不応:110例 ・治療期間(DOT)中央値の治療歴別の患者の内訳は、次の通りであった。 【レナリドミド】未治療:15.3ヵ月、治療歴:15.6ヵ月、不応:4.7ヵ月 【プロテアソーム阻害薬】未治療:20.4ヵ月、治療歴:15.2ヵ月、不応:6.9ヵ月 ・無増悪生存期間(PFS)中央値の治療歴別の患者の内訳は、次の通りであった。 【レナリドミド】未治療:21.6ヵ月、治療歴:25.8ヵ月、不応:5.6ヵ月 【プロテアソーム阻害薬】未治療:未達、治療歴:19.8ヵ月、不応:11.4ヵ月 ・INSIGHT MM試験において、有害事象により治療薬を中止した患者の割合は、治療歴別で次の通りであった。 ●イキサゾミブ治療中止 【レナリドミド】未治療:31.6%、治療歴:28.2%、不応:28.0% 【プロテアソーム阻害薬】未治療:44.4%、治療歴:28.8%、不応:27.8% ●レナリドミド治療中止 【レナリドミド】未治療:21.9%、治療歴:28.2%、不応:16.0% 【プロテアソーム阻害薬】未治療:33.3%、治療歴:22.0%、不応:19.4% ●デキサメタゾン治療中止 【レナリドミド】未治療:18.4%、治療歴:20.5%、不応:16.0% 【プロテアソーム阻害薬】未治療:33.3%、治療歴:17.4%、不応:16.7% ・UVEA-IXA試験において、有害事象により治療薬を中止した患者の割合は、治療歴別で次の通りであった。 ●イキサゾミブ治療中止 【レナリドミド】未治療:18.6%、治療歴:6.7%、不応:10.5% 【プロテアソーム阻害薬】未治療:22.2%、治療歴:16.7%、不応:15.7% ●レナリドミド治療中止 【レナリドミド】未治療:16.1%、治療歴:6.7%、不応:10.5% 【プロテアソーム阻害薬】未治療:16.7%、治療歴:15.9%、不応:11.8% ●デキサメタゾン治療中止 【レナリドミド】未治療:10.6%、治療歴:0%、不応:10.5% 【プロテアソーム阻害薬】未治療:16.7%、治療歴:9.5%、不応:7.8% ・REMIX試験では、有害事象により治療薬を中止した患者の割合は、入手できなかった。  著者らは「IRd療法は、過去の治療歴とは無関係に、再発・難治性MM患者の日常的な臨床診療において有効であり、レナリドミド/プロテアソーム阻害薬に対する不応性がなくとも良好なアウトカムが期待できることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Lee HC, et al. Eur J Haematol. 2024 Apr 23. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38654611 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発・難治性PCNSLに対するチラブルチニブの第I/II相試験のフォローアップ分析
再発・難治性PCNSLに対するチラブルチニブの第I/II相試験のフォローアップ分析
公開日:2024年5月16日 Yonezawa H, et al. Neurooncol Adv. 2024; 6: vdae037.  再発・難治性の中枢神経系原発リンパ腫(PCNSL)に対する第2世代ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬チラブルニチブの有効性および安全性を評価した日本の多施設共同非盲検対照第I/II相試験であるONO -4059-02試験においてチラブルニチブの有効性および安全性プロファイルが示された。鹿児島大学の米澤 大氏らは、3年間のフォローアップ調査後の長期的な有効性および安全性を報告した。Neuro-oncology Advances誌2024年4月22日号の報告。  本試験の登録基準は、20歳以上、病理組織学的にPCNSLと診断され、Karnofsky Performance Status(KPS)70以上であった。用法・用量は、チラブルチニブ320または480mgを1日1回経口投与または絶食状態で1日1回480mg投与とした。 主な結果は以下のとおり。 ・2017年10月19日〜2019年6月13日の間に再発患者33例、難治性患者9例を含む44例が登録された。 ・内訳は、チラブルチニブ320mg群20例、480mg群7例、絶食群17例であった。 ・フォローアップ期間中央値は、37.1ヵ月であった。 ・全奏効(OR)率は63.6%(95%CI:47.8〜77.6)、完全奏効(CR)9例、不確定完全奏効(CRu)7例、部分奏効(PR)12例であった。 ・奏効期間(DOR)中央値は9.2ヵ月、DOR率は19.8%、無増悪生存期間(PFS)中央値は2.9ヵ月、全生存期間(OS)中央値は未達、PFS率は13.9%、OS率は56.7%であった。 ・有害事象は、38例(86.4%)で認められ、グレード3以上が23例(52.3%)、グレード5が1例で発生した。 ・KPSおよびQOLスコアは、長期治療を受けた患者で良好に維持されていた。  著者らは「再発・難治性PCNSLに対するチラブルニチブ治療は、KPSおよびQOLスコアを維持しながら、長期的な有効性・安全性が示された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Yonezawa H, et al. Neurooncol Adv. 2024; 6: vdae037.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38690230 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
MMに対するASCT後のエロツズマブ+レナリドマイド維持療法〜第I相試験
MMに対するASCT後のエロツズマブ+レナリドマイド維持療法〜第I相試験
公開日:2024年5月15日 Coffey DG, et al. Cancer. J Immunother Cancer. 2024; 12: e008110.  導入療法後の自家造血幹細胞移植(ASCT)は、多発性骨髄腫(MM)患者の無病生存期間を改善する。ASCTの目的は、病状を最小限に抑えることだが、免疫抑制細胞の根絶と関連しており、ASCT後の免疫療法の早期導入が治療効果の向上に寄与する可能性がある。米国・マイアミ大学のDavid G. Coffey氏らは、導入療法後のMM患者におけるASCT後の自己リンパ球注入とヒト化抗ヒトSLAMF7モノクローナル抗体エロツズマブの適用を調査するため、第I相臨床試験を実施した。Journal for Immunotherapy of Cancer誌2024年4月12日号の報告。  対象は、導入療法を行った未治療のMM患者15例。CD40陽性細胞に加え、免疫再構成を促進しエロツズマブの機序に不可欠な自己NK細胞を提供するため、移植前に末梢血単核細胞を摂取し、幹細胞移植3日目に輸注した。4日目よりエロツズマブ投与を開始し、その後1年間は28日ごとに投与した。4〜12サイクル目に、標準治療のレナリドマイド維持療法を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・すべての対象患者の安全性を評価した。治療プロトコルを完了した患者は13例であった。 ・ASCT1年後時点での対象患者の状態は、厳格な完全奏効(sCR)5例、完全奏効(CR)1例、最良部分奏効(VGPR)6例、部分奏効(PR)1例、進行(PD)2例であった。 ・忍容性は高く、グレード3および4の有害事象のほとんどは、ASCTに関連する血液毒性であると考えられた。 ・免疫微小環境の相関分析では、CR達成患者は、移植後最初の3ヵ月間で制御性T細胞が減少し、その後NK細胞および単球が増加する傾向が認められた。  著者らは「本第I相試験において、ASCT後のMM患者に対するエロツズマブ免疫療法の早期導入は、忍容性が高く、免疫微小環境の良好な変化を伴う疾患コントロールに有望である可能性が示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Coffey DG, et al. Cancer. J Immunother Cancer. 2024; 12: e008110.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38609316 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
再発CLLに対するアカラブルチニブ+ベネトクラクス+オビヌツズマブ療法〜CLL2-BAAG試験の最終分析
再発CLLに対するアカラブルチニブ+ベネトクラクス+オビヌツズマブ療法〜CLL2-BAAG試験の最終分析
公開日:2024年5月14日 Furstenau M, et al. Blood. 2024 Apr 15. [Epub ahead of print]  再発または難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)患者を対象とした第II相CLL2-BAAG試験では、ベンダムスチン減量オプション後のアカラブルチニブ、ベネトクラクス、オビヌツズマブの3剤併用療法による微小残像病変(MRD)の変化が調査された。ドイツ・ケルン大学のMoritz Furstenau氏らは、CLL2-BAAG試験の最終的な有効性および循環腫瘍DNA(ctDNA)解析結果の報告を行った。Blood誌オンライン版2024年4月15日号の報告。  対象は再発または難治性CLL患者45例(除外基準に違反したため、解析からは1例除外)。MRDは末梢血中のフローサイトメトリー(FCM)を用いて測定し(検出可能なMRD<10-4)、循環腫瘍DNA(ctDNA)は、血漿中のVDJ遺伝子再構成およびCLL関連変異のデジタルPCR(ddPCR)により測定した。MRD再発の定義は、MRD陰性/ctDNA陰性を達成したのち、ctDNA陽性および/またはMRD≧10-4の場合と定義した。 主な結果は以下のとおり。 ・対象患者における過去の治療回数の中央値は1回(範囲:1〜4)、18例(40%)は本試験前にBTK阻害薬および/またはベネトクラクスによる治療を行なっていた。14例(31.8%)はTP 53遺伝子の異常が見られ、34例(75.6%)はIGHV変異なしであった。 ・フォローアップ期間は36.3ヵ月(中央値)、治療中止までの期間は21.9ヵ月(中央値)であった。 ・末梢血におけるMRD陰性は、全体として45例中42例(93.3%)で達成された。BTK阻害薬/ベネトクラクスの治療歴を有する患者では18例中17例(94.4%)、TP53遺伝子異常が認められる患者では14例中13例(92.9%)において、MRD陰性が達成された。 ・3年間の無増悪生存期間は85.0%、全生存率は93.8%であった。 ・全体でFCM /ctDNAサンプル585件を分析したところ、治療終了後のMRD再発は18件で認められた(臨床的進行あり:5件、臨床的進行なし:13件)。最初にctDNAで検出された検体は12件、FCMが3件、同時に検出された検体は3件であった。 ・ctDNAにより早期に検出された患者は、遺伝的リスクが高い特徴を有しているようであった。  著者らは「本試験では、再発または難治性のCLL患者に対するアカラブルチニブ+ベネトクラクス+オビヌツズマブ療法は、MRD陰性において多くの患者で寛解を達成することが可能であった。MRDの評価では、FCMにctDNAを追加することで、再発の早期発見の向上が期待できる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Furstenau M, et al. Blood. 2024 Apr 15. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38620072 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本におけるCAR-T細胞療法の費用対効果分析
日本におけるCAR-T細胞療法の費用対効果分析
公開日:2024年5月13日 Ysutsue S, et al. Future Oncol. 2024 Apr 10. [Epub ahead of print]  ギリアド・サイエンシズ株式会社のSaaya Tsutsue氏らは、2つ以上の全身療法を行った再発または難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)成人患者の治療に対する3つのCAR-T細胞療法について、費用対効果分析を実施し、比較検討を行った。Future Oncology誌オンライン版2024年4月10日号の報告。  対象製品は、アキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel)、チサゲンレクル ユーセル(tisa-cel)、リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel)の3つのCAR ~T細胞療法。費用対効果分析には、partition survival mixture cure modelを用いた。分析は、ZUMA-1試験に基づき、マッチング調整された間接比較を用いて、JULIET試験およびTRANSCEND試験にあわせて調整を行った。 主な結果は以下のとおり。 ・axi-celは、tisa-celおよびliso-celと比較し、生存年数の増加がより大きく、質調整生存年(QALY)の増加が認められた。 【生存年数】 axi-cel vs. tisa-cel:10.87 vs. 7.75(+3.50) axi-cel vs. liso-cel:11.95 vs. 9.11(+2.85) 【QALY】 axi-cel vs. tisa-cel:8.62 vs. 5.96(+2.65) axi-cel vs. liso-cel:9.53 vs. 7.29(+2.24) ・これにより、axi-celは、tisa-celおよびliso-celと比較し、直接医療費の減少が認められた。 【直接医療費(米ドル)】 axi-cel vs. tisa-cel:280,875.73 vs. 281,852.02(−976.29) axi-cel vs. liso-cel:280,673.52 vs. 280,915.52(−242.00)  著者らは「医療財政の観点から考えると、axi-celは、tisa-celおよびliso-celと比較し、費用対効果の高い治療選択肢であることが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Ysutsue S, et al. Future Oncol. 2024 Apr 10. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38597742 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
PNH患者を対象としたペグセタコプランの第III相PEGASUS試験における溶血性有害事象
PNH患者を対象としたペグセタコプランの第III相PEGASUS試験における溶血性有害事象
公開日:2024年5月10日 Peffault de Latour R, et al. Blood Adv. 2024 Apr 9. [Epub ahead of print]  発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は、補体介在性の血管内溶血とそれに伴う貧血、疲労、場合によっては生命を脅かす欠陥性合併症を引き起こす疾患である。補体C3阻害薬であるペグセタコプランは、C5阻害薬による治療にもかかわらず貧血が継続していたPNH患者を対象とした第III相PEGASUS試験において、血液学的および臨床パラメータの持続的な改善が確認されている。フランス・French Reference Center for Aplastic Anemia and Paroxysmal Nocturnal HemoglobinuriaのRegis Peffault de Latour氏らは、PEGASUS試験で溶血性有害事象が確認された患者のベースライン時の特徴について、報告した。Blood Advances誌オンライン版2024年4月9日号の報告。  PEGASUS試験においてペグセタコプラン治療中に溶血性有害事象が認められた患者は、19例(26件)であり、これらの患者における溶血リスク増加と関連する可能性のあるベースライン時の患者の特徴を調査した。 主な結果は以下のとおり。 ・乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)が正常値の上限より2倍以上のあった患者が19例、そのうち2件はLDHが正常値の10倍以上であった。 ・すべての患者において、溶血中にヘモグロビンの減少が認められた(平均減少:3.0g/dL)。 ・16件(62%)のイベントにおいて、イベントの根底にある潜在的な補体増幅状態が特定された。 ・溶血性有害事象により、研究を中止した患者は5例であった。 ・溶血性有害事象26件中17件(65%)は、ペグセタコプランを継続しても管理可能であった。 ・溶血性有害事象が認められた患者(19例)の多くは、認められない患者(61例)と比較し、ベースライン時に疾患活動性(エクリズマブが適応用量より高い:53% vs. 23%、検出可能なCH50:74% vs. 54%、過去12ヵ月間で4回以上の輸血:68% vs. 51%)がより高かった。  著者らは「これらの特徴は、PNH患者のペグセタコプラン使用により将来発現する可能性のある溶血性有害事象を予測する上で、重要な因子であると考えられる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Peffault de Latour R, et al. Blood Adv. 2024 Apr 9. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38593241 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
英国におけるCAR-T細胞療法前のRTブリッジングのアウトカム
英国におけるCAR-T細胞療法前のRTブリッジングのアウトカム
公開日:2024年5月9日 Kuhnl A, et al. Br J Haematol. 2024 Apr 9. [Epub ahead of print]  放射線療法(RT)は、CAR-T細胞療法と潜在的な相乗効果が期待できるが、ロジスティックな課題や標準化されたプロトコルがないことから、ブリッジング療法として普及していない。英国・King's College HospitalのA. Kuhnl氏らは、英国の12施設においてアキシカブタゲン シロルユーセルまたはチサゲンレクル ユーセルによるCAR-T細胞療法が許可されたびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者763例を対象とした多施設コホートにおけるRTブリッジングの治療成績を分析した。British Journal of Haematology誌オンライン版2024年4月9日号の報告。 主な結果は以下のとおり。 ・763例中722例はリンパ球除去を実施、717例のブリッジング療法に関するデータが入手可能であった。 ・717例中169例(24%)にRTブリッジングが実施された(単一療法:129例、複合療法:40例)。 ・169例のうち、進行期が65.7%、巨大腫瘤性病変が36.9%、LDH高値が86.5%、国際予後指標(IPI)スコア3以上が41.7%、ダブル/トリプリヒット率が15.2%に認められた。 ・RTブリッジングの実施率は、施設ごとに異なり、11〜32%の範囲であり、時間経過とともに増加が見られた。 ・Vein-to-vein timeや注入速度は、ブリッジングの違いにより差は認められなかった。 ・RTブリッジングを行った患者のアウトカムは良好であり、1年無増悪生存期間(PFS)は、単一療法で56%、複合療法で47%であった(全身ブリッジングの1年PFS:43%)。  著者らは「DLBCL患者におけるCAR-T細胞療法前のRTブリッジングに関する最も大きなコホート研究である本研究の結果より、RTブリッジングが進行期、高リスク患者においても安全かつ効果的に利用可能であり、脱落リスクも軽減でき、良好なアウトカムをもたらすことが示唆された」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Kuhnl A, et al. Br J Haematol. 2024 Apr 9. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38594876 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
日本人患者におけるポサコナゾールの薬物動態モデリング
日本人患者におけるポサコナゾールの薬物動態モデリング
公開日:2024年5月8日 Sugimoto M, et al. Ther Drug Monit. 2024 Apr 4. [Epub ahead of print]  ポサコナゾールは、深在性真菌感染症の治療と予防に不可欠な薬剤の1つである。ポサコナゾールの薬物動態には、性別、体重、総血清タンパク質、食事摂取量、重度の粘膜炎など、いくつかの因子が影響を及ぼす。しかし、造血幹細胞移植(HSCT)におけるポサコナゾールの薬物胴体に影響を及ぼすさまざまな因子との関連性は、よくわかっていなかった。京都大学の杉本 充弘氏らは、HSCTレシピエントおよび非移植例の血液疾患患者におけるポサコナゾールの薬物動態に影響を及ぼす因子を調査した。Therapeutic Drug Monitoring誌オンライン版2024年4月4日号の報告。  本研究は、単一施設レトロスペクティブ研究として実施された。対象は、真菌感染症の予防薬として経口ポサコナゾールを投与した日本人入院患者42例。構造薬物動態モデルとして、1次吸収を伴う1-コンポーネントモデルを用いた。集団薬物動態分析には、非線形混合モデル、相互作用を伴う1次条件付き推定法を用いた。 主な結果は以下のとおり。 ・ポサコナゾールの血中濃度が0.5μg/mL(有効範囲)未満の患者の割合は、29%であった。 ・集団薬物動態分析では、見かけのクリアランス(CL/F)に影響を及ぼす因子として、1年以内のHSCT実施、下痢が5回/日以上、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼが特定された。 ・ポサコナゾールのCL/Fは、HCST後では1.43倍、下痢中では1.26倍高かった。  著者らは「ポサコナゾールのCL/Fには、HSCT、下痢、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼが関連しており、このような場合、ポサコナゾールのトラフ濃度が治療範囲を下回る可能性がある。血液疾患患者における深在性真菌感染症は、生命を脅かす可能性があるため、注意深くモニタリングを行う必要がある」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Sugimoto M, et al. Ther Drug Monit. 2024 Apr 4. [Epub ahead of print]▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38648638 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
DLBCLに対するR-CHOP療法による完全寛解率
DLBCLに対するR-CHOP療法による完全寛解率
公開日:2024年5月7日 Hassan SU, et al. Cureus. 2024; 16: e57368.  びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、臨床症状および治療反応が多岐に渡り、アウトカムの予測や治療戦略の検討に課題が残る。分子サブタイピングや予後評価が進歩したにも関わらず、DLBCLの最適なマネジメントに関しては、依然として不確実性があり、特定の患者集団における治療反応およびアウトカムの理解を促進するためにも、局所的な調査の必要性が浮き彫りとなっている。パキスタン・Hayatabad Medical Complex PeshawarのSani U. Hassan氏らは、特定の成人集団においてR-CHOP療法を受けているDLBCL患者の完全寛解(CR)率を評価するため、本研究を実施した。Cureus誌2024年4月1日号の報告。  本研究は、2022年8月8日〜2023年4月8日に、パキスタン・Hayatabad Medical Complexの腫瘍内科で実施した。対象は、治療歴を有する患者を除く20〜70歳の新規DLBCL患者95例(男性:55例、女性:40例)。人口統計学的特徴、罹病期間、CRに関するデータは、事前に定義したデータ収集フォームを用いて収集した。 主な結果は以下のとおり。 ・R-CHOPによるCR達成率は、84.2%(80例)であった。 ・年齢分布に関しては、45歳以下が45.3%(43例)であった。 ・罹病期間は、3ヵ月以内が63.2%(60例)を占めていた。 ・BMIの分類では、18.5kg/m2未満が9.5%(9例)、18.5〜24.9kg/m2が51.6%(49例)、25〜30kg/m2が38.9%(37例)であった。  著者らは「DLBCLに対するR-CHOP療法は、CR達成に有望な治療法であるが、遅発性の副作用に関する懸念はいまだ残存している。これらDLBCLの課題に対し、新規の予後バイオマーカーを検証し、代替治療アプローチを開発し、患者アウトカムの改善に繋げ、世界的な負担を軽減するためにも、継続的な研究努力が求められる」としている。 (エクスメディオ 鷹野 敦夫) 原著論文はこちら Hassan SU, et al. Cureus. 2024; 16: e57368.▶https://hpcr.jp/app/article/abstract/pubmed/38694660 血液内科 Pro(血液内科医限定)へ ※「血液内科 Pro」は血液内科医専門のサービスとなっております。他診療科の先生は引き続き「知見共有」をご利用ください。新規会員登録はこちら
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